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人は在るのか有るのか…。俺は在るのか有るのか。消えてしまいたいという願いは叶わずただ終わりまでのカウントダウンを漫然と感知する。確かに在るものである。だが、有るものになりたい。でなければ、消えてしまいたいという願いは成就しない。君を抱きしめたいその君は在るものか?有るものか?願いは在るものにしたいのではなかろうか?自らは有るものでいいのか?なんのために抱きしめるのか?俺は在るものか?意味をなしているのだろうか?願いは在るものに与えられた特権なのか?有るものの儚き夢なのか?俺は有るものか?意味をなしているのだろうか?願いは有るのもの与えられた権利なのか?在るものの尊き夢なのか?我は在るものである。だが、有るものになりたい。生きるために覚え、覚えるために忘れる。君にとって在るものであるか?有るものであるか?一生背負っていかなければならない十字架なのか?忘却の彼方へ葬り去ってくれないか?俺は有るものになりたい。有るものになりたい。
November 19, 2003
いつまでも鳴りやまない君の声ありがとうとさようならを並べ、飛びっきりの笑顔で別れた最後の場面あれは、夢だったのか、それとも現実か……いくつもの二人っきりの秘密を紡ぎ、夢のように過ぎ、夢のように終わったあの秘密の扉はもう開かれることがない君の声が響いている限りは……映画の一場面のようにジャンボジェットが突っ込んだあの日ネオンの海で溺れかけている俺に微笑みかけたのは君だ「やっと出会えたね」死神を背負い世の中全てに呪詛を吐き散らしていたこの俺に天使が微笑んだ「ああ、やっと……、出会えた……」グラスを満たしていた酒を一息に飲み干し、溺れ人のように無我夢中で空気を貪る「やっと出会えた。もう、出会えないかと思っていた……」おもむろにポケットの中で潰れたショートホープを咥え、ジッポで火をつけようとする残念ながら、オイルが揮発してしまったようだ。癇癪を起こしかけた俺に、ライターを差し出す。「ありがと、……、これから用事あるか?よかったら店変えないか?」こんなしけた店に君を置いておくわけにはいかない。いたずらな瞳をこちらに向け、「ふけちゃおう。どこに連れて行ってくれる?」「姫様のご要望とあらば、天国でも、月の向こう側でも……」そして、俺と沙貴の秘密が始まった俺は失っていた片割れを手に入れ、この街は俺のもののようかに振舞えることができた全てが新鮮で刺激的で怖いものさえなかった、沙貴さえいれば。それは、麻薬のようであった。そして、悲劇の始まりでもあった。貪りあう愛の晩餐饐えた獣の匂いが漂う愛の巣苦痛と快感、小さな死と獣じみた躍動線香花火のような慎ましやかな快楽とは程遠い、二つだったものが一つになろうと願う儚くも狂おしい宴このちんけな街でも、光り輝き、全てがうまくいった満たされ、遂に俺は、唯一の武器である牙が折れた金では買えないものを失い、崖から落ちるようにボロボロになった俺がそこにいた全ては夢だったのか?沙貴がキスの雨のあと、出会ったときの微笑みで「ありがとう、さようなら」と……視界は紅で染まり…………イラクで偉大なる親父の真似しか出来ない大統領が中東でゲームを始めたあの日自棄酒で声も変わり果てて荒みきっていたときに出会ったのは君だ「また、出会えたね。」幾多の犯罪を犯し、死神を背負った俺に堕天使が微笑んだ「……、お前、沙貴か?」受け付けなくなった酒を煽り、絶句する「あなたに捨てられてから、地獄を見たのよ、地獄に連れてってくれるとは言ってなかったわ」変わり果てた沙貴を見つめる「おまえ、死んだはずじゃ……」……ふと目が覚めた気が付くとそこは地獄だったお前のいない地獄だったお前がいないこの世こそ地獄だった後悔の海で溺れるいつまでも鳴りやまない君の声ありがとうとさようならを並べ、飛びっきりの笑顔で別れた最後の場面あれは、夢だったと願い、現実(うつつ)に絶望する血まみれの手でお前を掴もうと足掻くこの街でまた沙貴を探して彷徨うあの秘密の扉を沙貴と開こうそう希い酒を煽る沙貴の願いを叶えよう「私が欲しいのは愛か死よ。それだけ」永遠を願う、そして、永遠を与えよう沙貴、お前は誰なんだ……教えてくれ……
