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April 23, 2006
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カテゴリ: 読書
後輩と神保町を散歩していたら、「 最近どんな本を読んでますか?」

読書が趣味。」 と言いながら、このblogでは(雰囲気にそぐわないこともあり)読んだ本の紹介はあまりしてなかったのですが、たまにはそんな話も良いかな、と。

私は、気分によって読む本、持ち歩く本を変えるため、大体5冊くらいを平行読みしています。

そのうちから、今読んでいる3冊ほどをご紹介。

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『安心のファシズム』 斎藤貴男

安心のファシズム


あの時の「自己責任」の使われ方、一部議員・マスコミ・ネット上での言説には納得いかない部分がありましたので…。

その他、ケータイ、監視カメラなどから、現代社会のファシズム的傾向が語られます。

一言でまとめると「それと気付かないうちに、生活の中に忍び寄るファシズムの足音に警鐘を鳴らす」という感じかなぁ。

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うーん。

この国の政権が、二大政党制を擬した大政翼賛体制に向かって突き進んでいる危うさ。

平和憲法を改悪して、国民皆兵制度を実現しようとする動き。

個人情報保護法の名目の元で、市民の連携が分断される(ソーシャル・ネットワーキング・サービス[SNS}をそれに対するカウンターパートとして捉えることも可能)一方、監視カメラは増え続けているという違和感。

私は、日頃「お気楽」を看板に楽観主義を貫いてはいますけど、本当は「現代」に対してものすごく不安を抱いています。

その不安の源泉を考える上で非常に示唆的だなぁ、と。

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『戦争の日本近現代史』 加藤陽子

戦争の日本近現代史

近現代の戦争が「総力戦」であり、政治形態が「国民政治」である以上、「戦争」に至るまでには、どこかに「世論」の潮目が変わるきっかけ、潮流があるわけです。

「征韓論」から太平洋戦争までの政治家の考え、世論の動きを丁寧に解きほぐし、「日本の国民」が戦争を受容していった過程を浮き彫りにします。

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これは、労作。


(どんな試験になるのか気になるところですが…。)

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さて、で、現代やいかに、と。

善悪二元論的に単純化された世論。
それを煽るマスコミの報道姿勢。
一層先鋭的なアメリカの事例と、それをなぞるかのような日本の政局。

賛否はさておき、「強制しない」と首相が明言していたはずの、「国旗・国歌」がいつの間にか強要されている事実。

「昭和の日」制定の意味、繰り返される靖国神社への国会議員参拝、「教育基本法」の議論の中で語られる「愛国心」…

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「兵役」が「国民の義務」になり、「正義の名の下に」戦争が可能となる環境は、徐々に整いつつあります。

きっと、それらは「国際的貢献」「世界の一員としての義務」などの耳に心地良い言葉で、騙られ、正当化されるのでしょう。(てか、既にその文脈で騙られていますが。)
そして、「良心的徴兵拒否」は「非国民!」と罵られるようになってくるのでしょう。

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私は「不偏不党無所属」の個人主義者なので、アクションを起こす気はありません。

というのは「逃げ」なのかな?

でも、他人の命を軽く考えている輩どもを敵に回す勇気は、今のところないですし…。

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加速する社会不安、強められる統制、弾劾されても改まらない既得権益の腐敗、拝金主義の横行、景気が浮揚しても高まる窒息感、称揚されるナショナリズム、収斂を強要される価値観。

二冊続けて、戦争への足音を感じさせられる本を読んではいますが、これが杞憂に終わることを願います。

=====
暗い話はこれくらいにして、娯楽小説。

『月と太陽諸国の滑稽譚』 シラノ・ド・ベルジュラック

ふっふっふ。
作者、シラノ・ド・ベルジュラック!
そう、あの哲学者にして物理学者、駄法螺詩人にして無類の剣客、音楽家、恋愛の殉教者、「鼻のシラノ」!

