TelecomTVのガイ・ダニエルズ氏が司会を務めたセッションでは、業界のリーダーたちがAPIビジネスの成功がどのようなものであるべきか、そして通信事業者が市場の潜在能力を最大限に引き出すために、コラボレーション、標準化、顧客エンゲージメントをいかに再考すべきかについて率直な意見を交わしました。 登壇者: * Geoff Hollingworth, CMO, Rakuten Symphony * Henry Calvert, Head of Networks, GSMA * Alexandra Reichl, VP, Mobile & API Services, Liberty Global
従来の通信業界では、モバイルネットワークの構築には高価で専門的なハードウェアが必要でした。そのため、市場への参入障壁が高く、新しい技術の導入には時間がかかるという課題がありました。楽天シンフォニーはクラウド技術とソフトウェアを活用した、オープンで柔軟なネットワークの実現を目指しています。彼らは、ネットワーク全体をソフトウェアで制御し、汎用的なサーバー上で稼働させる「オープンRAN(Open Radio Access Network)」というコンセプトを提唱し、世界中でその技術を広めています。このアプローチにより、通信事業者は特定のベンダーに縛られることなく、より安価かつ迅速にネットワークを構築・拡張できるようになります。また、ネットワークの運用も自動化が進み、効率が大幅に向上します。
失敗を認め、未来志向で解決策を提示する姿勢 パネルディスカッション内でまず注目すべきは、過去の失敗を率直に認める非常に真摯で前向きな姿勢だと思いました。Aduna社のCCO、Peter Arbitter氏がパネルディスカッション冒頭で、通信業界が過去10~15年間でAPIの標準化を怠り、開発者体験を軽視してきたこと、その結果、ハイパースケーラーやCPaaS(Communications Platform as a Service)企業に市場を奪われたことを具体的に言及しているのは非常に興味深い点でした。しかし、彼は同時に、Open GatewayやCAMARAといった現在の統一的な取り組みが、この状況を打開する大きな希望だと強調しています。自己反省と未来志向の組み合わせが、現在のネットワークAPIエコシステムの勢いを加速させている本質だと思いました。反省し、課題と顧客にたちかえり、新たな解決手段を採用し、苦労しながらも信頼と実績を積み重ねる。尊敬すべき企業努力だと思いました。
「グローバルな一貫性」という顧客の真のニーズへの対応 Henry Calvert氏が、成功のKPIは「市場の各通信事業者が同時に同じAPIを立ち上げること」だと述べている点は非常に重要です。単に技術的な標準化だけでなく、グローバルに事業を展開する企業(例えばフィンテック企業など)が、複数の国で一貫したサービスを構築・運用できる環境を求めているという、市場の真のニーズを的確に捉えた発言に思えました。楽天シンフォニーがOpen GatewayやCAMARAといった業界統一の取り組みを積極的に支持し、オープンなエコシステムを構築しようとしているのは、まさにこの顧客ニーズに応えるためだと考えられます。これにより、特定の通信事業者のAPIだけでなく、業界全体として信頼性の高いグローバルなプラットフォームを企業に提供できる可能性が生まれます。
System Integrator (SI)との連携による市場開拓 パネルディスカッションでPeter Arbitter氏が強調しているように、通信事業者が直接企業顧客と関係を築くのは容易ではありません。多くの通信事業者はこれまで、ハードウェアの調達部門との取引には慣れていても、APIを活用したソリューションを提供する際の営業、マーケティング、運用チームとの深い連携は得意分野ではないでしょう。このギャップを埋める上で、グローバルなシステムインテグレーター(SI)の存在が不可欠になります。楽天シンフォニーがSIとの戦略的パートナーシップを重視しているのは、通信事業者が持つ技術的な強みと、SIが持つ企業顧客との強い関係性を組み合わせることで、市場への浸透を加速させる現実的な戦略と言えます。