浜松中納言物語 0
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「まったく見立たない所を用意」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。いまはただもう、あなたがおっしゃるようにしたいとは思います。今のように別々に暮らしていても見苦しいことと世間では噂している。ましてわたしがお邸に移ったら、噂は本当だったと人は見るでしょう。それが気になってと申し上げると、宮さまは、そのことは、私の方こそとやかく非難されるでしょうが、あなたのことを見苦しいなどと誰が見るでしょう。まったく見立たない所を用意してお知らせしましょう。 このように頼もしくおっしゃって、まだ暗いうちにお帰りになった。 女は、格子を上げたままでいたので、ただ一人端近にいても、どうしようとか、笑われるのではないかと、様々に思い乱れた。
2022.05.12
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「明けることのない闇夜にいる」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。心も癒やされるなどと考えたのですとおっしゃるので、女(和泉式部)は今さらそんな上流社会の暮らしなんてできるわけがないなどと思って一の宮さまにお仕えするのもはっきりお断りしたが、だからといってみ吉野の 山のあなたに 宿もがな 世の憂き時の かくれがにせむ古今集・読人しらず吉野山の彼方に住まいががあったらいいのに そうしたら世の中が嫌になった時の隠れ家にするのに導いてくれる人もいないし、このまま過ごすのも明けることのない闇夜にいる気持ちばかりするし、つまらない冗談を言ってくる男が多くいたから、世間ではわたしを悪い女だと言っているようだ。
2022.05.11
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「他に男がいる疑いは晴れるだろう」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。なんと言われても、宮さまの他に頼れる人も居ないので、ともかく宮さまのおっしゃるようにしてみよう。北の方はおられるが別々に住んでいらして、宮さまのお世話はすべて乳母が取り仕切っている。人目に立つように振る舞ったらよくないだろうが、それなりの目立たない所にいるなら、別になんということもないだろう。他に男がいるという宮さまのお疑いはきっと晴れるだろう。 どんな事も思い通りにならないと思いながら過ごしています。慰めには、今夜のように、あなたがたまにいらっしゃるのをお待ちしてお迎えするしかありません。
2022.05.10
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「空行く月がもどってくるように」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。忘るなよ ほどは雲居に なりぬとも 空行く月の めぐりあふまで拾遺集・橘忠基/伊勢物語十一段わたしを忘れないで あなたとの距離が空遠く離れていても 空行く月がふたたびもどってくるように いつか再びめぐり逢うまでというようになかなか逢えなくなるでしょう。もしおっしゃるような寂しい暮らしなら、わたしの邸にいらっしゃいませんか。北の方などもいますが、不都合なことはないでしょう。わたしはもともとこういう外出が似合わないせいか、誰もいない所で女性と逢うこともしない。仏のお勤めをするのさえ、一人っきりなので同じ心であなたとお話ができたら、心も癒やされるのではないか。
2022.05.09
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「人並みに扱わていないように思われた」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。しみじみとお話をされるうちに、いつもこのように物思いに沈んではっきり決めていたわけではないけれど、いっそのことわたしの所へいらっしゃい。世間の人もわたしがあなたのところへ通うのを悪く言っているそうです。時々伺うので、人に見られることもないけれど、それでも人は聞きづらいことを言うし、また何度もあなたに逢えないで帰るしかなかったときの辛さは、人並みに扱わていないように思われた。どうしようかと思ったときも何度かあるけれど、古風な心のせいかあなたとの仲を絶ってしまうのがとても悲しく思われてだからといって、こんなふうにいつも伺うことはできないし本当のことを誰かに聞かれて とめられたりしたらと思うと。
2022.05.08
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「手枕の袖が涙で濡れて寝れない」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 宮さまは邸に帰って、頼りにする男もいないようだと気の毒に思われて今、どうしていらっしゃいますかと言ってこられたので、そのお返事に今朝の間に いまは消ぬらむ 夢ばかり ぬると見えつる 手枕の袖今朝のうちにもう乾いてしまったでしょう ほんのわずか濡れたように見えたあなたの手枕の袖はと申し上げた。手枕の袖は忘れませんと言ったとおりで。おもしろいと思われて夢ばかり 涙にぬると 見つらめど 臥しぞわづらふ 手枕の袖ほんの少し涙に濡れたと思っていらっしゃるようですが 手枕の袖が涙で濡れて寝られないで困っています。 先夜の空の風情が身にしみて見えたせいで、宮さまのお気持ちが動いたのかあれ以後は女のことを気がかりに思われて、頻繁に女の所へ行かれて女の様子などをごらんになっていくうちに、男馴れした女ではなく、ただただ頼りなさそうに見えるのも、とても気の毒に思われる。
