森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2025.09.01
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カテゴリ: 行動のポイント
森田正馬全集第5巻にこんな話があります。

水谷氏・・・私はこのごろ学校の書物は読まず、カルタやトランプをやっても面白くなく、困った心理状態になっています。
歩いていても、息苦しくなる事もある。こんな気持ちで、余興をやったら、かえって人に気まずい感じを与えはしないかと、様々に迷ったが、先生が常に私に「ともかくも手を出せ」といわれますので、手をつけた事ではあり、苦しい苦しいと思いながら、稽古をしたのであった。
やってみると案外よくできました。
これは、「ともかくも、手を出した」ことになるのでしょうか。

森田先生・・・それは「手を出す」ことにならない。意味の違う事である。
もし君が学校の書物を読めば、それが手を出す事に相当する。
君が読まないのは、苦しくて興に乗らないからである。
その苦しいながらも読む事を、「ともかくも」というのである。

そして「手を出せ」という標語にかこつけて、わずかに自分を欺いて、強いて我と我が心を慰めている。
実は実際において、「ともかくも手を出す」べき事には、少しも手を出していないから、稽古もなかなか苦しいのである。歩いて息苦しくなる原因はここにある。
決して鬱憂症などの突発性のものではない。
それは自欺の罪の罰を科せられたと同じ価値の者である。
もしこれを逆に、ともかくも、読書の方に手を出しているならば、自ら心も快活になって、勉強のできる上に、その余暇に、滑稽劇でもカルタでも、みな面白く元気よくできる。
それは心に拮抗作用の強い抵抗がなくて、自然に能率が上がる事が面白くなるからであります。
(森田全集 第5巻 301ページ)

森田では不安や恐怖、ネガティブな気分などはあるがままに認めて受け入れ、目的に沿って必要なときに必要な事を必要な範囲でこなしていくようにと説明されています。
水谷氏のお話では、読書をする気が起きないので読書は避けている。
読書するのはおっくうだ、やる気が起きないという感情を認めていない。
すると息苦しくなるばかりなので、いまの自分に興が乗りやすい滑稽劇の稽古に取り組んでいる。

これは、不安や恐怖、ネガティブな気分などから目をそらし、別の行動に逃げて心の安定を得ようとしていることになります。
森田の「自然に服従して、境遇に柔順」という方向からずれています。
こういう方向に向かうと、神経症はこじれて増悪していきます。





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Last updated  2025.09.01 06:20:04
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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