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2009年07月13日
宮部みゆき 『名もなき毒』
テーマ:
ミステリはお好き?(1498)
カテゴリ:
カテゴリ未分類
このミステリーがすごい 2007年版 国内編 第6位
【内容】
どこにいたって、怖いものや汚いものには遭遇する。それが生きることだ。財閥企業で社内報を編集する杉村三郎は、トラブルを起こした女性アシスタントの身上調査のため、私立探偵・北見のもとを訪れる。そこで出会ったのは、連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生だった。
【このミステリーが凄い】 より紹介文
社内報編集者杉村が心ならずも暴き出す現代社会に潜む毒
シリーズ第一作の
『誰か』
以来、三年ぶりとなる現代ミステリーである。日本を代表するグループ企業会長の娘と結婚し、心ならずも逆玉の輿に乗ってしまった杉村三郎が主人公だ。杉村は結婚を機に、義父の会社に入り、会長直属の部署で発行する。グループ会報誌の編集業務を行っている。
会長から事故死した個人運転手の娘達の相談に乗るよう命じられた杉村が、故人の意外な過去と姉妹の確執に直面することになったのが前作だった。本作も杉村の身の回りで起きる小事件がきっかけで生じていく波紋を描いている。
編集部に編集アシスタントとして雇われたアルバイトの原田いずみは、無能、無責任で逆ギレを繰り返す、とんだトラブルメーカーだった。ついに契約解除を切り出した編集長に物をなげつけたまま、無断欠勤をしてしまう。原田が事実を歪曲した手紙を送ったことで、彼女をめぐる騒動は会長の知るところとなり、杉村は会長直々に、この問題を決着させるように命じられる。
飲み物に仕掛けられ、無差別に人を殺していく毒物。感情をコントロールできず、自分をいっさい省みることなく他者を攻撃することで、周囲に悪意という毒物を振りまき続ける原田いずみ。そして深刻な社会問題である宅地土壌汚染。本作は誰もが偶然かつ理不尽に遭遇するかもしれない<毒>の恐怖を描いた作品なのである。しかもその毒は、杉村の家族にも降りかかる。本作はあの超大作『模倣犯』と正反対のタッチで描かれた作品だが、小説の方法論が違うだけで通底するものがある。
なおこのシリーズはマイケル・サムスンシリーズに影響を受けたという。やがて杉村は私立探偵の道を歩み始めるのか、興味は尽きない。
【感想】
家族ももてあますトラブルメーカー、
原田いずみ
。
この人物像は、模倣犯の続編『楽園』の土井崎茜を思い出しました。
周囲に害を撒き散らす。自分の不満をどうにも解消できない。人の幸せが許せない。。
ここまでくると、実際に、病気なんじゃないかと思いますけど?
家族には、心療内科などへの通院をオススメしたい。
他者との関係を築けない。感情のコントロールができない。
そこまでではなかったんでしょうか。。いずみの父が言うように
10何年か前というと、相談先は学校か教育相談所位しかなかったようです。
『楽園』
と同じパターンで、いずみの引き起こしたとんでもない過去が明らかになった時、こんな人間が、家族&親戚&友人関係などなど周囲にいたとしたら、。まったく不幸なことで、やるせないというか、なんともかとも、こんな奴は抹殺しても間違いじゃない!という感情をこらえられませんでした。
そして、こうした負の感情こそ、<毒>なんだな~としみじみ感じました。
宮部さんたら、やっぱうまいです~。読者に<毒>を体感させちゃうんですから。。
外立ケンジ
、こちらは、こちらで、また、あまりに不遇で、気の毒です。
でもって、彼のような介護被害者というか、追い込まれた、環境の犠牲者的な人も今の日本を象徴してましたよね。
名もなき毒という題名は言い得て妙です。社会を蝕む毒、個人を蝕む毒。
先日「サンデーモーニング」で、このところの無差別大量殺人の事件(パチンコ店での灯油放火事件にからめて)へのコメンテータのこうした事件の動機ヘの推論にこういうのがありました。
特定の誰かを恨むほどの人間関係も築けない弱者の、対社会への恨み、と。
昔の日本の精神、「名もなく、貧しく、美しく」は何処へ行ったのか、もう一度教育から見直していかないと、この社会は、ほんとに壊れいく、すでに壊れ始めている、と。
ホントにそうだな~と思いました。子育てしてますが、なにを指針にして良いのか?分かりませんよ。
優しく、素直に、まっすぐに、、お人よしではイジメられるか、隅に追いやられちゃいますよ。何かに秀でて、自信につながることがないと生きにくい子供社会です。すでに子供はそんな世の中で、日々戦ってますよね。
『名もなき毒』本中で、ジャーナリストの秋山が
「誰かが<自己実現>なんて言葉を生んでしまった為に、生きにくい世の中になった」と言ってます。
本とは関係ないですが、チョット前に流行った「勝ち組」とか「負け組」なんて嫌な言葉もありました。
充足感を持って生きる、幸せと感じて生きている人が、この国にはどのくらいいるか?
表題の『名もなき毒』と、「名もなく貧しく美しく」というフレーズが、たまたまですが、ちょうど頭でシンクロしました。
最近読んだ宮部さんの本
時代小説:
『日暮らし』
『孤宿の人』
『あやし』
『おそろし』
現代小説:
『楽園』
『誰か』
『名もなき毒』
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最終更新日 2009年07月14日 13時46分38秒
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