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円安なので米ドルに換算すると日本のGDPが縮んだだけ。ドイツは急激なインフレで名目の数字が膨らんでいる。順位なんか気にしなくていい――。そんな意見も多かった。もちろん、自国の衰退を喜ぶ人なんていない。だが、現実を冷静にとらえなければ、物事の本質を見失う。
《次のグラフ》をみてほしい。日本、ドイツ、米国の名目GDPの推移を自国通貨ベースで示したものだ。
1994年を基準にすると、この30年で日本は1・1倍になった。それに対し、ドイツは2・2倍、米国は3・7倍だ。為替の影響を取り除いてみると、「失われた30年」における日本経済の停滞が際立つ。
どこに問題があったのか。信頼する専門家が口にしたのは「リスク回避の思考」という言葉だった。
日本の戦後を支えた製造業の多くは、為替リスクを避けるため海外に活路を求めた。国内に残った拠点も統廃合が進み、非正規雇用への置き換えも広がった。財務の悪化につながるリスクをとことん減らしたしわよせは、家計にいった。
国の統計を分析すると、その傾向は明らかだ。
企業が人件費をどのくらい払っているかを示す指標に「労働分配率」がある。財務省の法人企業統計をもとに23年の数値を試算すると、資本金10億円以上の大企業は40%を切り、この半世紀で最低の水準だった。
働き手を大切にしてこなかったせいで、所得は増えず、消費も伸びない。デジタルなど新しい分野への投資も遅れ、労働生産性も高まらない。名目GDPが4位に転落した衝撃は、日本経済が抱える積年の課題を浮き彫りにした。
一方で明るい兆しもみえてきた。 今年の春闘では大幅な賃上げが実り、ようやく「人への投資」を厚くする機運が高まってきた。 物価があがった途端に家計が苦しくなる社会は、やはりおかしい。これを機に、働き手を重視する経済に変えてゆかなければならない。
歴代政権は経済を支えるためとして、巨額の予算を投じてきたが、GDPを押し上げるという意味では、ほとんど効果がなかった。「人」を軽視してきたからではないか。 政策報道に携わる者として、今後もしっかり検証していく。
(経済部)
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<よねたに・よういち> 2001年入社。民間企業や官庁の取材が長く、大阪経済部デスク、AERAと週刊朝日の副編集長も務めた。マクロ経済の担当として、数字から人の営みが浮かび上がるような記事の執筆を心がけている。
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