《櫻井ジャーナル》

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2010.08.10
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ホルムズ海峡を航行していた日本のタンカーが何らかの衝撃を受け、側面が大きくへこむという出来事があったのは8月4日のことだ。当初、その原因は不明だったが、ここにきてアラブ首長国連邦の当局は、自家製の爆発物による攻撃だと断定した。

 言うまでもなく、ホルムズ海峡は石油輸送の重要ポイントであり、ここが危険だということになると日本にとっても死活問題になりかねない。地図を見ればわかるように、南側にはアラブ首長国連邦やオマーンがあり、北側にはイランがある。つまり、イスラエル/アメリカがイランを攻撃して戦争になれば、この海峡を通航するリスクが高くなることは明白であり、最悪の場合は通行できなくなる。こうした事実を考慮せず、アメリカやイスラエルの尻を追いかけている日本政府に対する警告だった可能性もあるだろう。

 そのイスラエルは5月31日にガザ支援船を公海上で襲撃し、多くの死傷者を出した責任が問われ、国連の調査も始まる。日本のマスコミなら「国際世論」と表現するのかもしれないが、イスラム諸国やEUでイスラエルを批判する声が収まらないため、とりあえずイスラエル政府も国連の調査を受け入れたのが現段階。

 しかし、イスラエル政府が本気で調査を受け入れたわけでないことは明白だ。相変わらずベンジャミン・ネタニヤフ首相は襲撃を「自衛行為」だと正当化、兵士への質問は許さず、自分たちの意に沿わない調査は止めさせるという強硬姿勢。犠牲者が出たのはトルコ政府が自分たちの言いなりにならなかったからだというわけだ。

 そうした中、国連はイスラエルの宿敵、ヒズボラのメンバーを含むレバノン人数人をラフィク・ハリリ元レバノン首相殺害の容疑で起訴すると言われている。事件があったのは2005年2月のこと。国連国際独立委員会のデトレフ・メーリス調査官が安全保障理事会に提出した「報告書」では、犯人像が不明確なまま、シリアやレバノンの情報機関が殺害計画を知らなかったとは想像できないと主張していた。よくわからないが、シリアやレバノンの情報機関が怪しいというわけだ。

 この調査が杜撰だったことを示す一例が、暗殺に使われた三菱自動車製の白いバンに関するもの。2004年10月12日に日本の相模原で盗まれ、ベイルートに運ばれたのだとされているのだが、その経路が示されていない。本来の所有者が誰なのかも不明だ。2005年と言えば、まだ戦争熱が冷め切らない頃で、アフガニスタンやイラクに続き、イランを攻撃する雰囲気が高まっていた時期である。前にも指摘したように、レバノン情勢はイラン攻撃と密接な関係がある。

 この暗殺に関し、アーマド・アブアダスという人物が「自爆攻撃を実行する」と宣言する様子を撮影したビデオをアルジャジーラは放送したが、この人物が本当に実行犯ならばメーリス調査官のシナリオは崩壊する。そこで、アブアダスが途中で自爆攻撃を拒否したため、シリア当局に殺されたという話が流された。

 メーリス調査官が採用した証人の信頼度に疑問を投げかける人も少なくない。例えば、ドイツのシュピーゲル誌によると、同調査官の重要証人であるサイド・サディクは有罪判決を受けた詐欺師であり、この人物を連れてきたのはシリアの反体制派リファート・アル・アサドだというのだ。サディクの兄弟によると、メーリスの報告書が出る前年の夏、サイドは電話で自分が「大金持ちになる」と話していたという。

 もうひとりの重要証人、フッサム・タヘル・フッサムはシリア関与に関する証言を取り消している。レバノン当局の人間に誘拐され、拷問(ごうもん)を受け、その上でシリア関与の証言をすれば130万ドルを提供すると持ちかけられたと話している。



 少なくとも、早い段階から国連国際独立委員会のシナリオには無理があると言われていただけに、ナスララーの主張を無視することはできない。今の時点でメーリス調査官のシナリオを持ち出してくると、戦乱が拡大する可能性は小さくない。イスラエルやアメリカのネオコンが望む展開ではあるだろうが。





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最終更新日  2010.08.10 20:20:27


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