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実母と死別し、再婚した家族と反りが合わず、母方の祖母と暮らしていた聡里。ある事をきっかけに、彼女は獣医を目指すようになりますが、獣医となる為の数々の試練、そして祖母の死・・エピローグの部分を読み終えた時、「生きる」とは何なのかを考えさせられました。
2024年08月31日
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表紙素材は湯弐様(ID:3989101)からお借り致しました。「FLESH&BLOOD」「天上の愛地上の恋」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。海斗とアルフレートが両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。その日は、大雪が降っていた。「まさかこんなに降るなんてねぇ。」「こんなに毎日降るんじゃ、商売上がったりだよ。」 凍てつく寒さの中、裸足でテムズ川の泥を漁っている泥ひばり達がそんな事を話していると、一人の少年が甲高い悲鳴を上げた。「姉ちゃん、大変だよ~!」「どうしたんだい、アーチ―?」「あ、あれ・・」 そう言って少年が指した先には、男性の腐乱死体があった。「見るんじゃないよ、アーチ―!」 腐乱死体の身元は、所持品ですぐに判明した。 彼は、アーリントン子爵家の執事長・アーサーだった。 彼の死因は、後頭部を何者かに殴られた事による撲殺だった。 アーサーの所持品は、金の懐中時計だけだった。 彼に一体何があったのか―それは誰も知る由がなかった。「あぁ寒い、こんなに寒いと客が来るのかねぇ。」「そうだねぇ。」 旅芸人の一座の女達がそんな事を言いながら薪を暖炉へと投げ入れていると、一人の少女が彼女達の前を通り過ぎていった。「あらあの子、見ない顔だね。」「あぁ、あんたは初めてあの子を見るんだっけ?あの子は、数週間前にここへ来た新入りよ。」「へぇ・・「カイト、これから洗濯しに行くの?」「はい。」「風邪をひかないようにね!」「わかりました。」 海斗は先輩の女達に向かって頭を下げると、洗濯場へと向かった。 そこは、川に面した人気がない所だった。 さっさと終わらせてしまおうと、海斗は洗濯物が入った籠に水を浸した後、黙々と洗い始めた。 暫く経つと、近くの叢の方から、怪しい物音が聞こえた。(何だろう?) 海斗が嫌な予感を感じ、洗濯を終えてそのまま自分のテントへと戻ろうとした時、叢から一人の男が出て来た。 その男は、全身血塗れだった。「助けてくれ・・」「しっかりして下さい!」 海斗は気絶した男を抱えながら、女達の元へと戻った。「カイト、どうしたの・・って、誰なのその男!?」「知りません、急に洗濯場に現れて・・」「とにかく、“先生”を呼びましょう!」 女達は気絶した男を二人がかりで近くのテントへと運ぶと、“先生”を呼びに行った。「どうした?」「この人、血塗れで倒れていて・・」「安心しな、これは全部返り血だ。」“先生”ことクリストファー=マーロウはそう言うと、気絶した男をベッドに寝かせた。「診察するから、お嬢さん方は出て行ってくれ。」「わかったよ。」「先生、後でね。」 マーロウが男の服を脱がした時、彼は低く呻いて灰青色の瞳を開けた。「お、気が付いたか?」「ここは、何処だ?」「ここは、シリウス座の医務室だ。お前さん、名前は?」「俺は・・」 男が自分の名を思い出そうとした時、激しい頭痛に襲われた。「無理に思い出さなくてもいい。今お前さんに必要なのは、休養だ。」「わかった・・」 男はそう言うと、目を閉じた。「“先生”、どうだったの?」「大丈夫だ。だが、記憶喪失らしい。」「記憶喪失?」「あぁ。彼を診察しようとしたら、後頭部を何者かに殴られたような傷跡があった。その所為で海馬に強いダメージが・・」「海馬?」「頭の中で、人の記憶を司る部分だ。その部分が、誰かに殴られた事によって、自分の名前を思い出せない程の強いダメージを受けたんだ。」「治るのかい?」「今すぐに、という訳にはいかないが、時間が経ったら治るだろう。」「そう。」 そんな事をマーロウ達が話している時、医務室の中で何かが倒れる音がした。 慌ててマーロウが中に戻ると、ベッドに寝かせられていた男が床に倒れて呻いていた。「おい、大丈夫か!?」「俺に・・構うな。」「そんな怪我をして何処へ行くんだ?」「母さんを、助けないと・・」 男はそう言って気絶した。 彼がどのような事情を抱えているのかは知らないが、彼の治療を第一に考えなければならない―マーロウは溜息を吐きながら、男を再びベッドへと寝かせた。 夜になり、海斗達は公演の準備を慌しく始めた。「カイト、もうすぐ出番だよ!」「わかりました!」 慌しく化粧を終え、衣装に着替えた海斗が舞台に現れると、客席は歓声に包まれた。「皆様、お待たせ致しました!麗しの舞姫・カイトの舞をご覧あれ!」 軽快な音楽と共に海斗が踊り出すと、観客達は歓声を上げた。「今日もお疲れ様。みんな、集まってくれ!」 公演の後、団長・ユリウスは団員達を集めた。「実は、次の公演先がロンドンに決まった!」 団員達から、オーッという歓声が上がった。「明日は朝が早いから、しっかり休めよ!」「はい!」 海斗が自分のテントで荷造りをしていると、衣装箱の中から見慣れないペンダントを見つけた。 それは、美しい輝きを放っているブルー・ダイヤモンドのペンダントだった。(誰のだろう?) 海斗はペンダントを首に提げると、荷造りを終えてそのままベッドで眠った。 その頃、ロンドン・イーストエンドにある酒場では、一人の男が安酒を飲みながら誰かを待っていた。 暫くすると、一人の娼婦が入って来た。「待たせたね。「あの男は始末したぜ。」「そう、ご苦労様。」 娼婦はそう言うと、金貨が詰まった袋を男に手渡した。「“彼”をすぐに見つけ出して。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月30日
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期間限定のキャラメルコーン和栗味、後味がしつこくなくて美味しかったです。
2024年08月29日
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加藤知子先生の「天上の愛地上の恋」に少し登場していた皇太子ルドルフ様の一人娘・エリザベートことエルジィの波乱万丈な生涯を描いた伝記。父と同じ自由主義思想を持ち、「赤い皇女」と呼ばれた彼女は、最期までハプスブルク家の誇りを持って生きたのですね。実は、エルジィの父・ルドルフ皇太子様をモデルにした「天上の愛地上の恋」に高校時代にハマり、一度この本を読んでいたのですが、また再読したくて購入して先程読了しました。宝塚歌劇で舞台化されてもいいくらい、ドラマチックな生涯でした。
2024年08月28日
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「ラプラスの魔女」の関連作。今回も読み応えがありました。
2024年08月27日
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表紙素材は、mabotofu様からお借りしました。「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「広島へ行くぞ。」「は?」「そんな顔をするな。3年前のようなプライベート旅行ではなく、今回の旅行は公務のひとつだ。」「そうですか。ですが、何故わたしも一緒に・・」「それは、お前がわたしの伴侶だからだ。漸く一緒になる事が出来るんだから、この際、わたし達の関係を大々的にアピールしないとな。」「は、はぁ・・」 こうしてアルフレートは、ルドルフと共に広島へと向かった。「日本の夏は、相変わらず暑いな。」「ええ・・」 東京駅から広島駅へと向かう新幹線の中で、二人がそんな話をしていると、ルドルフがタブレットの画面を見て飲んでいたコーヒーを噴き出しそうになったので、アルフレートは慌てて彼の背中を擦った。「どうかなさったのですか、ルドルフ様?」「いつの間にか、日本でわたしのファンクラブが出来ていたようだ。」 ルドルフはそう言うと、アルフレートにタブレットの画面を見せた。 そこには、ハートマークで囲まれたルドルフの写真が表示されていた。「ルドルフ様は、“昔”から女性にモテますからね。」 動揺したルドルフとは違い、アルフレートの反応は淡白なものだった。「アルフレート、もっと、こう・・何かあるだろう?」「え?わたしが嫉妬してタブレットを壊した方が良かったですか?」「もういい!」 ルドルフはそう言ってアルフレートにそっぽを向いた。 今も“昔”も、彼は3歳年上のお兄様には敵わないのであった。「きゃ~、ルドルフ様~!」「ルドルフ様、こっち向いて~!」 広島駅でルドルフ達を待っていたのは、彼らを歓迎する市民達の姿だった。「やはり、ルドルフ様は女性にモテますね。」「その話は、もういい。」 ルドルフはそう言って溜息を吐くと、公用車へと乗り込み、隣に座っているアルフレートにキスをしようとしたが、彼は素知らぬ顔でスマートフォンを弄っていた。「何をしている?」「ヴァレリー様に、色々とお土産を頼まれてしまいまして・・」「そんな事はロシェクにやらせておけばいい。」「あ、もうすぐ広島平和記念公園につきますね。」(アルフレート、それは天然なのか!?) ルドルフは平和記念公園に着くなり、さっさと公用車から降りたアルフレートを慌てて追い掛けていたが、アルフレートがある建物の前で足を止めた事に気づいた。 そこはかつて、“広島産業奨励館”として建てられたもので、現在は“原爆ドーム”と呼ばれているものだった。「アルフレート、どうした?」「いえ・・」 広島平和記念資料館では、原子爆弾投下前と、投下直後の広島の街並みを再現したジオラマや、被爆者達の遺品があった。 その中で展示されていた、黒焦げになった三輪車を見た瞬間、アルフレートは嗚咽し、ハンカチで口元を覆いながら、資料館から出て行ってしまった。「すいません、もうこれ以上は・・」「わかった。」 ルドルフは予定を変更し、アルフレートと共に宿泊先のホテルへと向かった。 その日の夜、アルフレートはルドルフに、昔の事を話し始めた。 自分の故郷が戦場と化し、アルフレート達は、自由に学校や公園で遊べなくなり、夜も眠れずに、いつ空爆の犠牲となるのが怖くて、その所為で徐々に笑う事が出来なくなっていった。 そんな中、アルフレートは近所に住む、ミーシャという男児と出会った。 一人っ子だったアルフレートは、4歳だったミーシャをまるで実の弟のように可愛がり、ミーシャもまた、アルフレートの事を“お兄ちゃん”と呼んで慕っていた。 束の間の、平和な時間は、空爆によって奪われた。 その日、アルフレートはいつものようにミーシャと近所の公園で遊んでいた。 もうそろそろ家に帰ろうとした時、空襲警報が鳴り響き、その直後、アルフレートは気を失った。 目を覚ますと、公園は紅蓮の炎と黒煙、人々の悲鳴と怒号に包まれていた。「ミーシャ、何処に居るんだ、ミーシャ!」 アルフレートがミーシャを捜していると、彼はあるものを見つけた。 それは、ミーシャのお気に入りだった、三輪車だった。 黒焦げとなった三輪車の近くに、黒焦げとなったミーシャの遺体があった。「あの三輪車を見た時、ミーシャの事を思い出してしまって・・すいません。」「謝るな。わたしも、配慮が足りなかったな。」「わたしは、今でも自分が生き残ってしまって済まないと思っているんです。」「そんな事を思うな。」「すいません、もう休ませて頂きます。」「お休み。」 ベッドに入ってゆくアルフレートの背中を、ルドルフは静かに見送った。 翌朝、ルドルフが目を覚ますと、アルフレートは先に起きて、既に身支度を済ませていたが、その目元が腫れている事にルドルフは気づいた。「おはようございます、ルドルフ様。」「おはよう、アルフレート。」 ホテルで朝食を取った後、二人は広島平和記念式典に参列した。 蝉の声がまるで雨のように降り注ぐ中、二人は原爆の犠牲者達に黙祷した。 式典が終わった後、アルフレートは熱中症で体調を崩してしまった。「申し訳ありません、ご迷惑をおかけしてばかりいますね、わたしは・・」「無理もない、ゆっくり休め。」 ルドルフはそっと、病院のベッドで寝ているアルフレートの手を優しく握った。「皇太子様、そろそろお時間です。」「わかった。」 ルドルフは、公務を終えて宿泊先のホテルの部屋に戻ると、溜息を吐いた。 アルフレートは、ルドルフが広島を発つ日の朝に退院し、彼と合流して、帰国の途についた。「アルフレート、もう体調は大丈夫なのか?」「はい。ルドルフ様、ウィーンに戻ったら色々と忙しくなりますね。」「あぁ。だが、わたしはわたしの義務を果たす。」「余り無茶をなさいませんように。」「わかっているさ、お兄様は心配性だな。」 広島駅へと向かう公用車の中で、ルドルフがそう言って溜息を吐くと、隣に座っているアルフレートが肩を震わせて笑っている事に気づいた。「何を笑っている?」「いえ・・」「アルフレート、やっと笑ってくれたな。」 ルドルフは、そう言った後アルフレートの唇を塞いだ。「ルド・・」「続きは、帰ってからな。」 アルフレートは、ルドルフの言葉を聞いた後、顔を赤くして俯いた。「足りない・・」「ルドルフ・・」 ウィーンに戻ったルドルフは、公務に追われ、恋人のアルフレートと二人きりになる時間が取れずにいた。その所為か、ルドルフは注意力散漫となり、黒髪の者を見れば誰彼構わず抱きつくという奇行を繰り返していた。「アルフレートが足りない・・もう一週間も会っていない。」「そりゃあいつだって色々と忙しいんだろう。」 ヨハン=サルヴァトールは、そう言うと少し呆れたような顔をして執務机の上に突っ伏したまま動かないルドルフを見た。「メッセージアプリに一度も“既読”マークがついていない。」「そんなの、よくある事だろう・・」 ヨハンは、いつまでルドルフの愚痴に付き合ったらいいのかわからなくなって来た。「皇太子様、閣議のお時間です。」「わかった、すぐ行く。」 侍従の言葉を聞いたルドルフは、俯いた顔を上げ、颯爽とした足取りで執務室から出て行った。 閣議は、リモート会議方式で行われた。『皆さん、お待たせしてしまって申し訳ありません。』 そう言って画面上に現れたのは、アルフレートだった。「アルフレート、今まで何処で何をしていた!?」『ボヘミアで視察をしていたのですよ。さて、福祉予算の割り当てについでですが・・』「何故、一度も連絡を寄越さなかった?」『現在、ボヘミア周辺にある児童養護施設の大半が老朽化しており、早急に修繕が必要かと・・』「わたしに飽きたのか?」『仕事が溜まっていただけです。もうすぐウィーンに帰りますから、大人しく待っていて下さい。』「アルフレート~!」 会議室にルドルフの叫び声が虚しくこだました。「ルドルフ様は、最近変わられましたな。」「そうか・・まぁ、ルドルフは以前にも増して公務に励むようになったが、問題はあの子の結婚を教会が認めてくれるかどうか・・」「同性婚が合法化されたのですから、大丈夫でしょう。」「陛下、ヴァチカンからお手紙が届いております。」「わかった。」 ヴァチカンからの手紙は、ルドルフとアルフレートの結婚を認めるという旨が書かれていた。「ルドルフ、わたしだ。入っても良いか?」「父上、どうぞお入りください。」 フランツがルドルフの執務室に入ると、ルドルフは着替えの服をいそいそとスーツケースに詰めている所だった。「何処かへ行くのか?」「ボヘミアへ。」「アルフレートはもうすぐ帰ると言っていただろう?大人しくウィーンまで待てないのか?」「これ以上、待てません。」「ルドルフ、ヴァチカンからお前達の結婚を認めるという手紙が来た。」「そういう事ならば、すぐにアルフレートに会わなくては。二人で色々と話したい事があるのです。」「わかった。」 フランツはそれ以上何も言わずに、ボヘミアへと発つ一人息子を見送った。(ふぅ、これで溜まっていた仕事が片付いたから、明後日にはウィーンに帰れるかな・・) アルフレートがそんな事を思いながらホテルの部屋で寛いでいると、フロントの方から電話があった。『皇太子様がいらっしゃっています。』「ルドルフ様、どうしてこちらへ?」「お前に会いたくて来た。」 ホテルのフロントへアルフレートが向かうと、そこには息を切らしながら自分の方へとやって来るルドルフの姿があった。「ヴァチカンが、わたし達の結婚を認めてくれた。それを伝えに来た。」「そうですか、ウィーンに戻ったらますます忙しくなりますね。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月27日
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※BGMと共にお楽しみください。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。一部性描写含みますので、苦手な方はご注意ください。ルドルフと番になったアルフレートは、さほど日常生活に変化を感じる事はなかった。ただひとつ変わった事といえば、発情期(ヒート)の時に発するフェロモンが少なくなった事だった。「アルフレート。」「ルドルフ様、おはようございます。」「アルフレート、こんな所に居たのね!」ルドルフとアルフレートとの間に割って入って来たのは、マリア=ヴァレリーだった。「マリア=ヴァレリー、アルフレートに何の用だ?」「アルフレート、クリスマスミサはあなたがなさるのでしょう?楽しみだわ~!」「クリスマスミサ?そんな話は聞いていないぞ。」「マイヤー司祭が、体調を崩されてしまったので、わたしが代わりにする事になりまして・・」「そうか。」微かに眉間に皺を寄せたルドルフは、アルフレートに背を向けて去っていった。(ルドルフ様、あなたは一体何をお考えなのですか?)「ト・・アルフレート!」「はい、マイヤー司祭様。」「どうしたんだい、考え事かい?」マイヤー司祭はそう言うと、アルフレートの憂い顔を見た。「ミサの事で・・他の司祭の方に、代わって頂く事は出来ないでしょうか?」「何を言っている、君に足りないのは経験だよ。」「は、はぁ・・」マイヤー司祭の部屋から出たアルフレートは、窓辺に座っているルドルフに気づいた。「ルドルフ様、どうかなさったのですか、そんな所で?」「クリスマスミサの話、受けるんだな。」「は、はい・・」「では、暫くお前と会うのをやめておこう。わたしも丁度忙しくなるし・・それに、わたしの穢れが、これ以上お前を穢さぬように。」「お待ち下さい、ルドルフ様!」アルフレートは慌ててルドルフを追い掛けようとしたが、彼はもう居なくなってしまった。「いよいよ今夜ね、楽しみですわ。」「ルドルフ様はどちらへ?」「ルドルフ兄様は、今夜ロシアの犯罪者の引き渡しがあるらしくて、ミサにいらっしゃるかどうか・・」クリスマスの日、ウィーンには雪が降り、街を白く染めた。「お帰りなさいませ。」ルドルフがスイス宮にある自室に戻ると、そこにはアルフレートが自分の帰りを待っていた。「何をしている、出て行け。」「そんな薄着では、お風邪を召してしまいます・・あぁ、こんなに手が冷えて・・」「離せ、わたしに触れるな!」ルドルフがそう叫んでアルフレートを睨みつけたが、彼はルドルフに優しく微笑み、こう言った。「ルドルフ様、わたしはあなたに一度も穢された事などありません。」そっとルドルフの頬に触れるアルフレートの手は、温かった。「ルドルフ様・・」ルドルフは、そっとアルフレートの腰に手を回し、彼の唇を塞いだ。そのまま流れるように寝室へと入ると、ルドルフはアルフレートの口内を舌で犯しながら彼の胸を愛撫すると、彼は甘い嬌声を上げた。