《櫻井ジャーナル》

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

サイド自由欄

寄付/カンパのお願い

巣鴨信用金庫
店番号:002(大塚支店)
預金種目:普通
口座番号:0002105
口座名:櫻井春彦

2010.01.10
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 東京都が設置した「公設派遣村」の入所者554名のうち、204名が「求職活動費」として支給された2万円を持ったまま「所在不明」になったと報道されている。不明になったひとりひとりにどのような事情があるのか、調べてみなければわからないが、一般論として言えば、求職がきわめて困難な時代に2万円を渡されても働き口を見つけられる可能性は低い。1日数十円、数百円の世界で生きている人々にとって2万円は大金であり、見込みの薄い就職活動で使うより、生活費に充てたいと考える人間が出てくるのは当然である。204名で収まったことの方が驚きである。

 勿論、東京都の役人は多くの人が2万円を「持ち逃げ」することを望んでいたはずだ。そもそも、現金を直接渡すという方法が胡散臭い。所在不明者の話を流した直後に「臨時宿泊施設」の受け入れを18日に打ち切ると石原慎太郎都知事は発表したそうだが、要するに「アリバイ工作」で実施した「公設派遣村」を早く終わらせたいだけであり、生活保護受給の手続きなどされてはかなわないと思っているのだろう。小賢しい役人が考えそうなシナリオである。

 大企業の経営者や霞ヶ関の官僚が「派遣村」を嫌がる一因は、派遣村が社会を映す鏡だからだろう。1980年代に庶民は「バブル景気」で感覚を麻痺させ、1990年代に入ると大企業の倒産を目の当たりにして「経済の破綻」に恐怖、21世紀に入ると自分たちが手にするはずの富を社会的に優位な立場の人々に献上することに同意してしまった。富の多くはアメリカへ流れ、アメリカの権力層に従う日本の支配層も豊かになった。そうした豊かさの源泉が庶民の貧困化である。つまり、庶民層から富裕層へカネが流れるシステムが整備されてきたわけだ。

 貧困化が進む過程で「セーフティ・ネット」が必要だとする議論が出てきた。企業の倒産だけでなく、事故や病気などで窮地に陥った人々を救うシステムは必要なのだが、本来はできるだけ使われない状況が望ましい。綱渡りや空中ブランコでセーフティ・ネットが張られているからといって、しょっちゅう落下するのはよくないのと一緒だ。現在、貧困化が進んで社会が機能しなくなっている最大の理由は、大企業が適切な対価を労働者や下請け企業に支払っていないことにある。

 その結果、「コスト」は削減されて製品価格は低く抑えられて輸出が増え、大企業の利益を膨らませ、重役たちの収入が増え、政治家や官僚も潤うという構図だが、そうなると為替相場はそうしたコストに合わせてくるので、さらにコストを下げる、つまり日本の庶民をさらに貧困化させるか、工場を「低コストの国」へ移動させるということになる。いずれにしろ、日本の経済は衰弱化していく。

 昔からある種の金持ちは「宿主」を替えながら資産を増やしてきた。ひとつの国で富を吸い尽くしたら別の国へ移動するということだ。最近では「ヘッジファンド」という形で寄生方法が近代化されてきた。本来、ヘッジは企業が為替などのリスクを回避するために行うテクニックであり、「投機」の対極にある概念だったはずだが、現在では投機的な行動をする集団だと理解されている。名前からして詐欺的なわけだ。「倹約」が「強欲」に変化したようなものかもしれない。いずれにしろ、貧富の差が拡大することを「是」とする人々は派遣村が消えることを願っているはずだ。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010.01.10 13:29:39


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: