July's July

July's July

2015.10.15
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 家族の事はあまり触れたくないものだ。家族こそが我々の精神に関するあらゆる問題の原因なのではないだろうかという気さえする。

 工場で働いていたとき、僕はどちらかと言えば楽な仕事だったので、昔のことを際限なく思い出しては悲しい気持ちになっていた。美人の女性とつきあっていて結婚を望めば結婚もできたはずなのになぜかふみきれなかった。その根本にあった問題は僕が子供がほしくなかったということだった。なぜほしくないのか理由を考えたこともなかったしずっとわからないままでここまできた。

 しかし現在実家に帰ってきて身内と一緒に暮らしているのだが、弟も僕と同じ深刻な精神の問題を抱えて苦しんでいた。僕はあまり話したくなかったのだが、弟はその問題をどうしても突き詰めて考えねばならない性分だった。

 この前朝方近くまで酒を飲みながら話し合っていてどうも兄弟で同じような問題を抱えていることがわかった。結局僕が子供がほしくないということもつきつめると幼少期の家族の問題であり母に十分かまってもらえなかったということが原因なのかもしれない。僕と弟は幼少期曾祖母に育てられた。

 僕はほとんど周りの人に影響を受けずに白紙のまま育ち後に宮沢賢治や吉本隆明の影響を受けたのでむしろよかったと思っているけど、子供がほしくないということは、いくら吉本さんに普通に生きるのが一番価値があるんだよと言われても、どうしようもなかった。

 原因がわかったからと言ってもどうにもなるものでもない。家族や母を責める気持ちはさらさらないしむしろ育ててくれたことに感謝している。もともと家族というものは問題だらけなものだし、どこの家族も多かれ少なかれそうだということもわかっている。普通は大人になる段階でいつの間にかそういう問題は克服できるものなのだ。また、そうであるべきなのだ。

 僕は文学を信奉しているので滅亡の民なのだと思っている。それでいいしそれ以上のことは考えたくない。しかし何も信奉するものがない弟は未だににっちもさっちもいかず苦しんでいる。残念ながらこれは人が助けてあげられるような問題ではない。

 家族の問題は誰にとってもあまり触れたくない事柄だ。その根本的な原因は自分が思っている観念的な偉大さと家族から見た存在の卑小さの格差がありすぎるからだ。

 いくら僕が人類がこれまで誰一人として知らなかった言語学上のある知識を発見した人間であったとしても弟にとっては兄らしいことを何一つしなかったしょうもない兄でしかないし母にとっては何一つ親孝行もしたことがないどうしようもない馬鹿息子でしかないのだ。










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Last updated  2015.10.15 23:34:26


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