ルドルフは寝台の上にアルフレートを押し倒すと、そのまま彼の白い肌に唇で所有の証をつけた。「あ、ルドルフ様・・」「アルフレート・・」共に甘い時を過ごした後、ルドルフはアウグスティーナ教会へと向かうと、そこには白い法衣姿のアルフレートがミサをしていた。クリスマスミサの後、何故かアウグスティーナ教会にはひっきりなしに告解を求める者達が訪れるようになった。「こんなに忙しくなるとは思っていなかったよ。」「ええ、そうですね・・」「アルフレート、後は頼むよ。」「はい・・」マイヤー司祭が帰り、アルフレートが戸締りを確認していると、告解室の方から何か物音がした事に気づいた。(誰か、居る・・)「誰か、居るのですか?」アルフレートが恐る恐る告解室に入ると、そこには苦しそうに喘ぐルドルフの姿があった。「ルドルフ様、どうなさったのですか?」「アルフレート・・」アルフレートがそっとルドルフに近づくと、彼は尋常ではない程の汗を掻いていた。「何処か、お加減でも悪いのですか?」病弱なルドルフは、人から己の身体を気遣われたりする事を嫌い、己の体調が悪くても決して周りに気づかせず、無茶な事をする。故に、アルフレートはルドルフの様子を見て、すぐさま侍医を呼ぼうとしたが、ルドルフに突然腕を掴まれ、動けなくなってしまった。「何処へ行く?」「侍医を・・」「必要ない。」「ですが・・」アルフレートがルドルフの方を見ると、彼の蒼い瞳は熱く潤んでいた。(もしかして、ルドルフ様は・・)彼の様子を見たアルフレートは、ルドルフがラット、αの発情期(ヒート)を迎えている事に気づいた。「アルフレート・・」「ルドルフ様、ん・・」ルドルフに口内を激しく犯され、アルフレートは意識が微かに遠のき、身体の奥が疼くのを感じた。「アルフレート・・」「ルドルフ様・・」ルドルフに唇と指、舌で愛撫される度、アルフレートは声を上げた。「力を抜け・・」パサリ、と、アルフレートの法衣が床に落とされ、濡れた下肢が露わになり、アルフレートは思わず羞恥の余り俯いてしまった。「ここが、いいのか?」「あうっ!」ルドルフが、己の奥を緩慢な動きで突くのを感じながら、アルフレートは首に提げたロザリオが彼の動きに合わせて小刻みに揺れている事に気づいた。神に仕える身でありながら、自分は禁断の果実を一口齧ってしまった。(神よ、お許し下さい、わたしは・・)「アルフレート、わたしを見ろ・・」「ルドルフ様・・」「今は、何も考えるな・・」「はい・・」ルドルフが己の中で果てるのを感じたアルフレートは、彼の腕の中で意識を失った。彼が目を覚ましたのは、ルドルフの寝台の中だった。「お前の中は、気持ちがいいな・・」「もう、お止め下さい・・あぁっ!」「夜は始まったばかりだ。」「これ以上は・・」「孕め、アルフレート。」漆黒の闇のような天蓋に向かってアルフレートが手を伸ばした時、ルドルフは彼の中で果て、彼の上に覆い被さった。静寂に包まれた寝台の中で、二人は朝まで互いの手を握り合ったまま眠った。雪が、空から降って来た。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月27日
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11年前に見つけ、購入の機会を逸し、再購入できた本。一冊で詰め込むにはもったいないくらいの、面白く素晴らしい作品でした!氷栗優先生の挿絵も良かったです。
2024年08月26日
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娘を救うため、人工心臓の開発に乗り出した筒井夫婦の物語。娘のために、開発したカテーテルが、世界中の人の命を救ったのはいいし、家族の絆に感動した物語でした。
2024年08月25日
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近所のスーパーでやっていた韓国フェアで売っていたもの。あまりの辛さに暑さが少し吹き飛びました。
2024年08月24日
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表紙は、装丁カフェ様からお借りしました。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。娼館でルドルフから罵倒され、夜の街を彷徨っていたアルフレートは、連続殺人犯の男に監禁されたところを、バーベンブルクに救われ、彼と共にこの村へ来た。「アルフレート、まだ動いちゃ駄目よ。傷口が塞がったばかりなんだから。」そう言ってアルフレートの元へと駆け寄って来たのは、村の少女・アンナだった。「わたしを放っておいてくれ!君は、あの男にわたしを監視するよう、命じられて来たのか!」大声で叫んだ所為で、アルフレートは傷口が開いて、痛みで顔を顰めた。「アンナ、こんな所に居たのかい。」「バーベンブルク様!」「アルフレート、さぁ・・」「放っておいて下さい。」「でも・・」「アンナ、おいで。」バーベンブルクがそう言ってアンナの手をひいて村へと戻る姿をアルフレートが見送った時、背後に誰かの視線を感じて振り向いたが、そこには誰も居なかった。「バーベンブルク様はね、3年前にこの村に来たの。いい方だって、父様達が言っているわ。」「そうなのか・・」翌日、アルフレートが村の近くの森を散策していると、アンナが勝手について来て、自分達が住んでいる村の事を彼に話した。「君を見ていると、昔あった子の事を思い出すよ。」「そうなの?アルフレートは、その子の元へ帰りたいの?」「わからない・・わたしには、帰る場所が・・」「おい、お前達、そこで何をしている!?」二人の前に突然現れたのは、オスマン=トルコ帝国軍の兵士達だった。「いえ、わたし達はこの近くの村に住んでいて・・」「そうか。」兵士達はあっさりと引き下がったが、アルフレートは嫌な予感がした。そしてその予感は的中し、トルコ兵が村を襲撃した。アンナの父親は、アンナとアルフレート、バーベンブルクを自宅の地下室へと避難させた。「バーベンブルク様、あなたと会えて幸せでしたよ。」アンナの父親は、別れ際にそう言って微笑むと、地下室の扉を閉めた。村はトルコ兵に焼き尽くされて、アンナの両親を含む村人達は皆殺しにされた。「一緒に来るかい、アンナ?」「うん・・」「アルフレート、お前はお前の道をゆけ。」「アルフレート、元気でね。」バーベンブルクとアンナと別れた後、アルフレートは、己が“帰る場所”へとひたすら歩いた。薄手のシャツ一枚とスラックスという薄着で雪が降る中をアルフレートは歩いていたが、不思議と彼は寒さを感じなかった。アルフレートが失踪してから、ルドルフは娼館に入り浸り、荒れた生活を送っていた。「皇太子様は、一体何をお考えに・・」「全く、どうしたものかしら・・」女官達の噂話を、マリア=ヴァレリーが渋面を浮かべながら聞いていると、フランがすかさず彼女の両耳を塞いだ。「大丈夫、アルフレートはルドルフ兄様の元に帰って来るよ。」「本当?」「本当だよ、きっとアルフレートは帰って来る・・」「フラン様、ヴァレリー様。」二人がそんな事を話していると、そこへアルフレートが現れた。ルドルフが寝室で死んだように横たわっていると、誰かが部屋に入って来る気配がした。それは、黒髪の美しい司祭だった。「わたしは死ぬのかな、枕元に司祭が立っている。」「あなた様の元を勝手に離れた癖に、何度考えても、わたしはあなた様の元に変える事しか考えていませんでした。」そんなアルフレートの言葉を聞いたルドルフは、彼を寝台の上へと押し倒した。「逃げるなっ!わたしの元に戻ったというのなら、わたしに全てを寄越せ!」そう叫んだ、ルドルフの顔は、まるで母の愛を求める幼子のようだった。「わたしは、わたしである事が恐ろしい・・」「ルドルフ様・・」アルフレートがそっと唇をルドルフに寄せると、ルドルフはアルフレートの唇を塞いだ。小鳥同士が啄むようなキスが、徐々に互いの舌を絡め合う激しいものとなった。「アルフレート、手を・・」「見ないで下さい、わたしは・・」バーベンブルクにつけられた背中の傷をルドルフに見せたくなくて、アルフレートはその身を捩って抵抗した。「アルフレート。」そんなアルフレートに、ルドルフは優しく微笑むと、そっと彼の頬の傷を撫でた後、こう言った。「お前の傷は、わたしがつけた、これだけだ。」そこから先は、二人の間に言葉は要らなかった。ルドルフに愛撫された所が、甘く蕩けてゆくのを感じながら、アルフレートは彼に身を委ねた。「あっ、もう・・」「アルフレート・・」己の項に、ルドルフの熱い吐息がかかるのを感じたアルフレートは、彼がこれから何をしようとしているのかがわかった。「噛んでも、良いのか?」「噛んで下さい・・」項に痛みが走った時、アルフレートはルドルフと共に快感の波に浚われ、意識を手放した。「アルフレート、何処に居るの、返事してよ~!」外から、マリア=ヴァレリーが自分を捜す声が聞こえて来た。寝台から起き上がろうとした時、ルドルフは彼の腕を掴み、素早くガウンを羽織ると、寝室の窓を開け放ち、中庭に居るマリア=ヴァレリーに向かってこう叫んだ。「マリア=ヴァレリー、アルフレートは返して貰った、諦めろ!」「お兄様は横暴ですわ~!わたしは認めませんからね、聞いているの、お兄様~!」閉めた窓越しからでも聞こえる、マリア=ヴァレリーの喚き声にアルフレートは慌てた。「ルドルフ様、あれは・・」「ではどうしろと?」「どうしろって言われましても・・」アルフレートがルドルフの言葉に動揺していると、ルドルフが徐に彼の唇を塞いで来た。「揶揄わないで下さい!」そう言ってアルフレートがルドルフを見ると、彼は優しい笑みを浮かべていた。恋人達の、甘い時間が再び始まった。「お兄様、何故なの!?」「ヴァレリー様、落ち着いて下さいませ。」「アルフレートを要らないって言った癖に、返して貰うなんて、身勝手過ぎよ、お兄様!」「ヴァレリー・・」聡いフランは、二人がどうなったのかを知っているだけに、何も言えなかった。「お兄様は、横暴よ~!」「もうよしなよ、ヴァレリー・・」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月23日
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キムチロゼと違ってしつこくなく、濃厚で美味しかったです。
2024年08月23日
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表紙は、装丁カフェ様からお借りしました。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。バーベンブルクによって凌辱され、心身共に深い傷を負ったアルフレートは、ルドルフを拒絶した。擦れ違う二人の想いに比例するかのように、ルドルフの体調が悪化していった。病弱な身体に加え、ルドルフはα特有の本能に苦しめられていた。それは、目の前のΩを、アルフレートを孕ませたいというものだった。彼の全身から―アルフレートから漂う他のαのフェロモンの残り香を、ルドルフは消したかった。しかし、アルフレートに拒絶され、ルドルフは誰にも言わずに、一人で本能に抗っていた。そんな中、何者かに扇動され、デマに踊らされ、反ユダヤ思想を掲げた暴徒達が、皇帝とイタリア国王が居るシェーンブルンに向かって行進している事を知り、ルドルフは彼らの前に立ち、暴徒達を鎮めた。立っているだけでも精一杯だったルドルフは、ローザとアルフレートの姿を見て、彼の名を叫んだ。「ルドルフ様・・」彼が自分の名を呼んだ時、ルドルフは彼を抱き締めていた。メルクの事件の後、アルフレートはウィーン大学に入学した。一見彼の心の傷は癒えたかのように思えたが、アルフレートは悪夢にうなされ、それを振り払うかのように勉学に励んだ。二人の間に生じた溝は、埋まるどころかますます深まるばかりだった。そんな中、皇太子暗殺を目論む者達が現れ、彼らの背後にバーベンブルクの存在を知ったルドルフは、ヨハン=サルヴァトールと共にバーベンブルクを討とうとしていた。「アルフレート、どうしたの、暗い顔をして?」「ローザ、僕はどうすればいいんだろう?僕はもう、穢れてしまった・・」「アルフレート、何があっても、あなたはルドルフ様の元に戻らなくちゃ駄目なのよ。」「でも・・」「大丈夫、あなたなら・・」ローザの言葉は、アルフレートには響かなかった。ルドルフと気まずい関係が続く中、アルフレートはルドルフの妹・マリア=ヴァレリーに気に入られ、英国へと発つエリザベート達と同行する事になった。イシュルでの火事を知り、ルドルフの元へと向かったアルフレートだったが、彼を待っていたのは幼馴染の死だった。「浮かない顔をしているのね、アルフレート。」「皇妃様・・」渡英して一月後、アルフレートが溜息を吐きながら窓の外を見ていると、そこへエリザベートがやって来た。「ルドルフの事を考えているの?」「いいえ、わたしは・・」「あなたを要らないと言った時、わたしは信じられなかったわ。ルドルフがわがままをわたし達に言ったのは、あなたをバイエルンからウィーンへと連れて帰りたいと頑として譲らなかった時の、ただ一度だけよ。あの子は、わたしの前・・いいえ、フランツの前ではオーストリアの皇太子らしくあろうとしていたわ。ジゼルに、ルドルフがあなたの前では子供らしい顔をしていたとわたしに手紙で教えてくれたわ。」「ジゼル様が?」「わたしは、母親失格ね。ジゼルもルドルフもわたしの子供なのに、我が子の事を全く知らないなんて・・」「皇妃様・・」これ以上、エリザベートの話を聞いてはいけないような気がして、アルフレートが口ごもった時、マリア=ヴァレリーの声が聞こえた。「アルフレート、マリア=ヴァレリーと、ルドルフをお願いね。」「は、はい・・」アルフレートがエリザベート達と共に英国からウィーンへと戻った後、ルドルフとの関係は冷え切ったままだった。「ねぇフラン、“きょうき”って何ですの?」「わからないなぁ。それよりもヴァレリー、そろそろ戻らないと・・」「あ、お兄様だわ!」茂みの中で舞踏会の様子を除いていたフランことフランツ=サルヴァトール、マリア=ヴァレリー、アルフレートだったが、フランとマリア=ヴァレリーが口論を始め、茂みの中から飛び出してしまった。「ア、アルフレートぉ・・」「お嬢さん、一緒に踊りませんか?」ルドルフとマリア=ヴァレリーが踊っている姿を見たアルフレートは、もう子供の頃のような、純粋な気持ちには戻れないと思った。(わたしは、どうすれば良いのだろうか?)そんな事をアルフレートが考えながら歩いていると、彼は突然男に刃物で腕を刺された。「お前が・・お前の所為で!」錯乱した男はアルフレートを更に刃物で傷つけようとしたが、その前に人の気配を感じ、闇の中へと逃げていった。「あなた、大丈夫?」「はい・・」「腕から血が出ているわ、手当てをしてあげるから、わたしと一緒に来て。」そう言ってアルフレートをオペラ座へと連れていったのは、オペラ座の舞姫・ミリだった。ミリがアルフレートの腕の怪我の手当てをしていると、そこへミリの同僚達が現れた。彼女達の口から、“ジャンナ”という聞き慣れない名が出て来たので、それがヨハンの愛称だという事をミリから知り、アルフレートは驚いた。「あの、どうして私の事を・・」「ジャンナから、色々と愚痴を聞いたのよ。特に、ルドルフ様とあなたの事をね。あの噂は本当なのかどうかわからないけれど・・」「噂?」「最近、ルドルフ様がいかがわしい娼館に入り浸っているという話よ。まぁ、そんなのは・・」「詳しく教えて下さい!」ミリから、ルドルフがいかがわしい娼館に入り浸っているという噂を聞いたアルフレートがその娼館へと向かうと、そこには女達と裸で戯れるルドルフの姿があった。「服を脱いでこちらへ来い。」ルドルフがそんな冗談を言ってアルフレートの方を見ると、彼は本当に服を脱ぎ始めたので、ルドルフは怒りの余り彼の頬を打った。「あなた様は、こんな所に居る方では・・」「一度わたしから離れた癖に、今更戻って来て親切の押し売りか!?ふざけるな!」ルドルフはそうアルフレートに怒鳴ると、彼の唇を塞いだ。逃げようとするアルフレートの腕を掴んで逃げられないようにすると、彼は首に提げた十字架を握った。(こんな時に、神に縋るのか・・)「出て行け。」アルフレートを部屋から追い出したルドルフは、娼館の女主人と戯れた。「お兄様の馬鹿、アルフレートが居なくなったのは、お兄様の所為なんだからっ!」王宮へ戻ったルドルフは、マリア=ヴァレリーからそう詰られ、アルフレートが失踪した事を知った。そして、ウィーンを騒がせた連続殺人犯が潜伏していた部屋にルドルフが警官隊と突入すると、そこには連続殺人犯と思しき男の遺体と、鎖が切れた十字架があった。アルフレートは、バルカン半島にある、小さな村に居た。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月23日
