文豪のつぶやき

2008.07.16
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カテゴリ: 時代小説
 もともと徳川の幕藩体制というものはあいまいに出来ている。
 各藩主に対して君臣の関係ではないのである。
 いわば、各国の連合体のリ-ダ-にすぎない。
 それを家康以来二百七十年間、徳川の絶大な力でねじふせ君臨して来た。
 それが二百七十年の末期にきて崩れた。
 薩摩長州等の西国諸藩が京にいる天皇を擁し、その名のもとに倒幕を遂行している。
 そして、官軍は今年の一月、戌辰の役を起こした。
 革命である。
 三田藩はもともと外様である。先祖上杉謙信公の後を継いだ甥の景勝が関が原の戦いで破れ、減知されて会津に転封される時、愛すべき越後と関係を絶たせぬために幕府に懇願し末弟を分家させ、一万石の大名として残した。

それは、まだ年若だった最愛の弟を心配してのことであったし、また、上杉軍団は越後にいるべきだとおもったのかもしれない。が、ともかく謙信以来の最強軍団は越後三田藩に残った。
 そして、その子孫はその血を受け継ぎ、今もなお屈強の軍団として、三百年の歴史を越えてそのまま残っている。
(そのいかつい男たちが泣いている)
 篠原は国家老の話をうけながら啜り泣く声を聞いている。
(国を誤ってはならない)
 そういう気負いが篠原にはある。





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最終更新日  2008.07.16 13:44:33
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