2022.05.07
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「月の光の中で涙が落ちるばかり」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。女はどんなこともどうしようもなく辛く思われて、お返事する気にもなれないので、なにも言わないで、ただ月の光の中で涙が落ちるばかりだが、宮さまはそれを愛しくごらんになる。どうしてお返事もなさらないのです。変な歌なんか申し上げたので不愉快に思われたのですね。かわいそうにとおっしゃる。どうしたのでしょうか、ただもうたまらなく心が乱れる気がして言葉が耳に入らなかったわけではないので、まあ、見ていてください。手枕の袖のお言葉を忘れる時があるかどうかをと冗談ごとに言い紛らわしてしみじみとした夜の風情も、こんなことを言っているうちに明けたのだろう。
2022.05.06
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「浮気な女だと悪くばかり言う」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。月は時々曇り、時雨の降る時、特別に二人のために作り出したようなしみじみとした情景なので、女の思い乱れている心にはぞくぞく寒気がするほど素晴らしいが、宮さまもそんな女の様子をごらんになり思う。人は浮気な女だと悪いことばかり言うが、おかしなことだ。こうしてわたしといるではないかなどと思われる。宮さまは女を愛しく思われて女が眠ったように思い乱れて横になっているのを揺り起こして時雨にも 露にもあてで 寝たる夜を あやしく濡るる 手枕の袖時雨にも夜露にもあてないように寝ている夜なのに 不思議にもわたしの手枕の袖が濡れる とおっしゃる。
2022.05.05
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「しみじみと心にしみる言葉」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。宮さまから、望み通りの歌だったと申し上げるのも、わたしが歌に通じているようで気が引けます。でも、あまりに気をまわし過ぎです。憂き世の中(辛いことの多い世の中)とあるのは。うち捨てて たび行く人は さもあらば あれまたなきものと 君し思はばわたしを捨てて旅に出る人なんてどうでもいい あなたさえわたしを二人といないと思ってくださるなら生きていけるでしょうと返事があった。 やりとりをしているうちに十月になり、十月十日頃に宮さまはやって来た。奥は暗くて恐いので、端近で横になり、しみじみと心にしみる言葉をいろいろとおっしゃるので、心に響かないことはない。
2022.05.04
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「あなたの面影が残っていてほしい」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。あなたがくださる歌だけがわたしを感動させるので、わたしの代りに一首詠んでくださいとある。女は、まあ、自慢して、いい気なことと思うが、代作などとてもできませんと申し上げるのも、生意気なようだ。おっしゃるような歌がどうしてわたしに・・・とだけ書いて惜しまるる 涙にかげは とまらなむ 心も知らず 秋は行くとも別れが惜しまれるわたしの涙に 秋が去るようにあなたがわたしから去っていっても あなたの面影が残っていてほしいおっしゃるままに代作をするなんて、気恥ずかしいことでと書いて紙の端に、それにしても、君をおきて いづち行くらむ われだにも 憂き世の中に しひてこそふれあなたを残して その方はどこへ行くのでしょう わたしでさえ あなたとの辛い仲をやっと生きていますのにと書いて送る。
2022.05.03
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「訪ねて行ったのに逢えなかった」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。よそにても 君ばかりこそ 月見めと 思ひて行きし 今朝ぞくやしき離れていても あなただけは月を見ているはずと思って訪ねて行ったのに 逢えなかった今朝が悔しくてならない門を開けてもらえなかったのが残念ですとあるので、やはり手習いの文を送っただけのことはある。 こんなことがあって、九月末ごろに宮からお手紙がある。このところご無沙汰しているお詫びなどが書いてあって、変なお願いですがふだん親しくしていた人が遠くへ旅立つので、その人が感動するにちがいない歌を一首送ろうと思うのです。
2022.05.02
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「わたしの袖も涙で朽ちてしまった」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。よそにても おなじ心に 有明の 月を見るやと たれに問はましどこかほかの所に居てでも わたしと同じ気持で有明の月を見ていると いったい誰に尋ねたらいいのかしら宮さまのところへでも送ろうかと思ったので、この手習いに書いた文をさし上げたところ、宮さまは少しごらんになって、しばらく考え物思いの間でもすぐに返事をしようと手紙をお遣わしになる。女は、なお外を眺めて端近の所に座っているときに返事を持って来たのであまりの早さに期待が外れた気がして開けてみると、秋のうちは 朽ちにけるものを 人もさは わが袖とのみ 思ひけるかな秋のうちにわたしの袖も涙で朽ちてしまったのに あなたはじぶんの袖だけが朽ちたと思っていたのですねとある
2022.05.01
