読書日和 ~Topo di biblioteca~

読書日和 ~Topo di biblioteca~

2009.12.16
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しかし犯行を実行に移したとき、偶然現場に居合わせた老婆の義理の妹までも
殺してしまったことから良心に呵責を覚え、最後は自首することに…という
至極単純な(お涙頂戴的な)お話かと思ってました。

…全然違うっ!!

「あらすじだけ知っていればいい。」なんて考えは間違いだってことを嫌というほど思い知らされました。
ラスコーリニコフが殺人を犯した動機、自首するに至るまでの心の葛藤…少なくとも彼は良心の呵責に怯えて自首したわけじゃなかった。
彼が犯した「罪」とは一体何だったのか。

ドストエフスキーが作品に凝らした意図の全てをくみ取れるわけじゃないけれど、
訳者による巻末のガイドなどからそれを一つでも知らされると「ああ、そうだったのか!」と
ただただ感嘆させられるというか、作品を「読み解く」というのはこういうことなのかと
改めて教えられる気がしました。

長い作品ですが要所要所、読みどころがたくさんあります。
一つ一つ、どこがどう、誰がどうと言うことはやめときます。きりがないので。

ただ全編を通して感じたのは、ラスコーリニコフが悩んで悩んで、これでもかというほど
苦しんだことは今を生きる自分にも共通する点がたくさんあるということです。
殺人を犯したから苦しい、という単純に善悪で割り切れることじゃなく。
ただ、「生きている」ということそのものがどれだけ人を苦しめるかということ。
どうすれば人間として生きられるのか、生きることそのものにどんな意味が見出せるのか

苦しんで苦しんで、そういう感情を共有できたことになにか意味が見出せる思いがしました。

この物語におけるソーニャという女性の存在感は圧倒的で、その「聖性」には終始胸を突かれます。
貧しい家族(血の繋がらない継母や小さな弟妹たち)を養うために娼婦になった女性。
ラスコーリニコフよりもずっと辛い境遇に身を窶していながら、どうしてこうまで優しい人でいられるのか。
作品の第五部、ラスコーリニコフがソーニャに殺人を告白する場面は物語中において


名作とはどういうものか、時間を経ても普遍性を持つのはどういう作品か
『罪と罰』を読んで実感させられました。
脇役である登場人物たちにも存在感があることといったら…。
マルメラードフが最期に娘に投げかけた言葉。
ソーニャの継母、カテリーナの哀しすぎる最期。
ラスコーリニコフの友人ラズミーヒンの何処までも人の良い性格!
ラスコーリニコフの母親と美しい妹のドゥーニャ。
ラスコーリニコフを追い詰めていく予審判事ポルフィーリー。
そして最終巻で不気味な存在感を放つスヴィドリガイロフ…。

物語とはいえ、彼らは皆血肉を持った「人間」なんだと思います。
作品の中で生きて、悩んで苦しんでいる。

ドストエフスキー、もっと読んでみたいです。



訳者による『罪と罰』の解説本も、読んだ記憶が新しいうちに読んでおきたいなあ…。



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最終更新日  2009.12.16 15:56:14
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