真理を求めて

真理を求めて

2003.11.13
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民主党は、今後の国会での争点にイラク問題を据えるということを言っているが、イラクの現状を理解するために大変参考になるような情報をジャーナリストの田中宇さんのレポートに見つけることが出来た。

田中さんは、5月に一応の戦闘が終わったときに、フセイン軍がほとんど正面からの戦闘をせずに消えてしまったことに疑問を投げかけていた。あまりの戦闘能力の違いに、フセイン軍は逃げてしまったのだと一般には解釈されていたのではないだろうか。これを、結果として逃げたのではなく、戦術としてあえて逃げたのではないかと田中さんは推理している。

田中さんの推理は、11月10日にアメリカの新聞「クリスチャンサイエンス・モニター」に載った記事を基にしている。これは、国連の対イラク査察団の主要メンバーだったスコット・リッターによって書かれていた。田中さんはまず次のように報告する。

「この記事によると、リッターら査察団は、イラクの諜報機関の拠点をいくつも査察していくうちに、フセイン政権が「即席爆弾」improvised explosive devices、IED、即席爆発装置)を作る技術を諜報部員たちに習得させていることを知った。即席爆弾と、特殊な軍用品の兵器材料が手に入らない場合に、民生品として手に入りやすい原材料だけを使って作る手製の時限爆弾、地雷、手榴弾などの総称で、ゲリラやテロリストが作ることが多い。」

この報告によれば、フセイン軍は、最初からゲリラ戦の可能性に備えて準備をしていたのだと考えられる。ということは、結果として正面からの戦闘がなくて逃げたのではなく、ゲリラ戦に備えて戦力を温存するために逃げたのだと解釈したくなる。さらに、次のような報告がこの推理を裏付ける。

「イラクの諜報部員たちが即席爆弾を製造使用する技術を持っているということは、今のイラク情勢にとって重大な意味を持っている。イラクに駐留する米軍が受けている攻撃の多くは、即席爆弾を使って行われているからである。このことをふまえると、米軍や国連事務所などに対する攻撃は、イラクの元諜報部員たちの仕業である可能性が高くなり、フセイン政権の諜報機関がいまだに地下組織として存在し、そこが米軍に対するゲリラ戦として爆破攻撃を組織的に行っているのではないかという見方が強くなる。

 リッターは、イラクの諜報機関は、バグダッド市内やイラク国内のどこにどういうフセイン政権の支持者がいて、どこに反体制の人々がいるかよく知っていたから、フセイン政権が消滅した後も諜報機関が地下組織として生き残ることは難しくないと主張する。」

このような推理から得られるイラクの現状に対する理解は、「まだ戦争は終わっていない」ということだ。考えてみれば、フセイン軍は逃げ出したが降伏をしたわけではない。アメリカの側が一方的に終結宣言をしただけだった。マスコミの情報ではアメリカ側のニュースしか入ってきていないので、イラクで暴れているのはフセイン政権の残党であり、単なる犯罪者にすぎないのだというイメージが持たれている。しかし、これが最初からの戦術で、戦争がまだ続いているのだと解釈すると、これをアメリカ軍が簡単に納められるかどうかは疑問を持たざるを得ない。

昨日の大ニュースではイラク駐留のイタリア軍が大規模な攻撃にあって多くの犠牲者を出したというものがある。これも、マスコミのニュースでは、単なるテロリストの悪辣な行為ということになっているが、イラクがまだ戦争が続いているという状態ならば、敵と見なした相手に攻撃を仕掛けてくるのは、戦争であれば当然予想できることになってくる。つまり、イタリア軍もアメリカ軍の仲間であり、敵だと見なされたということをこれは意味しているのではないか。



[TUP-Bulletin] TUP速報210号 帝国現地レポート(24)によれば、イラクでは連日アメリカ軍兵士が殺されているだけではなく、逆にアメリカ軍によってイラクの民間人がたくさん殺されているという事実もあるそうだ。次のような報告がある。

「パトロールするたびに米兵が襲われるので、ここ数週間は、米軍の市内パトロールは行われていない。しかし、市民がこれだけ抵抗するのは、米軍側に非があるようだ。

4月28日・・・デモ中のファルージャ市民に米兵が発砲、13人を射殺。
4月29日・・・ファルージャ市民二人が、理由もなしに米兵に射殺される。
9月12日・・・米兵がファルージャ警察官に発砲、12人を射殺。

 そして10月には、爆弾攻撃を受けた米兵が、機関銃を乱射して一般市民を射殺、また、通りすがりの車にロケット弾を発射、運転手もろとも撃破した。
 さらに、ガソリンスタンドの販売員に手錠をかけ、店に火をつけ、彼を後ろから射殺した。 後に、米兵は病院の死体置き場に行き、黒こげになった販売員を見つけ、死体から手錠を取りもどしたという。

 しかし、米軍の犯した最大の間違いは、ファルージャの有力な部族長たちをかたっぱしから逮捕したことだろう。彼らにとって、これ以上の屈辱はない。
 最近もまた、尊敬されている部族長アル・サーダンが、自宅で20人の大切な客人をもてなしている最中に、米兵により逮捕された。」

これでは、アメリカを支持してゲリラを掃討しようという気持ちがイラク市民の中に生まれるはずがないと思う。

日本がイラクに自衛隊を送るのは、建前上はイラク市民のために、イラク市民を支援するという名目で送ることになっている。しかし、イラク市民はそう受け取ってくれるだろうか。アメリカ支援のためにきたという風に受け取らないだろうか。イラク市民がそう受け取ったら、自衛隊も敵と見なされ攻撃の対象になるはずだ。そうでないと考える方が難しい。



国会の答弁では、このような疑問に対して政府がどのように説明をしていくのかに注目したい。なぜなら、遠いイラクで行われていることが、政府の対応によっては日本国内にいる我々にも大きな影響を与えることになるかもしれないからだ。自衛隊という軍隊が、アメリカの同盟軍と見なされれば、戦争状態にいるイラクのフセイン軍の攻撃を受けるというのは当然考えられることだ。さらにその結果が、今度はイスラムの敵と見なされるようになると、世界中のイスラムのテロネットワークに日本がねらわれるという可能性も出てくる。

イタリア軍はイラク軍の敵になった。もしイタリアのどこかでイスラムのテロが発生するようなことが起きたら、イラクの敵はテロの標的にもなるということが現実のものになってくる。テロには断固として戦うべきという意見もあるかもしれないが、戦うことでテロが防げないものであることは歴史が教えている。

問題の解決は難しいけれど、それが光のある方向へ行くかどうかは、まっとうな議論によって解決が図られるかどうかにかかっていると思う。果たして国会ではどのような議論がされていくのだろうか。





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最終更新日  2003.11.13 09:16:02
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