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「この家の門を叩かせる人がいたら」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。ひとつに響く声を聞いていると、過去にも未来においてもこんな時はけっしてないと思われて、袖を濡らす涙のしずくまでがしみじみと身にしみて新鮮な様子がいつもとは違う感じがする。われならぬ 人もさぞ見む 長月の 有明の月に しかじあはれはわたし以外の人もきっとこう思って見るでしょう しみじみとした趣きは九月の有明の月に及ぶものはないと 今すぐ、この家の門を叩かせる人がいたら、どんなに嬉しいことだろう。いや、いったい誰がわたしと同じように夜を明かすというのか。
2022.04.30
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「人は皆安心して寝ているのに」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。草葉になぞらえた悲しい気持ちのまま、奥へも入らないで、そのまま端近の所に横になったが、少しも眠ることができない。人は皆安心して寝ているのに、わたしはこれはこうと決めることもできないで、じっと目を覚まして、ひたすら自分の運命を恨めしく思う。恨めしく思いながら横になっているうちに、雁がかすかに鳴いたのが人はこれほどには思わないだろうが、とても悲しく耐え難い気がしてまどろまで あはれ幾夜に なりぬらむ ただ雁がねを 聞くわざにしてうとうと眠ることもしないで ああ ただ雁の声を聞くだけで どれほどの夜が過ぎたのだろう雁の声を聞くだけで夜を明かすよりはと思って、妻戸を押し開けて外を見ると、大空に西へ傾いた月の光が、遠くまで澄み渡って見えるのに上空には霧がかかり、そんな中、鐘の音と鳥の鳴き声がひとつに響きあう。
2022.04.29
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「今にも消えそうな露のようなわが身」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 結び文を宮さまがごらんになり、風の音が強く、木の葉をすっかり散らしてしまうほど吹いているのが、いつもよりもの寂しく感じられる。空はどんよりと曇っているのに、ただほんの少しだけ雨がぱらぱらと降るのは、どうしようもなくわびしく思われて秋のうちは 朽ちはてぬべし ことわりの 時雨にたれが 袖はからましこんなに涙を流していたら 秋のうちに袖が涙でぼろぼろになるでしょう 冬になると必ず降る時雨のときは 誰の袖を借りたらいいのだろう悲しいと思ってもわかってくれる人もいない。草の色まで今までと違ってきたので、時雨(しぐれ)になるのはまだ先だというのに、早くも時雨を運んできたような風に、草が辛そうになびいているのを見ると今にも消えそうな露のようなわが身が危うく思われる。
2022.04.28
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「同じ心で眺めて物思いふける」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。消えぬべき 露の命と 思はずは 久しき菊に かかりやはせぬ消えてしまう露の命なんて思わないで なぜ長寿の菊にあやかろうとしないのですかまどろまで 雲居の雁の 音を聞くは 心づからの わざにぞありける眠らないで空飛ぶ雁の声を聞くのは あなた自身の心のせいですわれならぬ 人も有明の 空をのみ おなじ心に ながめけるかなわたし以外の人も この有明の空だけは 同じ心で眺めて物思いふけっていたのですね
2022.04.27
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「女は寝ないでそのまま夜を明かした」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。女は寝ないでそのまま夜を明かした。ひどく霧が立ち込めた空を眺めていたら明るくなってきたので、この夜明け前に起きた思いなどを紙に書いているといつものように宮さまからお便りがあるが、ただ、このように秋の夜の 有明の月の 入るまでに やすらひかねて 帰りにしかな秋の夜の有明の月が沈むまで 門の前に立っているわけにもいかないので 帰ってしまいました 女は、いやもう、ほんとうに、どんなにつまらない女に思っていらっしゃることかと思う。同時に、やはり季節の情趣を見過ごされなかった。あのしみじみとした美しい空の様子を確かにごらんになったのだと思うと、嬉しくて、さっき手習いのように書いたのを、そのまま結び文にして宮さまにさし上げた。
2022.04.26
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「門を叩く音がしなくなった」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。一体、誰だろうと思って、そばに寝ている侍女を起こして下男に尋ねさせようとしたけれど、侍女はすぐには起きない。やっと起こしても、暗いので、あちこちにぶつかって騒いでいるうちに門を叩く音がしなくなった。帰ったのだろうか。寝起きが悪いと思われたにちがいないけれど、それではわたしには悩みがないようにとられる。でも、わたしと同じようにまだ寝なかった人がいたとは、誰だろうと思う。やっと下男が起きてきて、誰もいません。聞き間違いをなさって夜中に私を慌てさせなさるとは、人騒がせなお邸の女たちだとまた寝てしまった。
2022.04.25
