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新年あけましておめでとうございます。 私事ですが昨年末の担当替えで、楽天から離れることになりました。このブログも、私にとっては、これが最後になります。創設3年目の07年から3年間。初のクライマックスシリーズ出場という大きなうねりを目の当たりにし、いい時期に楽天を担当できたと思います。 さて、今年になって、横浜とロッテの取材に行きました。横浜は巨人のコーチだった尾花さんを監督に迎え、選手も大幅に入れ替えを行い、新チームとして再出発しました。仕事始めの球団社長のあいさつでも、自ら「大補強」と言い切るように、補強も着実に進んでいると見受けられます。 ロッテも、韓国の4番、金選手が来日翌日の6日、さっそく千葉マリンに現れ、関係者にあいさつしていました。グラウンドには復帰の藪田、トレードで獲得した那須野が練習を行っていました。外国人投手も2選手獲得。後々チーム内に問題を起こすことが有力な今岡さえ獲得しなければ、戦力的に大幅アップといえるでしょう。 一方の楽天といえば、補強は進んでいないと言わざるを得ない。モリーヨ投手は160キロを投げるというけど、外国人は来てみないと分からない。野手も獲得する予定のようだが、まだ、発表に至っていない。「戦力の上積み、ないじゃん」というのが、個人的な感想だ。 ただし、新外国人を獲得しないからといって、決して悲観的になる必要はない。それは分かっているけれども、昨季下位だった球団は、巻き返しに必死になっているのは伝わってくる。下からの突き上げを、ねじ伏せる力が、今の楽天にあるの? などなど、考えれば考えるほど、今季の戦いが心配になる。 私の心配など無関係に、現有戦力というかナインは奮闘するはずだ。監督が代わったことによって、1軍の座をつかむべく、選手も目の色が変わっているのは確かだ。何より、昨年のCS進出がチームに無形の力を蓄積させたと信じたい。そうしたチーム力の肉付けは、付け焼き刃な新外国人以上の力になるはずだ。 また秋にはクライマックス、さらにその向こうにある日本シリーズと、仙台で熱戦が繰り広げられることを期待して止みません。【金子航】
2010年01月07日
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みんな泣いていた。もうすぐ41歳のベテランははなをすすり、いつも笑顔のエースは真っ赤な目で声を詰まらせた。マウンドでほえる20歳の若者も、敗北が決まる直前に、ベンチの奥で目を潤ませていた。第2ステージ敗退から、もう5日。それでもテレビでは野村監督のラストゲームになった試合を、繰り返し放送し続けている。それだけあの試合は監督、コーチ、選手の思いが凝縮されていた。 さまざまな思いが入り交じっていた。「てっぺん」を勝ち取りたい気持ち、野村監督と長く野球をしたい気持ち。それが同時に断たれた瞬間、感情が一気に噴き出した。全体がそろって涙するチームなど、極めて珍しい。1人1人思いは違えど、目標は日本一あるのみ。月並みだがまさにチームは一丸となって戦い、敗れた時もまた1つだった。 今日29日、ドラフト会議が行われた。楽天にも続々と新たな戦力がやってくる。そのうち2人に楽天のイメージを聞くと「CSでは特にチームが一丸になって戦っていた気がします」と、同じ言葉を口にした。楽天というチームの一体感は、まだユニホームにも袖を通していない、来年のルーキーたちにも届いていた。 野村監督が去り、1軍コーチ陣も大多数が退団した。「野村楽天」は、強烈なインパクトと球団史上最高の成績を残して終了した。あと3カ月も経てば、新監督のもと、新たな楽天が久米島でスタートを切る。次なる目標はリーグ制覇と日本一。もちろん技術の向上も必要だ。それでも「野村楽天」最終戦で見せた一体感なくしては、目標達成はありえない。より強い集団となるために、10月24日を忘れてはならない。【小松正明】
2009年10月29日
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5月30日以来の2位浮上を決めた1日、今季4勝目でお立ち台に上がった川岸がスタンドに向かって呼び掛けた。「まだ空席があります。球場に来て、僕らに声援を送ってください」。ヒーローインタビューでは「たくさんの声援、ありがとうございます」が決まり文句だ。Kスタ宮城は2万人の収容が可能。この日の観客数は1万4619人。CS進出へマジック2とし、地元CS開催も現実味を帯びてきた中、だれも座っていない客席を目にして、思わず口をついた言葉だった。 選手にしてみれば、今こそがこれ以上ない「見せ時」だ。Bクラスに沈んだ4年間を耐え、ようやくつかみかけているAクラス。チームも勢いに乗り、好守好打を連発している。苦しい時期も変わらず応援してくれた地元ファンの大声援の前で、悲願を達成するのが本望だ。だがCSマジックが着実に減っても、スタンド全体が揺れると思えるほどの大観衆にはなっていない。これでは選手が寂しさを感じるのも無理はない。 私自身、野球記者としての仕事の中で、歴史的な瞬間に立ち会えることを幸せに感じている。今年は球団初のCS進出がもう目前。こればかりはその時、その場所にいない限り、現場の興奮は味わえない。昨年はシーズン最終戦で、ソフトバンク王前監督の勇退を見た。「涙雨」の中、かつてライバルとして戦った野村監督が、試合後に花束を贈呈した。大スターの引き際という歴史的瞬間を見られたことは、私にとって大きな財産の1つだ。 野球記者を10年続けても、1度も優勝に立ち会えない人もいる。球団創立5年目でのAクラスは、常勝球団の優勝にも十分匹敵する瞬間といえる。たとえ決定当日でなかろうとも、その過程を体感できるのも今だけだ。1試合でも生の興奮を選手と共感してほしいと、野球ファンの1人として願っている。【小松正明】
2009年10月02日
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22日のオリックス戦で、永井は7回6安打3失点で7敗目を喫した。今季すでに11勝を挙げて芽生えた自信もあったのか「もったいなかった」と唇をかんだ。試合後、帰り際に自分も含めた報道陣に囲まれると、敗戦のショックも感じさせず、はきはきと質問に答えた。「残りの登板機会も少ないですからね」。早くも気持ちを次戦へと切り替えていた。 成績の向上は、そのまま人間性の向上でもあった。昨年のオフに寮を出て、仙台で一人暮らし。つい暴飲暴食になりがちだが「食事は大事ですから」と節制している。管理栄養士の大前さんからも「永井君はしっかりしてるから」と太鼓判を押されている。自宅では商売道具の右ひじのケアも欠かさない。大人としての自立が、言葉にも出ている。テレビ出演など、表に出て話すことは得意ではない。それでも今年はお立ち台でもしっかり自分の言葉を発するようになった。 シーズンはCSを含めても残り1カ月。永井の登板機会は多くても4、5試合だ。「とりあえずシーズン。CSに行ったら、もうなんでもありですから」と、スクランブル登板にも意欲を見せた。後輩の田中とともに、投手陣で1番の成長を見せた男の秋に、改めて注目したい。【小松正明】
2009年09月23日
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札幌ドームに来ると、試合前練習のアップの輪に、中島がいたので驚いた。ソフトバンク3連戦、僕は休みで、福岡にいなかった。中島が合流するって聞いていなかったのもあって、ビックリ。「ファームでも2試合しか出ていないんですけど、呼ばれました」と、昇格した中島本人もビックリした様子だった。 左手の平の骨折。8月初旬だったか。泉に行った際に、周囲は今季中の復帰は難しいと、見通しを話していた。右打者がバットを握りしめる部位だけに、完治に時間がかかるという。今日も「まだ握力は10キロ減です」と100%ではないと言うが、何という回復力だろう。全快ではないため不安そうな顔をしていたが、それでも、1軍はうれしいもの。笑顔で試合に臨んでいた。 試合は敗戦。ただ、中島は2回の復帰打席で右前打。チェンジアップをうまく右前に落としてチャンスを広げた。日本ハム武田勝のチェンジアップは、楽天の右打者が大の苦手にしている球種。左キラーの面目躍如だった。中島も「ほっとしました」とポツリ。明日のスウィーニーはベンチスタートかもしれないが、明後日は藤井が先発と予想される。藤井ならば十分スタメンの可能性がある。今度は「右超え」を期待しよう。【金子航】
2009年09月15日