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表紙は、装丁カフェ様からお借りしました。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。その言葉で、アルフレートは全てを悟った。自分が王宮へ連れて来られたのは、“口封じ”の為だった。(僕は・・)ルドルフとの関係を修復出来ぬまま、アルフレートは皇帝一家と共に、バート・イシュルと向かった。「アルフレート、君は狩りに興味はあるかい?」「いいえ・・」「そうか。さてと、わたしはもう休むとするよ。」「お休みなさいませ。」フランツ=ヨーゼフは、そう言うとジゼルの額にキスをして、自室へと下がっていった。「あ~あ、つまんないわ。この休暇が終わったら、お母様は旅へ出てしまわれるし、アルフレートはメルクへ行ってしまうのでしょう。」「ジゼル様・・」「そういえば、ルドルフは何処に居るのかしら?」「僕が、ルドルフ様を捜しに行って参ります。」城館から出たアルフレートがルドルフを捜していると、彼はアレクサンダーと共に夜空に広がる星を見上げていた。「こんな所に居たら、お風邪を召されますよ。」「うるさい・・」「まだ、僕がメルクに行く事を拗ねていらっしゃるのですか?」「う、うるさいっ!」図星だったようで、ルドルフは顔を赤くしてアルフレートにそっぽを向いた。「ルドルフ様、僕は今のままだと、あなたの隣に立てる力がありません。だから、僕がメルクに行くのをお許し頂けませんか?」「ぼ、僕の許しなどなくても、お前はメルクに行くのだろう?」「はい。メルクで多くの事を学んで、あなたの力になりたいのです。」「綺麗だな。こんな星空の中に、天上の神はいるのだろうか?」「いらっしゃると思います。ですが、僕の地上の神は教会ではなく、あなたです、ルドルフ様。」アルフレートの言葉を聞いたルドルフは、目を大きく見開いた後、アルフレートにこう言った。「大きく、出たな。」ルドルフの笑顔を、アルフレートは初めて見たような気がした。その後、ルドルフが熱を出してしまって、ジゼルや女官達からアルフレートはこっぴどく叱られてしまった。「それでは、行って参ります。」「気を付けてね、アルフレート。ねぇアルフレート、こんな事を聞いてもいいのかわからないけれど・・あなた、まだ発情期(ヒート)は来ていないの?」「それは・・」Ωには三ヶ月に一度、発情期(ヒート)というものがある。それは繁殖に特化したΩだけが持つ発情フェロモンを放ち、αを誘うものだった。それ故にΩは“劣等種”として社会から蔑まれ、迫害されて来た。「これ、抑制剤よ。お守り代わりに持っておいて。」「ありがとうございます。」ジゼルから抑制剤を受け取ったアルフレートは、メルクへと旅立っていった。「どうしたのルドルフ、そわそわして?」「別に・・「もしかして、アルフレートからの手紙を待っているの?」「そ、そんなんじゃない!」(あらら、図星みたいね。)ジゼルがそんな事を思っている頃、アルフレートはメルクで初めて発情期(ヒート)を迎えた。「はぁっ、はぁっ・・」絶え間なく襲う激しい疼きに、アルフレートは耐えるしかなかった。地獄のような一週間を過ごした後、アルフレートはジゼルの結婚式に参列する為、皇帝一家と共にミュンヘンへと向かった。「ジゼル様、おめでとうございます。」「ありがとう、アルフレート。」ミュンヘンでジゼルの結婚式に参列した後、ウィーンに戻ったルドルフはアルフレートを連れてウィーン市内の賑わいを馬車の窓から見ていた。「メルクへ帰る?」「ええ。」「メルクへ行って、もう5年だぞ?いつでも帰ると言っていたのに・・」「ルドルフ様、ジゼル様が居なくなられてお寂しいのですね?」「馬鹿を言え!アルフレート、僕はお前を神にくれてやったつもりはないからな!」ルドルフはそう言うと、馬車から出て行ったが、人混みの中で起きた騒ぎに巻き込まれ、足を負傷してしまった。アルフレートがルドルフを抱き上げた時、彼はバイエルンに居る筈の幼馴染・ローザと再会した。「元気そうで良かったわ。」「ローザ、君も元気そうで良かった。」ローザと彼女の雇い主に礼を言い、ルドルフとアルフレートが王宮へと戻った数日後、ローザの雇い主が自殺した。その自殺の原因はわからないが、彼女の他にも何人かが“不審な自殺”を遂げている事がわかった。彼らの共通点は、熱心なカトリック教徒だという事と、ベルトルト=バーベンブルクに心酔していたという事だった。「ルドルフ様、この件はわたしにお任せください。」「アルフレート。」「わたしは、大丈夫ですから。」ルドルフは、その時アルフレートの手を離してしまった事を、酷く悔いるようになる。メルクへと戻ったアルフレートは、メルクの隠し通路からバーベンブルクが行うミサを目撃し、彼に捕えられてしまう。「アルフレート、君は強情な子だね?己が不利な状況に置かれているにも関わらず、わたしの元に来ようとしない。」「“あれ”は何ですか?」「わたしは、彼らの後押しをしているだけですよ。わたしは、神の代わりに彼らの全てを受け取った。あぁ、神に感謝を!」「あなたは狂っている・・」「狂っているのは、この世界ですよ。わたしは、この時代に神となって生まれたのです!」「あなたは、自分が支配する国が欲しいだけ・・」バーベンブルクはアルフレートの頬を平手打ちし、彼に威嚇フェロモンを放った。「う・・」「通常ならば、この量のフェロモンを浴びたΩは発狂して死んでしまう。だが君は、正気を保っている・・あぁやはりそうか、君が皇太子の“運命の番”か・・ふふ、これは楽しくなりそうだ。」アルフレートは逃げようとしたが、両手足を縛られてなす術がなかった。「怯える事は無い。わたしは、皇太子から君を奪うだけだ。」「やっ・・」「生まれながらに全てを持った皇太子・・彼が一番、こたえる方法で、ね・・」(ルドルフ様、助けて・・)アルフレートがメルクへ戻ってから数日以上経ったが、彼の消息が突然途絶え、苛立ちと不安を抱えながらバーベンブルクに探りを入れたが、あっさりとかわされた上に彼から脅迫された。―アルフレートは、メルクに居る。己の奥底に眠る、αの本能に従い、ヨハン=サルヴァトールと共にアルフレートの友人を巻き込みメルクへと乗り込んだ。ルドルフが目にしたものは、残酷な現実だった。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月22日
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最近、今年に入ってブックオフで再購入した「天上の愛地上の恋」を何度目か再読してから、色々と妄想が捗り、二次小説の構想がどんどん浮かんでいます。そんな中、「雨夢楼」という曲を聴いて、天愛で遊郭パラレル書いてみたいなぁと思ってしまいました・・奇しくもルドルフ様のお誕生日に。最初は、「財閥の御曹司ルドルフ様×花魁アルフレート」でもいいかなぁと思ったのですが、それだとパンチがないなぁと思い、「幼い頃ルドルフ様の遊び相手としてルドルフ様の実家で奉公していたアルフレートだったが、その実家が倒産し、一家離散。莫大な借金を返済する為、二人は男色専門の遊郭へ売られる。時が経ち、花魁として遊郭に君臨する二人だったが、密かに愛を育み合っていた。しかし、アルフレートに身請け話が持ち上がり、ルドルフ様は激情の余りアルフレートを犯す。アルフレートはそんなルドルフ様の気持ちを知り、身請け話を断り、楼主の逆鱗に触れ、折檻される。足抜けし、暫く穏やかな時を過ごしていた二人だったが、やがて追手に見つかり、相対死(心中)する。二人が目を覚ますと、そこは地獄と極楽、二手に分かれた道があった。ルドルフ様を地獄に堕とす訳にはいかないと、自分一人で地獄へ逝こうとするアルフレートに、ずっと一緒に居るといい、アルフレートにしがみついて離れようとしないルドルフ様。それを見たアルフレートは、仕方の無い方ですねと、ルドルフ様に優しく微笑み、彼と手を繋ぎながら紅蓮の炎の中、地獄へと逝くのだった・・」ナニコレ、我ながら救いようがなくてしんどい。まぁ、前世は悲惨だったけれど、来世では必ず二人を幸せにする予定です。
2024年08月21日
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表紙は、装丁カフェ様からお借りしました。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。(あれは、一体何だったんだろう?)湖で起きた衝撃的な“事件”の後、あの美しく蒼い瞳をした少年は、使用人達と何処かへ消えてしまった。「アルフレート、どうしたの、ボーッとしちゃって。」「ごめん・・」(嫌な事は早く忘れよう。)そんな事を思いながら、アルフレートが掃除をしようと窓から離れた時、何処か慌てた様子の神父が彼の元へとやって来た。「ア、アルフレート、大変だ!」神父と共に教会の外へと向かうと、そこには豪奢な馬車が一台、停まっていた。「アルフレート=フェリックス様、ルドルフ皇太子の命により、あなた様をお迎えに上がりました。」(ルドルフ・・オーストリアの皇太子だ!)ハプスブルク家の皇太子が、一介の孤児である自分に何の用なのだろう―そんな事を思いながら、アルフレートは彼の部屋へと向かった。「この間は、ごめんなさ・・うわぁ~!」部屋に入ったアルフレートは、黒くて大きい犬を見て、驚きの余り叫んでしまった。「アレクサンダー、おいで。」寝台の中に居た少年―ルドルフは、そう言って愛犬を呼んだ後、入口の近くに立ったまま動こうとしないアルフレートを見た。「君は元気そうだね、アルフレート。」「あ、あの、僕・・」「あの後情けない事に熱が出てしまってね。まぁ、色々と寝込んでいた方が、都合が良いんだよね。アルフレート、彼は自殺としてではなく、病死として処理されたよ。まぁ、当然だよね。自殺じゃ、葬儀が出せないから。」口調は穏やかだったが、自分を見つめる蒼い瞳は鋭かった。「ねぇアルフレート、君は自殺をどう思っているの?」「僕は、流行病で両親を亡くしました。両親が亡くなる際、“命は神様から貸し与えられたものだから、粗末にしてはならない”と言われました。」「へぇ・・アルフレート、神様は嘘もお赦しにならないんじゃないの?」「え・・」「君は、何処から見ていたの?」「僕は・・」アルフレートは、ルドルフから目を逸らした。「あの、失礼な事をしてしまったのなら、僕はもう帰ります。」「勝手に何処かへ行く事は、僕が赦さないよ。」ルドルフはそう言うと、苛烈な光を宿した蒼い瞳でアルフレートを見つめた。「君はウィーンに行くんだ、僕と一緒に。」こうして、アルフレートはルドルフと共にウィーンへと向かう事になった。ウィーンは、静かな山村で暮らしていたアルフレートにとって、刺激的な場所だった。「アルフレート、資料の整理は終わったのかい?」「はい、マイヤー司祭様。」アウグスティーナ教会で、父親代わりのマイヤー司祭の元で彼の手伝いをしながら、アルフレートは宮廷暮らしに慣れていった。「今日はルドルフ様の聖体拝領式だから、色々と忙しいけれど、アルフレート、君が居てくれて助かったよ。」「いえ・・」「そうだ、今日から君がいつも王宮図書館に入れるよう、許可を取っておいたよ。これからは、いつでも本が読めるようになるよ。」「ありがとうございます!」(ルドルフ様があの子を連れて来た時はどうなるかと思っていたけれど、アルフレートがここに馴染んでくれてよかった。)マイヤー司祭はそんな事を思いながら、廊下を駆けてゆくアルフレートの背中を見送った。ルドルフの聖体拝領式は滞りなく終わった。「アルフレート、その手紙は?」「ジゼル様・・これは、えっと、その・・」「もしかして、故郷に残した恋人に宛てたものね!」ルドルフの姉・ジゼルからそう指摘され、顔を赤くして俯いた。「ち、違いますっ!」「赤くなってムキになるところがあやしいわ!」「ふぅん、お前にもそんな相手が居たとはな。」「ル、ルドルフ様・・」アルフレートが背後を振り向くと、そこには何処か不機嫌そうな表情を浮かべているルドルフが立っていた。「違います、僕は・・」「行くぞ、アレクサンダー。」ルドルフはアルフレートにそっぽを向くと、そのまま何処かへ行ってしまった。「どうしちゃったのかしらね、あの子?ヤキモチかしら?」「さ、さぁ・・」「ねぇ、アルフレートは本当にメルク行きの話を断るの?」「はい。今までよくして頂いているのに、これ以上は・・」アルフレートがそんな事をジゼルと話していると、アレクサンダーの泣き声が庭園の方から聞こえて来た。「ルドルフ様!?」ルドルフの元へとアルフレートとジゼルが駆け付けると、苦しそうに息をしながら生垣にもたれかかるルドルフの姿があった。「どうかされたのですか?」「うるさい、僕に構うな!」アルフレートがルドルフに声を掛け、彼の肩に触れようとしたが、ルドルフはそんな彼の手を邪険に振り払った。「ルドルフ様・・」「ルドルフ様、あなた凄い熱じゃないの!誰か、誰か来て頂戴!」アルフレートは居てもたってもいられず、ルドルフの華奢な身体を抱き上げた。「何をする、下ろせ!」「暴れないで下さい!」アルフレートがそう言ってルドルフを見ると、彼はアルフレートにそっぽを向いた。「ジゼル様、ルドルフ様は・・」「あの子は、生まれつき病弱でね、次から次へと病気をして、周りが神経質になっちゃったものだから、他人に自分の身体を気遣われるのが一番嫌いなのよ。まぁ、今は少し丈夫になったけれどね・・」ルドルフの熱は、数日後に下がった。そんな時に、長い間ウィーンを留守にしていたフランツの妻でありルドルフ達の母でもあるエリザベート皇妃がハンガリーから帰って来た。「アルフレート、皇妃様がお呼びだよ。」「え!?」マイヤー司祭と共にエリザベート皇妃の元へと向かったアルフレートは、緊張で顔が強張っていた。「こ、皇妃様には、ご機嫌麗しく・・」「堅苦しい挨拶など要らないわ、同じバイエルン出身ではないの。」俯いた顔を上げたアルフレートは、エリザベートの美しさに暫し見惚れてしまった。「皇妃様、そろそろ・・」(え、帰って来られたばかりなのに・・)「アルフレート、メルクで頑張ってお勉強していらっしゃい。」アルフレートがルドルフの方を見ると、彼は何処かへ行ってしまい、アルフレートは慌ててルドルフを追い掛けた。「ルドルフ様、メルクの事は初耳だったんです、僕は・・」「お前は、あんな女にしっぽを振って!」頬に激痛が走り、アルフレートはルドルフに鞭で打たれた事に気づいた。「君はとっくに、僕の共犯者だ!」そう叫んだルドルフは、涙を流していた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月20日
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「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。アルフレートは、青年の反応を見て、彼が“記憶”を持っていない事に気づいた。そして今、自分が不味い状況に置かれている事に気づいたアルフレートは、咄嗟に誤魔化した。「この前、ポロの大会でお見かけしたので・・」「そうか。」青年―ルドルフは、アルフレートの言葉を聞いた後、そのまま彼に背を向けて部屋から出て行った。「ごめんなさいね、兄は人見知りな所があって、特に初対面の相手には父の事で色々と神経質になっている所があって・・」「旦那様の事で?」「最近、父は命を狙われているの。ほら、何年か前に大規模なテロがあったでしょう?」「えぇ、確か爆破テロの現場には旦那様がいらっしゃる予定の筈でしたが、急に予定を変更されて難を逃れたとか・・」「でも、その爆破テロで三十人も亡くなったわ。あれ以来、父は塞ぎ込んでしまって、兄は兄で仕事や大学で忙しくしていて、殆んど家に帰って来なくなってしまったわ。」「そうでしたか・・」「マリア=ヴァレリー、そちらの方がフランツの新しい秘書の方?」「はじめまして、アルフレート=フェリックスと申します。」「エリザベートよ。フランツはわたしの事を、“シシィ”と呼ぶのよ。これからよろしくね、アルフレート。」「よろしく、お願いします・・」(いつまでも、昔の事を引き摺ってはいけないか・・)部屋のベッドで何度目かの寝返りを打った後、アルフレートは溜息を吐いてベッドから起き上がった。部屋から出て廊下を歩いていると、空に浮かぶ月が明るい事に気づいた。そういえば、“昔”もこんな月が浮かぶ夜に、ルドルフと―(いけない、もうあの方はいらっしゃらない。あの方は、わたしを置いて逝ってしまった。)前世の記憶なんか、持っていても意味が無いのに―そんな事を思いながらアルフレートは、何処からかピアノの音色が聞こえて来る事に気づき、まるで何かに惹き寄せられるかのように、ピアノの音色が聞こえる方へと向かった。そこには、静かにピアノを弾いているルドルフの姿があった。(この曲・・)―アルフレート、どうした?ピアノの音色に誘われ、アルフレートがルドルフの私室に入ると、そこにはベートーヴェンの『月光』を弾いている彼の姿があった。―月が綺麗だったからな。そう言った彼の横顔は、少し寂しそうに見えた。―アルフレート、わたしもオットー殿のようになるのだろうか?―ルドルフ様・・祖母や母から受け継いだ、呪われた血。―わたしも彼らと同じ・・―大丈夫です、あなたは・・“狂気”という血の呪いに怯えるルドルフを、そっと優しく抱き締めたあの夜の事を、未だにアルフレートは思い出してしまう。もう、“彼”は居ないのに。「何か、わたしに用か?」「いえ・・ピアノの音が聞こえて来たので、つい・・」「お前も弾くのか?」「いいえ、親しくしていた方が時々その曲を弾かれていたので・・」あの日、雪舞う夜に一人で“異界”へと旅立った“彼”と再会したのは、南米での事業が軌道に乗り、本社をNYに構えた日の夜の事だった。その日も、雪が降っていた。―ルドルフ様!?ベッドから居なくなったルドルフをアルフレートが捜していると、彼は雪化粧が施されたセントラルパークに居た。―こんな所に居ては、風邪をひきますよ。アルフレートがそう言いながらルドルフに厚手の上着を羽織らせようとした時、ルドルフがアルフレートを己の方へと引き寄せ、アルフレートの唇を奪った。そして彼は、涙で潤んだ瞳でアルフレートを見つめ、こう言った。―アルフレート、ただいま。「どうして、泣いている?」「すいません、辛い事を思い出してしまって・・」アルフレートは乱暴に手の甲で涙を拭いながら、音楽室を後にした。「っ・・」部屋に戻り、枕に顔を埋めた後、アルフレートは嗚咽した。(馬鹿だな、あの人は、わたしが知るルドルフ様ではないのに・・)―アルフレート・・それでも、捜してしまう。愛した人の面影を。(もう、やめよう・・辛くなるだけだ。)そんな事を思いながらアルフレートが静かに目を閉じると、誰かが部屋に入って来る気配がした。戦場で死と隣り合わせの日々を送っていた彼は、暗闇の中でも誰が居るのかが感覚でわかった。(一体、誰が・・)アルフレートが寝たフリをしていると、自分に忍び寄って来たのはルドルフだと彼は気づき、思わず叫びそうになったが、堪えた。ルドルフはそっと、アルフレートの頬―傷があった場所を撫でた後、こう言った。「アルフレート。」(え、今・・)あれは、空耳だったのだろうか―アルフレートがそんな事を思いながら洗面台の前で歯を磨いていると、部屋のドアが誰かに激しくノックされた。「はい、どなたですか?」「わたしだ。」アルフレートがドアを開けると、そこにはルドルフが立っていた。「あの、わたしに何かご用ですか?」「昨夜はよく眠れたか?」「は、はい・・」「そうか。」ルドルフはそう言った後、アルフレートに背を向けて去っていった。(昨夜の事といい、今朝の事といい、ルドルフ様が一体何を考えていらっしゃるのかわからない。)アルフレートは、ルドルフの態度にモヤモヤしながらハプスブルク財閥のオフィスで仕事をしていると、そこへ同僚のテオドールがやって来た。「アルフレート、総帥がお呼びだよ。」「わかった。」アルフレートがフランツの部屋のドアをノックして中に入ると、そこにはルドルフの姿があった。「アルフレート、丁度良い所へ来た。実は、明日から一週間ルドルフが日本へ出張する事になったから、君にはその補佐を頼む。」「ですが、わたしは・・」「急な事ですまないね。だが、ルドルフがどうしても君を連れて行きたいと言ってね。」「わかりました・・」アルフレートは、そう言うとルドルフに己の右手を差し出した。「ルドルフ様、明日からよろしくお願い致します。」「あぁ、こちらこそ頼む。」(一体、どういうつもりなんだろう?)アルフレートがフランツのオフィスから出てそんな事を考えていると、カロルスから渡されたスマートフォンが鳴った。人気のない男子トイレの個室に入ったアルフレートは、スマートフォンの画面をタップした。「はい、わたしです。」『仕事は順調か?』にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月18日
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近所のスーパーで韓国フェアがやっていて、母が買ってきてくれました。美味しかったです。
2024年08月17日
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天愛現パロ転生パラレル「祝福の華」、残り三話となりましたが、書いている間に別の二次小説の構想が浮かんだので、一旦更新を休んで、新作の方を書いていきたいと思います。夢中になって書いていた所為で、右手が少し腱鞘炎気味になってしまいました(笑)
2024年08月16日