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この作品、星新一先生がエッセイの中で度々大絶賛されておりまして、中学生くらいからずーっと読みたいと思っていたのです。

しかし、この本、どこに行っても手に入らない。

一度だけ古本屋さんで見かけたのですが、岩波「文庫」なのに8000円!
ええ。その時はとりあえずスルーして、気が付いたら新宿のその古本屋さんはなくなっていて…。

その講談社文庫版(これも絶版)が、池袋の古本屋さんで、なんと350円で売っているではありませんか!

即購入。いやはや、ほくほく♪

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調べたら、 『日月両世界旅行記』 として、2005年に岩波文庫から出ていますね。
(しかし、このつまらない題名は何だ?)

日月両世界旅行記

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そして、その中身たるや…いやいやいやいや、紳士淑女の諸君、ゆめ侮ってはなりませぬぞ。

抱腹絶倒、異論に奇論、、奇説、珍説、、薀蓄、ユーモア、、饒舌、倒錯、、なんでもござれのページェント。
知で血が騒ぎ、知湧き皮肉踊る、豊饒なる作品なのでございます。

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友人と「月とはなんぞや」という議論をするうち、「どれ、ワシが一つ確かめて進ぜよう」とばかりに月へと旅立つ主人公。

ところが、そうそううまく参りませぬのが世の常にてありますれば、天にのぼってみたものの、再び地上に戻る羽目になりますのが哀しき宿命。

ところが、さてもお立会い。

真っ直ぐ上がって、下ったはずが、彼の主人公が降り立ちましたのは、故郷より遠く離れた大地だったのでございます。(詳しくは本文に譲ります)

左様。地球は自転をしているのであるからして、真っ直ぐ上り下りしておる、その間に、地球は回る。しからば当然、降り立つ場所も変わる。と、まぁ、こういう寸法でありますな。

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紆余曲折の、末に降り立つ、月の国。
さてさて、ここからは、天才シラノの独壇場であります。

月光に冴え渡りしペン先で、バッサバッサと常識を、斬っては皮肉を投げかけます。
若者に権力を、キャベツに人権を与えた筆で、教会の権威を、当時の常識を、ちくりちくり。

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嗚呼、主人公の運命やいかに?
彼は無事、祖国の土を踏めるのでありましょうか?
乞う御期待の作品なのでございます。

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「月の巻」を読み終え「太陽諸国の巻」に入りました。
冒頭が「月の巻が飛ぶように売れた結果」というお話で始まっているのが、なんとも微笑ましい。

いやはや、楽しませてくれます。

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めちゃくちゃ長くなったので、3冊で。
しかし、なんか硬い感じになったなぁ。
いつもだと、新書本は少ないのですけど。

えっと、敬称略で一気に。

娯楽小説では、 エドワード・D・ホック 『サム・ホーソーンの事件簿 IV』 夢枕獏 『陰陽師 太極ノ巻』 を最近読み終わり、次はいよいよ 恩田陸 『黒と茶の幻想』

サム・ホーソーンの事件簿(4) 陰陽師(おんみょうじ)(太極ノ巻) 黒と茶の幻想(上) 黒と茶の幻想(下)

blogを書くに当たって引っ張り出してきた、 岡倉天心 『茶の本』 茶会記 )、 林望 『音の晩餐』 男の手料理 )、 川端裕人 『ペンギン大好き!』 品川アクアスタジアム )なんかも、ぱらぱら再読中。

茶の本 ペンギン大好き!





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Last updated  May 2, 2006 10:25:37 PM コメント(2) | コメントを書く


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RonaldBus@ Transforming your landscape with gorgeous blue stone slabs. Understanding the Benefits of Choosing …
mrtk@jp @ Re[1]:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) >そらねこさん コメントありがとうござ…
そらねこ@ Re:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) はじめまして。本の題名につられてお邪魔…
浅葱斑@ 心のハレっていいですよね? こんにちは。 誕生日の暦から今の自分、未…
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