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山村が投げた。1軍のKスタ宮城で。07年9月30日、ソフトバンク戦以来。実に703日ぶりのカムバックだった。 だが、試合後の山村には2軍行きが通達された。1回無失点。この日の内容が悪かったためではない。1軍昇格した時から、3日に抹消することは既定路線だった。 理由は「連投ができないから」。それを承知で1軍に上がり、1試合に投げて、また2軍に戻った。明日3日から左投手との対戦が続くこともあって、右打者が手薄になる。右の野手を補強することも理由だった。山村は「家族には言っていなかったんだ」と、自宅で待つ家族に明日2軍落ちする見込みなど説明していなかったと言う。 1試合だけで2軍落ち。家族が心配するのを山村は危惧していた。何しろ703日ぶりの復帰。野球ができなかった時も、いっしょに悩んでいたのは家族だから。「(2軍落ちの予定を家族に)言っていたら、今日だって見に来ていたよ。でも、学校があるからね」と苦笑いした。 橋上ヘッドコーチから10日で戻ってくるように通達されたと山村は言う。その間に、連投、イニングまたぎの登板、その2点をクリアするのが宿題という。橋上ヘッドも言った。「終盤の戦力としてね。本来の力が出せれば、1イニング任せられるんだから。秘密兵器? まあ秘密ではないけど」と。CSへ向けた9月中旬以降の戦いの力にと期待を込めていた。 「10日後にどうなるか分からないけど。やってみるよ。9月30日のヤフードーム以来ですね。投げられたのは良かった。支えてくれた人たちに感謝。感謝ですよねえ。ここまでくることができたんですから」。話す表情は、復帰にしみじみ30%。2軍落ちにぶ然30%。今後に不安30%。マウンドの快感10%。複雑な顔で球場を後にした。【金子航】
2009年09月02日
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緊迫した順位争いこそが、経験の少ないチームを育てる。残り38試合。どれだけ長くても、あと2カ月足らず。初めて体感する負けられない日々の連続こそが、若手選手の能力を飛躍的に向上させる。それをだれよりも痛感するのは、他ならぬ山崎武だ。 球団創立5年目。ようやくこの時期まで順位争いができる。「やっぱり緊張感があるところでやりたいよね。今はイーグルスが強くなる課程だから。何とかクライマックスシリーズには出たいからさ」。自分が43発打っても、エースが21勝しても届かなかったAクラス。春先にいくら首位を独走しても、この時期に蚊帳の外では何の意味もない。「若い選手にしたら、いい経験なんじゃない?ドキドキしてさ」とほほ笑んだ。 優勝を経験したメンバーは、ごくわずか。楽天誕生後に入団した選手は、8月末の上位争いすら経験がない。それだけにプレッシャーのかかる試合を1つクリアすることで、少しずつ自信を深めていく。40歳の大ベテランでさえ「自信のとなりに不安があってさ。心が数秒ごとにコロコロ変わるんだよ」と、苦しくもやりがいのある日々を思い出す。重圧をはねのけ本来のプレーができるか。押しつぶされて自分を失うか。乗り越えた先にだけ、歓喜のゴールが待っている。【小松正明】
2009年08月27日
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高卒ルーキーの辛島航が13日、ソフトバンク戦で1軍デビューを果たした。負け試合の中2番手で登板し、3回4安打2失点。数字だけ見ればホロ苦デビューだが、内容は十分だった。疲れの出た3イニング目に連打を浴び2点を失ったが、最初の2イニングは1安打無失点。まだ18歳の若者が、堂々とした投げっぷりを見せた。初登板の緊張より強気が勝った。6回1死から右の中西を迎え、カウント2-3。嶋は外角の直球を要求したが、首を振り内角への直球を選んだ。「右打者の時は内角の方が投げやすいんで」と笑って明かしたが、結果は中西の動きを止める見逃し三振。173センチと小柄な左腕が、マウンドではどっしりとしていた。高卒ルーキーのデビューに、翌朝の2軍は辛島の話題で持ちきりだった。泉の練習場に顔を出すと、若手選手から次々と「ワタル、どうでした?」と聞かれた。育成担当の吉田投手コーチも「よかったね。これからも応援してあげてよ」とニッコリ微笑んでいた。だが選手たちも笑ってばかりはいられない。プロに入ってまだ1年にもならない後輩に先を越され、悔しくないはずもない。片山は「次こそ僕が上に行きます」と言い残すと、グラウンドに駆けだして行った。先輩、コーチのアドバイスは勉強になるが、1番の刺激となるのは後輩の活躍。1年目から即戦力として働いた田中ならまだしも、まだまだ2軍で鍛える時期と思われた後輩・辛島の活躍に刺激されたのは、片山だけではないはずだ。辛島が1軍昇格したのは9日の午後。イースタン・リーグで断トツの最下位だった楽天の2軍は翌日から5連勝と意地を見せ始めた。まだまだ夏の暑さが厳しい季節。1軍メンバーたちも疲労の色が日に日に濃くなる。「ワタル」に刺激された若手たちが、不振に陥った選手に代わり昇格即活躍するようになれば、悲願のAクラスもより現実味を帯びてくる。【小松正明】
2009年08月18日
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草野が13日、泉の2軍球場で快音をとどろかせた。ぎっくり腰のため5日に登録抹消され、自宅で静養に努めていた。一昨日の11日から練習を再開し、昨日12日にはロングティーを行った。今日も横川に投げてもらってロングティーを行い、その後は室内に場所を変えて、1人マシンを相手に打ち込んでいた。 「何か、座骨にビリビリ響くんだよね」と、軽い痛みというか違和感はまだ残っている様子。それでも、18日のイースタン・ロッテ戦(利府)から実戦に復帰する予定だ。「(18日には)万全にしたいね」と笑顔で話していた。 18日は、中島にとってもターニングポイントだ。死球による左手の骨折で、7月2日に抹消している。この日、泉にいた中島は「18日に病院で検査があって、医師がOKしてくれれば、バットを握れるんです。今までバットも握れなかったんですよ」と話した。昨日のKスタ宮城は、大隣が相手だった。野村監督に「左キラー」と呼ばれるだけあって「見ていました。宮出さん」と、先輩でもありライバルでもある、右打ちの外野手・宮出に注視していたことを明かした。手術で7針縫った手のひらを見つめて、早期復帰に思いをはせていた。 3日に抹消となったノリも、18日に2軍戦に復帰する予定。フリー打撃のあとダッシュを繰り返し、「(試合以上に)練習が大事なんだよ」と、大きくうなずきながら言った。「憲史に『頑張れよ』って言っておいて下さい。ボクは会えないから」などと、悪ぶって、すねた風に話していたが、額の大粒の汗は、ノリの確かな気力を物語っていた。【金子航】
2009年08月13日
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7日はプロ野球ファンならだれもが注目する対決となった。楽天は田中、日本ハムはダルビッシュ。球界を代表する両投手の対決を見ようと、Kスタ宮城には2万人を超えるファンが詰めかけた。結果は田中に軍配が上がった。だが大量の雨の影響もあってか、期待された白熱する投手戦とはならなかった。豪快な本塁打に華麗な守備。スタンドから見る野球はどうしても野手の方が目立ちがちだ。それでも一流同士の投げ合いは、1球ごとに息をのむ。大味な試合とはまた違った魅力がある。そんな試合をだれよりも楽しみにしていたのが、野村監督だ。「ダルビッシュ、調子悪かったな。ストレートも思い通りに入らなかったし。がっぷり四つの投手戦を期待してたんだけど。雨がなきゃね。水を差されたよ。ああ、雨が差されたか」。チームを率いる監督として、勝利は最上の喜びだ。それでも「人生=野球」とも言える74歳にとっては、好投手の実力が最大限に発揮できない悪天候がうらめしかった。昨年、同様に期待された試合で、極上の投手戦が展開された。楽天岩隈と日本ハム・ダルビッシュ。試合時間は2時間8分と異例の短さだった。安打も両軍3本ずつだけで、得点は日本ハムの1点だけ。野村監督には、この日の再現を期待する思いがあったに違いない。日本ハムとの対戦はあと3カード。ダルビッシュの登板に当たる確約はない。それでもAクラス入りを果たせば、クライマックスシリーズでは当然エース対決になる。リーグ覇者を決める、しびれるような投手戦。できればそんな状況での投げ合いを、すべての野球人に見せてほしい【小松正明】
2009年08月09日
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連日、熱い夏が続いています。と、いっても高校球児の話しですが。甲子園出場を巡る各地区大会も、いよいよ大詰め。この3、4日は、一日に何校も甲子園出場を決めている。 楽天では、ここのところ、関川さんがソワソワしっぱなしだった。母校の神奈川・桐蔭学園が快進撃を展開した。優勝候補の慶応を破ると、あれよあれよと決勝まで進んだ。昨日29日は横浜スタジアムで、横浜隼人との決勝が行われた。 一方の楽天は、雨の秋田「こまちスタジアム」。2時から室内練習場、というか、ブルペンで投手、野手に分かれて練習が始まったが、関川さんは、もう気が気じゃない。僕も同じ高校出身とあって、「学校の住所、知ってる? 優勝したら電報を送るからさ」と聞くほど、はやる気持ちは抑えきれない。 高校野球の開始前から「(楽天西武戦が)雨天中止になったら、新幹線で横浜まで行こうなか。祝勝会に間に合うだろ」とソワソワ。横浜スタジアムには、高校時代の同期の友人が数人、応援に駆けつけていたらしく、関川さんの携帯には、リアルタイムの速報が送られてきた。「情報遅いな。日刊の速報、遅いぞ」と、やじられてしまった。 楽天西武戦の雨天中止が決まらないうちに、高校野球は延長戦に突入した。「延長15回で再試合になるのも、いいな。明日、顔を出せる」と、今日30日は千葉マリンで練習なだけに、そんなことも話していた。 雨天中止が決まらないまま、6時プレーボールを見越して、野手ミーティングが始まった。ミーティングルームから出た関川さんは「ごくろうさまです」「残念でしたね」と声をかけられた。ミーティングの間に、母校はサヨナラ負けを喫してしまっていた。 「この前の8連敗以上、いや、匹敵するくらい悔しい。(甲子園に)出たら10年ぶりだったからな。出てほしかった。生で見ていたら、オレ、泣いちゃっていただろうな。でも、そういう高校野球って、いいよな」と関川さん。残念な結果になってしまったが、ここ数日の喜怒哀楽ぶりは、関川さんの母校愛を如実に物語っていた。【金子航】
