時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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January 8, 2010
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 誰が言った言葉か覚えていないが、「誰もが知っていて、誰も読んだことが無い本」を「古典」と呼ぶらしい。そうだとするとこの本など、まさに「古典」の要件を満たしているのではないだろうか。柳田国男の「遠野物語」である。以前から興味があったこともあり、最近出張先で立ち寄った書店で、 「遠野物語新版」

○「遠野物語新版」( 柳田国男:角川学芸出版)



遠野 は岩手県にある、妖怪の故郷として有名な街である。だから妖怪をテーマとした漫画などには、よく遠野が登場する。最近では「ぬらりひょんの孫」(椎橋寛:集英社) にも、遠野妖怪が登場している。

○「ぬらりひょんの孫」(椎橋寛:集英社)



 これまでに遠野が有名になったのは、「遠野物語」が世に出たからであるが、元々は、地元に住む佐々木喜善から聞いた話を柳田が筆記・編纂したものだ。この新版には、本来の「遠野物語」とその続編に当たる「遠野物語拾遺」が収められているが、いずれも、河童、オシラサマ、天狗、座敷わらしなど、この世と異界との区別がまだ明確でない時代の不思議な言い伝えが多く収録されている。一つ一つの話は短く、関係する話が続くこともあるし、まったく別の話が続いている場合もある。特徴は、「遠野物語」が、少し古い文体で書かれているのに対して、「拾遺」の方は現代風の文体になっていることだろう。「古い文体」と書いたが、決して悪くはない。斎藤孝氏の著書に「声に出して読みたい日本語」というのがある。この「遠野物語」も声に出して読むとよい。非常にリズムとテンポの良い、古き良き日本語を味わうことができるだろう。





 この本には、多くの怪異談が収録されているが、特に心に残ったのは、第69段の「オシラサマ」の話だ。美しい娘が馬と恋をし夫婦となったが、娘の父の知るところになり、馬は殺された。娘が馬の首に取りすがって泣くのに怒った父親が、馬の首を切り落としたところ、娘はその首に乗って天に昇り、オシラサマと呼ばれる神になったという。文章が、そのまま映像化されて、目の前に見えてきそうな錯覚さえ覚えさせる。

 かっては、おそらく日本の至る所に、このような物語があったのだろう。古き日本の暮らしや自然との関わり、日本人の考え方などを伝えてくれる、ぜひ一度は読んでおきたい書だろう。

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