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「季節のせいかなんとなく心細く」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 九月二十日過ぎの有明の月(夜明けに残っている月)のころ宮さまはお目覚めになって、ずいぶんご無沙汰してしまったなと思う。ああ、今頃あの人は私が見ているこの月を見ているだろうか。それとも誰か来ているのかなと思われるものの、いつものように小舎人童だけをお供にしてお越しになって、童に門を叩かせておられる。女は、目を覚ましていて、いろいろなことを思い続けて横になっているところだった。だいたいこの頃は、季節のせいかなんとなく心細く、いつもより寂しく感じて、物思いにふけっていた。
2022.04.24
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「雲が流れ風が激しく吹くばかり」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。嘆きつつ 秋のみ空を ながむれば 雲うちさわぎ 風ぞはげしきお逢いできないのをため息をつきながら秋の空を眺めていると 雲が流れ風が激しく吹くばかり お返事は、秋風は 気色吹くだに 悲しきに かき曇る日は いふかたぞなき秋風は ほんのわずか吹くだけでも悲しくなるのに 空が一面に曇る日は 心まで閉ざされたようで なんとも言いようがありません宮さまは、なるほどそのとおりだろうと思われるが、いつものように、なにもないままむやみに日だけが過ぎてゆく。
2022.04.23
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「山を出て俗世に帰ってきました」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。お返事は、ただこのように、山を出でて 暗き道にぞ たどり来し 今ひとたびの あふことによりもう一度あなたに お逢いするために山を出て 悩みの多い俗世に帰ってきました と書かれてあった。八月末頃、風が激しく吹いて、野分らしい雨などが降るときに女はいつもより何となく心細くて物思いに沈んでいると宮さまから手紙がある。いつものように季節の情趣を知っているかのようにお便りをくださったのでこのところお見えにならない罪も許してあげたくなる。
2022.04.22
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「女は石山寺を出て都に帰った」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。宮さまは、あの人が思いもしないときに行ってみたいと思われるがどうしてそんなことができるだろう。身分柄できるわけがない。こんなことがあってから、女は石山寺を出て都に帰った。宮さまからさそひみよ と書いてあったのに、急に山から出てしまわれたからあさましや 法(のり)の山路に 入りさして 都の方へ たれそひけむあきれてしまった 仏の通の山籠りを途中で止めてしまうなんて 都に帰るようにと誰が誘ったのでしょうとさしあげる。
2022.04.21
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「深い谷が浅くなってしまうだろうよ」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 世の中の 憂きたびごとに 身を投げば 深き谷こそ 浅くなりなめ世の中が辛いと感じるたびに、人が谷に身を投げていたら、深い谷が浅くなってしまうだろうよ。 古今集・読人しらずと冗談をおっしゃってきたので、ただこのように関山の せきとめられぬ 涙こそ あふみのうみと ながれ出づらめあなたとのことを嘆いて堰き止められないわたしの涙が 近江の湖の水となって流れ出ることでしょうと書いて、紙の端にこころみに おのが心も こころみむ いざ都へと 来てさそひみよわたしの山籠りの決意がどのくらいか試してみましょう あなたも本気なら ここへ来て都に帰ろうと誘ってみてくださいと
2022.04.20
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「山籠りしようと思われたとしても」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。宮さまは童に、疲れていても、もう一度行ってきなさいとおっしゃって、問ふ人やたれ とは、あきれたことをおっしゃる。たづね行く あふさか山の かひもなく おぼめくばかり 忘るべしやはあなたを尋ねて 男女が逢うという逢坂山を越えてお便りした甲斐もなく 忘れたふりをなさっていいのでしょうかそれに都へは いつか打出の だなんて憂きにより ひたやごもりと 思ふとも あふみのうみは うち出てを見よ辛いことがあってひたすら山籠りしようと思われたとしても 打出の浜から近江の湖を見て わたしに逢いに帰ってきてください
2022.04.19
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「逢坂の関を越えてまで」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。私を仏道の妨げとまでは思われないでしょうが、後に残して行かれたのが辛くてとあって関越えて 今日ぞ問ふとや 人は知る 思ひたえせぬ 心づかひを逢坂の関を越えてまで 今日わたしがお便りすると思われましたか わたしの絶えることのないあなたへの想いをわかってくださいいつ山をお出になるのですかとある。 近くにいても、めったにお便りをくださらず不安にさせられるのにこのような所までわざわざお便りをくださったのが、女は嬉しくて、あふみぢは 忘れぬめりと 見しものを 関うち越えて 問ふ人やたれ近江にいるわたしをお忘れのようだと思っていましたけれど 逢坂の関を越えてお便りになさったのはどなたでしょう いつ山を出るのかとおっしゃいましたね。いい加減な気持ちで山に籠ったわけではないので山ながら 憂きはたつとも 都へは いつか打出の 浜は見るべき山にいて辛いことがあったとしても いつここを出て打出の浜琵琶湖畔を通って都へ帰ることがあるでしょうかと申し上げる。