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表紙素材は、mabotofu様からお借りしました。「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。 2023年12月25日。 ホーフブルク宮殿では、盛大なクリスマスパーティーが開かれていた。 そんな中、ルドルフはアルフレートを連れ、ウィーン市内にある一軒の屋敷へと向かっていた。「あの、ここは・・」「わたしの屋敷だ。今朝早く不動産屋を叩き起こして手に入れた。」「え?」「ここに居るのは、わたしとお前、二人きりだ。」「じゃぁ、あの・・」「掃除はなしだ。」「そ、そうですか・・」 アルフレートは、“昔”の事を思い出して、思わず顔を赤くして俯いてしまった。「どうした?」「いえ・・」「さてと、これからワインでも買いに行くか。」「わかりました。」 ルドルフと共にクリスマスのウィーンの街へと繰り出したアルフレートだったが、突然気分が悪くなってしまった。「どうした?」「すいません、急に・・」「そこのベンチで休もう。」「はい・・」 ルドルフと共に公園のベンチに座ったアルフレートは、少し気分が良くなった気がした。「一体、自分に何が起きたのかがわからなくて・・」「辛い経験をしたんだから、当然だ。」「ルドルフ様・・」「さてと、何処か美味い店へ行って何か食べるか。」「はい・・」 アルフレートとルドルフは何軒かレストランをまわってみたが、クリスマスの夜だけあってどこも満席だった。 二人が漸く夕食にありつけたのは、午後八時を過ぎた頃だった。「ルドルフ様、ブタペストには行かなくてもよろしかったのですか?」「あぁ。最近色々あって忙し過ぎたから、お前とこうして二人きりで過ごすのは久しぶりだ。」「そう、ですね・・」 アルフレートは、ルドルフの言葉に頷きながら、“昔”の事を思い出していた。 それは、マイヤーリンクでルドルフを連れ出し、ヨハンとミリと共に南米を渡ってすぐの頃だった。「ルドルフ様、朝食が出来ましたよ。」 ある日、アルフレートがルドルフの部屋へと向かうと、そこに彼の姿は無かった。「アルフレート、どうしたの!?」「ミリさん、ルドルフ様が・・」「待って、ジャンナを呼んで来るわ!」 その後、アルフレートはヨハン達と共にルドルフを捜した。 一時間半後、彼は農場から少し離れた、森の中にある小さな湖の近くに居た。「ルドルフ様・・」 アルフレートはすっかり冷えてしまったルドルフの身体を抱き締め、安堵の涙を流した。「何を泣く、おかしな奴だ。」「ルドルフ様・・」「アルフレート、わたしはここに居る。だから、泣くな。」 それが、ルドルフが異界から戻った瞬間だった。 それから、ルドルフは穏やかな時間をアルフレート達と共に過ごした。 昔のような、孤独に満ちた日々とは比べ物にならない位、穏やかなものだった。 そんな日々が、ずっと続くものだと、アルフレートは思っていた。 だが、その幸せは続かなかった。 ルドルフが朝食中に突然喀血し、アルフレートは医者から、彼が余命半年であるという事を知った。「こうなるまで、ずっと我慢してきたんでしょうね。」「そんな・・」「せめて、最期まで穏やかに過ごせるようにして下さい。」「はい・・」 アルフレートがルドルフの寝室に入ると、彼は安らかな寝息を立てて眠っていた。「どうして、こんな・・」 ルドルフの髪を梳きながら、アルフレートはそう呟いた後、涙を流した。「大丈夫だ、わたしはまだ死なない・・」 ルドルフはそう言って笑ったが、日に日に彼の病状は悪化していった。「ルドルフ様、本当に良いのですか?こんな・・」「わたしは、ハプスブルクの皇子でも、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子でもない、ただのルドルフだ。そんなわたしの隣に立てるのは、お前だけだ、アルフレート。」 村の小さな教会で、ルドルフとアルフレートは永遠の愛を誓い合った。 1918年12月25日、ルドルフは彼を慕う多くの村人達に見守られながら、息を引き取った。「お疲れ様でございました、ルドルフ様。どうか来世でも、あなた様に会えますように。」 ルドルフの死後、アルフレートは故郷のバイエルンに戻り、そこで再び司祭として修道院附属の孤児院で働き、多くの孤児達に、「バイエルンの天使」と呼ばれ、慕われた。 1945年8月21日、奇しくもルドルフの誕生日に、アルフレートは90年の生涯を終えた。 そして、二人は運命の再会を果たした。「アルフレート、どうしたんだ、ボーッとして?」「いえ・・“昔”の事を思い出してしまって・・」「アルフレート、そんなにわたしがお前を置いて先に逝ってしまった事を恨んでいるのか?」「いいえ・・ただ・・」「ただ?」「いつも隣に居た筈のあなたが居なくて、寂しかっただけです。」「安心しろ、わたしはお前を置いて逝ったりしない。」「すいません、久し振りのデートなのに、変な話をしてしまって・・」「謝るな。アルフレート、プレゼントの事だが・・」「わたしは、あなた様の傍に居られるだけで、何も要りません。」「そうか。ならば、来年の夏を楽しみにしていろ。」「え?」「さて、家に帰るか。」 アルフレートはルドルフの真意がわからぬまま、彼と共に屋敷へと戻った。「ルドルフは一体、何処へ行ったのやら・・」「フランツ、あの子はもう成人しているから大丈夫だとおっしゃったのは、あなたでしょう?それに、まだあの子とアルフレートとの結婚に反対していらっしゃるの?」「シシィ、そういう訳では・・」「ならば、法律を変えなくては。血縁だけが、家族の形ではないわ。それにわたしは、あの子を、ルドルフを喪いたくないの。」「シシィ・・」「ハプスブルク家の伝統や血統を守るのがルドルフの義務だというけれど、愛の無い結婚をしたあの子が、どんな結末を迎えたのか、あなたはもう忘れてしまったというの、フランツ?」「わかったよ、シシィ。わたしは皇帝である前に、一人の父親だ。わたしも、もう二度とあの子を、ルドルフを喪いたくない。」 2024年2月14日、オーストリア=ハプスブルク帝国皇帝フランツ=カール=ヨーゼフは、長らく“宗教上の理由”で禁じられていた同性婚を合法化し、異性婚と同じ法的権利も得られることを全世界で発表した。 2024年7月26日、パリ。 あの悪趣味極まりない吐き気がするような演出の開会式の後、ルドルフは選手村の宿舎には行かず、エッフェル塔の近くにあるホテルのスイートルームにオリンピック開催期間中に滞在する事にした。「ルドルフ様、あの・・」「何だ?」「あの、お熱がおありに・・」 スイートルームの天蓋の中でこれから愛を囁き合おうという時に、ルドルフはそんな恋人の言葉を聞いて拍子抜けしてしまい、彼を愛撫する手を止めてしまった。「お前、何故そんな事を言う?」「いえ、夕食の時に少し辛そうになさっていたので。」「もういい、興が削がれた。」 不機嫌になったルドルフは、アルフレートを寝台に残し、ソファで不貞寝した。 その所為で、彼は風邪をひいてしまったが、市販の風邪薬を飲みながら、フェンシング男子フルーレ準々決勝、準決勝と順調に勝ち進んでいった。 しかし―「ルドルフ様、大丈夫ですか!?」 決勝戦を二日後に控えた日の夜、ルドルフは全身の激痛と息苦しさに襲われ、練習中に倒れた。「この状態では棄権するしかないでしょう。」「そうですね・・ルドルフ様からは、わたしが・・」「棄権はしない。わたしはまだ戦える。」「ルドルフ様・・」「わたしを信じろ、アルフレート。」「はい、信じます。」 アルフレートはそう言うと、ルドルフの頬にキスをした。「お前からのキスなんて、珍しいな。」「も、申し訳ありません。」「謝るな。」 ルドルフはアルフレートにそう言うと、彼に優しく微笑んだ。 2024年7月30日、フェンシング男子フルーレ個人決勝。 何故か会場には、ルドルフの母国・オーストリアと、対戦相手のヴィルヘルムの母国・ドイツの観客達だけではなく、日の丸の旗を掲げた日本人の観客達が居た。「ルドルフ、ルドルフ!」 ルドルフが得点する度に、日本人の観客達が集まっている席から、“ルドルフ・コール”と歓声が上がった。 最初は優勢であったルドルフであったが、ヴィルヘルムに徐々に押される様になり、互いに一歩も引かない状態のまま、延長戦に突入した。「はぁっ、はぁっ・・」「やはり、このまま棄権した方がいいのでは・・」 ルドルフが痛み止めの注射を医師に打って貰っている時、“それ”は聞こえて来た。「心を燃やせ~!」『何という事でしょう、熱い日本の観客席のコールに、ルドルフ選手が立ち上がりました!そして・・逆転!病を乗り越え、ルドルフ選手金メダル~!』 表彰式で、表彰台の中央に立ったルドルフは、声援を送ってくれた観客達に笑顔を浮かべながら手を振った。 その胸には、金メダルが光っていた。 その姿を、アルフレートは会場の隅で見ていた。「ロシェクさん、わたしはそろそろ・・」「アルフレート。」 背後からルドルフに肩を叩かれてアルフレートが振り向くと、そこには自分の前に跪くルドルフの姿があった。「わたしと、結婚してくれないか?」 ルドルフが掲げ持つ深紅の小箱に入った指輪を見たアルフレートは、一瞬何が起きたのかがわからなかったが、ルドルフの笑顔を見て全てを悟った。「はい、喜んで・・」 二人のプロポーズは全世界で生中継され、SNSでは三日三晩祭りが続いた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月16日
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表紙素材は、mabotofu様からお借りしました。「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。一部性描写・残酷描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。ミラノで圧勝したルドルフは、祝勝パーティーを抜け出して、アルフレートと共に宿泊先のホテルで寛いでいた。「う~ん・・」「ルドルフ様、飲み過ぎですよ。」「いいだろう、まだ休暇は終わっていないんだから、ゆっくり飲ませてくれ。」「駄目です。」アルフレートはそう言うと、酒瓶をルドルフから取り上げた。「明日は朝早いのですから、お休みにならないと・・」「子守唄でも歌ってくれるのか?」ルドルフはそう言ってアルフレートを己の方へと抱き寄せ、膝上に軽々と彼を座らせた。「ルドルフ様・・」「どうした、そんな顔をして?」「お、下ろしてください!」「ここにはわたしとお前、二人しか居ない。」ルドルフはそう言うと、アルフレートの唇を塞いだ。「ん・・」「こうして、二人で過ごす事が来月からはなくなると思うから、今の内に・・」「いけません・・あっ・・」ルドルフはアルフレートの項を甘噛みすると、彼は甘い嬌声を上げた。そこからは、ルドルフのペースで進んだ。「ルドルフ様、もぅっ・・」「濡れているな。」ルドルフは、アルフレートの蕾を弄った。するとそこから、蜜が溢れ出した。「べッ、ベッドへ・・」「もう待てない。」ルドルフは纏っていたガウンを脱ぎ捨て、そのままアルフレートの中へと入っていった。ルドルフに突かれる度に、アルフレートは悦びの声を上げた。「アルフレート!」ルドルフは果てる前に、アルフレートの名を呼んだ。アルフレートは、ルドルフを起こさぬようそっと寝台から出ようとしたが、その前にルドルフによってシーツの海の中へと引き摺り戻されてしまった。「何処へ行く?」「シャワーを浴びに・・」「夜は、まだ始まったばかりだ。」「ですが、んぅ・・」「黙れ。」ウィーンではバーベンブルクが、コンラートが住むアパートの一室でルドルフのSNSを見ていた。「これは、皇太子様の・・何だか、恋人の写真ばかりですね。」「アルフレートと“彼”が、幸せそうで羨ましい・・それでいて、妬ましい。」バーベンブルクはそう言うと、スマートフォンの電源を切った。「という事は、何かを起こすおつもりで?」「あぁ、そのつもりだよ。皇太子がウィーンに戻ったら、ね。」「お手伝いしますよ。」「助かるよ、コンラート。」バーベンブルクはそう言うと、ワインを一口飲んだ。「おはようございます、ルドルフ様。」「おはよう・・」翌朝、ロシェクが、ルドルフが泊まっている部屋へと向かうと、ルドルフの声が少し掠れている事に気づいた。「どうかされましたか?声が・・」「ワインを飲み過ぎたようだ。心配するな。」「はぁ・・」ミラノで甘く熱い一夜を過ごしたルドルフとアルフレートは、ウィーンに戻った途端熱を出して寝込んでしまった。「珍しいわね、二人共寝込むなんて。」「そ、そうだね・・」「お兄様はともかく、アルフレートまで寝込むなんて・・昨夜、二人は一体何をしていたのかしら?」「それは、聞かない方がいいと思うよ。」「あらぁ、どうして?」フランツ=サルヴァトールは、そう言いながら二人が熱を出した原因を探ろうとするマリア=ヴァレリーを必死で止めた。「ふぅ・・」漸く熱が下がりアルフレートがベッドから起き上がれるようになれたのは、熱を出して数日経った頃だった。「アルフレート、入っても良いかしら?」「どうぞ。」「身体の調子はどう?」「マリア=ヴァレリー様、お気遣いありがとうございます。」「ねぇ、どうしてアルフレートは熱を出したの?健康なあなたが寝込むなんて珍しいわね。」「え、えぇ・・」「ヴァレリー、そういう事を聞くのは野暮だよ。」「まぁ、どうして?」「どうしてって言われてもね・・」フランツはそう言って溜息を吐くと、マリア=ヴァレリーを連れてアルフレートの部屋から出て行った。(お二人には、気づかれていないみたいだ。)王宮から出たアルフレートは、ルドルフの為に何か滋養のつく物を作ろうと、スーパーマーケットへと向かった。「すいません・・」「はい、何でしょうか?」スーパーマーケットを出たところで、アルフレートは一人の男性から声を掛けられた。「ここのカフェに行きたいんですけど・・」「あぁ、ここでしたら向こうの角を右に曲がって・・」アルフレートがそう言いながら、男性が持っている地図を見ようと屈み込んだところ、首筋に激痛が走り、気絶した。(ルドルフ様・・)意識を失う前、アルフレートの脳裏に浮かんだのは、ルドルフの笑顔だった。「う・・」「よぉ、気がついたか?」アルフレートが自分を起こしに来てくれたのかと思い、ルドルフが目を開けると、そこに居たのは彼ではなく、ヨハン=サルヴァトールだった。「大公か・・」「おい、そんな顔をするなよ。」「アルフレートは何処だ?」「さっき買い物へ行くとか言って出掛けていったぜ。すぐに戻るとか言っていたから、そんなに心配するなよ。」「そうか・・」だが、夜になってもアルフレートは戻って来なかった。アルフレートが、夜遊びなどする性格ではない事をルドルフは知っているだけに、彼の事が心配になった。そんな中、ルドルフは巷を騒がしている連続殺人鬼の存在を知った。それは、ウィーンやロンドン、プラハなどで発生したもので、被害者5人は皆20代前半から後半の男性ばかりだった。彼らは皆、黒髪に翡翠の瞳をしていた事だった。(まさか・・)侍従からの報告を受けたルドルフは、嫌な予感がした。かつてアルフレートを穢し、自分を狂気へと引き摺り込んだ男―ベルトルト=バーベンブルクが、アルフレートを・・「ルドルフ、どうした?」「いえ、何でもありません、父上。」「余り無理をするなよ。」「はい・・」閣議を終え、自室へと戻ったルドルフは、ヨハンをスマートフォンで呼び出した。「大公、調べて貰いたい事がある。」ルドルフがアルフレートの捜索に乗り出した頃、アルフレートは廃墟となった精神病院に監禁されていた。天井から滴る水音で、アルフレートは目を覚ました。「う・・」「目が覚めたかい?」「あなたは・・」アルフレートが目を開けると、そこにはバーベンブルクが立っていた。「この部屋は、患者を“治療”する為の部屋だった。」バーベンブルクは、そう言うとステンレスの道具台の上に置かれた金属の棒を取り出した。「これは、前頭葉の神経を焼き切るものだよ。」「わたしを、どうするつもりなのですか?」「それは、お前次第さ。お前が、“彼”よりもわたしを選んでくれるというのなら、助けてやろう。」「嫌です・・わたしは・・」「そうか。お前に、罰を与える。」バーベンブルクはそう言って笑った後、鞭でアルフレートの背中を打った。裂けた皮膚から血が噴き出し、アルフレートの白い肌を穢してゆく。「懐かしいね・・メルクでお前を鞭打った時の事を思い出すよ。」「いやだ・・」「10年前・・いや、11年前のロンドンの夏を思い出すよ。」「あ・・あぁぁ~!」(ルドルフ様・・)「まだアルフレートは見つからないのか?」「は、はい・・」「何をモタモタしている、早くアルフレートを見つけろ!」「は、 はぃぃ!」「そんなにカリカリするな。」ヨハンはそう言うと、ルドルフに一枚の書類を見せた。「これは、あの連続殺人鬼が自宅に残した日記のコピーだ。」ルドルフがバーベンブルクの日記のコピーに目を通すと、そこにはどのように被害者達を殺害したのかが書かれていた。日記の最後には、こんな文章が書かれていた。『漸く見つけた、わたしの天使』「あいつは、一体何処に?」「廃墟になった精神病院が、メルクの近くにあったな。もしかしたら・・」「すぐに向かうぞ。」「ルドルフ、落ち着け!」「離せ!」体調が優れず、まだ本調子ではないルドルフをヨハンが落ち着かせようとしたが、結局ルドルフと共に彼はその廃病院へと向かった。「暗いから、足元に気をつけろ。」「アルフレート、何処に居る!居るのなら返事をしろ!」「おやおや、すぐにここがバレるなんて思いもしませんでしたよ。」神経を逆撫でするかのような声でバーベンブルクはそう言った後、まるでルドルフを挑発するかのように、アルフレートのこめかみに銃口を突きつけた。「ルドルフ様・・」「アルフレート、今すぐ助け・・」「彼を助けたければ、彼と別れなさい。」「何だと・・」「アルフレート、お前はルドルフ皇太子とは結ばれないよ。何故なら、お前はわたしの・・」ルドルフは、バーベンブルクの隙を突いて、彼の額に銃弾を撃ち込んだ。「ルドルフ様!」「アルフレート、怪我は無いか?」「はい・・」アルフレートは安堵の余り、ルドルフの腕の中で気絶してしまった。「う・・」「良かった、アルフレート。」アルフレートが目を開けると、そこは病院のベッドの上だった。「数日後には退院できるそうだ。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月15日
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今日は家族と久しぶりにイオンで外食しました。ハンバーグが和風おろしとデミグラスソース、どちらか迷ったのですが、デミグラスソースの方が美味しそうだったので、デミグラスソースにしました。
2024年08月15日
