October 7, 2006
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監督 : 生野慈朗
出演 : 山田孝之  / 玉山鉄二  / 沢尻エリカ
原作 : 東野圭吾  『手紙』(毎日新聞社刊) 挿入歌 : 小田和正 『言葉にできない』

今年は邦画が良いですね・・・。

 先日観た「地下鉄(メトロ)に乗って」も大変良かったですが、邦画の中では私の中でこの作品「手紙」が今年の1・2を争う感動作品でした。

理由はどうあれ殺人という行為の罪の重さは計り知れない。

その苦しみは残された遺族だけに留まらず、殺人者本人及びその身内の一生をも崩壊させて行く。

罪を償うという事は、ただ悔いて謝れば良いと言うものではない。

ただ、刑に服して済むものでもない・・・・殺された人の奪われた人生は帰ってこないのだから。

そして、残されたものの悲しみも癒える時は来ないのだから・・・・

 殺人という究極の犯罪に留まらず、すべての罪にも同じように償わなければならないものの大きさや失う代償の大きさを考えさせられる映画です。

これからの社会を担う若者に多く観て、感じて欲しい作品でした!


Story : 川崎のリサイクル工場への送迎バス。最後部座席に野球帽を目深に被った青年の姿がある。武島直貴、20歳。暗い目をしたこの青年には、人目を避ける理由があった。兄・剛志が、直貴を大学にやる学費欲しさに盗みに入った邸宅で、誤って人を殺してしまったのだ。数度にわたる引越しと転職。兄貴がいる限り、俺の人生はハズレ。そういうこと―。自暴自棄になる直貴を、深い絶望の底から救ったのは由美子の存在だった。しかし、その幸せが再び脅かされるようになった時、直貴は決意する。…塀の中から届き続ける、この「手紙」という鎖を断ち切ってしまおうと。


 ここからはネタバレになっているかもしれませんがご了承ください。

 早くから両親を亡くした兄弟の弟を心から思う深い愛情から体を壊し、勉強の出来る弟を大学に出してやりたいと思う一心で思い詰めるあまり、盗みに入ってしまった兄の運命が崖から落ちていくように最悪な結果を生んでしまう。あのとき、弟が大好きな甘栗を目にしなければ・・・・

 両親を亡くした兄弟のお話で、先日も「涙そうそう」を観ましたが、やはり共通して言える事は、頼れるもののない兄弟、兄妹の絆は強く、どちらかに人並みの人生をと考えると、得てして犠牲が伴う事なのですね、普通なら両親が健在で経済的不安も少なければ、努力次第で当たり前のように行きたい道を選んで行けるのに、どちらかがその経済力を支えて行かなければならない・・・

 お互いに少しずつ我慢して協力し合う選択肢を選ばないのは、学歴がなく苦労して社会で生きて行く辛を嫌と言うほど味わって生きて来なければならなかった兄が弟や妹にはそういう思いをさせたくない、人並みの人生を歩んで欲しいと願う強い愛情に他ならないのです。

 しかし、起してしまった罪の重さは、例えその動機が家族への愛のためであろうと、荒んだ心の凶悪犯や変質者が犯した罪と全く重さは変らないという事。

 人一人が亡くなった罪を償うという事は、刑に服し、残された遺族にあやまり続け償って行く事だけではすまされない、残された犯人の身内の人生、すべてをひっくるめて償って行かなければならないのです。

 兄剛志が犯してしまった罪の為に社会から締め出され、人目を避けて転居を繰り返しながらも、兄が罪を犯してしまったのは自分のためだったからと思い、自分の道を実現しようと前向きに努力して行く主人公直貴が、つかみかけた人生の成功もやっと見つけた愛もすべてが社会に奪われ、差別を受けて苦しんで行く様を山田孝之が好演しています。

ネタも良いのでしょうが、コントが凄くうまくて、思わず私も受けて笑っちゃいました。

 沢尻エリカは、この映画を観るまでは、単なるアイドル女優だと思っていましたが、主人公と同じように辛い人生を生きて来て、若くして酸いも甘いも噛み分けた芯の強さと底知れぬ優しさを備え、毅然として生きる女性役を好演していました。わたし的に好感度アップです。