2022.04.18
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「女は都のことばかり恋しくて」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。今日は日が暮れた。明日の朝早く行けとおっしゃって手紙をお書きになり童にお渡しになり、童が石山に行ったところ、女は、都のことばかり恋しくて、こういう参詣にしても宮さまを知る前とはすっかり変わってしまったわたしだと思うと、ひどく悲しい。仏の御前ではないが、心を込めてお祈りしていたときに、高欄の下のあたりに人の気配がするので、変に思って見下ろすと、いつもの童だった。はっとするほど思いがけない所に来たので、どうしたのと尋ねさせると宮さまのお手紙をさし出したので、いつもより急いで開けて見るととても深いお心からお籠りになったのに、どうしてこういうことで ともおっしゃってくださらなかったのです。
2022.04.17
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「秋の夕暮れにお逢いしたときのこと」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 宮さまのお返事は、このところご無沙汰しています。だが人はいさ われは忘れず ほどふれど 秋の夕暮 ありしあふことあなたはどうなのかわからないけれど わたしはどんなに時が経っても忘れたりはしない あの秋の夕暮れにあなたとお逢いしたときのことをとある。とりとめもない、頼りにもならないこんな歌のやりとりで宮さまとの仲を慰めているのも、考えてみれば情けないことで。 こうしているうちに八月にもなったので、女は、淋しさが慰められるかも大津市の石山寺に参詣して七日間ほど籠っていようと思って出かけた。宮さまは、長い間逢ってないなと思われて、手紙を遣わそうとなさると、小舎人童が、先日お伺いしましたところ、この頃は石山寺にいらっしゃるそうですと右近の尉を介して申し上げた。
2022.04.16
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「お便りもくださらないので」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。宮さまは、とりとめもない話や頼りない話をなさって、お帰りになった。 その後、何日も経ったのに、待ち遠しくてたまらないほどお便りもくださらないので手紙を差し上げた。くれぐれと 秋の日ごろの ふるままに 思ひ知られぬ あやしかりしも悲しみに沈んで 秋の何日かが過ぎてゆくにつれて よくわかりました 歌にあるように秋の夕暮れは不思議なほど人恋しいと。 いつとても 恋しからずは あらねども 秋の夕べは あやしかりけりいつといって恋しくないときはありませんが 秋の夕暮は不思議と人恋しいのです なるほど人というものはと申し上げた。古今集・読人しらず
2022.04.15
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「とても恥ずかしかったけれど」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。可愛いあなた、寝覚めだなんて。人しれず もの思ふときは 難波なる 葦の白根の しられやはする誰にも知られないように物思いをしているときは 難波にある葦の白根ではないけれど 眠られない苦しさを誰が知っているでしょう古今六帖・紀貫之眠ることもできないと言います。わたしの物思いはいい加減ではない。荻風は 吹かば寝も寢で 今よりぞ おどろかすかと 聞くべかりけるわたしを招くという荻風がほんとうに吹くのなら 一晩中眠らないで 今吹くか今招いてくださるかと聞けばよかった こうして二日ほど経って、夕暮れに、突然宮さまが車を引き入れ降りていらっしゃったので、まだこんな早い時刻にお逢いしたことがないからとても恥ずかしかったけれど、どうしようもない。
2022.04.14
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「なぜお便りを下さらないのです」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。皮肉を言っても、やはり七夕を見過ごさなかったのだと思うと嬉しくて、ながむらむ 空をだに見ず 棚機に 忌まるばかりのわが身と思へばあなたが眺めている空さえ見る気になれない 年に一度の七夕なのに あなたから嫌われていると思うとと書いた。書いたのをご覧になるにつけても、宮さまは、やはり思い切る事はできないと思われる。 七月の末ごろに、宮さまから、ずいぶんご無沙汰していますがどうして時々でもお便りをくださらないのです。わたしなど人並みにも思っていただけないようでとあるので、女は寢覚めねば 聞かぬなるらむ 荻風は 吹かざらめやは 秋の夜な夜な物思いで夜中に目覚めたりなさらないから お聞きにならないのでしょうか あなたをお招きする荻風が 秋の夜ごと吹かないことがあるでしょうかと申し上げると、すぐに歌を書かれた。
2022.04.13
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「一人悲しく天の川を眺めることに」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 こうしているうちに、七月になった。七日には、色好みな男たちから織女や彦星などを詠んだ歌がたくさん届くけれど、目にも入らない。こういう時には、宮さまが機会を逃さないで歌を送ってくださったのに本当にわたしのことを忘れてしまわれたのかしらと思っているときに宮さまからお手紙がある。見ると、ただこのように思ひきや 棚機つ女に 身をなして 天の河原を ながむべしとは思いもしなかった じぶんを織女になぞらえて 一人悲しく天の川を眺めることになろうとは 年に一度の逢瀬もままならないとある。