2009年07月30日
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18日、オリックス戦が当初の開始予定時刻だった午後2時に雨天中止が発表された。すでにスタンドに詰めかけていたファンからは大きなため息。その状況を見たオリックス山崎、ラロッカの2選手が、各塁上に敷かれたシートに向かってヘッドスライディングを連発した。少し遅れて楽天中谷がサインボールを手に現れた。ボールをスタンドに投げ込むと、ファンの拍手に押されるようにダイヤモンドを1周し、オリックスに負けじとホームへ頭から思い切り滑り込んだ。「みんなが行け、行けって言うからさ」。照れ笑いを浮かべながら手を振る中谷に、スタンドからは再び拍手が起こった。すべてが終わってみれば、ほほえましいファンサービスだ。だが、中谷が登場しなければ、楽天ファンから大きなブーイングが起きかねない事態だった。雨天中止時のヘッドスライディングは、いまやお決まりのサービス。ロッテでは諸積コーチが現役時代から続けており、中止時のイベントにもなっているほどだ。もちろん野球選手の仕事は、グラウンドで最高のプレーを見せること。雨の中でスライディングを披露しても、成績には関係ない。それでも雨の中、試合開始を待ちわびていたファンに対して、ビジターの選手がびしょ濡れになってまでパフォーマンスをし、ホームの選手がだれ一人出てこなければ、地元ファンの心が離れるところだった。楽天野手陣は中止決定後、続々と室内練習場での打撃練習に向かっていた。偶然、グラウンドに残っていた中谷が「大役」を引き受けたが真相だ。それでもファンからすればオリックスより先に、グラウンドに飛び出してきて欲しかったというのが本音だろう。後日、中谷に話を聞くと「打点、つきましたかね」と笑って答えた。オリックスに「先制」を許した状況の中、決して足の速くないベテラン捕手が見せた、全力疾走でのヘッドスライディング。文句なしに値千金の「逆転打」だったと思う。【小松正明】
2009年07月20日
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今日15日は、西武ドームでいわゆる「親子ゲーム」。デーゲームでイースタンが行われ、ナイターで1軍の公式戦が行われた。 デーゲームでは高須が1回に3ラン。故障で2軍調整が続いているが、そろそろ必殺仕事人の出番じゃないの? と誰もが思うところ。西内野守備走塁コーチも午前中の試合だったが、最初から視察にきていた。試合後、西さんに聞くと「本人とも話しをしたんだが、まだ完全に治っていない。守備がまだ完全ではないというので、もう少しだな」と、今回は1軍昇格を見送ると言う。以前から、二塁でスタメン出場ができるようになった時が昇格のメドとされていたので、まだ時期ではないという、高須本人の意志を尊重した形だ。この日も3ランを放っており、打撃の魅力は大きいのだが、そうも言ってられない事情もある。 投手では川岸が最終回に登場した。1点リードの9回に登板し、2死の後、赤田に二塁打を浴び、2死二塁から2番・浅村にサヨナラ2ランを喫してしまった。「戦力にならないです。先週は良かったんですが。まだ、波があって、好いときと悪いときの差が大きいんです」とガックリとうなだれて帰りのバスに乗った。以前は100キロの負荷をかけてスクワットをしていたが、内転筋の肉離れで約2カ月の間、下半身のトレーニングに空白ができてしまった。今では45キロの負荷でのスクワットを行っているという。100キロに戻る時が、1軍のマウンドに帰ってくる時なのかもしれない。「球宴明けに戻れるように頑張ります」。川岸は努めて明るく話していた。 山村は先発し「4回55球でした」と笑顔だった。「4回に23球かな、多すぎたんです。ボカチカにてこずりすぎた。4回が15球くらいで終わっていれば、5回も登板できたんです。もう少しだったな」と、5回の勝利投手の権利を手にできずに口惜しそうに話した。ただ登板を重ねるごとに、右肩の状態もよくなっている様子で「今日は、試合前のブルペンも35球くらいで行けたんです」。昨年は1イニングを投げるのにも50球以上のブルペンの準備が必要だった。それを考えれば、進歩は言うまでもない。 西武第2球場になるが、明日も親子ゲームが行われる。【金子航】
2009年07月15日
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記録達成の会見でベテラン主砲の口をついたのは、選手の戦う心だった。8日、チームの柱でもある山崎武が通算1500本安打を豪快な本塁打で決めた。だが、試合は逆転負けで8連敗し「妙に冷めてたね。ゲームもゲームだから、うれしさも半分だよ」と苦笑いした。さらに連敗中の雰囲気を聞かれると、下位に甘んじるチームの原因を指摘した。「いろんなところで弱虫が出てる。負けてる時はどこかに弱虫が出る。そういうところから直していかないと」。プロ野球生活23年目で酸いも甘いも経験してきた40歳は、チームメートの結果や技術よりも勝利のために持つべき心の弱さが気になった。若さには勢いともろさが同居する。この日、先発した藤原は7回途中まで無安打無失点の快投を見せた。だが8回、先頭のベニーに二塁打を許すと、続く今江にも二塁打を許し降板した。「ベンチから見てて、バッテリーが浮き足だっちゃったのが分かったよ。みんなが2点勝ってたのに、『2点しかない』って思っちゃってたね」。藤原は過去2度の登板でKOされ、3度目の先発。最後まで落ち着き払って投げることを求めるのは酷だ。だが負の連鎖は不振が続くリリーフ陣にもつながり、結果は大量失点での逆転負け。連敗でチームに広がる不安が、好投したルーキーもリリーフ陣も飲み込んだ。5年目を迎えたチームは若い選手も多く、まだまだ成長期だ。30代の中堅にも優勝争いをした経験の少ない選手が少なく、シーズン通して上位を戦い抜く経験値は決して多くない。だからこそ、チームがマイナス方向に進んでいる今こそ、ベテランの経験も生きてくる。「だれが悪いとか言ってる場合じゃないからね」。1人1人がやるべきことをすれば、勝利は自然と近づいてくる。最大の試練を迎えた今、下位チーム特有の「弱虫」を振り捨て、ただひたすら勝利を求める強い心を持つことが必要だ。【小松正明】
2009年07月08日
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浦和のイースタン・ロッテ戦に行った。福盛、リンデンの新戦力コンビがデビューした。さらに、山村も投げた。肩痛からの完全復活へ、確かな1歩を踏みしめる登板だった。 山村は6回に2番手で登板。先頭打者に死球を与えたが、遊ゴロ、二ゴロで2死三塁とした。続く1番・宮本に中前適時打を打たれてしまい、復帰初失点を喫してしまった。1回打者5人、1安打1失点。それでも、山村は「いままでで、1番よかった」と満足そうに振り返った。 「いままで、ゴロがないんですよ」。そう言ったのは、雨天中止になった前日のこと。本来前日の6月30日に登板する予定だった。それがグラウンド状態不良のため中止になった。午後1時から始まった練習時には、すっかり雨は上がっていたため「試合、したかったです」と無念そうに話していた。 これまでゴロがなかったのは、やはりボールが高いから。「直球がピュと行っていると思ってもいいんですが。高いんでしょう」と言っていた。低めにボールを集めるのは、1軍で投げるためには必要不可欠。復帰への大きな課題が見つかっていた。 この日の試合はゴロが2個。「変化球も変化するようになったし」と、ステップを着実に上っていることを実感している様子だった。次のステップは登板間隔。中5日からさらに短期間での登板を挑戦する。 実際に1軍に昇格するためには、中継ぎとして6連戦の毎日、準備できるようになる必要がある。焦らず、着実に。クライマックス進出を巡って西武とデッドヒートを演じる時に、西武の天敵としてチームに貢献するのが今の目標だ。目指せ、8月の戦力。【金子航】
2009年07月01日
