GW後半は 2 泊 3 日で南アルプスの光岳、聖岳の周回縦走を計画した。易老渡~光岳~聖岳~易老渡というルートだ。途中、冬期解放されている小屋を利用する。
天気予報もまずまずで温度も高めになると思えた。ただ、この時期周回している人のレポはないし、どちらか一方だけというレポはあっても数は少ないため早すぎるか、とやや不安もあった。しかし、先日行った富士山ですら最近の暑さで積雪量も少なかったことから、南アルプス南方に位置するこの 2 座も残雪量は少ないのではないか(すなわち踏破できるのでは)という見込みでアタックすることにした。
前泊地はいつも、道の駅か登山口(トイレ有が条件)で車中泊というのがお決まりだ。今回の登山口とした易老渡は5kmほど手前の芝沢ゲートからはクルマの乗り入れができない。そうなるとここでクルマを止めて、と思ったが、このゲートにはトイレもないので車中泊にはやや厳しい。ならば、近くの道の駅「遠山郷」はどうか。ん~悪くはないが、ここには温泉施設があり、クルマの出入りが多いことからためらわれた。
いい所を見つけた。国道 152 号線の上島トンネル南方にある「梨元ていしゃば」という今は使われていない森林鉄道の跡地だ。ここには観光情報施設があったようだが、現在は建物を残して閉店されている。トイレと駐車エリアはあるのでここで一晩を明かすことにした。埋蔵木と線路があるだけなので他のクルマやバイクも素通りする。静かに車中泊ができた。
翌朝、芝沢ゲートへの狭い道を、時折路上に散乱する落石を交わしながらクルマを走らせた。クルマはすでに 10
台ほど停まっていた。この時期でも僕ら同様来る人は来る。
光岳へ。
posted by (C)momo夫(代理)
このゲートから易老渡までの約 5
kmは通常徒歩で行くことになる。しかし自転車は可能なので、僕らはそのために自転車を持参し、登山口までの時間短縮を図った。塩見岳以来 2
度目のチャリ移動だ。路面は舗装と砂利道が交互に現れる感じだが、上りもきつくなく、平坦路に近い。 30
分ほどで易老渡に到着。ここにも自転車が 3
台デポされていたが、僕らも同様にデポして登り始めた。
登り始めから急坂だ。水平移動のような平坦路がほとんどない。途中の面平という場所はやや平だったがそれ以外はひたすら登り続ける。しかも樹林帯の中なので展望は望めない。
この日はやや寒く途中であられが降ってきた。雨でないだけましだが、この先雪になければいいがと不安を覚えた。
易老岳手前 100
m辺りから残雪が目立ち始めたがキックステップで進んでいけた。
光岳へ。
posted by (C)momo夫(代理)
易老岳まではピンクテープがあるので迷うことなく辿り着けるが、ここから光岳までが問題だった。夏道ならリボンがなくても道ができているので辿れば先へ進める。しかしこの時期は残雪が夏道を覆っているためテープが頼りになる。
そのテープもほとんど見当たらない(標識もない)。時折テープを発見するがその次を見つけるのに右往左往。
ならば、 GPS
で、ということで見ようとしたら寒さのために電池が「0%」表示!スマホに地図を入れて、現在地を確認するアプリがあるのでそれを使おうと思っていてもこれでは使い物にならん!温度回復を狙って懐にスマホを入れ温める。しかしすぐには回復しないので紙地図とコンパスを用いて進むべき方角を確認して進むことにした。
光岳へ。
posted by (C)momo夫(代理)
そうするうちに開けた場所に出た。三吉ガレというところだ。通常易老岳から 30 分程度らしいが、 1 時間ほどかかってしまった。この辺りは雪もなく夏道も露出していたが、再び樹林帯に入ると残雪で見えなくなり、ルートファインディングの再開だ。
GPS も時折確認しながら進むも次の三吉平にも 1 時間ほどかかってしまった。
幸いここから先はテープも何とか見えるようになり、地図にもあるように谷筋を後は登っていくだけだった。この斜面からはさすがにノーアイゼンではきつくなってきたのでアイゼンを装着した。それも 6
本爪の軽アイゼンだ。 12
本の方が良かったかどうかは何とも言えない。結果的には問題なく進めたので。
光岳へ。
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斜面を登り、高度を上げて行くと風が強くなってきた。空は青いがかなりの強風が吹いていた。
静高平からセンジヶ原を抜けるとようやく光岳小屋が見えてきた。ようやく落ち着けそうだ。
出発してから 9 時間。道迷いというかルートファインディングで時間がかかりすぎた。とはいえ、通常のコースタイムが 8 時間ほどなので、良く言えば 1 時間オーバーでもマシな方だろうか。
