海外旅行紀行・戯言日記

海外旅行紀行・戯言日記

2011.02.12
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カテゴリ: Books
我が家には復刻版の「古寺巡礼」があり、青年時の著作であることから情熱に溢れ、奈良大和路の紹介書として秀逸なものだと思っています。
ただ1960年代には、政治精神は丸山真男がマックスウェーバーを標榜して活躍していたこともあり、彼は過去の人と片付られていた様で、彼の大著「倫理学」は読んだこともありませんでした。
今日では、丸山真男も批判されて落ちた偶像となり、政治はポピュリズムに席巻されて路頭に迷い、「皆さん 如何ですか?」と迎合するだけで、国民を啓蒙リードする気概が欠落する哲学不在の政治事態となり、各々自分勝手に意見を言い、勝手に行動する無政府状態となっている気配です。

主として「倫理学」を和辻哲郎の軌跡に寄り添いながら読む試みであり、「自叙伝の試み」に始まって、「古寺巡礼」に終わる構成となっている。

著者は上記意図に基づいて、次の様に彼の著作を評価していますが、過評価と思われないこともありません。

「倫理学」は、詩人的な直観と体系的な思考を目指す哲学者の論理が交錯する、やはり一つの傑作であった。其処には近代の哲学的思考の可能性と限界が、又避けて通ることの出来ない洞察の隘路との殆ど一切がある。
それは、時代の中で思考を紡ぎあげて来た文人哲学者にとって、一個の栄光とみなすべき事柄である。


しかし、和辻哲郎はカントからマルクスに至るまで、時代的制約はあるのですが、一定の評価をして、一派に与することは無いのは評価出来るのです。

危機は「資本主義を打倒しようとする思想ではなく、将に資本主義の精神自身に存する」、資本主義の精神とは「ブルジョア精神」であり、「ブルジョア精神」とは将に「町人根性」である。今や日本は「町人根性」に支配されており、危機は将にこの点に存する。
危険は取り除かれなくてはならず、町人根性の支配は打破せられなくてはならぬ。


現在の混迷は、世の中すべて金権主義が蔓延し、ビジネス効率を最善とする資本主義パラダイムに堕していることは確かですし、政治も其処から抜け出す哲学が感じられません。
今話題となっている持続可能な社会保障制度構築も頓挫しているのは、和辻が言う「町人根性」パラダイムの弊害と断じて間違いは無さそうで、彼の指摘は時宜を得ている様に思われるのです。

この書籍、新書版ですが、これまで流布している既成概念・固定概念から離れ、ショーペンハウエル宜しく、自分から進んで現状への警鐘・難局打開のヒントを得るにはお勧め出来る本です。





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Last updated  2011.02.12 19:13:55
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