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表紙素材は、mabotofu様からお借りしました。「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。その日から、アルフレートはマスコミに追われる事になった。ルドルフと恋人同士になった時から、こんな日が来ると覚悟していたが、現実は厳しかった。『わたしを信じろ。』別れ際、ルドルフが自分に言った言葉を励みに、アルフレートは普段通りの生活を送ろうとしていたのが―「え・・」「君と皇太子様との関係を聞きに来るマスコミの所為で仕事にならなくてね。暫く、休んで貰えないかな?」職場の上司からそう言われ、アルフレートは何度目かの溜息を吐きながら、公園のベンチでサンドイッチを食べていた。「アルフレート、こんな所に居たのかい。」アルフレートが俯いた顔を上げると、そこにはバーベンブルクが立っていた。「お前は皇太子と共に渡米したのかと思ったよ。」「わたしは・・」「わたしの所に来ないか?お前は親友達に迷惑をかけたくないのだろう?」「それは・・」「何を迷っている?お前は、わたしの手を取るだけだ。さぁ・・」「アルフレート=フェリックスさんですね?皇帝陛下がお待ちです、どうぞ我々と共にホーフブルクへいらして下さい。」「残念、あと少しだったのに。」バーベンブルクはそう言うと、アルフレートに背を向けて去っていった。「久しいな、アルフレート。」「皇帝陛下におきましては、ご機嫌麗しく・・」「堅苦しい挨拶はなしだ。アルフレート、君はルドルフの事をどう思っている?」「大切に思っております・・恋人として。」「そうか・・」フランツはそう言って呻くと、アルフレートに一通の手紙を見せた。「これは?」「ルドルフからだ。このような形で君との関係が全世界に暴露されてしまって申し訳ない。君と一緒になるのなら、この国を捨てると。」「そんな・・」出会った時からずっと、ルドルフは常この国を想って来た。それなのに、自分一人の所為で彼にこの国を捨てさせてはいけない。「陛下、わたしは・・」「続きがある。“もし今お前が迷っているのなら、始まりの地で待っていろ”と。」「“始まりの地”・・」アルフレートは、そこが何処なのかわかった。ルドルフとアルフレートにとって大切な場所。“あの日”から全てが始まった。「アルフレート?」「陛下、わたしは暫くウィーンを離れようと思っています。」「何処へ?」「“始まりの地”です。」フランツは、それ以上何も言わなかった。王宮を後にし、住んでいたアパートの部屋を引き払い、“始まりの地”―バイエルンへと向かった。「シスター・テレサ、お久し振りです。」「まぁ、誰かと思ったら、アルフレートじゃないの!」ルドルフと出会う前、幼少期から少年時代を過ごしていた孤児院をアルフレートが訪ねた時、彼の母親代わりだったシスター・テレサは彼の顔を見た途端、嬉しそうな笑みを浮かべた。「さぁ、ここで立ち話も何だから、中へお入りなさいな。」「はい・・」約20年振りに訪ねた孤児院の、剥げかけた壁紙や崩れかけた外壁などが美しく修繕され、所々に蜘蛛の巣があり狭かった食堂は、広くて開放的なものへと変わっていた。「驚いたでしょう?昔は暗くて汚い所だったけれど、皇太子様がここに色々と援助してくださったのよ。」「ルド・・皇太子様が?」「えぇ、“ここは、大切な人の帰る場所だから”っておっしゃってね。」シスター・テレサは、そう言うとアルフレートを見た。「皇太子様の、“大切な人”は、あなたなのでしょう、アルフレート?」「シスター・テレサ・・」「わたしね、あなたが皇帝陛下に引き取られていった時、あなたの幸せを誰よりも祈ったわ。でも、わたしがそんな事をしなくても幸せみたいね。」「わたしは、わからないんです。ルドルフ様と共に生きても良いのか・・わたしが居る所為で、あの方が・・」「アルフレート、あなたは皇太子様と会って、不幸だったかしら?」「いいえ。あの方は、わたしが知らなかった世界を見せて下さいました。一度も、あの方の傍に居られて、不幸だと思った事はありません。」「もう、答えが出ているじゃないの。だったらもう、迷う事はないわ。」「はい・・」「さぁ・・気を取り直して仕事しましょう。今、人手不足で大変なのよ。」「そうなんですか?」「ええ、最近ウクライナから来ている子が多くてね。みんな、心に深い傷を負っているわ。」シスター・テレサの言葉に、アルフレートは胸が苦しくなった。もしあの時、ルドルフと出会わなかったら、どうなっていただろう―アルフレートはそんな事を思いながら、シスター・テレサと共に夕食の準備に取り掛かった。―ルドルフ様、起きて下さい。愛しい人の声が聞こえ、ルドルフが目を開けると、そこは王宮にある自分の寝室の天蓋の中ではなかった。簡素な、しかし頑丈な造りのベッドから見える壁には、南国風のタペストリーで飾られていた。(あぁ・・ここは、これは、夢だ。)寝室から出てダイニングへと向かうと、そこには愛するアルフレートの姿があった。「おはよう。」「今日は、大公さんとミリさんは遠出していますから、ここに居るのは、あなた様とわたしだけです。」「そうか。」「そういえば昔、あなた様がお屋敷を一軒買われて、一緒に掃除しましたよね?」「あぁ、そうだったな。わたしはあの時、お前を独り占め出来ると思っていたんだぞ。」「まぁ・・」「結局、二人きりで過ごせたからいいか。」「そうでしたか・・」ひとしきりアルフレートと話した後、ルドルフは奇妙な感覚に襲われた。「ルドルフ様、あなたはここに居てはいけません。」「アルフレート?」ルドルフがそう言ってアルフレートを見ると、彼は優しく微笑んでいた。(ここは、わたし達が過ごした、幸せな記憶・・思い出す事はあっても、決して戻る事は無い。)「あなたには、帰る場所があるでしょう。」「アルフレート・・」「いつか、未来で会えますから・・」そう言ったアルフレートの、美しい翡翠の瞳は、涙に濡れていた。「愛している、アルフレート。未来で、また会おう。」ルドルフはアルフレートに背を向け、静かに歩き出した。規則的な、それでいて耳障りな機械音で目を覚ましたルドルフは、自分が生死の境を彷徨っていた事に気づいた。「ルドルフ様、あぁ、本当によかった!」「急ぎ陛下にご報告を!皇太子様がお目覚めになった!」渡米し、肺移植手術を受けたルドルフは、その一週間後にパリオリンピックに向けて厳しいリハビリに励んだ。「ルドルフ様は、今の所拒絶反応はなく、懸命にリハビリに励んでおられるという事です。」「そうか。アルフレートはどうしている?」「バイエルンの孤児院で働いております。最近、ウクライナから来た子供達に、スケートを教えてやっているそうです。」「彼に、これを。」フランツは、ある物を侍従に手渡した。「アルフレート=フェリックス様ですね?これを、皇帝陛下から預かりました。」「ありがとうございます・・」ルドルフからの手紙を受け取ったアルフレートは、孤児院の中庭にあるベンチでそれを読み始めた。そこには、一行だけこう書かれてあった。『ミラノで待っている。』手紙には、ミラノ行きの航空券が同封されていた。「まぁ、ミラノへ?随分と急ね。」「はい、ルドルフ様が航空券を持って来て下さったので、行かない訳にはいかなくて・・」「そうなの、気をつけて行ってらっしゃい。」「行って来ます。」アルフレートがルドルフの待つミラノへと発った頃、ホーフブルク宮殿では、フランツとその妻・エリザベートがある話をしていた。それは、彼らの一人息子でありこの国の皇太子であるルドルフの結婚についての話だった。「シシィ、君はルドルフがアルフレートと結婚した方が良いと思っているのか?」「フランツ、ルドルフは昔からアルフレートの事しか見ていなかったわ。あの子は、ずっと辛い思いをして来たのよ。だからせめて、あの子には幸せになって欲しいの。」「シシィ・・」「急いであの子を結婚させても、不幸になるだけよ。」 2023年7月、ミラノ。フェンシング世界選手権大会男子フルーレ個人準々決勝、準決勝と、ルドルフは順調に勝ち進めていった。「痛みますか?」「あぁ。少しだけだが、痛み止めの注射を打ってくれ。」「はい。」医師からルドルフが痛み止めの注射を打って貰っていると、そこへアルフレートがやって来た。「ルドルフ様・・」「席を外してくれ。」医師が選手控室から退出すると、ルドルフはアルフレートを抱き締めた。「会いたかった・・」「わたしもです、ルドルフ様。」「では、行って来る。」 アルフレートに、ルドルフは別れ際、キスをした。「よぉ、相変わらずお熱い事で。」決勝の舞台へと出る前、ルドルフにそう声を掛けて来たのは、ルドルフと同い年の、ヴィルヘルム=ホーエンツォレルンだった。「まぁ、この勝負は俺が勝つけどな。」「今更、負け惜しみか?弱い犬程よく吠えるというのは本当だな?」「何をっ!」決勝戦で、ルドルフはヴィルヘルムに圧勝し、パリへの切符を手に入れた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月13日
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※BGMと共にお楽しみください。「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。 ―主よ、わたしは今まで、あなたを蔑ろにしてきました。「アルフレート、何処に居る!」「落ち着いて下さい!」「おい、早く点滴を持って来い!」―わたしはあなたの存在を信じなかったから、罰が当たったのでしょう。「どうしてわたしが一番傍に居て欲しい時に居ないんだ、薄情者っ!」「点滴しますからね!」「離せ、わたしに触るなっ!」―ですがどうかお願いです、わたしをあなたの元へ連れて行かないで下さい。「アルフレートッ!」―わたしには、まだ生きたい理由が沢山ある。 喀血し、咳込みながらもルドルフは声が枯れるまで、アルフレートの名を呼び続けた。 そのアルフレートは、日本で行われたアイスショーに出演していた。(ルドルフ様、お元気にしているのだろうか?) アルフレートがルドルフに最後に会ったのは、ルドルフが気管支肺炎で入院し、彼を見舞った時だった。「アルフレート=フェリックスさん、お届け物です。」「ありがとうございます。」 アルフレートが会場のスタッフから花束を受け取ると、そこには一枚のメッセージカードが挟まれていた。 そこには、“懐かしい時間をありがとう”と書かれていた。(これは、ルドルフ様が?) ありえない、ルドルフとはあの後連絡を取り合っていないから、この花束を自分に贈ってくれる筈がない。 だとしたら、一体誰が?(もしかして・・)―アルフレート・・脳裏によみがえる、“あの声”。―アルフレート、お前は本当にいい子だね。 まさか、“彼”が来ているのだろうか。(“彼”は、死んだんだ・・) アルフレートがそんな事を思いながらアイスショーの会場から外へと出ると、一人の男が現れた。「久し振りだね、アルフレート。こうして会うのは、10年振りだ。」「あなたは・・」「お前と初めて会ったのは・・いや、“再会”したのは、ロンドンのパブだったね。あの夜、お前は泥酔して、わたしが部屋まで連れて行った・・」「やめろ、聞きたくない!」「あの頃の、美しく花開く前の蕾のような姿も良かったが、今のお前も美しい・・」「どうして、わたしの前に現れたのです?あなたは死んだ筈・・」「あれは、わたしの偽者だ。」 男―ベルトルト=バーベンブルクは、そう言うとアルフレートの頬に唇を落とし、闇の中へと消えていった。(どうして・・) 会場からホテルへと戻ったアルフレートは、10年前の、あの忌まわしい夜の記憶がよみがえり、慌ててトイレに入り、便器の中に胃の中の物を全て吐いた。「はぁっ、はぁっ・・」 倒れ込むようにしてベッドに入ったアルフレートは、枕元に置かれていたままのスマートフォンが振動している事に気づいた。「もしもし?」『あっ、やっと繋がった!アルフレート、何で何度も掛けたのに、出ないんだよ!』「クラウス、どうしてわたしの番号を?」『そんな事はどうでもいいんだよ。それよりも、今動画のURLを送るから、あいつの動画をちゃんと見ろよ。』「え、待って、クラ・・」『じゃぁな。』 クラウスから一方的に電話を切られた後、アルフレートは彼から送られたURLをタップした。 すると、一本の動画が自動再生された。『アルフレート、今まで連絡を取れなくて済まなかった。入院している事を、どうしてもお前には心配をかけさせたくなくて黙っていた事を許して欲しい。』 動画に映るルドルフは、最後に会った時よりも痩せていた。 いや、やつれたと言った方が良いのだろうか。 ルドルフは、移植手術を受ける為渡米する事、手術が成功したあかつきには2年後のパリオリンピックで金メダルを獲る事などを話した後、アルフレートに向かってこう語りかけた。『アルフレート、待っていてくれ。わたしを信じてくれ。』 ルドルフの動画は、そこで終わっていた。(ルドルフ様・・) 翌朝、アルフレートはホテルをチェックアウトし、タクシーで空港へと向かった。(もしかしたら、間に合うかもしれない・・) 焦る気持ちを抑えながら、アルフレートはウィーン行きの飛行機に乗り込んだ。 ウィーンに着いたのは、成田を発ってから約14時間後の事だった。(ルドルフ様は、もう・・) 沢山の人でごった返すターミナルの中で、アルフレートはSPに囲まれながら移動しているルドルフの姿を見つけた。「ルドルフ様!」「アルフレート!」 ルドルフは、SPの制止を振り払い、アルフレートの元へと駆けていった。「ルドルフ様、遅くなって申し訳ありません。」「謝るな、馬鹿。」 二人は暫く抱き合った後、皇族専用のラウンジへと移動した。「動画を見ました。わたしは、何も知らずに・・」「謝るなと言っただろう。それにしてもアルフレート、アイスショーはどうだった?」「初めて出演して緊張しましたが、上手くいきました。」「そうか・・こんな身体じゃなかったら、日本に行けたのにな・・」「ルドルフ様・・」「情けないなぁ、久し振りにお前と会ったというのに、抱き締めてやる事も出来ないなんて・・」「ルドルフ様・・」「アルフレート、わたしを信じて待っていてくれるか?」「はい。ルドルフ様、手術はきっと成功しますよ。」「お前がそう言うのなら信じよう。」 ルドルフがそう言ってアルフレートに微笑んだ時、ルドルフの侍従・ロシェクがラウンジのドアをノックした。「ルドルフ様、そろそろ・・」「わかった。」 ルドルフがそう言った後、溜息を吐きながらアルフレートの方を見た。「あの、どうされましたか?」「お前、嘘でもいいからお供させて下さいとか言えないのか?」「え・・あの・・」「もういい。」「ルドルフ様、途中までお供させて頂けませんか?」「わかった。」 ルドルフと共にラウンジから出たアルフレートは、周囲から好奇の視線を浴び、思わず俯いてしまった。「堂々としていろ。臆する事は何もない。それに、こんな事でわたしの伴侶が務まるか。」「え、あの・・」(今、何と・・)「ロシェクさん、ルドルフ様の事を宜しくお願いしますね。」「はい。アルフレートさん、間に合って良かったですね。」「え?」「ルドルフ様は、いつも病床であなたの事ばかり呼んでいましたよ。」「ルドルフ様が?」「ええ。一度、病室から抜け出そうとして、大騒ぎになりました。きっと、あなたに会いに行きたかったのでしょうね。」「ロシェク、無駄話はするな。」「ルドルフ様、わたしは先に行って参ります。」「ロシェクめ、余計な事を言って・・」「ロシェクさんも、ルドルフ様の事を心配なさっておいでなのですよ。」「フン・・」 少し迷惑そうな顔をしながらも、ルドルフが照れている事にアルフレートは気づいた。「ルドルフ様、無茶な事は余りなさらないで下さいね。あなた様は“昔から”無茶ばかりをなさるから・・」「久しぶりに会えたかと思ったら、相変わらずうるさい奴だな。」「当然でしょう、なりは大きくても、所詮は3つ年下。」「お前・・」「いつも無茶ばかりなさって、聞き分けのないあなた様を、一人になんて出来ません・・だから・・」「必ず戻って来る。だから、わたしを信じろ。」「はい、待っています。」 ルドルフとアルフレートは、別れのキスを交わした。「待たせたな。」「では、参りましょう。」 ルドルフはアルフレートに背を向け、専用機に向かって歩き始めた。(あぁ、ルドルフ様が行ってしまう・・) このまま彼を見送ろうと思っていたアルフレートだったが、自然とその言葉が口を突いて出た。「愛しています、ルドルフ様!たとえこのまま離れ離れになって会えなくなっても、また・・」「漸く、言ってくれたな。」 涙に濡れた顔をアルフレートが上げると、そこには自分と同じように涙を流しているルドルフの姿があった。「ルドルフ様・・」「また会おう。」「行ってらっしゃいませ、ルドルフ様。」 アルフレートを抱き締めたルドルフは、名残惜しそうに彼の手を離すと、そのまま一度も振り返る事なく、専用機に乗り込んでしまった。(大丈夫、あの方はきっとわたしの元に帰って来る。) 専用機が離陸した後、アルフレートはハンカチで涙を拭いながら空港を後にしようとしていると、一人の男に声を掛けられた。「失礼、あなたはアルフレート=フェリックスさんですよね?」 声を掛けて来たのは、狐のような吊り目の、亜麻色の髪をした男だった。」「そうですが、あなたは・・」「わたしはコンラート=ビューニングと申します。実は、あなたに聞きたい事がありましてね・・」「何を、わたしに聞きたいのですか?」「あなたと、ルドルフ皇太子との関係について、色々と。」「わたしは、何も話したくありません。」「そうですか。」 アルフレートは、コンラートが自分に薄笑いを浮かべている事に気づいて、嫌な予感がした。 そして、その予感は的中した。『アルフレート、今は一歩も家から出ない方がいい。』 大学時代からの親友・テオドールからそう忠告されたにも関わらず、牛乳とシリアルを切らしていた事に気づいたアルフレートが近所のスーパーへ買い物に行こうとしてアパートのドアを開けた時、彼は沢山のマスコミに取り囲まれた。「あなたと皇太子様がお付き合いされているというのは本当ですか!?」「いつから皇太子様とお付き合いを!?」「結婚のご予定は!?」 長年秘めていた二人の恋は、パパラッチが撮ったスクープ写真によって全世界に暴露されてしまった。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月11日
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※BGMと共にお楽しみください。「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。それは、記者会見でルドルフが例の発言をした後に起こった。『そ、それは、既にお相手が居るという事でしょうか?』『あぁ。』ルドルフは英語でそう言った後、じっと隣に座っているアルフレートを見た。(え、ルドルフ様?)『フェリックス選手はどう思いますか?』『え・・そうですね、あの、そのお相手の方は、幸せだなぁと。』当たり障りのない答えをしたアルフレートだったが、ルドルフの顔が急に険しくなった事に気づいた。(え・・)『では、これで記者会見は終了とさせて頂きます。本日はお集まり頂き、ありがとうございました。』記者会見が無事終わり、アルフレートが安堵の溜息を吐きながらその場を後にしようとした時、ルドルフが突然抱きついて来た。「え、ルドルフ様?」「まだわからないのか、お前が選ばれし者だという事を。今までわたしがどんなにお前を想っていたと思う?」そう言ってアルフレートに迫るルドルフの顔は、某鬼退治漫画のラスボスのそれに似ていた。アルフレートは、ルドルフに背を向け、そのままその場から去ろうとしたが、ルドルフが中々離してくれなかった。「何処へ行くつもりだ?」「ホテルですよ。」「待ってくれ、アルフレート、頼む!わたしを、置いていくなぁ~!」ルドルフがふざけているのだと思い、さっさとその場から去っていくアルフレートと、彼に必死になって縋るルドルフの姿が全世界で生中継された。「ルドルフ様、余りふざけないで下さいね。」「アルフレート・・」ホテルに戻ったアルフレートは、ルドルフが先程の出来事で機嫌が悪くなっている事に気づいた。「あなた様はもうじきご結婚される身、もう少し分別がついた行動を・・」「・・らない。」「え?」「お前以外要らない!」ルドルフはそう叫ぶと、まるで噛みつくようにアルフレートにキスをした。「ル、ルド・・「お前しか要らない、お前しか愛したくない!」 その叫びは、悲鳴に近いものだったが、アルフレートの胸に心地良く響いた。「わたしには、お前が必要なんだ・・アルフレート、わたしを愛してくれ。」「はい・・」(この方を、一人になんて出来る筈がない。)アルフレートがそんな事を思いながらルドルフに抱かれている頃、ウィーン・ホーフブルク宮にある皇帝の執務室では、その部屋の主と、アルフレートの父親代わりであるマイヤー司祭が、互いに深刻そうな表情を浮かべていた。皇帝・フランツの前には、ルドルフの結婚相手に相応しい血筋と家柄を持つ王族の姫君の釣書が置かれてあった。「陛下、やはりこういった事は皇太子様ご本人に決めさせるべきでは・・」「あの子は、アルフレートに執着している。いや、愛しているのだ、彼を。」「何と・・」ルドルフとアルフレートの姿を一番近くで見て来たマイヤー司祭は、フランツの言葉を聞いて絶句した。「その様子だと、薄々と二人の関係に気づいていたようだな?」「はい・・アルフレートが、皇太子様と共にロンドンへ向かわれた時からです。」「そんなに・・そんな時から、あの二人は・・」フランツはあまりの衝撃に立っていられなくなり、執務机の前に置かれてあった椅子に力無く座り込んだ。「ルドルフは、この国の未来だ。あの子には、この国を守り、治める義務がある。」「しかし陛下、近頃は多様性の尊重が叫ばれ、外国にはゲイの王族がいらっしゃいます・・」「この国は、神聖ローマ帝国の時代からずっと、ローマ=カトリックと、ヴァチカンと共に在り続けて来た。この国に、ゲイの王族や皇族は居てはならないのだ!」