つきあたりの陳列室

つきあたりの陳列室

2008.02.09
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カテゴリ: Book



これら初期作品集の絵柄や台詞まわしなどからは,岡崎京子や吉田秋生や大島弓子や原律子なんかを連想しました.でもそれらの誰とも違うのは,誰よりも素っ気無くて,ニヒリスティックで,何かを諦めている節がある処です.

80年代後半になって,「棒がいっぽん」に収められてる短篇になると,絵柄は安定するとともに何やら異次元の世界を構築するのですが,初期のこの不安定さもまた格別です.あまり安易に使いたくない言葉だけど,キレてます.真綿のように優しく包みこむ剃刀です.

*

私は娘の親に対する気持ちをよく知りません.でも娘から見た母の姿をこれほど飽くことなく描いた高野文子の漫画を読んで,世間の無数の母と娘の間に起こったこと,起きなかったことについて,何やら感慨めいたものを感じて,そして何やら遠く手が届かない徒労感を感じて,また繰り返し読んでしまいます.

T.capi.02


いちばん好きな作品は真夏の陰影に消えて溶けそうな女の子の話,「玄関」.または魔法の国を思い描く大人びた女の子の話,「うらがえしの黒い猫」.

そして「花」「ふとん」「たあたあたあと遠くで銃の鳴く声がする」といった,寓話風の短い作品群がどれもこれも好きです.作者は漫画家であるより先にポエトリーリーダーなのでしょうか.

ふすま からかみ かさかさ鳴った 
 たたみを すべる 足音かすか

(「ふとん」)

静まりかえった暗闇の中で 
 シーツのこすれるおとは”さようさよう”と聞こえるような気がする

(「うらがえしの黒い猫」)


それから,「はいー背筋を伸してワタシノバンデス」「うしろあたま」「あぜみちロードにセクシーねえちゃん」といった,思春期のアンバランスな自我を絶妙なバランスでまとめきった短篇たち.

一番奇妙なのは「午前10:00の家鴨」です.モノローグが「歌われて」いて,一体何が起こっているのか理解するのに時間がかかりました.ああ面白い.

タイトルもすごい.一番長い題は「方南町経由新宿駅西口京王百貨店前行」です.「サージェントペパーズロンリーハーツクラブバンド」とか「アーサー,もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡」とかを目にしただけでぞくぞくしてしまう方は,取りあえず読んでみた方がよろしいでしょう.

カバーイラスト,そのデザインもまた格別です.買って良かったー.






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Last updated  2008.02.09 23:30:44
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inalennon @ Re[1]:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子(09/19) フィンちさん >この世は なんてままなら…
フィンち@ Re:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子 「人生のままならなさ」への強烈な疑問と,…
inalennon @ Re:4年はあっという間(03/04) ハオさん >バーチュー&モイヤー組見…
ハオ@ 4年はあっという間 バーチュー&モイヤー組見ました。 優雅…

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