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ボブこと川井が、週間MVP級の仕事をした。昨日の27日オリックス戦。3回2死二塁で4失点した永井を受けて救援し、まず3回のピンチを断ち、4回を3者凡退、5回を2死まで抑えきった。右打者大引で青山に交代したが、見事な完全救援だった。オリックスに行きかけた試合の流れを、完全に取り戻す大仕事。勝ち星は青山に付いたが、勝利投手級の投球だった。 そして今日のオリックス戦。6回、井坂が先頭打者の北川に二塁打を浴びると登板した。ここで失点すれば、相手に流れが行きかねない。そんな場面で左打者2人、大村、日高をピシャリと抑えた。2死から今日も青山につなぎ、6回無死二塁のピンチを無失点でしのぎ、2連勝に導いた。 2日続けてボブ、青山の好救援。試合後の野村監督に「後半戦へ新しい勝利の方程式じゃないですか」と話すと、監督は大きくうなずいた。川井についてさらに聞くと「左打者封じをやってくれている。いいんじゃないの?」と評価していた。 5月4日には西武戦で先発したボブだったが、昨日の好投にも「抑えちゃいましたよ~」と自信満々とは遠い謙虚な男だ。先発の内容について野村監督は「もっと緩い球を投げればいいのに。緩急を使うべきだ」と報道陣に話していた。それを伝えると、ボブは真顔でうなずいていた。昨日、今日はどうだ。カーブでカウントを整え、勝負は原点への直球へズドン。変化球も直球も、低めに丁寧に集め、緩急も使うベテランらしい投球だったのではないか。 そんなボブは、今ごろ心斎橋で祝杯を挙げているはずだ。心斎橋には、僕とボブが知っている、共通の店がある。テッチャン鍋の店で、ホルモンやタン、ハラミなど、肉各種と野菜を独特の濃厚たれで煮込む絶品鍋だ。大阪に入った初日に僕は行って、存分に堪能した。翌日の試合前練習でボブに報告すると。「え~。おじやまで食ったんですか? フルコースやないですか? ハラミ焼いたのも食べたんですか? あのたれがうまいんですよね~。僕は明日、デーゲームだから行けませんよ。日曜日に行こうと思っています。月曜日の移動なので」と、先を越されて本気で悔しそうだった。 今日の試合前に「行く?」と聞くと「今日は日曜で定休日じゃないですか?」と心配そう。ナイター、デー、デーという日程を心の底から恨んでいると言ったら大げさだが、寂しそうな顔だった。僕はちゃんと先日確認していたので「大丈夫。今日は、やっているよ」と教えると「本当ですか」と晴れやかな笑みを浮かべ「(後輩と)一緒に行ってきます」と話していた。話しだけ聞いて「お預け」を食らっていたお肉たちに、今夜はようやく出会え、さらに2日連続の好投。鍋の味は、さらにアップしただろう。 ボブだけになく、大阪の夜は、ナインそれぞれに英気を養うものになるだろう。そうした意味でも、移動前の試合に勝ったのは大きい。【金子航】
2009年06月28日
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昨年に続き楽天にまた1人、シーズン途中で「プロ野球選手」が誕生した。登録名「森田」改め「丈武」。プロ初安打こそ濃霧に打球が消えるラッキーな二塁打だったが、その後の2本は会心の右越え二塁打を放ち、一気に存在感を強めた。昨年の中村真、内村に引けを取らない上々のデビューだ。支配下選手登録となれば、年俸は急上昇。2軍暮らしから1軍生活となり、待遇も注目も激変した。それでも本人は「お金はいいから試合に出たい」とひたむきな姿勢は崩さない。そんな姿に笑みを浮かべるのは、他ならぬ野村監督だ。「ああいう一生懸命な姿がいいよな。年齢がいってからプロになった分、ハングリー精神があるんだよ」。自身も決して裕福ではない家柄だっただけに、苦労人については冗舌になる。実際、丈武も苦難の道のりを歩いてきた。独立リーグ時代は練習の後、カフェバーで働いて生活費の足しにした。それが今では野球だけに集中できる。遠回りはしたが、今プロの表舞台に立っていることが、野球人としての喜びだ。甲子園で練習を行った19日、野村監督がポツリとつぶやいた。「あいつ、使いたいんやけどなあ」。視線の先には、汗を飛ばしながら一心にバットを振る丈武がいた。【小松正明】
2009年06月19日
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泉に行ってきました。2軍の全体練習は休みだったが、リハビリ組は、雨の中練習を行っていた。7日、Kスタ宮城で行われたファームのロッテ戦で復帰した山村もいた。今季初のマウンドは地元Kスタ宮城とあって、「ファンの方の声援がねえ」と言いながら深くうなずいた。その先は具体的な言葉にならなかったが、心の底から感謝した様子はありありだった。久米島にも行かずに、リハビリを行い、ようやく立った、マウンドだった。それだけに、感慨もひとしおだったはず。 次回登板を聞くと、13日に泉で行われるバイタルネット戦で投げる予定と言う。しかも先発。1回か2回の予定。 片山も登板予定で、さらに新人の井上と辛島もデビューする。辛島は名前が私と同じワタルなので頑張ってほしいだけでなく、キャンプ中から周囲の評判もいい。吉田コーチもこの日、「辛島いいよ。あいつは黙っていても大丈夫だよ」と、好素材と太鼓判を押す。右ひじ痛で出遅れた井上も即戦力の期待で入団しただけに「頑張ります」と笑顔だった。左ヒジ痛だった辛島も「やっと第一歩です。長かった」とようやくのプロのマウンドに気持ちを高ぶらせていた。 13日は、ルーキー2人も含め、見所の多い1戦となる。泉の球場は、スタンドもないけれど、要チェックな試合なのは間違いない。【金子航】
2009年06月11日
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岩隈に続き、マー君で負けてしまった。痛い敗戦。「ほんと、野球って1球だね」と野村監督はボヤいたが、まさにそう実感させられる敗戦だった。 その1球は、投打それぞれにあった。打の1球は7回1死一、三塁からのヒットエンドランだ。初球をスクイズ失敗し、カウント2―2からのヒットエンドランだった。ストライクが来るカウントでやるべき策を、ボールの可能性もある場面で行ったのはベンチのミス。野村監督が「私の失敗」と言ったのは潔かったと思う。だが、余りにも大きなミスだったことも事実だが。勝ち試合を落とす原因になったのだから。 走者三塁からのヒットエンドラン。今年のオープン戦でも、野村監督との囲み取材の中で話題になっていた。南海時代から好きな作戦だったと言っていた。「当てるだけなら、スクイズより簡単じゃないか」とも話していた。オープン戦でテストしたそうだったのだが、結局チャンスはこなかった。 昨日の敗戦後、橋上ヘッドコーチに、いつ以来のスペシャルプレーなのか聞くと、楽天では行っていないという。橋上ヘッドの記憶では、阪神時代の橋上ヘッド以来という。 「打つ瞬間に、今岡がこの辺にいたよ」と左手を広げた。スクイズではないのに、走者がもう目の前にいる。打つ方にも衝撃的な作戦とうかがわれた。その前はいつか、と、さらに橋上ヘッドに聞くと「八重樫さんは日本シリーズだった」という。ヤクルト時代の日本シリーズ。八重樫はフライを打ってしまった。本塁突入を試みる三塁走者は、三塁に戻るのが精一杯で、タッチアップができなかった。結果論で言えば、策をしなければ、タッチアップで1点が入っていたということになる。 橋上ヘッドの記憶では、秘策はこの3回だけという。成功1回、失敗2回。通常のヒットエンドランで、走者を一塁から三塁に進める成功率は10%程度というから。3分の1の成功率は、高いのか低いのか。【金子航】
2009年06月04日
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横浜スタジアムへの電車で新聞を読んでいると、渡辺恒が、ファームで先発していた。3回と短いイニングだったが、僕には驚きだった。 先日、20日くらいだったか。泉の2軍球場に行くと、ブルペン投球を終えた渡辺恒が「先発クビになりました」と、笑顔で言った。 彼の以前のブログを読むと、先発登板を楽しんでるように見受けられた。そう質問すると「そりゃ、楽しいことは楽しいですけど」と言う。投手として先発投手を務めるのは単純に楽しいことには違いない。だが、プロ野球選手として、やるべきことがある。渡辺恒だったら、左の救援陣の一員としてチームに貢献することが、今年の彼に求められることだし、本人もそう感じているはず。 「もう先発やらないんだ。じゃあ、これからは、本職だね」と言うと、渡辺恒は、また笑顔で大きくうなずいた。先発クビは、救援で1軍復帰への再出発を意味する。気合も入っていたのに、また2軍で先発。チーム事情もあって急きょの先発マウンドになったようだが、ブログにあるように、めげないでほしい。【金子航】
2009年05月24日
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泉2軍練習場で、また1人復活への階段を上った。左肩の故障から復帰を目指すルーキー藤原が、フリー打撃への登板を再開した。2月18日に久米島キャンプの紅白戦に登板して以来となる、打者相手の投球。先日、青山が今季初めて1軍昇格を果たしたが、後を追うように期待の左腕が晴れの舞台へと歩を進めた。これだけ投げなかったことはなかった。左肩腱板面断裂の影響から、ブルペン投球まで2カ月を要した。「時間かかりましたね。これだけ長い間、打者相手に投げないことなんて、人生で1度もありませんでしたから」と、振り返った。久米島キャンプでは、順調に仕上がったと思った直後の離脱。いきなり苦難のプロ生活を強いられた男にとって、投げられることがうれしかった。力は十分にある。「隠れ首位打者」として好調な打撃を続けている草野はキャンプ中に見た藤原の印象を覚えていた。「元気のいいストレートを放るよねえ。あれは打ちづらい」。社会人時代は、ほとんど直球1本で抑えてきた。肩への不安さえなくなれば、また活きのいいボールが帰ってくる。同期入団の井坂はプロ初登板で初勝利を挙げた。2年目の長谷部も先発初勝利を10度目の正直で手にした。好調楽天にあって日替わりで現れるヒーローに、藤原が名乗りを挙げる日も、そう遠くはない。【小松正明】
