時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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August 3, 2008
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 以前、美人旗師宇佐見陶子を主人公にした北森鴻の 「緋友禅 旗師・冬狐堂」 「狐罠」 (北森鴻:講談社)である。なお、旗師というのは、店舗を構えない古物商のことだ。

 宇佐見陶子は、屋号を冬狐堂という、売り出し中の美人旗師である。陶子は、銀座に店舗を構える骨董商の橘薫堂から、周到な「目利き殺し」を仕掛けられ、贋作の発掘物と称する硝子椀を掴まされた。骨董の世界は「目利き」がすべてである。陶子は自らのプライドをかけて、橘薫堂に対して、「目利き殺し」返しを仕掛けようと企てる。その一方、橘薫堂の外商を担当していた田倉俊子が死体で発見された。

 骨董の世界といえば、テレビの鑑定団などでのイメージでは、どこかのんびりしたようなユーモラスな感じを受ける。しかし、この作品に描かれている世界は、決してそのようななまやさしいものではない。先にも言ったように、「目利き」が全て。贋作をつかまされる方が、目が利かないだけのこと。まさに食うか食われるかの、どろどろとした世界である。「いい仕事してますねえ」なんていう言葉の裏にも、何が隠されているか分からないのだ。

 作品中に出てくる、贋作師の潮見という老人がすさまじい。「目利き殺し」返しのための、文箱を製作するのに、それが制作されたと見せかけたい時代と同じ材料、工具を揃えるだけではない。当時の栄養状態を考えて、自分の体をいじめ抜きいて幽鬼のようにやせ細り、当時の職人頭の心情を想像して、秘伝の技が誰にも見られないよう、暗がりの中、燈心の明かりのみで作業を行う。贋作師とはいえ、一流の者は、ここまでやるのかと奇妙な感動に襲われる。

 最後は、陶子がピンチに陥るが、急転直下、事件が解決し、驚くべき真相が明らかになる。北森らしい、よく取材され、周到に練り上げられた良品のミステリーである。 


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○「緋友禅 旗師・冬狐堂」の記事は こちら

○「狐罠」(北森鴻:講談社)



風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)は こちら







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Last updated  July 25, 2009 01:32:35 PM コメント(6) | コメントを書く
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