 杉浦直樹演じる有名電気チェーン店の会長の言葉によって、私もいろいろ考えさせられました。

 「君はお兄さんの犯した罪で社会から差別をされて来た事を不当な事だと感じているかもしれないが、それは差別でも何でもないのだ、むしろ当然の事なんだ、それだけお兄さんの犯した罪は、被害者本人や遺族へ苦しみを与えたばかりでなく、なんの罪もない身内に対しても及ぶ罪なんだ。お兄さんは全部ひっくるめて償わなければいけないんだ。」

 「でも、君はここからひとつひとつ始めて行けばいいじゃないか、ここから一つ一つ繋げて行くんだ、実際にもう既に一つ心が繋がっているじゃないか・・・」

 なんだか、私自身も、目から鱗が落ちたような説得力のある言葉でした。罪とはなんなのか・・・その一つの定義が示された思いでいろんな意味で考えさせられる思いが・・。

 玉山鉄二演じる兄剛志は、愛する弟を心配するあまり毎日のように一生懸命に明るく書き続けた手紙が、その手紙が届くせいで逆に弟を苦しめていることに気が付かなかった。そして、毎月6年間一度も欠かさず書き続けた謝罪の手紙が遺族の苦しみを癒すものではなく、逆に忘れさせない苦しみを与え続けてきた事にも気が付いてはいなかった、弟の最後の手紙に書かれていた事は想像も付かないことだった・・・・。それに気づかされて遺族へ当てた最後の手紙も切なかったです。

tegami1.jpgtegami2.jpg

 ここからは号泣モード突入で、拭いても拭いても涙が止まらなくて、映画館を出るときは頭痛がしていたほどです(笑)

 私は、手紙を書くことがなくなった剛志が、自分が犯してしまった罪が自分の想像した以上に大きかった事に衝撃を受けて憔悴しきって、死んでしまうのではないかと想像していました。きっと刑務所の慰問に来た直貴の舞台のラストシーンもそういう観客の想像を見透かしているかのようなカメラワーク・・・・。

 コントを楽しそうに観ている観客の中でひとり声を殺して号泣している剛志の姿が切なくて、切なくて・・・・。








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~おしまい~









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Last updated  July 31, 2008 09:28:28 PM
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Re:「 手紙 」(10/07)  
こんばんは、邦画はあまり見ないほうですが、
原作が東野さんってことで、俄然興味が湧いてきました。山田君、沢尻さんの好きな俳優です。
レビューを読んで是非観たくなりました。
幸い、こちらでも上映されるようなので、
観に行きたいと思います。
情報ありがとうございます。 (October 7, 2006 09:19:36 PM)

映画バカなウサコレさんへ  
rikocchin  さん
ヽ(´▽`)/コメントありがとうございます。

>こんばんは、邦画はあまり見ないほうですが、
>原作が東野さんってことで、俄然興味が湧いてきました。山田君、沢尻さんの好きな俳優です。
>レビューを読んで是非観たくなりました。
>幸い、こちらでも上映されるようなので、
>観に行きたいと思います。
>情報ありがとうございます。
-----

私も以前は、同じく邦画は観ない方でしたが、最近観た作品が立て続けに良かったので、良い邦画が多いなとつくづく感じました。
その中でもこの映画がピカイチ良かったです。
大変重たいテーマではありますが原作がしっかりしていて、脚本もよいのでしょうね。
犯してしまった罪のいかに大きかったか、その代償のいかに大きかったを被害者のみならずその周りのみんなが苦しむ結果を目の当たりにしながら、罪を償うとはどういう事なのかを考えさせられる深~い作品でした。
小田さんの歌も良くて、号泣してしまいますよ~ (October 7, 2006 10:36:33 PM)

こんばんは☆  
コメントでははじめまして。
先にTBしてしまいました。
私も試写で先日観ましたがこれは良かったですねぇ。
不覚にも最後の漫才でこみ上げてきてしまい更に小田和正の歌が流れてきて。。でした。
本当最近の邦画は質がよい作品が多く昔より多く観てます。
今後も伺いますのでよろしくお願いします。 (October 14, 2006 10:11:03 PM)