November 14, 2003
いつもと変わらない。グラスの中にオースチンニコルス。止まり木の隣の席は空いたまま。いつもと変わらない。同じ曜日に同じ時間、同じ店で同じ酒を舐めている。止まり木の隣の席は空いたまま。グラスの中に満ちているのは、悲しみではない。寂しさでもない。空っぽのココロは、それじゃ満たされない。止まり木でグラスを傾けながら萬月の世界にひたる。飢えている。人間臭さに飢えている。一定のリズムを刻む。マンネリズム。変わらない、全てが色褪せた世界。保守的ではない、革命だ。満たされない。いくら身体を重ねても満たされない。胸いっぱい、君の香りを吸い込んでも満たされない。熱い鉄棒で君の柔らかな傷を舐めても満たされない。君に食われたい。この血を肉を魂を満たされない。破壊されたい。侵食されたい。犯されたい。幾多の犯罪に手を染めようが、幾多の夜を欲望のままに過ごそうが、満たされない。声が枯れるくらい叫んでも、声が変わるくらい飲んだくれても、満たされない。偽りを続けるくらいなら、消えてしまったほうがましだ。いつもと変わらない。同じ曜日に同じ時間、同じ店で同じ酒。止まり木の隣の席は空いたまま。哭いている。俺の叫び。
November 13, 2003
『ねぇ、そろそろけりをつけましょう。』大切な話があると切り出し始めた電話の向こうのついさっきまで何の隔たりもなく愛し合い抱き合った女(ひと)の冷たい一言。「けりって何の?」そうとぼけてみる。『別れたいと思うの。唐突かもしれないけど。』そういって、この一ヶ月、一人で思い悩んでいた様子を切々と話し始めた。見え透いた嘘であったが、俺を怒らせるために、気になっている人がいるんだなどと始める。すぐにいいよと返事が出るわけない。お互いに「愛している」という言葉を使わないという約束は固く守られたまま終焉を迎えようとしていた。今まで顔が目の前にあるような印象的な画面が、彼女が背景に溶け込んで、遠く見えてしまう、写実的な風景に変わる。自分の中で、何か壊れたときは、こうなる。少なからずショックを受け、冷静に次に紡ぎ出す言葉を詮索し、口の中で何度も反復する。怒りによる冷たい炎と悲しみの熱い氷「ああ、少し考えさせてくれ。」もう終わりかと意外にあっさりすべてを受け入れようとした。ふと2ヶ月前に別れようかなと思い立ったことを思い出した。弱音を吐く彼女にそんな女と一緒になるつもりはないよと切って捨てたのだ。自分の足で立って歩ける人と俺は一緒になりたいと。彼女はふて腐れ、そして静かに涙を流した。背を向けてテレビを眺めている俺の背中に、彼女がゴンゴンと2回、おでこをあてる。そして、いつのまにか寝てしまった。安らかな寝顔に涙の跡。ベッドから抜け出し、煙草をふかしながら、別れを予感していた。きつくいったものの、彼女を養うくらい屁でもないように頑張っていたのだ。その時まで、強い女(ひと)でいて欲しかった。時が満ちたら、約束を交わすつもりもあった。やはらかい頬の涙の跡をなぞっていると、彼女は目を覚ました。冷たいタオルを渡して、「せっかくの美人が台無しだぞ。」と憔悴しきった彼女をいたわる。「まだ、この女(コ)を手放せない」視界には彼女の顔しか見えないのだ。背景と一体化した冷たい感じはしない。2ヶ月前のことを反芻しながら、事務的にことを終えようとする彼女を見つめる。やはり、背景に溶けたまま。「一週間後、お互いの荷物を持ちよって会おう。別れてから何度も会うのいやだろ?」別れを前提にしたような言い方だ。そう思いながら、店を出ると別々の方向に歩き出した。彼女にはひとつ隠し事がある。一日一回必ず連絡をするという約束で夜の街と戯れることを許されていた。