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ガッツリ飯の魅力
樋口 直哉(作家、料理家)
炭水化物、脂質、うま味
人間が好む組み合わせ
メイラード反応で茶色に
皆さんは〝男飯〟という言葉を聞いたことはあるでしょうか。単純に男性が好む料理ではなく、誰もが好きな、いわゆる「ガッツリ飯」のこと。「うんちく満載」「豪華素材一点主義」「豪快」が特徴。そんな〝男飯〟のおいしさの小堤を探るべく、拙著『ロジカル男飯』(光文社新書)を出しました。
男飯は、炭水化物、脂質、うま味の 3 要素で、構成されています。濃厚で濃い味付け、いわゆるご飯が進む食事のことで、これは本来、人間が好む味付けなんです。
脂質とうま味という組み合わせの焼き肉は、炭水化物のご飯と一緒に食べると、よりおいしく感じるもの。カツ丼や親子丼、牛丼などの味付けは、しょう油と砂糖、そして肉の油の組み合わせです。しょう油はアミノ酸の塊でうま味の元。砂糖は炭水化物です。そこに肉から出る脂質が加わると、パクパク食べられる丼物の完成です。
色は茶色が特徴。この色は、肉が香ばしく焼ける時のメイラード反応によって生じます。アミノ酸などの化合物と糖分が反応し、褐色の物質ができるのです。これが茶色の正体です。
ちなみに、しょう油や味噌の茶色もメイラード反応の結果です。
そうはいっても、普通では満足できない人のために、〝男飯〟にはさらに一点突破の過剰さが重要になります。
例えば、帯広の豚丼のように、器からはみ出すくらいの肉が、花が咲いたようにのっているとか。次郎系ラーメンのように、量が半端なく多い、ニンニクが大量などというのも、一つの過剰さの演出なのです。
豪華さ加える趣味の料理
今回の本を掲載している料理は、いずれも元ネタがあります。各地の店で田出されている料理を元に、どのように作れば、家庭で近い味が出せるのかを追求したレシピになっているのです。
例えば、〝「超」生姜焼き〟は、福島の人気店で出されていたもの。厚切り肉カリッと焼いて、大量の生の生姜をのせます。〝「ワイルド」粗挽きハンバーグ〟は、あるステーキ店で出されていたものです。
〝「帯広を越えた」豚丼〟は、話題の北海道名物を家庭で失敗なく作れるようにアレンジしたレシピです。ポイントは焼き加減。豚肉の場合は、中信温度が 70 度になるのがいい焼き具合の目安です。表面に浮いてくる肉汁に注目して裏返します。薄切り肉であれば、肉汁が浮いてきたらひっくり返し、裏側をさっと焼いたら出来上がり。
料理本のレシピ通りに作るのは面倒、と思う人がいるかもしれません。料理を作りなれたテイクと、だんだん自分の味に近づいてきます。でも、一度は、レシピ通りに作ってみてください。自分の味付けとは異なる、こんな味付けの方法もあったんだと、新たな発見につながるはずです。
普段から家で料理を作っていると、料理が作業になってしまうことがあります。〝 3 食食べなければいけないから〟〝〟冷蔵庫の中の食材を消費するためなどなど。それも、一つの家庭料理のあり方かもしれません。でも、たまには、ガッツリ飯のような、趣味の料理に挑戦してもよいのではないでしょうか。
食べ歩きを趣味にしている人がいますが、自分の知らない味と出会うのが楽しいからですよね。同じように、楽しい料理があってもいいのだと思っています。=談
【文化 culture 】聖教新聞 2025.4.24
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