2009年05月19日
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エース岩隈が投げて、絶好調の草野が4打点。昨日は、いい逆転勝利だった。 本紙の紙面でも、岩隈を中心に大きく展開していた。が、悔いが残ったのは憲史を取り上げられなかったこと。 プロ初の猛打賞、3安打をマークした聖沢と一緒に、憲史も昨日1軍に昇格した。スタメンではなかったが、7回逆転劇に果たした憲史の役割はきわめて大きい。2死満塁。代打でフルカウント。最後のボールは外角にワンバウンドするボール球。押し出し四球は決勝点になり、次の草野の走者一掃につながった。 試合後の野村監督は「大きい声じゃ言えないけど、あれはスイング(で三振)だよ。ワンバウンドしているのに、あいつは不器用だね、なんであんなの手を出すのかね。よく(審判が)セーフと言ってくれたよ。ハーフスイングは(審判によって)個人差があるからね」とニンマリしていた。 橋上ヘッドコーチも、「里崎が三塁塁審にアピールしていたら、スイングを取られていたな。里崎が何もしなかったから助かったよ。外にワンバウンドのボールだったから、里崎はバットが見えていなかったのかな。三振の直後、三塁塁審は前屈みの態勢だった。体重が前に行っているときは、スイングのことが多い。直後ならスイングだけど、一瞬、間が明くと、スイングを取らないもんなんだよな。あれが三振だったら、あそこで終わっていた」と話していた。(僕は、ベンチにいながら塁審の体重移動を見ていることに「へえ~」って思った) そんなビッグプレーだったから、ぜひ紙面に文字にしたかったのだが、面積の問題やら、もろもろの当方の都合なんだが、掲載とはならなかった。 憲史と岩隈と千葉マリンって、相性が抜群なのだった。球団創設の05年開幕戦。千葉マリンで岩隈が記念碑的な勝利を飾った。その試合の3回に、先制適時二塁打を放ったのが憲史だった。 さらに07年の5月4日。プロ初の満塁本塁打を放った時も、マウンドには岩隈がいた。07年8月には、9回の同点2ランで岩隈の負けを消したこともあった。当然、憲史も因縁に気が付いている。聞いて見ると大きくうなずき、見えないパワーを感じていたことを明かした。そして憲史は言った。「でも、あれが三振だったら、もう終わっていた。よかったあ~」。2軍から上がったばかりで大チャンス。結果が欲しいからこそのハーフスイング。でも、三振ならば2軍に逆戻り。陰のヒーローの言葉には、そんな緊迫感が凝縮していた。 今日も千葉。今、3回裏、劣勢。マウンドには岩隈は上がらないが、憲史の出番は可能性十分だ。【金子航】
2009年05月10日
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ボブ、残念でした。昨日4日の西武戦で先発し、初回に4点を失って敗戦投手に。この日、試合前練習のため西武球場に着くと、真っ先にグラウンドに飛び出し、黙々と調整を始めていた。一走り終えた川井に近づくと、ボブは、クビをひねりながら話し出した。 いやあ。宿舎の部屋で泣いちゃいました。 ここ2年、日の当たる場所に来られなかっただけに、どうにかいいパフォーマンスをしたいと意気込んでいたのだろう。「泣いちゃいました」という言葉は冗談とは思えなかった。 さらに、ボブは「監督、怒っていました?」と、指揮官の様子を聞いてきた。野村監督は昨日の敗戦後、川井に対しては怒っていなかった。でも「川井も、生き残るためには何が必要か、考えないのか? 変化球を1つ覚えるのは、投手にとって難しいのかな?」と苦言は呈していた。監督は、試合中にキャッチャーになりきり、「自分が捕手だったら」と配球を組み立てる。川井の投球を見て、球種の少なさを実感したのだろう。 私は、そのまま川井に伝えると「そうですか。そうですね。昨日はカーブが少なかったですね。(西武)岸のような投球をしないといけませんね。僕みたいな投手は」と、振り返って反省し始めた。そうしてボブは「また、今日から頑張ります」と笑って、練習するために外野へ消えていった。2軍暮らしが長かったボブ。1軍の失敗ならば、前向きに気持ちの切り替えができるのだろう。巻き返しへの意欲漂うボブの後ろ姿に、来週への期待を感じた。【金子航】
2009年05月05日
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打球音とともに踏み切った。22日のロッテ戦。7回2死二、三塁のチャンスで二塁走者だった内村は、ひたすら本塁だけを目指して加速した。「そんなに前に守ってたんですか? 全然知りませんでした」。極端な前進守備だったサブローの返球との競争に勝ち、里崎のブロックもかいくぐった。「滑り込んだ後、(三塁走者の)武司さんとぶつかっちゃいましたよ」と舌を出した。完封ペースで投げ続けていた田中の負担を軽くする貴重な2点目は、チーム1の俊足がもたらした。走ることにかけては、だれにも譲る気はない。野手陣で定期的に行う俊敏性のテストも、常にチームトップを守り続ける。守備にも自信を持ち始め「あとは打つだけですよ」と、レギュラー獲得への意欲はベンチに控える若手の中でも1番熱い。23日は1軍戦を前に、2軍戦にも出場してきた。前日にフル出場し、翌朝7時起床で2軍戦にフル出場。そのままKスタに向かった。午後11時に帰るころには「もう眠いです」と目をこすったが、表情には充実感があふれていた。プロ2年目を全力で走る内村に、1日24時間は短すぎる。【小松正明】
2009年04月23日
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先週は、1軍が仙台での試合だったので、2軍・泉に顔を出した。「泉野戦病院」に変化の兆しが見えてきた。投手だけで11人が故障でリハビリを行っているが、それぞれ大分回復し、復帰のメドが立ってきた選手が目立つ。 左ヒザ痛でキャンプ途中で離脱した青山はブルペンで投球を再開。まだ全力で走るまで回復していないというが、ゴールデンウイーク頃には復帰できそう。「みんな一斉に復帰できそうですよ」と、約1月遅れの開幕を思い、リハビリに励む。 腰痛でダウンしていた大広も、グラウンドでフリー打撃を行っていた。「久米島の最後は起き上がれなかったんです。どうにか歩けるようになりましたよ」と、野球ができる喜びを感じていた。 山村もブルペンで投げていた。傾斜を利用したキャッチボール程度と話したが、投げ終えると笑いをこらえるような仕草をする。痛みのない投球動作は、1年半ぶりという。1軍マウンドへの希望が、形になって見えてきた。山村と同じく肩痛の藤原も、並んでブルペン投球を再開した。 片山は、明るさを失わずガンガン走っている。「太もも太くなってんです」と、笑顔で両腿をさすっていた。 そんな野戦病院に、川岸が加わった。野村監督から新ストッパーに指名され、札幌で行われた開幕3連戦では、2戦目に今季初セーブを挙げ、3戦目は今季初勝利と、大車輪の活躍だった。それが、7日に右ひじ痛で2軍落ちした。9日の泉に、苦笑いする川岸がいた。 「投げている時から、ヒジが変だなっていうのはあったんです。(2イニング目の延長11回無死一、二塁)鶴岡の時は『頼むから早く終わってくれ』って思ってました」と痛みを抱えながらに開幕・日本ハム戦3連勝だったと言う。 「でも、ビデオを見直しても、あの試合は、腕、振れてましたね。痛くても、ヒジがブっ飛んでもいいと思ってましたもん。アドレナリン。そういうアドレナリンが出るのが9回なんです。9回を投げるのってスゴイですよ」。チーム全員の生活を背負う、最終回のマウンド。その重圧が、自分の潜在能力を引き出したと話す。だから、ピンチは招いたものの抑え切れたし、同時にヒジも故障した。たとえ故障と背中合わせでも、川岸は再び9回にマウンドに立つことを目指し、リハビリを続けるという。 野戦病院退院後の彼らに期待したい。【金子航】
2009年04月14日
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予想外の結果に、本人が1番戸惑った。5時間を超える熱戦となった日本ハム3回戦。11回、中村紀が勝ち越し打を放った後、1死一、二塁で打席が回ってきた。「久しぶりですね。去年は1回も1軍にいなかったから、一昨年の10月ですかね」。正確には07年9月30日のソフトバンク戦以来となる安打。記憶も薄れるほど久しぶりの安打は、日本ハムの戦意を喪失させる適時二塁打になった。とにかく試合に出られればいい。守備力を買われて開幕1軍入りした男は、謙虚に話した。「守備固めでも何でもいいですよ。使われ方は気にしない。去年出られなかった分、1試合でも多く試合に出たい」と、試合への飢えを明かした。07年は準レギュラーとして97試合に出場したが、右ひじの故障から08年の丸一年を棒に振った。「ひじがもってくれれば。ひじさえ大丈夫なら、試合にもたくさん出られる」と自信ものぞかせた。鉄平とは同い年で同じ外野手ということもあり公私ともに仲がいい。「鉄平の調子がいいのは、自分のおかげなんじゃないですか」と笑っていると、声を聞きつけたのか鉄平が近づいてきた。すると「野球が楽しいのは鉄平のおかげだよ」と、少し照れくさそうに言った。オフの自主トレからともに活躍を誓い合った同士が、開幕3連勝と最高のスタートダッシュを切ったチームを支えている。昨年は右ひじの手術を乗り越えた岩隈が、最高のシーズンを送った。今度は牧田が右翼からのレーザービームでファンを沸かせる番だ。【小松正明】
