【粗筋】
「女の腐ったような奴といったら女が腐っているのかい、そうじゃないだろ。ダニのような……といったらダニじゃないだろう」
「のようなもの」は似て非なるものをいうのだと聞いた男、家に帰るが、最近飲み屋の女といい仲になっているから、かみさんが焼餅をやいている。この日も喧嘩になって、
「じゃあ、あの女は何なんだい。言ってごらん。妾じゃないのか」
「あれは妾じゃない……妾……のようなものだ」
かみさん怒るまいことか。そこで説明。
「女の腐ったようなといったら、女が腐っているのかい」
「お前みたいな奴だよ」
「ダニのようなといったら、ダニかい」
「お前みたいな奴だよ」
「妾のようなといったら……」
「妾だよ」
そばにあった物で頭を殴られ、血だらけになって隠居の家に飛び込んだ。話を聞いた隠居、「のようなもの」は「妾」についた時だけ用法が変わると言う。
「妾のような……という場合だけは、逆に意味を強めるんだ。よく考えてごらん」
「妾のようなもの……あれっ……妾じゃないですか」
「それにしてもひどい傷だな。何で殴られたんだい」
「ええ、バールのようなもの」
【成立】
立川志の輔が演じている。清水義範が1994年5月に『オール読物』に掲載したものが原案。作者も「妾のようなもの」は面白いと志の輔をほめていた。それにしても救いのないこの男、他人の不幸ってこんなにも笑えるものか。
【一言】
町を歩いていて知人に逢い、連れを「女房のようなもの」と紹介するのも考えた。(立川志の輔)
【蘊蓄】
清水義範:1947年10月28日、名古屋に生まれる。81年「昭和御前試合」が公式デビューとなっているが、それ以前にも作品は書いていた。88年「国語入試問題必勝法」で吉川英治文学新人賞を受賞。この必勝法は、私が受験生の大学受験対処法に取り入れていたのに似ている。これを極めると、本文読まないで正解が出る。得点率8割保障。
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