「きらりの旅日記」

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ほしのきらり。

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2017.08.30
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カテゴリ: 美術館・博物館




パオロ・ウッチェロ・・・とは?


ウッチェロ作『女性の肖像』1450年代

ニューヨーク「メトロポリタン美術館」

パオロ・ウッチェロ
Paolo  Uccello

1397年 - 1475年12月10日

初期ルネサンスの画家

国際ゴシック様式の潮流と遠近法に代表される

ルネサンスの科学的アプローチを融合させた絵画を創出した。

しかし、あまりにも遠近法に固執したため、

ルネサンス後期の画家のみならず、

19世紀のロマン主義においてもしばしば批判の対象となった。

『サー・ジョン・ホークの葬祭の記念碑』

1397年頃に、床屋兼外科医の子としてプラトヴェッキオに生まれる。

1412年頃にロレンツォ・ギベルティの工房に弟子入りし、

1415年にはフィレンツェ医師薬剤商組合に登録されている。

また1425年から1427年頃まで、ヴェネツィアの

サン・マルコ聖堂のモザイク装飾に携わった記録が残されている。

ヴェネツィアのフィレンツェ大使の推薦を受け、

1431年にフィレンツェに帰国した彼は、

サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の仕事を受けることになった。

1436年にはフレスコ画『ジョン・ホークウッド』(ジョヴァンニ・アクート)を完成させ、

他に西壁の時計の文字盤と、ドーム下部のステンドグラス3枚をデザインしている。 


サンタ・マリア・ノヴェッラ作『大洪水と終息』

ジョルジョ・ヴァザーリによれば、

1445年にドナテッロに呼ばれ、

パドヴァのヴィタリーニ邸のフレスコ画の作成を行ったとされるが、

その他の資料によって確認されているものの、

初期の代表作とされるこれらのフレスコ画は現存していない。

1440年代に作成されたフレスコ画は、

サン・ミニアート・アル・モンテ教会と

サンタ・マリア・ノヴェッラ教会に残っている。

特にサンタ・マリア・ノヴェッラの『大洪水と終息』は、

彼の最高傑作として言及される。

遠近法を駆使した『サン・ロマーノの戦い』三部作が

いつごろ製作されたのかは不明だが、

晩年、1450年代か1460年代と推測されている。

晩年の彼は、ヴァザーリによれば、家に引きこもり、

貧しい暮らしをしたとされるが、実際には

それほど困窮はしていなかったとの指摘もある。

1475年12月10日に死去し、サント・スピリト教会に埋葬された。


【影響】

ウッチェロは、

15世紀のイタリア絵画を代表する人物の一人であり、

その評価は後世においても変わることはなかったが、

しばしば、遠近法の関心が彼の想像力を奪ったとの指摘をされることがあった。

画家というよりも数学者として位置づけられたことすらあるほどである。

また、同時代の画家であるマザッチョらに比べると、

時に不自然にさえ感じられる鮮やかな色使いは国際ゴシック様式の影響であるが、

それが写実性を重んじるルネサンス後期の画家たちにとってはあまり受け入れられなかった。

彼のゴシック的幻想と幾何学的世界の融合があらためて評価されるのは、

20世紀になってからである。


【主要作品】

1431年頃 大聖堂天蓋下部のステンドグラス(フィレンツェ)

1436年 『ジョン・ホークウッドの騎馬像』(フィレンツェ)

1443年 大聖堂西壁大時計の文字盤(フィレンツェ)

1447年 サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の『大洪水と終息』(フィレンツェ)

1450年頃 『サン・ロマーノの戦い』(フィレンツェ/ウフィッツィ美術館、ロンドン/ナショナル・ギャラリー、パリ/ルーブル美術館)

1460年頃 『聖ゲオルギウスの竜退治』(ロンドン/ナショナル・ギャラリー所蔵)

1465年頃 コルプス・ドミニ教会の祭壇画(ウルビーノ)



『サン・ロマーノの戦い』3連作 ・・・とは?


