虹色のパレット

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2005.12.28
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カテゴリ: 心・人生





『あんたが悪いのよ』


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「ハーイ、ジャパニーズガール、トウキョー」これが、私の新しい職場で初めてマイクに出会った時、彼の発した第一声である。次の日から、ジャパニーズガールはカズ姫に変わったけれど、なぜかトウキョーは、いやな響きをともなったまま繰り返された。

 マイクは、母国ルーマニアでは画家であったが、全ての面で自由が極度に制限されていたことを不満に思い、十何年か前、自由を求めて家族とアメリカに渡ったという。小鳥のさえずりにしか聞こえなかった英語には全く苦労したことなど、当時の様子をおもしろおかしく話してくれる。

 もちろん、マイクにとって、日本人とこれほど身近に接するのは初めてのことである。とは言え、「日本は共産主義の国か、日本人は皆赤軍か」と聞かれた時は全くびっくりしてしまった。それでも気を取り直して、少しでも日本を知ってもらおうと、色々日本の様子を話して上げたりした。ところが、彼の場合、日本に対する知識の欠乏というだけの単純なものではなかった。

 茶目っ気があり、いつも楽しい雰囲気を作り出す彼である。また仲間のリタッチャーから、「カズ姫の英語がルーマニア訛になってきた」とからかわれても、気にもとめず、せっせと私の下手な英語を直してくれたりする。

 それなのに、一方では、東洋人に対して、強い偏見を持っているのである。偏見というものは、暗闇の中でブンブン唸る蚊のようなものだと私は不愉快にも、うっとうしくも思った。

 例えば、「日本人は攻撃的な残酷な民族だ」などと訳もなく言いだす。「どうして?」と聞くと「冗談だよ」と言って逃げる。「そんなことはない」と反論すると、サッと話題を変える。姿が見えないから反撃のしようがない。ほんとに腹が立つ。神風、腹切り、その辺までなら、まあ外国人ならと、笑って過ごせる。

 でも、復讐、スパイ、イエローとさらにしつこくなってくると、私もカーッと頭にきて、「ルーマニア人て、世界のことを何も知らない無教育な国民なのね」などと今にも言いそうになる。でも、そう言ってしまったら、問題は解決するどころか、むしろ、彼の偏見を助長するだけだ、とぐっとこらえる。











こらえる勇気











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最終更新日  2006.02.08 01:10:16 コメント(24) | コメントを書く


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