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2004年09月28日
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 私達の泊まったローマのホテルは、コロンナ広場を挟んで、ムッソリーニが演説したという、現在の首相官邸の正面にあり、私達の部屋は別の裏路地に面していた。 窓からは人々が行き交う様子がよく見え、夜ともなれば、アコーディオンの物悲しげな音色がどこからともなく聞こえ、酔っ払った女性が舌を巻いたイタリア語をまくしたてて通るのが聞こえた。 ローマは生活感のある、活気に満ちた街で、人も生き生きしていて、親切だ。 ミケランジェロの彫刻のように、筋骨逞しいハンサムな男達や、胸の大きな彫りの深い美女達が通りを闊歩している。 

 ただ、陽気なラテン系と言われるイタリア人には、どこか物悲しさが感じられる。 フランス人の醒め方とも、どこか違うような気がする。 若い頃、アメリカで、結婚式によばれ、大人が大はしゃぎしている姿に面食らい、アメリカ人て陽気なのね、とつぶやくと、皆そうしようと務めているのさ、という答えが返って来た。 あの、世界のナンバーワンのアメリカ人の、希望を信じようとする、積極的的な「やる気」は、イタリア人にはないような気がする。 古くて長い歴史を生きて来た人間には、運命に対する諦めみたいなものがあるのかもしれない。   

 ローマは世界各地から観光客がやって来るので、イタリア人のみならず、色々な国の人間と知り合いになった。 ホテルのテラスのでは、アメリカ人、オーストラリア人、フランス人、スウェーデン人とちょっとしたお喋りを交わした。 ホテル近くのパンテオン広場には、沢山のカフェが、パラソルの下にテーブルを並べていて、私達はしょっちゅう訪れていたのだが、フォロ・ロマーノで一緒に道に迷った、インテリ風のイギリス人カップルにも又出会った。 次ぎの日の午後、突然、雷と激しい土砂降りが続き、マクドナルドのパラソルの下で、雨をよけていたが、あまりに濡れるので、隣のカフェに飛び込んだら、さっきまでマクドナルドで雨宿りしていた中年のドイツ人カップルも、やっぱり一足先に飛び込んでいて、双方ビッショリなまま大笑いをしたっけ。 夜、レストランで食事をしていた時には、天使のように可愛い赤ちゃん連れの、若く美しいイタリア人カップルとの、なごやかなひとときが楽しかった。 人との何気ない温かい交流は、とてもいいものだ。 多分、旅を印象づけるのは、人との交流だと思う。

 ホテルの朝食の隣のテーブルにいたのは、イラクからの難民としてスウェーデン国籍を取った紳士だった。 スウェーデン語は独特で難しく、国民も閉鎖的で、最初はとても苦労したらしいが、今はひとかどの成功者のようだ。 一旦言葉やコミュニケーションの方法を覚えれば、スウェーデンは温かく迎えてくれる、と言っていた。 
 「だから、大事なのは、言葉です! コミュニケーションが何より、人との繋がりには重要ですよ。」

 その通りだ。 ただし、スウェーデン、ロ-マ間が3時間、パリ、ローマ間は2時間。 ヨーロッパ諸国は、宗教も同じで、言葉も似ている、同じ文化圏なのだ。 歴史的にも地理的にも、戦争だけでなく、長い交渉を持ち続けて来た。 だから、ユーロ圏は、お隣同士という親近感とライバル意識で繋がっているらしい。 それに引き換え、日本は言葉も文化も外見も違う。 私達が14時間飛行機に乗ってローマに着いた、と言ったら、遠い!、と絶句していた。

 フィレンツェの美術館で列の後ろにいたフランス人親子も、ヨーロッパは近所だから、と言っていた。 そして、私達が持っていた日本語のガイドブックを興味深そうに眺めていた。

 さて、異邦人、日本はどうすればいいのか? 古い歴史を持つ点では、ヨーロッパに似ているのだが、敗戦後伝統を否定し、新しい価値や経済戦争に向かった点はドイツやアメリカに似ている。 戦勝国フランスやイギリスは伝統を踏まえた上で、新しいものを取り入れて、成功しているが、敗戦後イタリアは過去の遺産に戻ってしまったように見えるが、どうなんだろう? ユーロ圏は幾多の事情を抱えながら、今やご近所同士肩を寄せ合い、アメリカや日本に対抗しようとしている。 例のイラク出身のスウェーデン人が言うには、スウェーデンは税金や経済の点で、日本を引き合いに出して、1、2を争っているらしい。 ウーン、日本てそんなに意識されているのだろうか? アメリカは新生の移民国家ではあるけれど、基本的にはヨーロッパと同じ文化圏である。 はてさて、経済大国にはなったものの、アジアに盟友はいないし、日本はこのままでは、孤立してしまうのではないか、と心配になったほどだ。



 何だか今日の日記は、売れない評論家の文章のようになってしまった。 ただ、これから世界はますます狭くなり、お互いの関係の密度も濃くなる、と思うのだ。 我慢強く、好奇心が強く、しかも対立より「和」を重んじる日本人が、集団としてではなく、個人として、世界の人々に向かって、堂々となごやかに自己主張し、相手の主張も理解できるコミュニケーション能力を持てば、世界にとっても、そんな素晴らしいことはない、と思うのだ。  












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最終更新日  2004年09月28日 10時26分40秒
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