たーくん2003さんへ  
rikocchin  さん
ヽ(´▽`)/コメントありがとうございます。

>コメントでははじめまして。
>先にTBしてしまいました。
>私も試写で先日観ましたがこれは良かったですねぇ。
>不覚にも最後の漫才でこみ上げてきてしまい更に小田和正の歌が流れてきて。。でした。
>本当最近の邦画は質がよい作品が多く昔より多く観てます。
>今後も伺いますのでよろしくお願いします。
-----

はじめまして☆
周りの方が最初のほうからず~っと泣きっぱなしという感じでしたが、私も最初は、それほど泣けなかったのですが、中盤以降やお兄さんに最後の手紙を書いたあたりから、ぼりぼろ泣けて来て、遺族の方が「もういいんじゃないかな・・」っと言ってくれた瞬間もう堰を切ったように涙が怒濤のごとく流れだして、ず~っと止まりませんでした。会場が明るくなって、泣きすぎて頭痛がしていたほどです(笑)
「フラガール」「涙そうそう」や「地下鉄に乗って」からこの「手紙」に至るまで立て続けに感動させて頂きましたが、この作品が一番深くて感動しました~ (October 14, 2006 11:43:51 PM)

こんばんは  
咲太郎 さん
今年は邦画、ホントいいですね。
私はそんなに数を観ていませんが
『フラガール』が今のところ一番です。
私も剛志はひょっとしたら自殺してしまうのでは
と思ったのですが、姿を発見し、ほっとしました。
ラストは映画オリジナルだそうで、うまい構成だなと思いました。 (November 16, 2006 07:11:15 PM)

こんばんは  
咲太郎 さん
今年は邦画、ホントいいですね。
私はそんなに数を観ていませんが
『フラガール』が今のところ一番です。
私も剛志はひょっとしたら自殺してしまうのでは
と思ったのですが、姿を発見し、ほっとしました。
ラストは映画オリジナルだそうで、うまい構成だなと思いました。 (November 16, 2006 07:14:49 PM)

咲太郎さん  
rikocchin  さん
ヽ(´▽`)/コメントありがとうございます。

>今年は邦画、ホントいいですね。
>私はそんなに数を観ていませんが
>『フラガール』が今のところ一番です。
>私も剛志はひょっとしたら自殺してしまうのでは
>と思ったのですが、姿を発見し、ほっとしました。
>ラストは映画オリジナルだそうで、うまい構成だなと思いました。
-----

「フラガール」も良かったですね~~
アカデミー賞外国映画賞にノミネートスルようですよぉ
この作品は、今時の無軌道な行動に走りがちな若い青少年の方々にたくさん観ていただいて、罪を犯す事がどういう事なのか、深く考えて欲しいなと思いました。
剛志が憔悴しきって死んでしまった、あるいは病気で弱ってしまったのではないかと観客が想像するのではないかというような事を見透かしていたかのようなカメラワークでしたよね(笑)まんまとはまってしまいました(笑)
帰り道はず~っと頭なのかで「言葉にできない」がリピートしていました~ (November 18, 2006 12:41:19 AM)

大変厳しいようですが  
オカピー さん
6点にしました。^^;
大変素晴らしい内容を含んでいて、最後はコップ一杯分くらい涙が出ました(笑)が、映画としては欠点もありまして。

偶然にも最近観る映画に「人間は愚かで弱いもの」をテーマとした作品が多いんです。本作もそう言って良いと思いますね。 (April 11, 2008 03:01:58 AM)

オカピーさんへ  
rikocchin  さん
コメントありがとうございまぁ~っす。

>6点にしました。^^;
>大変素晴らしい内容を含んでいて、最後はコップ一杯分くらい涙が出ました(笑)が、映画としては欠点もありまして。

>偶然にも最近観る映画に「人間は愚かで弱いもの」をテーマとした作品が多いんです。本作もそう言って良いと思いますね。
-----

いやぁ~6点とはきびしいですね(笑)
コップ一杯も(笑)涙がでたのに・・・ですか?(笑)
でも、そういう冷静さがオカピーさんらしくてすばらしいすね。
私個人としては、この作品なかなか評価が良いです。っというのも、罪を犯すとはなにか・・・っということについて頭の中でカテゴリー分けができないもやもやとした思いがいつもあるのです。
そんな混沌とした答えの見つからなかった疑問のひとつが解決したような気がしたからです。
まぁ、そんな思いから観ていましたので、かなりの絶賛ものでした(笑) (April 12, 2008 02:48:24 PM)

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