「陛下・・」北京冬季オリンピックのフィギュアスケートのエキシビジョンで、ルドルフとアルフレートの演技が注目を集めた。二人は揃いの白のタキシード姿で、優雅なワルツと情熱的なタンゴを踊った。「あぁ、楽しかった。」「はい・・」「帰りたくないな・・」「ルドルフ様・・」アルフレートは、そう言ったルドルフの横顔が、少し寂し気に見えた。「このまま、逃げないか?誰も知らない所で生きられたら・・どんなに楽だろうな。」「ルドルフ様。」「ははっ、冗談だ。」わかっているのだ、ルドルフにはそんな事をしてはならない、いや、出来ない理由が。出会った瞬間から互いに運命の人だと気づいていたのに、自分とルドルフは生きる世界が違う。一国の皇太子と、孤児。本来ながら結ばれぬ運命の星の下に生まれたが、気紛れな神によって二人は出会ってしまった。銀盤やベッドの中では飽きる事なく愛を語り合えるが、そこから一歩外に出てしまえば、決して自分達は結ばれない運命にある。(どんなに望んでも、この方とは一緒には居られない。)「ルドルフ様、わたしは・・」「アルフレート、大阪に行かないか?」「は?」「京都へ行くついでに行きたかったが、時間がなかったから色々と・・」「ルドルフ様・・」「ルドルフ様、落ち着いて下さい!」「馬鹿な事を、わたしは落ち着いている。」そう言ってアルフレートを見つめるルドルフの蒼い瞳は濁っていた。「お願いです、どうか自棄を起こさないで下さい。わたしは、あなた様のお傍に居ますから。」「済まない、どうかしていた。」ルドルフがそう言って苦しそうに咳込んだ時、彼の侍従の一人が二人の元へと駆けて来た。「皇太子様、大変です!ロシアがウクライナに侵攻しました!急ぎウィーンへお戻り下さい!」「わかった。」先程まで自分に向かって弱音を吐いていたルドルフの顔が、“聡明な皇太子”の顔となった。2022年2月24日、ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始した。それに呼応するかのように、バルカン半島各地で独立運動が激化しつつあった。そんな中、ルドルフは過労が祟り、閣議中に倒れた。「ルドルフ様・・」「そんな顔をするな、ただの風邪だ。」だがルドルフの病気は日を追うごとに悪化していった。ルドルフは、そんな状態でも無理をして何処かへ出掛けようとした。空港で国際線の搭乗口へと向かおうとした時、彼は呼吸困難を起こして倒れた。「気管支肺炎です。喘息の持病をお持ちでいらっしゃるのに、このまま無理を重ねてはいつか肺が限界を迎えます。」主治医のヴィーダーホーファー博士からそんな説明を受けたアルフレートは、そっとルドルフの病室の中へと入った。「何故、あのような無茶をなさったのです?」「行きたい所があったから行った、それだけだ。」「それは何処ですか?」「誰もわたしを知らない所だ。」「もしかして、また日本へ?」「それは教えない。」三ヶ月の入院生活を経て、再びフェンシングの練習をしていたルドルフだったが、少し練習しただけでも息切れがした。「ルドルフ様は、最近練習を少しなさっただけでも息切れがするとおっしゃって・・やはり、一度詳しく検査した方がいいのではないのかと・・」「ルドルフはどう思っているのだ?」「必要ないとおっしゃって・・“自分の身体の事は自分でわかっているから”と・・」「わたしがルドルフと話して来る。」フランツがそう言ってフェンシングの練習場へと向かうと、ルドルフが丁度練習を終えた所だった。「父上、どうしたのですか?こんな所にわざわざいらっしゃるなんてお珍しい。」「ルドルフ、最近練習熱心なのはいいが、まだ本調子ではないのだから無理をするな。」「父上が心配なさらなくても、大丈夫ですよ。」ルドルフがそう言ってサーベルを所定の場所へと戻そうとした時、右手首に激痛が走った。「どうした?」「いえ、何でもありません・・」(湿布でも貼っておくか・・)そう思いながら暫く右手首に湿布を貼って誤魔化していたが、痛みは治まるどころか、ますます酷くなっていった。やがてルドルフは、全身にガラス片が突き刺さったかのような激痛に襲われ、朝ベッドから起きるのも苦痛になっていった。それでもルドルフは一人でその激痛に耐え、公務をこなし、フェンシングの練習に励んでいた。しかし、気力だけで生きていたルドルフの身体は、遂に悲鳴を上げた。それは、ルドルフがフランツの私室に呼ばれた時だった。「誕生日おめでとう、ルドルフ。」「ありがとうございます、父上。」「急な話だが、お前に縁談がある。相手はベルギーのシュティファニー王女だ。」「そのお話は、お断りさせて頂きます。」「何故だ?お前はこの国の未来だ。お前は・・」「わたしには、“彼”以外考えられません。」「その“彼”とは、アルフレートの事か?」「父上・・」「やはり、そうなのか?ルドルフ、お前は・・」「これ以上、その事について話したくありません。」ルドルフがそう言ってフランツの私室から退出しようとした時、喀血して倒れた。「誰か、誰か居ないか!?」ルドルフは主治医から、自分の右肺が機能していない事、線維筋痛症に罹っている事を告げられた。「わたしは、死ぬのか?」「移植手術をすれば、助かる可能性はあります。しかし、ドナーがいつ現れるのか・・」「嫌だ、死にたくない!」ルドルフはそう叫ぶと、激しく咳込んだ。「まだわたしは、やりたい事が・・」「ルドルフ様、落ち着いて下さい!」「アルフレート!」(わたしは死にたくない・・まだ、アルフレートにプロポーズしていない・・)にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月10日
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昨日、楽天ブログ読書・コミックランキングを確認したら、何とわたしのブログが5位になっていました。いつもアクセス数が三桁前後なのですが、その日に限ってアクセス数が四桁になっていました。不正アクセスでもされていたのかとビビッてしまいました。
2024年08月09日
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表紙素材は、mabotofu様からお借りしました。「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「京都へ行くぞ。」「は?」 東京オリンピックが終わり、空港へ向かう筈のタクシーが全く違う所へと走っている事にアルフレートが気づいたのは、ルドルフのその言葉を聞いた時だった。「今、何と・・」「京都へ行く。オリンピックが終わったんだから、少しの間だけ日本という国を知りたいし、こうしてお前と二人きりで過ごせる時間はないからな。」「そ、そうですか・・」 品川駅でタクシーを降りた二人は、新大阪ゆきの新幹線に乗り込んだ。「よろしいのですが、ルドルフ様?このような・・」「お前の分も買っておいた、食べろ。」 ルドルフはそう言うと、売店で買った駅弁をアルフレートの前に置いた。「これは?」「美味そうだから、買って来た。要らないなら、わたしが食べるぞ。」「いただきます。」 アルフレートが駅弁の蓋を開けると、そこには鰻の蒲焼きとそのタレがついたご飯があった。「こ、これは・・」「日本人は、毎年夏になると滋養強壮の為に鰻を食べるそうだ。まぁ、こんなに暑いとスタミナがつくものが食べたくなるのはわかる。」 ルドルフはそう言って割り箸を器用に二つに割ると、鰻を食べ始めた。「脂が乗って美味いな。」「そうですね。」 アルフレートが鰻を一口食べて窓の外を見た時、こちらへと向かって来る黒いスーツを着た十数人の男達の姿に気づいた。「ルドルフ様・・」「もう遅い。」 男達が二人の姿に気づいて血相を変えながら新幹線に乗り込もうとしたが、新幹線のドアは彼らの前で非情に閉まった。 遡ること数時間前―「なにぃ、皇太子様が消えたぁ!?」「はい、空港へはタクシーで向かうから心配するなとおっしゃられて・・」「何という事だ、陛下に知られでもしたら・・」「皇太子様の御身に何かあったら・・」「早く皇太子様を捜し出さないと!」ルドルフがアルフレートと共に消えた事を知った彼の侍従達は、二人を乗せたタクシーが品川駅へと向かっている事を知り、慌てて品川駅へと向かった彼らだったが、間に合わなかった。「こんなに硬いアイスを食べるのは初めてだ。コーヒーを頼んでおいて良かった。どうした、アルフレート?」「あのう、ルドルフ様、もしかしてあの方達は・・」「気にするな。」「そう言われましても・・」「見ろ、アルフレート、富士山だ。」アルフレートが窓の外を見ると、富士山が青空に映え、まるで一幅の絵画のように美しかった。「綺麗ですね。」「あぁ、見られてよかった。今度は登ってみたいな。」「え?」「そろそろ着くぞ、降りる準備をしろ。」「は、はい・・」 二人がJR京都駅で新幹線を降りた瞬間、熱風と湿気に包まれた。「暑い・・」 ルドルフがそう言いながら京都市内に設置された温度計を見ると、“38.5℃”と表示されている事に気づいた。「アルフレート、大丈夫か?」「は、はい・・」 自分の隣に歩いていたアルフレートは、少し辛そうな顔をしていた。「あそこで休もう。」 ルドルフがそう言って指したのは、三条大橋の近くにあるコーヒーショップだった。「はぁぁ~」 冷たい飲み物を一口飲んだ時、ルドルフは大きな溜息を吐いた。「こんなに暑いなんて、思いもしなかった。」「そうですね・・」 アルフレートとそんな話をしながらも、ルドルフはSNSに上げる写真をスマートフォンで様々な角度で撮影していた。「これでよし、と・・」「ルドルフ様、どうしていつもSNS用の写真を撮るのですか?」「それは、わたしのルーチンワークだからだ。」「そ、そうですか・・」 コーヒーショップから出た二人は、ルドルフが予約したホテルへと向かった。『予約していたルドルフ=フランツだが・・』『ようこそお越し下さいました、フランツ様、こちらへどうぞ。』 ホテルのフロントでルドルフが自分の名を告げると、フロントの奥からホテルの支配人らしき女性が現れ、ルドルフとアルフレートを案内したのは、このホテルのスイートルームだった。「では、ごゆっくりとお過ごし下さい。」 女性が部屋から出ると、ルドルフは徐に服を脱ぎ始めた。「ル、ルドルフ様、何を・・」「この部屋には露天風呂があるんだ。アルフレート、お前も入れ。」「え、待って下さい・・」 アルフレートはルドルフに連れられ、部屋のベランダにある露天風呂に彼と共に入った。「気持ちが良いな。」「はい。」 アルフレートが少し頬を赤らめながらルドルフを見つめていると、彼が己の下肢へと手を伸ばそうとしている事に気づいた。「いけません、そんな・・」「ここには、わたし達二人しかいない。」「それはそうですが、あ・・」 アルフレートは、ルドルフに蕾を愛撫され、思わず声を出してしまった。「アルフレート・・」「ルドルフ様・・」 そこからは、何も言葉は要らなかった。「あっ、もう、これ以上は・・」「一緒に・・」「あぁぁ~!」 甘いアルフレートの嬌声を聞いた後、ルドルフは意識を手放した。―僕にとっての地上の神は、あなたです、ルドルフ様 遠い日の記憶の片隅から聞こえて来た、誰かの声。―ルドルフ様、約束します。この先私が何をしても、これからどこに行く事になっても、私は必ずあなたの元に帰ります。 遠い日、誰かと交わした約束。―私はあなたに、間に合いましたか? 闇に呑まれる前に、聞いた誰かの声。(あぁ、“あの時”からずっと、お前はずっとわたしの傍に居たんだな、アルフレート。) あの冬の日、シュタルンベルク湖で何者かに導かれるかのように彼と出逢ったのは、運命なのだとルドルフは思った。 もう、この手を離さない―ルドルフはそう思いながら隣で眠るアルフレートの手を握り、再び目を閉じた。「ルドルフ様、起きて下さい!」「どうした、アルフレート?」「これを、ご覧ください。」 アルフレートがそう言いながらルドルフに見せたのは、ルドルフ達オーストリア=ハプスブルク帝国皇族専用のスマートフォンの画面だった。 そこには、オーストリア=ハプスブルク帝国皇帝フランツ=カール=ヨーゼフからルドルフの安否確認を問うメッセージが何通も表示されていた。「父上も心配性だな。」「そんな・・早くウィーンに戻りませんと・・」「今、父上には七日後には戻るとメッセージを送っておいた。」 ルドルフはそう言うと、皇族専用のスマートフォンの電源を切った。「陛下、如何致しましょうか?すぐにでも皇太子様を・・」「よい、放っておけ。」「ですが・・」「ルドルフはもう成人しているし、あの子にはあの子なりの考えがあるのだろう。」 ウィーン・ホーフブルク宮で、フランツはそう言うとルドルフがバイエルンから孤児の少年―アルフレートをウィーンへと連れ帰った日の事を思い出していた。 フランツは驚いたが、彼のわがままを聞いてやらねばと思い、アルフレートをハプスブルク家に迎え入れた。 最初はぎこちなかったルドルフとアルフレートだったが、年が近い事もあり、すぐに仲良くなった。 帝国の後継者として厳しく育てられ、常に己を律して生きて来たルドルフが年相応の、普通の子の顔をしていたのは、いつもアルフレートの前だけだったと、フランツは漸く気づいたのだった。彼は、ルドルフとアルフレートの関係が、友愛以上の“何か”である事に気づいていた。フランツは執務の合間に、ルドルフのSNSを見ると、そこにはアルフレートと旅行している写真が沢山あった。 もしかしたら、ルドルフはアルフレートを・・そう思いながらも、フランツはすぐさまその考えを打ち消した。 ルドルフは女性に昔からモテていたし、プレイボーとして社交界中に知られている。 皇太子として、いずれ彼は結婚し、世継ぎを作らなければならない。 それが、ハプスブルクの皇太子として産まれた彼の義務であり、宿命なのだ。 ルドルフ自身も、それはきっとわかっている筈だろう―そう思いながら、フランツは執務に戻った。 2022年、北京冬季オリンピックで、ルドルフは、ソチ、平昌に続きフィギュアスケート男子個人で金メダルを獲得し、三連覇を果たした。「おめでとうございます、ルドルフ様。」「ありがとう、お前も頑張ったな、アルフレート。引退する事に、後悔はしていないか?」「はい、自分で決めた事なので。」 アルフレートは、この大会を期に現役を引退し、プロへ転向していく事を自身のSNSで発表していた。「そうか。」 表彰式後に行われた記者会見で、ルドルフの発言がネットで話題になった。 それは、日本のメディアがルドルフにこんな質問をした時だった。『ルドルフ選手、今後のご予定はありますか?』『結婚式と新婚旅行かな。』 ルドルフの言葉を聞いた後、周囲は騒然となった。 SNSのトレンドワードには、“結婚式と新婚旅行”がランクインし、その下には、“わたしを置いていくなぁ~”がランクインしていた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月08日
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「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。―アルフレート・・また、あの夢だ。誰かが、優しい声で自分を呼ぶ夢。―お前の傷は、わたしがつけた、これだけだ。そっと、誰かが頬の傷痕に触れた時、アルフレートは夢から醒めた。彼が今居るのは、死と怒りと憎悪と混沌、悲哀が死神という名の指揮者の手によって奏でられる戦場という名の地獄だった。両親を流行り病で亡くし、孤児となった彼は、修道院附属の孤児院に引き取られた。そこで彼は、幸せな時間を過ごした。戦争が始まるまでは。「これは、神が我々に与えて下さった試練なのです。」修道院は軍に接収され、孤児院は軍の教育施設となった。アルフレート達は、“神の子供達”と呼ばれ、日々厳しい軍事訓練を受けた。「子供達よ、喜びなさい。あなた達の日頃の成果が試される時が来ました。あなた達に、神の祝福を!」こうして、アルフレート達は前線に―戦場へ向かう事になった。そこは、この世の全ての地獄が集まったかのような場所だった。仲間や友人達が次々と死んでいった。最初は彼らの死を嘆き悲しんでいたが、アルフレートは次第に心が麻痺してゆき、何も感じなくなっていった。戦争が終わり、徐々に穏やかな日常が戻りつつある中で、アルフレートは戦場に心を置き去りにしたまま、ただ淡々と生きていた。―アルフレート・・(また、あの夢・・)自分の名を呼ぶ、誰かの声。それまでは自分の名を呼ぶ声だけで、その姿は全く見えなかったのに、最近は姿が見えるようになった。金褐色の巻き毛を揺らし、美しく蒼い瞳で自分を見つめる誰かが、愛おしく髪を梳き、桜色の唇で白い項に口づけた時、アルフレートは己の下腹が濡れている事に気づき、夢から醒めた。(最悪だ・・)たかが夢で欲情するなんて―アルフレートは汚れた下着を浴室で洗いながら溜息を吐いていると、廊下から誰かが部屋のドアをノックしている音が聞こえた。「クラウス、おはよう。」「アルフレート、カロルスが呼んでいるぜ。」「わかった、すぐ行くよ。」クラウスと共にアルフレートが食堂に入ると、彼らの雇用主であるカロルスがアルフレートに微笑み、一枚の黒塗りの封筒を手渡した。「アルフレート、仕事だよ。」「はい・・」「標的は、ハプスブルク財閥総帥・フランツ=カール=ヨーゼフ、お前はハプスブルク家へ彼の秘書として潜入し、情報を集めろ。」「アルフレートが行くなら、俺も・・」「クラウス、お前は短気で、思っている事が顔に出てしまうから、長期戦には向かないよ。アルフレート、これを。」カロルスがそう言ってアルフレートにある物を手渡した。それは、連絡用のスマートフォンだった。「必ず仕留めるんだ、いいね?」「はい。」こうしてアルフレートは、ハプスブルク家へと潜入する事になった。面接では嘘の経歴を語り、フランツに即採用された。(あっさりと難なく入れたな・・さて、これからどうするか・・)自分にフランツによって宛がわれた部屋の中でアルフレートが荷物を整理していると、ノックもなしに一人の少女が部屋に入って来た。「あなたが、今日からお父様の秘書となった方ね?ノックもなしにごめんなさい、わたしはマリア=ヴァレリー。」「アルフレート=フェリックスと申します。」「マリア=ヴァレリー、何を騒いでいる?」「あ、お兄様!」少女―フランツの次女・マリア=ヴァレリーの背後に現れた、金褐色の巻き髪を揺らし、蒼い瞳を持った一人の青年と目が合った瞬間、アルフレートは急に心臓が高鳴るのを感じた。(あぁ、この人は・・)―アルフレート・・夢の中で、自分に優しく微笑んでくれた人。(わたしは、この人を知っている。)「お兄様、こちらの方は、今日からお父様の秘書になったアルフレートよ!アルフレート、わたしの兄の・・」「ルドルフ様・・」アルフレートがその名を紡ぐと、青年の眉間に皺が寄った。「お前、何者だ?」「あ・・」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月07日