小屋からは富士山、上河内岳、聖岳など展望はよかった。このまま終わっても良かったが、明日の天候は快晴かどうかわからない。日没までにはまだ時間があるし光岳頂上往復してもそれほど時間はかからないだろうと思って疲れてはいたが頂上へ行くことにした。
しかし、この頂上への道もわかりにくい。途中道標があっただけで、頂上と思しき方向へ行くしかなかった。
72
座目、登頂。こんなに苦労した登頂はない。すぐそばにある展望台からテカリ石を見るだけにして小屋に引き返した。
ただ、来た道を引き返すだけなのにルートがずれてしまい時間がかかってしまった。
光岳へ。
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光岩
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小屋に戻って腹ごしらえ、と思ったら momo が「バーナーがない!」と言い出した(ガス缶はある)。昨日の車中泊の際に準備をしたが、僕も momo もバーナーをどうしたかの記憶がない。探してみたが、見当たらない。万事休すだ。小屋とはいえ寒さがガッカリ感の上にのしかかってきた。
もう明日は聖岳に行くのはやめて下りることにした。
この日の光岳小屋の利用者は僕らを含め 9 人(ペア3、ソロ3)だった。小屋は 2 階建てだったが全員1階を利用した。トイレも解放されていたが、トイレにも雪が積もり、使うのも大変だった。
このあと、意を決して momo がバーナーを貸してもらえませんかと他の登山者にお願いし、何とか温かいものを食べることができた。感謝の一言に尽きます。
小屋の外は相変わらず風が吹き荒れていた。幸い雪は降っていない。明日目覚めれば静かなスカっとした空が見えることを期待し就寝した。
目覚めると天気は晴れているが風は収まらなかった。バーナーをお貸ししますよ、と別の登山者が言ってきてくれたがさすがに心苦しいので感謝の意だけを述べて、水とパンで凌いで出発した。
三吉ガレまでは昨日の記憶をもとにスムースに行くことができた。昨日と違って夏道を見つけてはそれを辿りながら進んでいったのだが、やはり残雪が増えてくると道がわからなくなり、尾根を外れ北西側斜面で迷ってしまった。 GPS は電池切れで役に立たない。方角を見定め、稜線に出ることにした(北東へ直登)。稜線に戻ればテープを発見、夏道にも出ることができた。標識発見!と思ったらそこは易老岳だった。易老岳手前のどこでどう間違えたのかはわからないが、易老岳~三吉ガレ間は往きも戻りもルートに悩まされた。
光岳へ。
posted by (C)momo夫(代理)
光岳へ。
posted by (C)momo夫(代理)
易老岳から登山口までは難なく戻ることができた。出発して5時間30分。デポした自転車で戻ること20分、芝沢ゲートに到着、帰路に就いた。
*帰ってから、ザックを整理していたら、バーナーが出てきた!ザックの隅々まできちんと見てなかったってことだ。
何てことだ。じゃあ、バーナーが見つかっていたとしたら聖岳へ向かっていたかというと、ルートファインディングもそうだが装備も不十分なところがあったため、結局下山の判断をしたと思う。結果的にはこれでよかったと思う。
最後に
・この時期服装には迷う。易老岳までは暑くてもここから先は風が吹けば寒い。レインウェアでも対応できるが、インナーは夏用のドライ系ではなく、冬用インナーでないと夜はツラい。
でもその判断は、上の状況がわからないと何とも言えない。実際4日ほど前に登った富士山の時は晴天、ほぼ無風で冬用インナーを上下着用していたが、逆に暑くなったので、今回は不要だろうという予測で夏用のインナーにしたが逆にダメだった。耐えられなかったわけではないが、インナーとしてはベストではなかった。
・ GPS は電波を捕捉すれば役立つが、寒さと電池の関係を考えると専用品にするか予備バッテリは必要だ。今回 iPhone にアプリを入れて GPS を利用したが、電池の持ちはすこぶる悪かった。( 注:2024現在でいうと、6年前は予備バッテリーを持っていなかった。今では当たり前でもこの時は100%にしていれば1泊ぐらい持つだろうという考えだった。ただ、バッテリー容量が劣化して少なくなっていたため、温度とともに急激に下がったのだろう。その後の山行ではこういう事態は起こっていない。 )
・ 12 本爪アイゼン+ピッケルの装備はどうだろうか。実際6本爪軽アイゼン+ストックで対応できた。雪質もやや固いものの日中は緩いので・・・。
・最後に装備の確認は油断せずにすることだな。今回のバーナーのように無意識で入れているとあるかどうかわからないため、無いとなるとあきらめてしまう。
タイトル通り、勉強になった山行だった。
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