2009年04月06日
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楽天初のルーキー、一場が仙台を去ってから1週間が経った。有り余る才能から毎年「未完の大器」と期待されたが、チームやファンが期待する成績を残せないまま、交換トレードが決まった。久米島キャンプは「一場」という投手を、一から作り直す時間だった。新任の佐藤投手コーチがつきっきりで指導し、定まらないフォームを1度壊し、もう1度作り上げる毎日だった。ある日、順調に成果を挙げつつあった一場が突然調子を乱した。投球はワンバウンドばかり。ストライクゾーンに投げるどころの話ではなくなった。「もう分かんなくなりました。野球辞めますわ」。自虐的な冗談ではあったが、ようやく復調の兆しが見えつつあったなかでの大乱調に思わず弱音が口を突いた。トレードは、本人にとっても突然訪れた転機だった。「球団事務所に来てくれって言われたんで。みんなびっくりって言いますけど、自分が1番びっくりしてますよ」と、困惑にも似た声で話した。それでも最後には「神宮は大学で投げてたところですから。そこで何か変われればいいと思う」と前向きにとらえ直した。選手の移籍はプロ野球界では日常茶飯事。2、3年に1度担当球団が替わる野球記者も同じようなものだ。旧担当のチームの選手と会うと「久しぶり!」と、当時を懐かしむ。トレードになった選手との再会も、それに少し似ている。仙台を去る一場に、激励の意味を込めてこんなメールを送った。「ちゃんと神宮で投げてろよ!戸田(2軍球場)じゃないぞ!」。熱心な楽天ファンの方は「ヤクルト一場」を応援できないかもしれない。ただ個人的には、一場が新天地で球界を代表するような投手に成長してくれることを期待して止まない。【小松正明】
2009年03月31日
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みなさん、今日のWBCはご覧になりましたか?楽天のエース岩隈、素晴らしい投球でしたね。松坂、ダルビッシュとともにサムライジャパンの先発3本柱と言われてきましたが、ローテーションでは常に3番手でした。それでも今日の好投で名実ともに「日本のエース」と呼ばれるにふさわしい選手になったのではないでしょうか。岩隈に関しては、周囲の人々はみんなハラハラドキドキでした。家族はもちろんのこと、普段から顔を合わせる担当記者陣も同じです。先日、記者仲間との会話でこんなやりとりがありました。「なんとか無事に帰って来てほしいよな」「そうですよね。めった打ちとかだけは、なんとか避けてほしいです・・・」今年の日刊スポーツは先輩の金子記者と自分が、昨年から担当させて頂いていますが、他社もほとんど同じ顔ぶれ。昨夏、北京五輪で落選した岩隈の落胆ぶりを目の当たりにした人ばかりです。それだけに今回こそに日本代表の舞台で好成績を挙げてほしいと願っていました。04年のアテネ五輪でオランダ相手に大乱調だったことはみなさんもご存じかと思います。果たして、本当に国際試合では勝てないのか。WBC初登板となった韓国戦では好投報われず初黒星でした。その上で今回のキューバ戦は負ければ敗退決定という大一番。「もしまた負けたら・・・」と考えると、見てるこちらまで胃が痛くなりました。結果は6回無失点で勝ち投手!とにかくホッとしたのひと言です(笑)もう1イニング投げるかと思いましたが、好投のままマウンドを降りたことで「もうドキドキしなくてすむや」と、試合中ながら安心してしまいました。決勝トーナメントに残ったことで、ジャパンの帰国はもうちょっと先になりました。残念ながら自分は現地で試合が見られなかったので、岩隈が帰ってきたら、いろいろ土産話をしてもらおうと思います。内容はまた紙面やブログで紹介しますので、お楽しみに。
2009年03月19日
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競う相手がいるこそ、自分を厳しく鍛えられる。ドラフト2位で入団した高卒中川には、負けられない男がいた。巨人・大田泰示。自身の高校通算32本塁打の2倍以上、65本塁打を放った超大物ルーキーだ。偶然にも名前は同じ「タイシ」。比較されるのは必然だった。それでも中川は「負けませんよ」と短い言葉にライバル心を燃やした。ともに右打ちの長距離砲として将来を有望視されている。「タイシ対決」の第1ラウンドは、巨人2軍の本拠地、ジャイアンツ球場から始まった。 ライバルは2軍とはいえ常勝球団の4番を任されている。一方、自分はスタメン出場がやっと。それでも劣等感などさらさらなかった。初対決の内容は中川3打数無安打、大田4打数無安打と痛み分けに終わった。「まだまだですね。でもこれからですよ。これから打てるようになれればいい」と、沈む様子はなかった。さらに「大田君も打ててませんでしたね」とニヤリ。プロの世界で四苦八苦する姿に、スタートラインは同じだと再認識した。 ともに打撃練習では豪快な打球を連発するが、対外試合での本塁打は1本もなし。知名度こそ差をつけられだが、実績には違いはない。「どっちが先に1本打つか? そうですね」。18歳同士の戦いは、まだ始まったばかりだ。【小松正明】
2009年03月08日
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山村が退院した。肩痛のリハビリを優先し、久米島キャンプの参加を見送っていた。千葉にある、肩の権威と評判の医師に、再起を掛けた。一カ月の孤独なリハビリを「修了」し、今日4日、仙台に帰った。 「肩の痛みはないんです。もう20メートルくらいのキャッチボールは始めているんですよ」。 長かった個室生活を終えた山村は、痛みのないことを、まず喜んだ。 もう1度、マウンドに立つために、キャンプに行かない選択をした。開放に向かわなければ、今回の入院が無意味になってしまう。以前も「チームにも無理を言っただけに、絶対に治らないといけない」と、使命感さえ漂わせていた。 退院といっても、イコール完治ではない。1軍のマウンドに登るまでには、今後、いくつもの山を登らないとならない。一進一退のリハビリに耐えることが、今後の山村を待ち受けているはずだ。それでも、そんなこと百も承知とばかりに、山村は、明るく言った。「仙台では、遠投やりますよ」。その声に、試練を楽しむ覚悟を感じた。【金子航】
2009年03月04日
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どうも、金子航です。シーズン開幕からブログ再開というのが昨年までのパターンだった気がしたのですが、1週間ほど前に本サイト担当(というか責任者の)森田さんから「ブログ、最近更新していないね?」という電話があったので、シーズンを前に再開します。今年もどうぞ、宜しくお願いします。 今日は長崎に着きました。久米島、名護、那覇と沖縄に1月いましたが、ついに九州に上陸。那覇の空港ではノリこと中村紀洋選手が「最後まで(早出ノック)やったし、バリバリや!」と力一杯話していた。同じく2軍調整だった礒部も「絶好調!」と勇んで1軍合流。実力者の合流で、今季を占うオープン戦が「始まるぞ」という空気が広がった。 その陰で、1軍キャンプから離れざるをえない選手もいる。 2年目の石田。それに育成ルーキーの森田が、久米島残留組と那覇で合流した。 石田は昨日、北谷で中日戦に登板した。ヤクルト戦に次いで2日連投だった。ヤクルトでは1回無失点に抑え、興奮を隠せず、喜びに包まれていた。だが、中日戦では、先頭打者から3連打を浴び、2失点。試合後に2軍行きを言い渡された。 試合後、コーチから通達を受けた石田は、ショックもあっただろう。「こんなもんです、僕は」と、顔は笑って心で泣いて、そんな顔で話した。 僕ら報道陣は、試合直後に、まず佐藤投手コーチに取材し、石田の2軍行きを聞いていた。佐藤コーチは、失点したものの、石田のその日の投球には満足していた。「いいボールは投げていたんだ。あいつには『ファームで先発させる』と言ったんだ」と話していた。まだ2年目。今、彼に必要なものは、まさに今回の1軍の経験と、今年これから始まる2軍での実戦なのだろう。その中で、「ファームで先発させる」というコーチの発言の裏には、期待と評価がしっかりとあることを伺わせた。 「こんなもんです」とおどけた石田だったが、「絶対、戻ってきますよ」と、まん丸の目玉に力を込めて言って、バスに乗り込んだ。 1軍で投げるということ。その興奮と喜びを知った目玉だった。それだけでも、石田にとって、大きな価値のある沖縄の春だったのではないか、と僕は思った。【金子航】
2009年02月26日
