July's July

July's July

2016.07.19
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 世にでまわっている彼女の詩集は知人や大学の友人にあげたもので、おそらく100冊前後だと思われる。あるいは著名な文学者に贈呈したものも幾冊かあるかもしれない。どこか本棚の隅に埋もれたままほこりをかぶって眠ったままになっていると思う。どうか、そのままにしておいてもらいたい。手にとって開いてはいけない。できれば焼却してもらいたい。その詩集は、趣味で文学をなどという領域を超えてしまっている。マジで危ない書物なのだ。僕が知っている限りではその詩集は彼女の前にもう一人犠牲者を出している。

 僕は彼女の詩を駆け足で読んだのだが、それは立ち止まってじっくり読むのがこわかったからだ。やはり得体の知れないものが潜んでいると直感で感じていたのかもしれない。なるべく深部を見ないように表面の字面だけを急いで通り過ぎた。それでも最後の詩にはくらっとめまいするような変な感覚にとらわれた。それ以来その詩集を開くことはなかった。

 今僕はその詩集を目の前にして逡巡している。まだ踏み込めないでいる。それに別の知識の準備が必要かもしれない。とにかく急がず十分な時間をかけ機が熟すのをまとうと思っている。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2016.07.19 10:11:58


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: