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2025.09.26
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カテゴリ: 文学
夜間飛行 サン=テグジュベリ 山崎庸一郎訳

4
p.21
リヴィエールはペルランを観察していた。
20分後、車からおりるとき、この男は、疲れとけだるさを味わいながら群衆のなかに入ってゆくだろう。そして。おそらくはこう考えるだろう。
「ひどく疲れた・・・・いやな仕事だ!」・・・・・

リヴィエールは考えた。
「どんな群衆のなかにも、目立たないながら、すばらしい使者となる人間たちが存在する。しかも、彼ら自身はそのことを意識していない。ただし・・・」・・・・

リヴィエールは彼を祝福した。


ペルランはまず、退路を断たれてしまったことを説明した。
「ですから、ほかにづしようもなかったんです。」
そのあとは、もうなにも見えなかった。雪で視界がきかなかったのだ。しかし、はげしい気流が、気流が機体を7000メートルまで押し上げてくれたおかげで、彼は救われたのだった。
「山脈を越えるあいだじゅう、尾根すれすれの高度が維持されたにちがいありません」
彼はまた、ジャイロ*についても語り、空気の取り入れ口の位置を変えねばならないと言った。雪でふさがってしまうのだ。

*飛行機のように前後・左右に加え上下にも動くものを操縦するには、自機の姿勢(傾き)や方位を知る必要が有ります。
物体の角度や角速度(=回転の速さ)、角加速度のセンサである「ジャイロ」を利用して姿勢や方位を検出する機器がジャイロ計器

「なにしろ、そいつが凍りついてしまうんですよ」
ついで別の気流がペルランを押し下げた。高度3000メートルほどなのに、どうしてなにとも衝突しないでいられるのか、彼には理解できなかった。それは、彼がすでに平野のうえを飛んでいたからだった。
「晴れた空のところに出たんで、突然そのことに気づきましたよ」
最後に彼は、その瞬間、洞穴から抜け出してきたような気がしたといった。

アルゼンチン:メンドーサ - 旅行のとも、ZenTech
ーいいえ、着陸したときは、晴れていて、風もありませんでした。でも嵐はすぐうしろからつけていたんですよ。・・・
高い山頂は雪雲のなかに姿を消していたが、山裾のほうは、黒い溶岩のように平野に流れ出ていた。町がひとつひとつ呑み込まれていった。
「あんなのは見たことがありませんよ・・・」

リヴィエールは監督のほうを振り返った。
ー太平洋からのサイクロンだよ。予報は間に合わなかった。それに、あんなサイクロンがアンデスを越えたためしはないんんだ。こんどのサイクロンが、東に向かって進路をとりつづけるなど、予想もつかないことだったのだ。





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最終更新日  2025.09.26 13:30:04


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