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藤井の越年は決まったが、高須の契約更改交渉が、イブの24日に終了。これで、年内残すはマー君、岩隈の両投手のみ。いよいよ今年も、あとわずかで終わり、新しい1年が始まるなあ、なんて感じるこの頃です。 契約更改といえば、今年は中谷が印象的だった。 今年と変わらず推定650万円で一発サインしたが、交渉後の記者会見では開口一番「現状維持の2億円です」と、ジョークで報道陣を笑わせた。 その笑顔を見て、私は昨年の契約更改を思い出した。昨年は故障が続いて2軍暮らしに終始した。1軍では1試合も出場せず、ダウン提示を飲み込んだ。それでも「契約してくれないかと思っていた」と、安堵と感謝の交じった沈痛な表情を浮かべていた。「来年は崖っぷちのつもりでやります」と、前向きに話していたが、自信に満ちた表情とはほど遠かった。 今年は違った。今年は1軍で4試合に出て1安打。この1安打が勇気を与えた。会見を終えた中谷は「やっぱり、野球選手は試合に出ることが一番です。秋季練習でも、よくなったと思うんです」と、文字通り希望に目を輝かせて言った。秋季練習では1軍コーチに変化の兆しを指摘された。チーム屈指のスイングスピードを生かす道。去年までと比べて、はっきりと中谷には見えている様子だ。希望を持って練習に取り組めば、苦しい練習の効果もさらに期待できるでのはないか。来年の契約更改では「アップしました」と胸を張る中谷が見られるといいな、と思う。 ところで、昨日の23日に来季の担当発表がありまして、私は来季も楽天を担当することになりました。小松と一緒に、また久米島に行って参ります。このブログは来季開幕のころに再開すると聞いていますので、また、春にお会いしましょう。大型補強を敢行した来季の楽天は、強いかもしれませんよ。チームが強くて忙しい、といった年になることを期待しています。【金子航】
2008年12月24日
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中村紀洋選手が昨日6日、入団会見を行い、晴れて楽天の一員となった。会見では、報道陣に真摯(しんし)に対応するノリ選手に好感が持てた。 「枯れたヒマワリ」。秋季練習中の野村監督が、中村紀をこう評した。聞いた瞬間、マイナスイメージの言葉だが、中村紀は「ぼくにぴったりじゃないですか」と歓迎した。むしろ、ヒマワリは長嶋・王の代名詞とあって、恐縮するくらい。「枯れているだけでしょ?」と平然と話し、報道陣の笑いを誘った。「ヒマワリ、咲くように。もう一回、復活するように、精いっぱい努力します」。新しい環境で、リセットできる興奮を覚えているのがヒシヒシと伝わった。 和やかな会見取材の中で「他にも枯れたヤツもいるけどね」とも話した。報道陣は、誰を指すのか具体名を聞きただすことはしなかった。近鉄時代の同僚、礒部を指すと100%の確信があったから。 中村紀の加入が、礒部にとって、いい刺激になればと思う。今季は右肩を痛めたのもあって、2軍の選手になってしまった。外野は若い選手が力をつけており、うかうかしている場合じゃない。まだ、若い礒部が完全復活すれば、チームにとっても大きな戦力になるはずだ。 落合中日から野村楽天というのも、因縁を感じる。個性派の2人は、対戦があれば試合前に話し込む。野村監督がベンチで報道陣で談笑していると、中日の関係者が「落合監督がお話ししたいと申しております」と呼びにくる。野村監督は「呼ばれるのはオレくらいやろ」と言うように、落合監督と試合前に野球談議を楽しむのは12球団を見渡しても野村監督しかいない。 その落合監督から「2年間さび付いた体を元に戻して、誘いがあれば喜んで行けばいい。卒業おめでとう」と送り出してもらったという。そう中村紀が話した時、僕は、オレ竜のスケールの大きさに、鳥肌もの感動を覚えた。 2年前にオリックスを退団し、浪人になりそうな状況の中「拾ってくれた」と中村も認める中日から、FAで退団する。道義的に問題ありそうな今回の移籍だったが、落合監督の言葉は、そんな「やじ馬根性」を払拭するに足りる。中村も「球団の方の話も背中を押してくれた」と感謝を示していた。中日にとっては昨年の日本一の功労者だけに、大人の対応をしてくれたのだろう。温かく送り出した中日のためにも、今回の移籍が、楽天の好成績につながることを期待したい。【金子航】
2008年12月06日
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来季の年俸を決める契約更改が、先月末からスタートしている。アップに喜ぶ顔があれば、現状維持にホッとする顔、ダウンにがっくりした顔もある。近年こそ複数年契約も当たり前になってはいるが、プロ野球選手が1年1年に人生をかけて勝負をしていることを実感させられる時期だ。 若手選手には「期待値」という言葉がよく使われる。入団1、2年目の選手には、たとえ1軍出場がなくても成長のあとを示せば「期待値込み」で年俸がアップする場合がある。一方、ベテランになればなるほど1軍で出した結果が年俸に直結する。公傷のない楽天であれば、故障で1年を棒に振ったとしても減俸は免れない。 11月中までに契約更改を終えた15選手で、年俸アップはわずか1人。逆にダウンは5人となった。Aクラス入りを目指したチームにとって、5位に終われば厳冬は当然の結果。大幅アップは21勝した岩隈以外は見込めない。野村監督の口ぐせに「今の時代、頑張れば1億円なんてすぐじゃないか」というものがある。チームが初のAクラス、初優勝と成長していけば、おのずと1億円プレーヤーもたくさん生まれてくる。【小松正明】
2008年12月01日
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WBC監督人事。すったもんだの末に、巨人原監督に落ち着いた。 野村監督とサンディエゴに行けるかな? そんな私の淡い期待は、見事に砕け散った。 野村監督も「オレは、おじいちゃんたちに嫌われているからな」と、読売新聞上層部に受けの悪いという自覚があるようで、自分に要請が来るとは、まるで思っていなかった。ただ、星野さんの固辞以降、もともとあった野村待望論が、テレビなどでさらにヒートアップした。夕べの某民放番組では「やってもいいですよ」とまで言ってしまった。野村監督独特のリップサービスだが、「そこまで言わせなくてもいいのに…」と、日ごろKスタ宮城で何時間も近くに座っている私は思った。 謙遜は美徳。野村監督は自然とそう思っている。自分から「オレにやらせろ」的な発言は絶対にしない。周囲が待望する中で、思い腰を持ち上げるのが野村スタイルのはずだ。タイミングとしては、そんな時期だったかもしれない。ただ、意思決定機関であるコミッショナーサイドの流れからも、野村監督に要請が行くには、もっとまとまった選考時間と、さらに熱烈な待望論が必要だった。というか、両方の条件を満たしていないと、野村WBC監督は誕生しなかったと感じている。もうすぐ11月。来年開催の大会に向け、シンプルに決定するには、原監督で落着は自然な成り行きではないか。と、個人的には思う。 昨日のこと。橋上ヘッドコーチは「ウチの監督がなることも十分あるんじゃない? そうなったら栄誉なこと。でも体調が心配だなあ」と話していた。健康面をまずは心配していたが、野村監督の晴れ姿を見てみたいという様子だった。 本人も、実のところ、やってみたいと思っていたはずだ。中日落合監督が「野球を1番知っているのは野村監督」と、野村監督を推薦したことを伝え聞くと、「雑談だろ」と取り合わないポーズをとった。だが、「野球を1番知っている」というフレーズには、うれしそうに反応していた。 もし、野村監督が、ロッテのバレンタイン監督のように、立候補するような人だったら、今回の騒動はどういう結末をみたのだろう。ありえない仮定か。とも思うが、返す返すも「ジャパン」の帽子をかぶる野村監督を見てみたかったな。【金子航】
2008年10月27日
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楽天のレギュラーシーズンが終わる日、来季の1軍昇格を夢見た戦いがスタートした。宮崎で行われるフェニックスリーグは、2軍選手にとって試練の場所でもあり、有力株に名を挙げる絶好の機会でもある。シーズン中のように、けがで調整するベテラン選手もいない、まさに若手だけのサバイバルレース。充実の秋を過ごすことが、晴れの舞台への最短距離になる。 宮崎での2週間こそが、若手にとっては真のキャンプだ。松井2軍監督も「春のキャンプとは意味合いが全然違う」と言い切る。「春は若い選手がベテランが自分のペースでやる姿を見る。私生活についてもそう。逆に秋は朝から晩まで野球漬け。外に出てる暇なんてないよ」。朝から練習し、昼に試合し、また練習。夜間練習を終えてようやく1日が終わる。ベテラン選手の技術を学ぶ機会はないが、その分同年代の選手としのぎを削り続ける。「秋は体もできている。技術も体力ここでやることが、来年につながってくる」。長所を伸ばし、短所を克服するにも、最適な時期と環境だからだ。 来季の開幕戦は4月3日。半年後には、もう新たな戦いが始まっている。球団としても節目の5年目に、悲願のAクラス入りを目指し積極的な補強を行う方針も打ち出している。現レギュラー、新戦力に割って入るために、宮崎で流す汗は1粒もむだにはできない。【小松正明】
2008年10月07日