2022.04.12
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「磯から離れてゆく小舟のよう」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。よしやよし 今はうらみじ 磯に出でて 漕ぎはなれ行く 海人の小舟をどうでもよい 今はもう恨んだりしない 磯から離れてゆく尼の小舟のように わたしから離れていくのだから とある。「「もも」がよく休憩している我が家の玄関先」あきれるほどひどい噂を聞いていらっしゃるのに、お返事をするのも気がひけるが、今回だけはと思って袖のうらに ただわがやくと しほたれて 舟ながしたる 海人とこそなれ袖の浦でひたすら塩焼きしているうちに舟を流してしまった海人のように 私も涙で袖を濡らしているうちにあなたを失ってしまったと申し上げた。
2022.04.11
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「わたしを疑ってしまわれた」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。「桜の花びらの絨毯の上で気持ちよさそうな(もも)」それがよりによって、男が通っているなんてとんでもない噂のせいでわたしを疑ってしまわれたとはと思うと、じぶんまでも嫌だと思う。いく世しも あらじわが身を なぞもかく 海人の刈藻に思ひ乱るるそう長くは生きられないわたしが どうしてこう思い乱れるのだろう古今集・読人しらず と嘆いていると、宮さまからお手紙がある。この頃は、どういうわけか気分が悪くて、いつかもお訪ねしたのですが都合の悪い時ばかりで帰るしかなかったので、まったく人並みに扱われていない気がしていた。
2022.04.10
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「仲が絶えないでいたいと思っていた」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 小舎人童の樋洗童とはいつも仲良くしているので、話などして、宮さまからのお手紙はあるのと聞くと、小舎人童は、文はないねという。先夜お越しになった時に、門に車があったのをごらんになってからお便りもなさらないようだ。他に男がいて通っているような噂を宮さまは聞かれたらしいなどと言って帰っていった。 樋洗童が、小舎人童がこんなことをと女に申し上げるとずいぶん長い間、あれこれ煩わしいことを申し上げることもなく特におすがりすることもなかったけれど、時々先夜のようにわたしのことを思い出してくださるかぎり、仲が絶えないでいたいと思っていた。
2022.04.09
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「寂しい心を慰めるにはいい」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。やはり本当に素晴らしいお方。わたしのことをいけない女だとお聞きになっているのを、なんとかして考え直していただきたいと思う。 宮さまも話し相手として悪くなく、寂しい心を慰めるにはいいと思われる。宮さまのそばに仕える女房の一人が、この頃は源雅通がお通いのようです。源雅通(幼少時に父を失い、叔父の右大臣源雅定の養嗣子となる)昼間もいらっしゃるとかと言うと、もう一人が、治部卿(源俊賢・みなもとのとしかた)もいらっしゃるとかと口々に申し上げるので、宮さまは、あまりにも軽薄な女だと思われて長い間お手紙も書かれない。
2022.04.08
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「愛しく思われて部屋に上がる」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。ほかの人が言うより子供っぽいので、宮さまは愛しく思われて、可愛い人とおっしゃり、しばらく部屋に上がって、出て行かれるときにあぢきなく 雲居の月に さそはれて 影こそ出づれ 心やは行くしかたなく空行く月に誘われて出てゆくのですが それは体だけで 心はあなたのところにずっといますとおっしゃって、お帰りになった。その後、扇にのせてさし出された手紙を見るとわれゆゑに 月をながむと 告げつれば まことかと見に 出でて来にけりわたしのせいで月を眺めているとお知らせになったので 本当かどうか確かめに来たのですと書いてある。
2022.04.07
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「あの車が誰の所に忍んで来たのか」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 とても優雅である女の近くに寄っていらして、今夜はこれで帰ります。あの車が誰のところに忍んで来たのか、つきとめようと来たのです。明日は物忌みと言っているから、家にいないのもおかしいと思うのでとおっしゃってお帰りになろうとするのでこころみに 雨も降らなむ 宿すぎて 空行く月の 影やとまるとためしに雨でも降ってくれればいいのに わたしの家を通り過ぎてゆく月のようなあなたが 雨宿りしてくださるかもしれないから
2022.04.06