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「火宵の月」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定ありです、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。(どうして、こんな事に・・)土御門有匡は、何度目かの溜息を吐いていた。「先生、お支度、出来ましたか?」そう言いながら急ごしらえで設営された天幕に入って来たのは、有匡の妻・火月だった。「うわぁ・・」「どうした、火月?」「すいません・・いつもの洋装姿も素敵ですが、武家装束姿の先生も素敵だなぁって・・」「馬鹿を言え。さっさと終わらせて、帰るぞ。」「わかりました。」有匡と火月は、バイエルンにある小さな町で、刺繍職人として生計を立てて暮らしていた。遠い異国の地に流れ着き、右も左もわからぬ中で、二人は互いを支え合って生きていた。静かな暮らしを送っていた彼らに、まさに青天の霹靂ともいえる出来事が起きた。それは、有匡がある貴族に納品したタペストリーを、オーストリア=ハンガリー帝国皇后・エリザベートが気に入り、急遽有匡と火月はウィーンへ向かう事になったのだった。「あなたが、このタペストリーを作ったの?」「はい、皇妃様。」「もっと近くに来て頂戴。」有匡がエリザベートの前へと向かうと、彼女は優しく彼に微笑んだ。「まぁ、美しいわね、あなた。」「ありがとうございます、皇妃様。」「あなた達は日本から来たの?」「はい。バイエルンに流れ着き、地に足の着いた生活を送るまで長い年月を要しましたが、こうして皇妃様のお目にかかれて光栄です。」「謙虚な人ね。気に入ったわ。」エリザベートとの謁見を終えてすぐに帰ろうとしていた有匡と火月だったが、その場に居合わせた日本大使館の職員の思い付きに、二人は巻き込まれてしまった。「皇妃様、実は今週末、フロイデナウ競馬場で犬追物を行なう予定でして・・」「まぁ、それはなぁに?」「我が国の馬術競技のひとつでして、竹垣で馬場を囲い、そこへ放った犬を木製の矢で射るものです。」「面白そうだわ、是非見てみたいわ!」「ですが、問題がありまして・・出場する選手が少なくて困っております。」その職員はそう言いながら時折有匡の顔を見ていたが、有匡は気づかなかった。そんな彼に災難が降りかかったのは、エリザベートの鶴の一声だった。「まぁ、じゃぁあなたが出ればいいじゃないの、アリマサ。」「え?」「あなた、馬術は出来て?」「はい。」「なら決まりね。」「は、はぁ・・」一国の皇后の頼みを断る事が出来ず、有匡は犬追物に出場する羽目になってしまった。「先生、どうします?」「どうするも何も、もう決まった事だからな。まぁ、さっさと終わらせて家に帰ろう。」「は、はい・・」そして、フロイデナウ競馬場で犬追物が開かれ、そこは多くの観客達でひしめき合っていた。「先生、ご武運を。」「あぁ、行って来る。」有匡は火月とキスをした後、大きく深呼吸し、天幕から出た。熱気と歓声に包まれる中で、犬追物が始まった。「面白そうだな、アルフレート。」ロイヤルボックスでオーストリア=ハンガリー帝国皇太子・ルドルフはそう言いながらオペラグラスで犬追物を興味深そうな様子で見ていたが、彼の隣に座っている宮廷付司祭・アルフレート=フェリックスは、終始浮かない顔をしてた。「どうした?」「いえ・・あの犬達が可哀想で・・」「イシダが、“矢が犬に当たっても死ぬ事はない”と言っていただろう?」「ですが・・」「ここで見ているだけではつまらないな。」「え、ルドルフ様?どちらへ・・」ルドルフが突然ロイヤルボックスから出て犬追物の選手が集まる天幕の方へと向かっていったので、アルフレートは慌てて彼の後を追った。「こ、皇太子様・・」「わたしも参加しよう。ただ見ているだけではつまらないからな。」突然のルドルフの登場にその場に居た者達は驚いたが、ルドルフの参加を断る訳にもいかず、イシダはハンカチで汗を拭いながら、彼の参加を認めた。同じ頃、有匡は次々と犬を射ち、その度に観客席から歓声が上がるのを感じていた。(もうそろそろ終わりか・・)そんな事を有匡が思っていると、観客席からの歓声が一段と大きくなっている事に気づいた。(何だ?)有匡が周囲を見渡すと、一人の青年が騎乗して会場に入って来る所だった。癖のある金褐色の髪に、皇后譲りの美貌を持ったその青年の蒼い瞳とぶつかった時、有匡はこれから厄介な事になると思った。だが―(相手が誰であろうと、負ける気がしない!)有匡は、生来負けず嫌いな性格だった。にほんブログ村二次小説ランキングーー
2024年08月06日
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わたしはブログに政治関連のことは書きませんが、書きます。今日は、原子爆弾が広島に投下されて79年目です。わたしは2006年に、友人と三人で広島平和祈念資料館にいき、被爆者のマネキンや遺品を見て涙を流しそうになりました。一瞬で日常が破壊された悲劇を忘れてはならないし、繰り返してはならない。この言葉につきます。
2024年08月06日
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※BGMと共にお楽しみください。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。 アルフレートにそう指摘されるまで、ルドルフは自分が泣いていることに今まで気づかなかった。「誰の所為だと、思っているんだ。」ルドルフは乱暴に手の甲で涙を拭うと、そう言ってアルフレートを睨んだ。「フランツ君?」「そんな他人行儀な呼び方は止めろ。」―アルフレート、お前はわたしのものだ。 再び、アルフレートの脳裏に誰かの声が響いた。「では、どう呼べばいいのですか?」「名前で呼べ。」「え・・」「アルフレート、お前は本当にわたしの事を憶えていないのか?」「一体何を言っているのですか?」 ルドルフはアルフレートを見つめながらそう言うと、彼は首を傾げた。(天上の神は、わたしとアルフレートが一番大切にしていたものを奪っていってしまった。)―ルドルフ様 自分だけに向けられる、アルフレートの優しい笑顔や美しい声。そして何より、自分とアルフレートが共に生きた記憶。それらを全て、天上の神が奪っていってしまった。「ルドルフ君?」 突然黙り込んだルドルフの顔を、アルフレートが心配そうにのぞき込むと、ルドルフは再び彼の唇を塞いだ。何故かアルフレートは、ルドルフにキスされても気持ち悪さを感じなかった。それどころか、もっと彼とキスしたいと思った。 アルフレートはルドルフの舌が自分の口内に入ってくるのを感じ、無意識に自分の舌をルドルフのそれと絡ませた。「はぁっ」甘い喘ぎを漏らしながらアルフレートがルドルフから離れると、唾液がつぅっと彼らの間に伝って廊下に落ちた。「キスが、上手くなったな。」ルドルフはそう言うと、アルフレートに優しく微笑んだ。―相変わらず、キスが下手だな。 その時、アルフレートは漸く、脳裏に響く声が誰のものなのかを思い出した。その声の持ち主は、自分が生涯唯一愛した人。「ルドルフ様・・」「アルフレート、思い出してくれたのか、わたしの事を?」「はい、思い出しました。またあなた様と再び会えましたね。」アルフレートはそう言うと、ルドルフに微笑んだ。その笑みは、昔恋人同士だった頃に彼に浮かべた時と同じものだった。(今度こそは、お前を離さない、永遠に。)にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月04日
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※BGMと共にお楽しみください。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「おはようございます、フェリックス先生。」「おはよう。」「先生、フランツ君とお知り合いなのですか?」 翌朝、出勤したアルフレートは、同僚の女性教師からそう尋ねられて首を傾げた。「それは、一体・・」「実は昨日、わたしの所にフランツ君が訪ねて来て、色々とフェリックス先生の事を聞きに来たんですよ。フェリックス先生は何処に住んでいるとか、部活の顧問をしているかどうかとか。わたしは直接フェリックス先生に聞けばいいんじゃないのと適当にはぐらかしました。」「そうですか・・ご迷惑をお掛けしてしまって、申し訳ありません。」「いいえ。」 女性教師と立ち話をした後、アルフレートは自分の机に座り、ノートパソコンを起動させた。(フランツ君は、どうしてわたしの事を同僚に色々と聞いて来たのだろう?)あの時―アルフレートが廊下でルドルフと初めて会ったとき、彼の顔には戸惑いと歓喜がないまぜになった表情が浮かんでいた。“アルフレート、本当にお前なんだな?”あの言葉の意味は、一体何なのか。その意味を知りたくて、アルフレートはルドルフを薔薇園に呼び出した。「アルフレート先生、こんな所にわたしを呼び出して何の用です?」「少し、君に聞きたいことがあってね。」「聞きたいこと?」「この前、君と廊下で会った時、君はわたしの事を知っているような口振りだったね? もしかして、君とわたしは、何処かで会ったことがあるのかい?」アルフレートの言葉を聞いたルドルフは、蒼い瞳で彼を見た。「何故、そんなことを聞くのです?」「何故って・・君が、わたしの事を知っていると思ったから・・」「本当に、思い出していないのだな。」ルドルフはそう言うと、アルフレートを壁際まで追い詰めた。「フランツ君?」「わたしがどれほど、お前に会えることを楽しみにしていたのか知らない癖に、どうしてそんな残酷な事を聞くんだ?」 態度を豹変させたルドルフに戸惑いながらも、アルフレートは彼から視線をそらすことが出来ないでいた。「そんなに知りたいのなら、教えてやろう。」徐々に自分の方へと近づくルドルフの顔を、アルフレートは何故か拒めなかった。ルドルフに己の唇を塞がれたとき、一瞬アルフレートは何が起きたのかわからなかった。―アルフレート 脳裏に谺(こだま)する、優しいあの声。あれは、誰の声なのだろうか。アルフレートがそう思いながらルドルフを見つめると、彼は蒼い双眸から大粒の涙を流していた。「何故、泣いているのですか?」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月04日
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※BGMと共にお楽しみください。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「ねぇ、あれがあのルドルフ様なの?」「一度お近づきになってみたいわぁ。」「あんたじゃ無理よ。」 休み時間、ルドルフが教室で読書をしていると、廊下から女子生徒達の視線を感じた。無理もない―ルドルフはそう思いながら、始業のチャイムが鳴るのを待った。「あのう、ルドルフ様は何処のクラブに入ろうと思っているのですか?」「まだ決めていないな。」「そうですか。じゃぁ、チェス部にでも・・」「ちょっと、抜け駆けは狡いわよ! ルドルフ様、テニス部に一度見学に来てくださいな。」「解りました。昼休みにクラブの見学に行こうと思っていたところですので、皆さんのところに伺いますよ。」女子生徒達にルドルフは愛想笑いを浮かべると、彼女達は嬉しそうな顔をして自分達の席へと戻っていった。「フェリックス先生、ちょっといいですか?」「はい、何でしょう?」 一方職員室では、アルフレートが自分の机に座って仕事をしていると、同僚の女性教師に肩を叩かれた。「フェリックス先生に、お客様がいらしています。」「その方はどちらに?」「カフェテリアにいらっしゃいます。」「解りました。」 職員室から出たアルフレートがカフェテリアへと向かうと、ソファに座りながら読書をしていた一人の男性がアルフレートの姿に気づいてゆっくりとソファから立ち上がった。「久しいね、アルフレート。」「あなたは・・」「最後に会ったのは、いつだったかな?」そう言うと男は、そっとアルフレートの頬を撫でた。「皇太子には会えたのかい?」「一体何のことをおっしゃっているのですか?」「お前はまだ、思い出していないのだね・・まぁそれもいいだろう。」男はそう言うと、クスクスと笑った。その言葉に、アルフレートの脳裏に夢の中に出てきた“誰か”の姿が浮かんだ。―アルフレート・・「あなたは、あの方を知っているのですか?」「ああ。あの皇太子は、お前の事を憶えている。だが、お前は彼の事を憶えていない。あれ程愛し合っていたというのに、皮肉なものだ。」「教えてください、わたしは、あの方とどういう関係だったのですか?」「それは、自分で思い出せるようになることだ。」 男はそう言うと、人差し指で軽くアルフレートの胸を突いた。「さてと、わたしはこれで失礼するよ。」男は不敵な笑みを口元に浮かべると、カフェテリアから去っていった。「ああ、こんな所に居たんですか、探しましたよ。」 ハプスブルク学園の裏口から外へと出た男に、長髪で吊り目の男が近づいて来た。「コンラート、待たせて済まなかったね。」「あんまり俺の手を煩わせないでくださいよ、バーベンブルク様。」「わかっているよ。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月04日
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※BGMと共にお楽しみください。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「おはようございます、ルドルフ様。起きていらっしゃいますか?」「ああ。今支度をする。」 翌朝、ベッドから起き上がったルドルフは、夜着から真新しいハプスブルク学園の制服に身を包んだ。「おはようございます、父上。」「ルドルフ、昨夜は良く眠れたのか?」「ええ。」 フランツと何かを話す訳ではなく、ルドルフは彼と共にダイニングルームで朝食を取ると、玄関ホールへと向かった。「ルドルフ、余り無理をするなよ。」「解っております、父上。それでは、行って参ります。」 車に乗り込んだルドルフは、ゆっくりと目を閉じた。―ルドルフ様、起きてください。アルフレートが自分を起こす声が聞こえてきた。目を開けると、そこには少し拗ねたような顔をしたアルフレートが立っていた。―こんな所でうたた寝をしてしまっては、風邪をひきますよ。自分に差し出された手を、ルドルフはそっと握った。「ルドルフ様、間もなく学園に到着されます。」「わかった。」幸せな夢から覚めたルドルフは、自分を乗せた車がゆっくりとハプスブルク学園の中に入っていくのを見た。「なぁ、今日編入生が来るって本当か?」「馬鹿ねぇ、あんた知らないの? この学園の理事長先生の息子が今日編入して来るって、あたし達朝から大騒ぎしていたんだから!」「へえ・・」 生徒達が編入生の事を話していると、校舎の前に一台のリムジンが停まり、運転席から運転手が降り、恭しく後部座席のドアを開けた。 そこから出てきたのは、長身のスラリとした少年で、少し癖のあるブロンドの髪と、美しく磨きあげられたサファイアのような蒼い瞳の持ち主だった。「ルドルフ様よ!」「噂通り、素敵な方だわ。」 ルドルフが車から降り、校舎の中へと入ろうとすると、背後から女子生徒達の黄色い悲鳴が聞こえてきた。理事長の息子であるということで、自分が注目の的になるのは解っていた。「ルドルフ様、こちらへ。」「わかった。」 学園の事務長とともに校内を巡ったルドルフは、そのまま職員室へと向かった。「あなたは、昨日の・・」ルドルフが職員室のドアを開けると、そこには呆然とした表情を浮かべながら自分を見つめているアルフレートが立っていた。「初めまして、アルフレート=フェリックス先生。わたしはルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフと申します。これから宜しくお願いします。」「こちらこそ、宜しくお願いします。」アルフレートは、何のためらいもなく自分の前に差し出されたルドルフの右手を握った。(賽(さい)は投げられた。)にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月04日
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※BGMと共にお楽しみください。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「ルドルフ様、夕食をお持ちいたしました。」「要らない、下げてくれ。」「はい・・」 その日の夜、帰宅したルドルフは夕食も取らず、自室に引き籠った。(アルフレート、何故わたしを忘れてしまったんだ?) 編入先の学園で再会したアルフレートは、自分の事を忘れてしまった。いや、憶えていなかった。遠い昔、自分とあの美しいシュタルンベルク湖で出逢い、愛し合った幸せな記憶は、アルフレートの中から消え失せてしまっていた。“ルドルフ様”幾度となく自分を呼んだ愛おしい声。自分を見つめる美しい翠の双眸。それらは全て、自分のものだった。だが、自分の傍にいると誓った筈のアルフレートは、自分の元から去っていってしまった。“わたしはあなた様のものでした、あなた様は一度わたしのものではなかったけれど。”ルドルフの心に深い傷を残して。 今度こそアルフレートと離れたりはしない。もう一度彼と会ったら、二度と彼を離さない―ルドルフはそう己に誓った。(今度こそ、お前を離しはしない。)「ルドルフはどうした?」「それが、夕食は要らないと申しておりまして・・」「そうか。何か悩みでもあるのだろう。」ルドルフの父・フランツ=カール=ヨーゼフは、そう言うと食後のワインを一口飲んだ。資産家であるフランツは、一年の内半年はウィーンを留守にし、子供達と共に過ごすのはクリスマス休暇とイースター休暇の時だけだった。 長男・ルドルフは、英国の寄宿学校に昨年まで在籍していたが、ある事情でフランツが経営する学園に編入する事になった。「ルドルフ、起きているか?」「父上、どうなさったのですか?」「最近、お前と顔を合わせて話す機会がなかったから、お前と話そうと思ったんだ。」「お入りください、父上。」 自分を部屋に招き入れたルドルフは、泣いていたのか目蓋が少し腫れていた。「最近どうだ、良く眠れているのか?」「ええ、少しは。ただ、頭痛の方は未だに治まりません。」「わたしが懇意にしている大学病院の精神科がある。そこへ一度診て貰ったらどうだ?」「解りました。心配をおかけしてしまって申し訳ありません。」「謝るな、ルドルフ。余り無理はするなよ。」「はい。」自分を見つめるフランツの目は優しかった。だから、ルドルフは彼に本当の事を打ち明けたくなかった。「おやすみなさい、父上。」「おやすみ、ルドルフ。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月04日
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※BGMと共にお楽しみください。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。―アルフレート 夢の中で、自分の名を呼ぶ誰かの優しい声。少し癖のあるブロンドの髪が、風を受けてふわりと揺れる。(あなたは、一体誰なのですか?)自分に口づける恋人の顔を見ようとしたとき、目の前の映像が闇に包まれた。「夢か・・」アルフレート=フェリックスがゆっくりと顔を上げ、職員室の壁に掛けられている時計を見ると、もう昼休みは終わっていた。「アルフレート、君が仕事中に居眠りなんて珍しいじゃないか?」「最近、少し寝不足気味でね。」「ふぅん。何か悩み事でもあるのかい?」「まぁね・・」 下校時間を知らせるチャイムが校内に鳴り響き、アルフレートが友人のテオドールとともに廊下を歩きながらそんな事を話していると、向こうからスーツ姿の男達がやって来るのが見えた。「テオドール、あの人たちは?」「あぁ、アルフレートは知らなかったね。今度この学園の理事長の息子が編入して来るって話があっただろう? その学園の理事長の息子が今日偵察に来たんだよ。」「へぇ・・」 自分の職場であるこの学園の理事長とは、入学式や卒業式などの公式行事で数える程度しか会っておらず、その理事長が自分達のことを知っているのかさえアルフレートはわからなかった。「今日はどうする? たまには一杯付き合わないかい?」「そうだね、お言葉に甘えることにするよ。」テオドールとそんな話をしながらアルフレートがスーツ姿の男達と擦れ違おうとしたとき、彼は誰かに腕を掴まれた。「アルフレート、アルフレートなのか?」アルフレートの視界に飛び込んできたのは、鮮やかな蒼だった。自分の腕を掴んでいる長身の少年は、その場から一歩も動こうとしなかった。「ルドルフ様、いけません!」「アルフレート、本当にお前なんだな?」「失礼ですが、どちら様でしょうか?」 アルフレートがそう言って自分の腕を掴んでいる少年を見ると、彼は何処か失望したような表情を浮かべた後、そっとアルフレートの腕から手を放した。「お前はまた、わたしを捨てるんだな・・」「え?」「手荒な真似をして済まなかった。行くぞ、お前達。」「ルドルフ様、お待ちください!」 少年はアルフレートに背を向け、再び廊下を歩きだした。「テオドール、あの子誰だい?」「アルフレート、あれが理事長の息子の、ルドルフ様だよ。君、ルドルフ様とお知り合いだったの?」「ルドルフ様とは初めてお会いしたけれど、それがどうかしたの?」「ルドルフ様の方は、君の事を知っているようだったけれど、本当に初対面なの?」「本当だよ。」アルフレートの言葉に、テオドールは彼がルドルフの事を憶えていないことに気づいた。(あれ程愛し合っていたのに、どうして神様は残酷な事をするんだろう?)にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月04日
