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同部隊の任務は、本来は海外での情報活動を担うこと(そもそもが自衛隊イラク派遣をきっかけに2007年に新設された部隊)とされているが、明確な法的根拠もないまま、国内での人的情報収集活動を担っていたのだという。集められた情報は何と数千人分に上る可能性があるとのこと。「熊日」(県民にはそう呼ばれ、圧倒的なシェアを誇っている)は、独自に入手した「個人BSD(ベーシックソースデータ)報告書」の実物写真やその概要をきっちりと報じていた。
「熊日」は25日付紙面でも、活動に実際に従事した元隊員へのインタビューを詳報、自衛隊員であることを偽って調査活動を行うことも半ばマニュアル化されていた証言を引き出していた。見事というよりほかはない。「熊日」が警告するように、シビリアンコントロール(文民統制)を逸脱している恐れがある重大な事案だ。「熊日」に対して、木村草太東京都立大教授(憲法学)は「収集手段や管理が適切でなければ思想弾圧につながりかねない。過剰な情報収集はプライバシー侵害にもつながる」と述べていた。
「熊日」によれば、この活動内容は、防衛相ら政治家や官僚には知らされていないとされているようだが本当だろうか。小泉進次郎防衛相は24日の会見で、「熊日」の報道について「現地情報隊の活動は、PKO等での安全確保に向けた情報収集であり、防衛省設置法に基づき適正に行われている」と型どおりに述べたうえで「現時点で不適切な活動は確認されていない」とした。少しは危機意識をもたれてはいかがか(無理だろうが)。
◆影の組織「別班」
自衛隊による国民監視は、かつて2007年6月に日本共産党が暴露した自衛隊の内部文書で表面化したことがあり、これをもとに市民らが監視差し止めなどを求めた裁判で勝訴した前例がある。13年には共同通信が、陸上自衛隊情報部隊の秘密組織「別班」を特殊部隊「特殊作戦群」と一体運用させる自衛隊の構想をすっぱ抜いたことがある。「別班」が表に出たということで当時ちょっとした騒ぎになった。
さらに歴史をさかのぼれば、自衛隊の「別班」「別働」という影の組織の一端が明らかになったことがある。1973年に東京で起きた金大中事件だ。韓国の当時の朴正煕政権の最大の政敵だった金大中氏が白昼、東京の滞在先のホテルから拉致された国際的な主権侵害事件である。この事件で、韓国の中央情報部いわゆるKCIAからの依頼を受けて、金大中氏の日本国内での所在確認を行っていたのが、「ミリオン資料サービス」という会社だった。自衛隊陸幕二部「別班」のダミー会社だったといわれている。元陸上自衛隊の男性が設立し、警視庁外事課出身の社員らが在籍していた。
実は陸幕二部「別班」については、米軍との強い関わりから「下働き」「下僕」として働いてきた屈辱の履歴がある。隊員らは、米軍座間基地に常時出入りしていた事実があり、このことは国会の議事録にも明記されている(76年4月27日の参議院予算委員会)。ちなみに7月28日の小泉防衛相の会見で、陸自の「別班」に関して記者から質問が出た。これに対して小泉氏は「(別班は)これまで存在しておらず、現在も存在していません」と否定していた。無知ほど怖いものはない。
人気テレビドラマ「VIVANT」に冷水を浴びせる気はないが、コントロールを失い、独善的な思い込みから諜報(ちょうほう)活動に走る「別班」「別働」ほど恐ろしいものはない。朝日新聞阪神支局を襲撃して記者を殺した一味の犯行声明文にも「別動」の文字があったことを僕は忘れない。
ちなみに「熊日」の記者たちは今、熊本地震の被災した地元の人々のために身を削るようにして取材を続けている。
(かねひら・しげのり=ジャーナリスト)
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