名無し人の観察日記

名無し人の観察日記

2005.10.12
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 以前 一巻のレビューを書いた「黎明の戦女神」 も無事二巻が発行されました。文明崩壊後の世界を舞台にした戦国絵巻も新たな展開を見せ、徐々に崩壊した世界の様子や、生き残った混世魔(カオス)たちの目的について触れられるようになります。

 一巻で北関東に覇を唱える大領主、鯰田とその腹心で混世魔の彩子を倒した「繚乱の軍団」。その活動に目をつけたのが、「中央」と呼ばれる謎の勢力。彼らは大崩壊によって消滅したはずの高度文明を未だに保持しており、「中央」に認められた勢力は乱世統一に向けて一歩前進すると噂されています。
 繚乱の軍団長・藤沢梓と主人公の峠正樹はこの中央からの招待を受け、彼らが差し向けた船で西へ向かいますが、そこへ大崩壊に伴う地殻変動で出現した駿河湾沖の新島を根城にする海賊、雷鮫の船団が襲ってきます。辛くもこれを撃退した梓は、船団のリーダー、真鈴に自分たちの仲間にふさわしい素質を見出します。
 ようやく到着した「中央」は、旧大阪市中心部にあって、確かに滅びたはずの科学文明を保持していましたが、その武力は決して強大なものではありません。最初は居丈高に自分たちへの臣従を要求してきた「中央」のリーダーに対し、梓は「中央」が各地のリーダーの権力を裏付ける権威……かつての天皇家のような存在になることで、その生き残りを図るほうが賢明だと主張。彼らを説得する事に成功します。
「中央」との友好関係を確保し、ひとまずの目的達成を果たした梓は、雷鮫の船団を仲間に引き入れるべく、武器商人松古井の船で彼らの本拠地へ潜入します。その時、梓一行の襲撃に失敗した真鈴は、粗野な対立派閥のリーダーと結婚させられそうになっていましたが、間一髪、式場へ乱入した梓に救われます。
 救われた真鈴は、梓が私利私欲で戦っているのでもなければ、自分たちを強制的に配下に組み込もうとしているのでもないと知り、梓なら信頼できると、同盟を組む事を了承しました。
 その頃、繚乱の軍団にとっては西の雄敵とも言うべき領主、タイガーは名古屋近辺を統治する中部最強のリーダー、明倉景(みくら・みかげ)の大攻勢を受け、梓に同盟と援軍を求めてきました。景は梓と同年代ながら、彼女に匹敵するカリスマと、崩壊前は大商社の社長令嬢だったという経歴を生かして揃えた強大な軍事力を誇る領主。梓はタイガーが敗れれば自分たちも危ういと考え、元から同盟関係にあった房総半島の領主、南郷朱美率いる「黒潮の軍団」、そして雷鮫の船団と共にタイガー軍支援に回ります。
 しかし、タイガー軍は苦戦を強いられていました。景の配下にある混世魔がタイガー領と明倉領の国境線となっていた浜名湖の湖面を能力で固化し、大軍を突入させたためです。自然の防壁を無効化されたタイガーに対し、梓は敵軍を領内深く引きずり込んでその戦力を分散させた上で、精鋭を率いて敵本陣を突き、景を討ち取る奇襲作戦を提示。自ら指揮をとります。


 一巻では旧神奈川近辺だけが舞台だった作品世界も、二巻に入り、旧東海道地域全域へと広がりを見せてきました。かつての戦国時代でも、旧東海道といえば織田・豊臣・徳川の戦国三傑を生み出した土地ですが、この世界でも乱世の覇を賭けるに相応しい強豪のひしめく土地となっています。
 人を服従させるのではなく、心服させて味方につけていく梓が豊臣秀吉なら、ライバルとなる「もう一人の戦女神」、明倉景は織田信長といったところでしょうか。苛烈な態度で敵も味方も邪魔するものは踏み潰し、力ずくで服従させる彼女は、まさに悪の覇王と呼ぶに相応しい、強烈な個性の持ち主です。
 タイガーは詳しく描写するとネタばれになってしまうのですが、イメージ的には北条早雲が近いような気もします。家康的キャラは……まだいませんね。
 こうした個性的な面々に加え、三巻では東北の覇者・伊達の登場が予告されています。東北で伊達と言えば、かの「遅れてきた戦国大名」、独眼竜こと伊達政宗。伊達政宗は作者の中里氏が愛して止まない武将だけに、「黎明の戦女神」世界における伊達も、政宗のイメージを引き継ぐ存在として縦横に活躍してくれそうです。
 戦国と美少女と近代兵器と近世戦術の入り混じる「なんでもあり」の世界。今後も目が離せない作品として注目していきたいと思います。





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Last updated  2005.10.12 22:08:29コメント(0) | コメントを書く


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