イギリス・ロンドン「ナショナル・ギャラリー 」



イタリア・フィレンツェ「ウフィッツィ美術館」



フランス・パリ「ルーブル美術館」

ウッチェッロ作『サン・ロマーノの戦い』


15世紀に入り、画家たちの一人ひとりが作品に独自性を明確に示し始めた。

それは、作者の個性を重視する考え方が人々のあいだに浸透してきたことを意味する。

こうした動向は、主題の広がりといったことにも現れる。

ウッチェッロの『サン・ロマーノの戦い』は、

当時としては非常に珍しく、同時代に起きた事件を扱ったものである。


【主題の特殊性】

3枚の大型パネルから構成されるこの連作は、

1492年のメディチ家の財産目録に

メディチ邸にあったと記されていたことから

この館が完成した後の1460年頃に制作されたと考えられていた。

しかしながら近年の文書記録の発見により

この作品がもともとはバルトリーニ家の所有であったことが判明し

フィレンツェの行政長官(プリオーレ)を務めた

リオナルド・バルトリーニが結婚を機に自宅を改装した

1438年頃に制作されたと見なされるようになったのである。


「サン・ロマーノの戦い」は、

フレンツェ軍が、シエナ軍を破り、

シエナとその同盟軍(ルッカ、ジェノヴァ、ミラノ)との争いに決着をつけたい戦いである。

それは、1432年6月1日に起きた。


この連作では、左パネルに、白馬に乗って

フィレンツェ軍を率いているニッコロ・ダ・トレンティーノ、

中央パネルに脇腹を槍で撃たれた

シエナ軍隊長ベルナルディーノ・デッラ・チャルダが、

そして右パネルにフィレンツェの援軍を指揮する

ミケレット・ダ・コティニョーラが表わされているとされている。

つまり左右からシエナ軍を挟みうちにしている様子が再現されている。


当時、フィレンツェでは町の威信をかけて1296年から

建て始めたサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂が

ブルネルスキの設計による大円蓋(クーポラ)が架けられたことで

ようやくその完成にめどが立ったところであった。

それに合わせて大聖堂内の壁面に

「カッシーナの戦い(1364年)」で傭兵隊長として勝利に貢献した

ジョン・ホークウッドの騎馬像を描くことを大聖堂造営局は決定する。

この仕事をウッチェッロは1436年8月1日に仕上げる。

町の信仰の中心である大聖堂内に

世俗の人物を描くことはきわめて異例のことだが、

大円蓋完成とともにフィレンツェの歴史を

振り返ろうとする機運が高まったということであろう。

『サン・ロマーノの戦い』は、まさにこうした流れのなかで制作された。


【独特な様式】

同時代の戦闘場面を描いている先行作例は、

フィレンツェでは、皆無といっていい。

ウッチェッロは『ジョン・ホークウッド騎馬像』を制作した時も

古代ローマの彫刻を手本にした可能性が高いが

『サン・ロマーノの戦い』でも

古代の作品を参考にしたのではないだろうか?

例えば、紀元前330年頃のオリジナル作品を

ローマ時代に忠実にコピーしたとされる

『イッソスの戦い』

B.C.330年頃のオリジナルをコピー ナポリ 国立考古学博物館


下から突き上げられた何本もの槍が画面上部を構成している事や

地面に武具を散乱させているところ

あるいは、脇腹を撃たれた人物や

お尻をこちらに向けた馬といったモチィーフが

ウッチェッロの連作と共通する。

このモザイクは当時、ポンペイの火山灰の下に埋まって居たので

画家が、直接の手本にしたということはありえない

これと似たような作品を発想源にした可能性は高い。


しかしながら、古代の戦闘図と比べると

明確な違いもそこには見て取れる。

ウッチェッロはこの作品の人物の多くを

兜や鎧で覆い、その顔の表情や体の形態や動きを隠しているのだ。

馬の表現でも、生命感や躍動感を消して木馬の様に見せており

空間においては、画面上部と下部を異なる視点から描いている。

下部の空間では、まるで石床のようにまっ平らな地面に

倒れた兵士や馬、折れた槍や方形の芝が

見る者に奥行きを感じさせるように意図的に配されている。

こうしたことから本連作は、

実際に起きた同時代の出来事が表されているにもかかわらず

戦いの激しさや残酷さがまったく感じられない戦闘図になっているのだ。

それは『イッソスの戦い』をはじめとする古代の作例とはまったく異なっている。

マザッチョは、

『貢の銭』で、聖書に記されたエピソードを

いかに現実に起きたかのように見せることに心血を注いだが

『サン・ロマーノの戦い』はそれとは反対に

同時代に起きた現実の出来事をまるで寓話のように表している。


一世紀ばかり後、ヴァザーリ(1550年)は、

ウッチェロが遠近法の研究にばかりかまけて

素描力を磨くことに時間をかけなかったことを嘆いているが

当時のフィレンツェ人は

ウッチェロの独特な描写も受け入れていたのではないだろうか。

天下のメデッチ家がなりふり構わずバトリー家から

この連作を「略奪」したのは

それがフィレンツェ史を飾る重要な事件を扱っているからだけでなく

ウッチェッロが創出した非現実的な空間や

まるで木製の人形や馬をちりばめたような摩訶不思議な描写に

強く魅了されていたからに違いない。


資料参照=「イタリア・ルネサンス美術史」さま、「ウィキペディア」さまより

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最終更新日  2017.08.30 00:00:32
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