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素材は、湯弐様からお借りしました。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。アルフレートを押さえつけていた生徒達は、慌てて彼から飛び退いた。「も、申し訳ございません、あなた様がこちらにいらっしゃるとは思いませんでしたので・・」「誰が喋ってよいと言った?」ルドルフはそう言うと、アルフレートの周りに居た生徒達を睨みつけた。「彼に、何をしようとした?」「そ、それは・・」「お前達はここでアルフレートを辱め、ここから追い出そうとしているのだろう?」「違います、違います!」「お前はわたしを否定するのか?」アルフレートの上に跨った生徒は、ルドルフにサーベルの刃を向けられ、情けない悲鳴を上げた。「散れ。」「は、はぃぃっ!」生徒達は蜘蛛の子を散らすかのようにシャワールームから出て行った。「大丈夫か?」「は、はい・・」ルドルフは、そっとガウンをアルフレートに羽織らせた。「立てるか?」「ええ、何とか・・」アルフレートはルドルフに身体を支えて貰いながら、自分の部屋に戻ろうとしたが、その途中で力尽きてしまった。「どうした?」「足に力が入らなくて・・」「そうか。」身体が宙に浮いたかと思うと、アルフレートはルドルフが自分を横抱きにしている事に気づいた。「お、おろして下さいっ!」「暴れるな。」ルドルフはそう言うと、少し呆れたような顔をしてアルフレートを見下ろした。「着いたぞ。」「え、ここ・・」「わたしの部屋だ。ここなら、誰にも聞かれないだろう―お前の過去を。」「ルドルフ様・・」アルフレートは深呼吸した後、ルドルフに過去を話した。両親を流行病で亡くし、遠縁の親族の元へ引き取られた先で待っていたものは、虐待だった。殴る、蹴るといった身体的暴力ではなく、アルフレートが受けたのは毎日罵倒されたり、その存在を無視されたりといった精神的暴力だった。アルフレートは、辛い現実から逃避するかのように勉学に励んだ。やがて、彼の元に誕生日に毎年“ミスター・X”から手紙が届くようになった。そして、この名門寄宿学校への入学推薦状がアルフレートの元に届いたのは、クリスマスの夜の事だった。「親戚達からは反対されましたが、僕は自分を支えてくれる方にいつか会う為にこの学校で頑張りたいんです。」「そうか。アルフレート、背中の傷は誰にやられたんだ?」「叔父に・・僕がこの学校に入りたいと言ったら、鞭で・・」「酷いな・・」「身体の傷は癒えます。でも、心の傷は・・」「無理して話さなくていい。」「いいえ。あなた様にだけ、お話したいのです。」アルフレートは、遠縁の叔父に犯されそうになったが未遂に終わった事、その所為で虐待が酷くなった事などを話した。「ルドルフ様・・」「アルフレート、お前はわたしが守る。だから、お前もわたしを信じろ・・」「はい・・」どちらからともなく、二人は唇を重ねた。「あ、ごめんなさい・・」「謝るな。」その日の夜は、アルフレートはルドルフと共に同じベッドで眠った。「おはよう、アルフレート。」「おはようございます、ルドルフ様・・」互いに気まずい空気が流れたまま、二人は夜着から制服に着替えて、食堂へと向かった。「おはようございます、ルドルフ様。」「おはようございます!」その日から、アルフレートに対する嫌がらせがなくなった。「ルドルフ様、これは一体・・」「言っただろう、わたしがお前を守ると。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月04日
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素材は、湯弐様からお借りしました。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「アルフレート、おはよう。」「おはよう、ロミオ。」「アルフレート、昨夜は遅くまで勉強していたみたいだね?」「うん・・少し、ラテン語でわからない事があって・・」「余り根詰めない方がいい。」アルフレドからそう励まされながらアルフレートがアルフレドとロミオと共に食堂に入ると、生徒達の好奇の視線がアルフレートに注がれた。―あいつだぜ・・―平民の癖に、この学校に入った身の程知らず。アルフレートの嫌な予感は的中し、彼はその日から陰湿な嫌がらせに遭った。教科書やノートを隠されたり、破かれたりするのはほんの序の口で、ロミオとアルフレド以外の生徒達からはアルフレートは“居ない存在”として扱われるようになった。暴力などは振るわれないものの、無視されるのは一番辛い事だった。「凄いじゃないか、アルフレート!ラテン語もフランス語の試験も一位じゃないか!」「夜遅くまで、頑張った甲斐があったな。」「アルフレート、これから体育だから、着替えないと!」「わかった!」その日の体育は、フェンシングだった。この学校の生徒達は貴族の子息ばかりで、フェンシングは幼少期から習っている者が多かったが、アルフレートだけが初心者だった。ルールも何もわからず、アルフレートは呆然と立ち尽くしていた。そんな中、ルドルフがアルフレートの元へとやって来た。「どうした?」「あ、あの・・」少しもじもじとしているアルフレートの様子を見たルドルフは、溜息を吐いた後アルフレートにフェンシングのルールを教えた。「こう、ですか?」「あぁ、そうだ。初めてにしては上手いぞ。」「あ、ありがとうございます。」そんなルドルフとアルフレートの姿を、一人の少年が恨めしそうな目で見ていた。「ふぅ・・」フェンシングで汗を流したアルフレートがシャワーを浴びた後、籠に入れてあった着替えが無い事に気づいた。「よぉ、お前さんが例の平民か。」突然シャワールームのドアが開き、下卑た笑みを浮かべた十数人の生徒達が入って来た。「な、何ですか、あなた達は?」「何って、お前さんに“躾”をしてやるのさ、きつ~い“躾”をね!おい、こいつを押さえろっ!」その時、アルフレートは彼らが自分に何をしようとしているのかがわかった。「嫌だ、やめろ!」「うるせぇっ!」生徒達の中で大柄な少年がアルフレートの上に跨り、彼の頬を拳で殴った。(嫌だ、もうあんな思いをするのは・・)アルフレートの脳裏に、忌まわしい記憶がよみがえりそうになった。―アルフレート、良い子だから・・「こいつ、急に大人しくなったぞ。」「丁度いい、今の内に・・」「お前達、そこで何をしている?」「ル、ルドルフ様・・」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月04日
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毎日酷暑が続いて脳みそが溶けてしまいそうになっていますが、エアコンのお陰で何とか創作活動が出来るようになりました。それにしても、暑くて仕方がないです。リビングはエアコンを掛けていて涼しいのですが、廊下が暑くて、少し温度差でやられてしまいます。熱中症に気をつけなければね。
2024年08月02日
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※BGMと共にお楽しみください。「天上の愛 地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定ありです、苦手な方はご注意ください。二次創作・オメガバースが苦手な方はご注意ください。シュテファン寺院、シェーンブルン宮殿―ウィーンの観光名所を歩きながら、ルドルフは隣を歩いているアルフレートの姿を、“誰か”の姿と重ねていた。(誰だろう?)「ルドルフ様、どうかなさいましたか?」「いや、少し歩いていたから疲れた・・」「少し、休みましょうか?」二人は、ウィーン市内にあるカフェで少し早めの昼食を取る事にした。「ウィーンに来てから、変な感覚に襲われる。」「変な感覚?」「あぁ。初めて来たのに、以前にも来た事があるような気がするんだ。」「デジャ・ヴというものですか?」「もしかしたら、もしかしたらだが・・ここへ来たのは、わたし達の高祖父の導きかもしれないな。」「ええ・・」アルフレートと共にカフェを出たルドルフは、ホーフブルク宮殿へと向かった。宮殿の中に足を一歩踏み入れた途端、ルドルフは己の胸の鼓動が高鳴るのを感じた。「ルドルフ様?」(ここは・・何もかも知っている・・ここは、かつてわたしが住んでいた所だ・・)脳裏に浮かぶ、“過去”の記憶。それらすべてに、“彼”が居た。(あぁ・・これは・・)かつての自分の、記憶なのだと。「大丈夫なのですか?」「大丈夫だ。」アルフレートからハンカチを手渡され、ルドルフは自分が泣いている事に気づいた。「みっともない姿を見せてしまったな。」「いいえ・・それよりも、わたしも何だかここが妙に懐かしいような気がするのです。」スイス宮の廊下を歩きながら、アルフレートは窓に映る己の姿が、“誰か”のものと重なるような気がした。何だか、ルドルフと同様、アルフレートも次々と脳裏に、ここで過ごした“日々”の記憶が浮かんで来た。(ここは・・どうして忘れていたんだろう・・ここは、わたしが“あの方”と過ごした、大切な場所だ。)「アルフレート?」「ルドルフ様、やっとデジャ・ヴの正体が判りました。わたし達は、きっと“昔”のわたし達に導かれてここへやって来たのかもしれませんね。」「そうだな。」ホーフブルク宮殿からホテルへと戻ったルドルフとアルフレートは、そんな事を話しながらアルフレートの高祖父の日記を読んでいた。「お前の高祖父は、几帳面な性格だったようだな?」「ええ。ですから、小説を書く時には大いに助かりました。」「それにしても、この写真がいつ撮られたものなのかが気になるな。」「えぇ・・」自分達の高祖父が、どのように出逢い、生きて来たのかを知りたくて、アルフレートは日記帳の最初のページを捲った。『この日記を、誰よりも大切なあの方との思い出に捧げる。アルフレート=フェリックス 1855~1925』 そんな文章の下に、高祖父の流麗な文字が並んでいた。『今、目を閉じても、あの方と出逢った日の事を思い出す。バイエルンの、美しく澄んだ湖と同じような蒼い瞳をした、あの方の事を―』高祖父の日記を読み進めてゆく内に、アルフレートは深い眠りの底へと引き摺り込まれてしまった。「アルフレート、起きてよ、起きてったら!」1855年、バイエルン・シュタルンベルク湖畔にある村で、アルフレート=フェリックスは生を享けた。この世には、男と女、そして“第二性”と呼ばれるものがある。王侯貴族などの特権・支配階級が多く属するα、聖職者や医師などを占める中流階級や、労働者階級など、人口の多くが属するβ、そして繁殖に特化した“劣等種”であるΩ。アルフレートは、医師の診察を受け、Ωだと判った。 幸い、幼馴染のローザや自分の養い親である神父はβであった為、彼の日常は今までと何も変わらなかった。「アルフレート、起きなさいったら!」「ん・・」涼しい日陰で休んでいる内に、いつの間にか眠ってしまったらしい。ゆっくりと目を開けると、アルフレートの前には少し呆れたような顔をしたローザの姿があった。「ごめん、ローザ。」「もう、早く畑仕事を終わらせて、お茶を・・」「・・ここは小さな村です、あの子が生きてゆくのは・・」「ごめんローザ、おばさんにお茶はまた今度と言っておいて。」「ちょっと、アルフレート!?」アルフレートは村から出ると、無我夢中に湖まで走った。流行り病で両親を亡くし、小さな村でΩの自分がこの先生きてゆくのは難しいと、わかっていた。何の後ろ盾もない、孤児である自分がどう生きてゆけばいいのかわからない―アルフレートは、そう思いながらシュタルンベルク湖の蒼く煌めく水面を見つめていた。(神様、どうすれば早く大人になれますか?どうすれば、誰の力も借りずに生きる事が出来ますか?)そうアルフレートが神に向かって問い掛けても、神は何も答えてくれなかった。(もう村に戻らないと・・ローザが心配しているだろうし。)アルフレートがそんな事を思いながら湖を後にしようとした時、一発の銃声が響いた。(今のは・・)銃声が聞こえた方へとアルフレートが向かうと、そこには血塗れの男が木の根元にもたれかかるように倒れており、男の前には一人の少年が屈んで何かをしていた。「その人、死んで・・」「君、名前は?」 そう言った少年は、美しく澄んだ瞳で、アルフレートを射抜くように見つめた。その時、アルフレートは胸の鼓動が高鳴り、立っていられない程息苦しくなった。『ねぇ、アルフレートは“運命の番”って知ってる!?』『“運命の番”?』『出逢ったら最後、死ぬまで離れない運命の相手なんだって!ロマンティックだとは思わない?』『うん、そうだね。』その時、アルフレートは“運命の番”は単なるお伽話だと思っていた。だが今、彼は自分の前に立っている少年が自分の“運命の番”だという事に気づいた。(どうして・・こんな・・相手は、子供なのに・・)何とか俯いていた顔を上げると、少年もアルフレートに何かを感じているのか、視線をアルフレートから外さなかった。「どうしたの、自分の名前も言えないの?」「ぼ・・僕は、アルフレートだけれど、君は・・」「ルドルフ様~!」「ルドルフ様、どちらにおられますか~!」遠くから、女達が誰かを呼ぶ声が聞こえた。「この人、急に銃を口に咥えて・・アルフレート、君も見ていたよね!?」「は、はい・・」ルドルフと呼ばれた少年が兵士に抱きかかえられた時、アルフレートは彼が笑ったように見えた。にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月02日
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表紙素材は、mabotofu様からお借りしました。「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。 2021年、東京。 その日、ハプスブルク帝国皇太子・ルドルフは、フェンシング男子フルーレ個人でロンドン、リオに続き3大会連続の金メダルを獲得した。 表彰式の後、彼が投稿したSNSの内容に、世界中が注目した。 それは、ソファで寝ている彼の手を握っている“誰か”の姿を写した写真と、英語で『わたしの大切な人』という一文だけが添えられていた。―え、これってどういう事!?―この手、男性!?―『大切な人』って、恋人なの!? そんな騒動が起きているとは露知らず、写真を投稿した本人は、選手村の宿舎で恋人と甘い時間を過ごしていた。「ルドルフ様、もうこれ以上は・・」「何故だ?もうわたし達のオリンピックは終わった筈だろう?」「それはそうですが・・まだ閉会式が残っています。」 ルドルフの恋人であり、秘書であるアルフレート=フェリックスは、そう言いながらルドルフからのキスを拒んだ。「わかった・・おやすみ、アルフレート。」「おやすみなさいませ、ルドルフ様。」 恋人の寝息を聞きながら、アルフレートは安心して眠った。 しかし、夜の闇が深まるにつれ、アルフレートの中で生涯消える事がない記憶が蘇った。―アルフレート、急いで! 絶え間なく響く爆撃音や銃声、悲鳴、怒号が飛び交う中で、アルフレートは只管両親と共に戦場と化した街を走っていた。―ここまで来れば、大丈夫よ。―あぁ。 駅は、避難民達で溢れていた。 アルフレートが両親と共に駅の中に入ろうとした時、死神の唸り声のような、不気味なサイレンが辺り一面に響き渡った。「アルフレート、早く列車に乗れ!」「でも、父さんと母さんが・・」「お前だけは、生きてくれ!」 父は、祖母の形見のロザリオをアルフレートの首にかけ、彼と別れの抱擁を交わした。「神が、お前を守って下さる。」「父さん、母さ~ん!」 自分に向かって優しく微笑み、手を振ってくれたアルフレートの両親は、アルフレートを乗せた列車が駅から離れた直後、空爆の犠牲となった。 アルフレートが両親の死を知ったのは、彼がバイエルン近郊の修道院附属の孤児院に保護されて一ヶ月が経った頃だった。 戦災孤児となったアルフレートは、心に深い傷を負い、陰鬱とした日々を送っていた。 そんな彼の人生を一変させたのは、アルフレートが12歳の誕生日を迎えた後の、ある冬の日の事だった。 その日、アルフレートは氷が張り、巨大なスケートリンクと化した湖でスケートを楽しんでいた。『こんなに上手いんだから、アルフレートはきっとオリンピックに出られるわよ。』 まだ両親が生きていた頃、二人はそう言ってアルフレートを褒めてくれた。 やがてアルフレートは本格的にスケートを習い始め、オリンピック出場への夢も叶うのではないかと、本人や周囲も思うようになっていた矢先、戦争が始まった。 パックパックに詰めた物は、パスポートと家族の写真が詰まったアルバム、大会で獲ったメダル、そして自分の身体の一部となったスケート靴だった。(こんなに落ち着いて滑るのは、久し振りだな・・) アルフレートがそんな事を思いながら滑っていると、そこへ一人の少年が現れた。 美しい金褐色の髪を揺らし、澄んだ蒼い瞳で自分を見つめた彼は、アルフレートにこう尋ねて来た。「君、名前は?」「え、僕?僕はアルフレートだけど・・」「ふぅん・・」(何だ、この子?) 自分よりも年下なのに、やけに尊大な態度を取る少年の事が気になりながらも、アルフレートはスケートを続けた。「今の、どうやるんだ?」「え?」 三回転サルコウを跳んだ後、アルフレートは突然少年に詰め寄られ、少し引いていた。「ルドルフ様、こちらにいらっしゃったのですね!」「ちぇ、見つかったか。」 少年はそう言うと、舌打ちした。「さぁ、お屋敷に帰りますよ!」「嫌だ、こいつと一緒じゃないと帰らない!」「まぁ・・」 乳母と思しき女性が、困惑した表情を浮かべていた時、一人の男がやって来た。「ルドルフ、どうしたんだ?」「陛下、実は・・」「父上、わたしは彼と一緒に暮らしたいです!」「え?」「君、名前は?」「アルフレート=フェリックスと申しますが・・」「そうか。アルフレート君、突然で申し訳ないんだが、うちで暮らさないか?」「え・・」 ひょんな事から、アルフレートは少年―オーストリア=ハプスブルク帝国皇太子・ルドルフと共に暮らす事になった。「お世話になりました。」「元気でね。」にほんブログ村二次小説ランキング
2024年08月02日
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