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「庭の植え込みの美しい中」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。宮さまはなにもおっしゃらないで、ただ扇に手紙を置いて、あなたのお使いが返事を受け取らないで帰ったのでとおっしゃって扇を差し出された。女は、お話ししようにも離れすぎていて具合が悪いので扇をさし出して手紙を受け取った。宮さまも部屋に上がろうと思われる。庭の植え込みの美しい中をお歩きになってわが思ふ 人は草葉の 露なれや かくれば袖の まづそほつらむわたしが恋しく思っている人は草葉の露なのだろうか あなたを思うとすぐに涙で袖が濡れる とおっしゃる 拾遺集・読人しらず
2022.04.05
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「奥へ行き簾を下ろして座っている」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。樋洗童(ひすましわらわ、浴室・便器などをあらう少女)に右近の尉(うこんのじょう・宮の側近)に渡してきてと言い使いにやる。宮さまは御前に人々を呼んで、お話をしていらっしゃるときだった。人々が退出してから、いつものように右近の尉が手紙をさし出す。車の準備をさせなさいとおっしゃって、お越しになった。 女は、まだ端近で月を眺めていたところ、誰かが入ってきたので奥へ行き簾を下ろして座っていると、あのいつお逢いしてもそのたびに見なれることのないお姿の宮さまで、直衣など着なれて柔らかくなっているのまで、素晴らしく見える。
2022.04.04
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「月を見ても気がふさぐ」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。それを宮さまが言い訳にとられると思うと気が引けて、あふことは とまれかうまれ 嘆かじを うらみ絶えせぬ 仲となりなばお逢いすることはどのようになっても嘆きませんが あなたと恨みが絶えないような仲になったら 嘆かないではいられないとだけ申し上げた。 こうして、その後も宮さまの訪れはない。月の明るい夜、横になって、かくばかり 経がたく見ゆる 世の中に うらやましくも すめる月かなこれほどまでに過ごしにくい世の中で 羨ましいほどに澄んでいる月拾遺集・藤原高光 月を見ても気がふさぐので、宮さまに歌を送る。月を見て 荒れたる宿に ながむとは 見に来ぬまでも たれに告げよと月を見て荒れはてた宿で物思いにふけっていることをあなたは見に来ないとしても あなたのほかに誰に知らせたらいいのでしょう
2022.04.03
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「誰が心変わりなどするものですか」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。君をこそ 末の松とは 聞きわたれ ひとしなみには たれか越ゆべきあなたこそ浮気なお方と聞いています あなたと同じように誰が心変わりなどするものですかと申し上げた。宮は、先夜のことをなんとなく不愉快に思われて、長い間お手紙もくださらなかったが、こんな歌を送ってこられた。つらしとも また恋しとも さまざまに 思ふことこそ ひまなかりけれあなたを薄情だとも恋しいともさまざまに思って 心の休まるときがない 女は、弁明したいことがないわけではない。
2022.04.02
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「誰かがありもしないことを告口したの」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。松山に 波高しとは 見てしかど 今日のながめは ただならぬかなあなたが浮気な方とは知っていましたが 昨夜はっきりと見た辛さは 今日の長雨のように並大抵のものではない 君をおきて あだし心を わが持たば 末の松山 波も越えなむあなたを忘れて浮気心を私が持ったとしたら あの波の越える筈のない末の松山を波も越えてしまうでしょう とある。古今集・東歌 ちょうど雨が降っている時だった。女は、わけがわからない。誰かがありもしないことを告口したのかしらと思って
2022.04.01
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「別れてしまおうとは思われなかった」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。女の家は家族があちこちの部屋に住んでいるので、宮さまは妹の所へ来た人の車を見て、車があるから他の男が来ていると思われる。宮さまは不愉快に思うが、それでもさすがに、別れてしまおうとは思われなかったので、お手紙を遣わす。昨夜あなたをお訪ねしたことをお聞きになりましたか。わたしがお訪ねしたことさえもご存じなかったと思うと、ひどく悲しいとある。
2022.03.31
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「あなたがいらっしゃらないから」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。いつもより心惹かれるうえに、宮さまのお屋敷にいたあの夜も月が明るかったので、誰かに見られただろうかと思い出されるときだった。ひと夜見し 月ぞと思へば ながむれど 心もゆかず 目は空にしてあの夜あなたと一緒に見た月だと思って眺めていますが心は晴れず 目もうつろです あなたがいらっしゃらないからと申し上げた。宮さまの訪れもなく、なおも一人でぼんやり月を眺めているうちに虚しく夜が明けた。次の日の夜、宮さまは女のところへ行かれたが女はわからなかった。
2022.03.30