俺にとって彼女に足りないものを満たしてくれる女が存在したのだ。その女に出会ったのは彼女と付き合う2ヶ月前。ずるずると続く関係を清算して、先ほど、別れ話を切り出された彼女にプロポーズしようと思ったのだ。時が満ちるのは少し後になるが、仕事が評価され、それが収入に反映されると約束されたばかりなのだ。その報告をしようとする前に、別れ話が始まった。彼女のわがままは日増しに強くなり、それから逃げることなく、結果を求めて頑張ってきたのだ。驚く顔を見たくて。時が経ち、その時の話をすると、『あなたが私のために頑張っていたのは知っていたわよ。』と・・・。更に、『あなたは、私を必要としていなかった。』と続けた。「君は俺の何を求めていたの?」彼女はしばらく考えて、『あなたにはわからないわ。』初めてみせる優しい聖母のような微笑みで鉄槌を下した。遠い昔のことのようで全てが色鮮やかに鮮明でつい昨日のことのように思い出した。いとおしい人を腕に抱きながら、寝息をたてる天使のほほを優しくなでる。そこには涙の跡はない。いたずらな目をこちらに向けて、『愛してるって言って。』考え事がいつもより長かったのが不安なのか、あまり使うことのない言葉を要求してきた。この女(コ)にとっては、ごく普通で、ごく当たり前、恋人同士の間で絆を確かめ合うための言葉なのだ。ほほにくちづけをし、「好きだよ。」と返した。姫はお気に召さないようだ。白く透き通って美しい肌と均整の取れた女性らしさを隠しもせず、半身を起こして上から覗き込む。『なーんで、愛しているって言えないの?私のこと嫌い?遊び?私はこんなに想っているのにぃ。』大きなアクションとともに紡ぎ出された言葉は、すべて直球でココロに突き刺さった。アクションの続きは布団に顔を押し付け泣いているように見えた。男は女の泪に弱い。慌ててココロの中で辞書をめくっていた。頭をかきむしっている様子を察知したのか、彼女がおもむろに動いた。俺は、本気で困ると頭をかきむしる癖があるのだ。嘘泣きだったとあっけに取られている俺をよそに、いたずらな目を光らせて、俺の困っている様子を見つめている。聖母のような優しい微笑みを彼女に見たとき、長らく凍りついていたココロの中にほとばしるものを感じた。とても熱く、それを押さえ切れない。弾けてしまう。何が起こるかわからない不安に駆られながら、彼女の肩に手を置き、しっかりと目を見つめる俺の肉体があった。そして、口からほとばしるものが出てきた。「愛しているよ。」明るく振る舞っていた彼女は、精一杯の強がりをしていたのか、端正な顔をしわくちゃにして泣き出した。途切れ途切れになる鳴咽と声は、ずっと不安でしかたなかったことを訴えていた。空のように突き抜けていて太陽のように明るい女(ひと)とまわりから思われている彼女は、強さと弱さをその細い体に共存させていた。どんなに体を重ねても全てが一体になっているわけじゃなくて不安だったと訴えたのだ。そして、「愛しているよ。」と今度は自分の意志を確かめるように彼女に素直な気持ちを伝えた。確かめ合うわけでもなく、自然に唇を重ね、ひとつになった。こんなに小さくてか細いんだ。守らねばならないものと抱きしめるたびに頭の中で反芻し、ちっぽけな言葉ながら、「愛しているよ。」『私も愛してる。』とお互いのココロの鍵を開け放ち、何もかもひとつになってゆき、その想いが頂点に達したとき、まばゆいばかりの閃光の中で果てた。お互いに求めるまま、疲れ果てて、夢の世界の住人になっても、交わりつづけた。『愛』というものを理解できずに困惑し続け、贋物にココロはただれ、やけどをしていた。氷は冷たく、炎は熱いのだ。素直に表現できずに麻痺し、ココロはひどくただれていた。聖母のキスで浄化されていく魂が心地よかった。『あなたが人に期待して、何かを与えてもそれは何もしていないことに等しい』
November 10, 2003
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