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「ごじぶんもそっと車にお乗りになり」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。ごじぶんもそっと車にお乗りになり送ってこられた。帰る途中、こんなふうにお連れするときは、必ず来てくださいとおっしゃるので、そういつもはと申し上げる。宮さまは家まで送ってこられ、お帰りになった。しばらくしてお手紙がある。今朝は鳥の鳴き声で起こされて、憎らしかったので殺してやりましたとお書きになって、鳥の羽根に手紙をつけてよこした。殺しても なほあかぬかな にはとりの 折ふし知らぬ今朝の一声殺してもまだ気が晴れない にわとり二羽鳥なのに二人の気持ちも察しないで鳴いた今朝の一声は という内容。感想)今の時代なら虐待になり書いていても大丈夫かと思った。
2022.03.29
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「宮さまは車でいらっしゃった」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。今夜はあなたの家が方塞がり(忌む方角)になっているから泊まれない。お迎えに行きますとお返事がある。ああ、みっともない、毎晩の外出はと思うけれど、宮さまは昨夜のように車でいらっしゃった。車を寄せて、早く、早くというので、女は、本当にみっともないことをと思いながらも、部屋からにじり出て車に乗ると、宮さまは昨夜の所へ行ってお話をされ、宮の北の方(藤原済時の次女)は、宮さまが父君の冷泉院のお邸に行かれたものと思っていらっしゃる。 夜が明けると恋ひ恋ひて まれに逢ふ夜の あかつきは 鳥の音つらき ものにざりけりどうしようもなく恋しくて ようやくあなたと一緒になれた夜の夜明けに鳥がお別れの 時を知らせて鳴く声は がまんできないものだ古今六帖・閑院大臣 とおっしゃる。
2022.03.28
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「むなしく夜を明かしたとき」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 お返事はいかにとは われこそ思へ 朝な朝な 鳴き聞かせつる 鳥のつらさはどんなに辛いかはわたしこそ知っています 毎朝毎朝 あなたのお越しがなく むなしく夜を明かしたときに鳴いて知らせる鳥の声を聞く辛さはと思うにつけても、憎くないことがあるでしょうかと書いた。 二、三日ほどして、月のひときわ明るい夜、女が端近くに座って月を見ていると、宮さまから、どうしています。月はごらんになっていますか とお手紙があった。わがごとく 思ひは出づや 山の端の 月にかけつつ 嘆く心をわたしと同じように先夜のことを思い出していらっしゃいますか わたしは山の端に沈んでゆく月になぞらえて あなたにお逢いできないのを嘆いています。
2022.03.27
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「絶対にそんな話は聞きません」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 女は、帰る道すがら、不思議な外出で、人はどう思うのだろうと思う。明け方の薄明かりの宮さまの姿が、ひと際美しく見えたのも、思い出された。宵ごとに 帰しはすとも いかでなほ あかつき起きを 君にせさせじ毎晩 夜遅くお帰しすることはあっても これからはやはり辛い早起きだけはあなたにさせたくありませんと書いたので、宮さまから朝露の おくる思ひに くらぶれば ただに帰らむ 宵はまされり朝露降りた早朝にあなたをお送りするよりも何もせずに帰らされる晩の方がつらさはまさっておりましたよ、絶対にそんな話は聞きませんからね
2022.03.26
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「誰もいない渡り廊下に車を寄せ」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。人に知られたらと心配しながら行くが、夜もすっかり更けていたので気づく人もいない。宮さまは誰もいない渡り廊下に車をそっと寄せてお降りになった。女は、月がとても明るいので車から出たくなかったが宮さまが強引に降りなさいといわれるので、みっともないと思いながら降りた。どうです。誰もいない所でしょう。これからはこのようにお逢いしましょう。あなたの家だと、誰か来ているかもしれないと思うと、気がひけてとお話をされ、夜が明けると、車を寄せてわたしをお乗せになった。家までお送りしたいけれど、明るくなったら、外泊したと誰かに思われるのもいやだからとおっしゃり、その邸にお残りになった。宮さまが連れだしたのは、宮さまの邸のどこかであることがわかる。
2022.03.25
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「やっと女のところへお越しになって」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。身分が低くそっけない女だが、でも、いいところもあった。ここへ呼んでそばに置こうかと思われるけれど、そんなことをしたら今より世間の評判が悪くなるだろうと思い乱れるうちに女から遠のいた。 宮さまは女のところへお越しになり、あきれるほど思いがけなくご無沙汰した事を冷たいとは思わないで下さい。これもあなたのせいだと思います。このようにお訪ねすることはよくないと思っている男たちが大勢いると聞いたので、わたしも辛くて。それに世間体もあるので遠慮している間に、日数が経ってしまったと真剣にさあ、行きましょうと話され、今夜だけは誰にも知られないところがあります。そこでお話でもしましょうと言い車を寄せて無理矢理乗せるので、女は、何が何だかとにかく車に乗った。
2022.03.24
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