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来季の1軍を目指す2軍選手にとって、この秋は飛躍へのステップの時期だ。ルーキー石田にとっても、2年目での1軍デビューに向けて新たな試みを始めている。これまでのオーソドックスなフォームから、打者に背中が半分見えるほどの「プチトルネード投法」に変えた。「高校時代の1番いい時期は、こんな投げ方だったんです。プロ入りしてからは150キロを目指していましたが、今は140キロそこそこでもキレのある球を投げられるようにしたいんです」。半年間ファームでの試合で投げ続けた上での結論は、球速よりも球威を取ることだった。 一時は使ったフォームとはいえ、そう簡単に取り戻せるものではない。ブルペン投球でも、イメージどおりに投げられるのは10球に1球程度。上体をひねるために、体を切り返すタイミングが難しい。「まだ何球も続けていいボールがいかない。タイミングがバラバラなんです」と、完成にはまだ時間がかかる。「でも、このフォームの方が下半身がうまく使える気がするんです。一度固めてしまえば、大丈夫だと思います」。ボールを受けた井野も「いい真っすぐを投げる。制球がよくなれば、十分いける」と素質の高さを認めた。 腕試しの場は7日から宮崎で始まるフェニックスリーグ。練習と試合に明け暮れる中で、新投法に磨きをかける。「ちゃんと投げられるようになれば、自然とスピードが上がると思う。まだまだですが頑張ります」。試練の秋で流した汗は、きっと来年の自分につながっていく。【小松正明】
2008年09月29日
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将来を期待される若い3人が23日、武者修行に旅だった。永井、聖沢、枡田。55泊57日と、長期間に渡るハワイでのウインターリーグ。粗削りながらパワーとスピードにあふれるメジャーリーガーの卵たちにまみれて、自らにも磨きをかける。 人選で最も頭を悩ませたのが永井だった。クライマックスシリーズ進出がかなり厳しくなったとはいえ先発、中継ぎとフル回転できる2年目右腕を、シーズン終了前に今季の戦力から外していいものか。チーム内からも「なぜ永井?」という声もあった。本人も「正直びっくりしました。宮崎(フェニックス・リーグ)はあるかなとは思っていましたが」。予想もしないハワイ遠征に、身支度をするのにひと苦労した。 それでも決まってからは前向きに受け止めた。まったく別の環境で試合に明け暮れる毎日が続く。日本人選手も数人ずつ分かれてチームを作るため、外国人選手とのコミュニケーションを不可欠になる。「日本でもよかったけど、こういう機会を大切にしたい」。首脳陣から、この1球というところで甘さを度々指摘されてきたが、異国の地での戦いは精神鍛錬の場としても最適だ。 チームを離れ、ハワイで新たな自分を見つける旅に出た3人。真っ黒な日焼け顔で帰ってくるころには、来季の楽天に必要な力と心を備えてくるはずだ。【小松正明】
2008年09月24日
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球場を後にする爆音が、心なしか小さくなっている。チームの主砲、山崎武司の愛車・ランボルギーニは、レースカー顔負けのエンジン音をとどろかせる。だが、自身の不調とチームの低迷からか、帰宅を知らせる爆音は、普段のように耳をつんざくほどではなくなった。 夜の宮城野に響く音は、球団関係者の間でも名物になっている。「すごい音ですよね。あの音を聞くと山崎さんが帰ったって分かるんですよ」。だから余計に小さくなった音が気になってくる。「最近、静かになった気がしませんか?」。現場で戦う選手はもちろんだが、周囲の人々もプラスの話題が少ない状況だからこそ、マイナスの話題にも敏感になっている。 愛車にはボタン1つでエンジン音を小さくする最新機能が備わっている。「これでだいぶ変わるんだよ」と試しに押してもらうと、確かに倍以上のボリュームが響いた。もちろん、普段走る時は周辺に住む人々に気を使い、大きな音にすることはない。それでも、制限した音がさらに小さく聞こえると話すと「自分の調子や気持ちが上がってないから、音も静かになっちゃうんだよ」と苦笑いして答えた。 残り試合は20足らず。11月に40歳を迎えるベテランは、わずかに残るクライマックス・シリーズ進出に向けて、フルスイングを続ける。アーチを量産する豪打が復活すれば、愛車の雄たけびも、きっと戻ってくる。【小松正明】
2008年09月15日
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昨日10日のソフトバンク戦。負けはしたものの、見応えの十分な試合だった。敗戦の野村監督も「いい試合をするようになった。粘って、粘ったのを買ってほしい。あっさり負けたんじゃない。将来の糧になる」と、しんみりと話していた。もちろん、ボヤキのポイントはいくらでもあった敗戦だった。それでも、それ以上に光るものを見いだしたからこそ、野村監督の反応は、いつものボヤキオンパレードにはならなかったのだろう。 まずは9回、1死から代打草野が安打を放つ。そして代走渡辺直。打席の中村は初球を見逃しストライク。2球目を中飛にしてしまう。そこで、一塁走者の渡辺は走っていた。ヒットエンドランではない。単独スチールだった。土壇場に、相手守護神がマウンドに立つなかで、盗塁すべく走者が、警戒される中で、果敢に走ったのが、まずは評価される。しかも、渡辺は2死、打者内村の初球で、二盗に成功した。中村にしても凡打となったが、初球のストライクを見逃したのは、渡辺の盗塁が頭にあったからだ。 守りでは7回。1死一、三塁の場面だ。王監督は、打席の山崎にスクイズを要求することが想像できた。そこで、嶋は初球を外より高めの直球で、1ストライクを取った。2球目、3球目はピッチドアウト。初球をストライクにしたことで、バッテリーが優位にたって投球を組み立てていた。結果的に、変化球でゴロを打たせたものの、三塁失策で手痛い1点を奪われてしまった。が、見応えのある攻防だった。 敗戦のドームから隣接する選手宿舎への道、橋上ヘッドコーチに聞いた。野村監督が「いい試合をするようになった」と言っていたことも告げると、橋上ヘッドは、9回の渡辺の盗塁を挙げた。監督の目指す野球を実践できた渡辺も評価できるし、中村も同じという。「あそこで初球を待つ。そういうことをして欲しいんだよ。ストライクを2球待てば、2球目に盗塁を決められたかもしれない、でも、ストライクを2つ待てとは、中村に、言えないよな」。野村監督の理想としては、2ストライクまで犠牲にしてでも、中村の打席で走者二塁の状況を作りたかったと振り返るが、若い中村のキャリアを考えても、初球を待った姿勢を評価していた。 嶋のリードについては「初球が勝負。スクイズかもしれないけど、勝負に行かないといけない場面」と言った。勝負のために、野村監督もベンチ最前列に乗り出してソフトバンクベンチを凝視し、相手の策をうかがっていた。ベンチ全体で1球の勝負を行っていた。 昨日の敗戦で、僕は、来季への興奮を覚えた。「来季も野村野球を見られるんだ」、と楽しみになったのが偽らざる思いだ。 楽天を担当して2年目だが、これほど、補強をドラフトに頼るチームはないと言わざるを得ない。現在のチームの成績は、フロントの補強方針に起因するところが大きい。だから、野村監督が「それでも結果がすべてだ」と言うのを、正直、気の毒に思う。 一方で、どこぞの金満球団の野球には、全く魅力を感じない。楽天を2年見て、最近は特に実感する。今の成績をフロントの失態と批判するのは簡単だ。ただ、好意的に考えればと前置きは必要だが、監督選びにしろ、若手重用にしろ、米田代表の言う「中長期ビジョン」をチームの戦いに感じる。野手では渡辺直、嶋、内村、投手ではマー君、永井、片山、長谷部…。近年入団の戦力が、1軍の実戦で経験を積めているのは、球団の方針とリンクしているのだから。毎年のように期限ギリギリになってという、中途半端な補強さえなければ、「ビジョン」は一定の機能を果たしているのではないか。 球団は8月末に野村監督に続投を要請した。その後、野村監督は異例の1年契約に面白くない様子をのぞかせるものの、受諾する見通しを明かしている。前日の敗戦にも、将来の光は確かにあった。今はまだ、一筋の光だが、将来、チームを広く照らす光となれば…。監督人事問題が表面化した9月だから、特にそう思う。【金子航】
2008年09月11日
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今日2日、泉の2軍球場に行くと、山村がいなかった。右肩を痛めた今年は、行くたびに泉にいた山村が、いない。横須賀で行われたファーム湘南戦に登板するため、遠征に参加したのだった。 8月13日。泉で山村は8月22日からのホーム3連戦での登板を希望していた。「今季(の1軍)に間に合うためにも、8月のウチに一度、投げたい。9月になったら、ファームの試合が少なくなるからね」。22日、Kスタ宮城のファームの試合に行くと、山村は、泉に残留して、Kスタ宮城にはいなかった。関係者によると、山村は登板を希望したが、まだ肩の状態が、試合で投げる状態ではないと判断されたため、登板は見送ったという。 今年の1軍をあきらめないためにも、山村はどうにかして2軍戦に投げたいと申し出たのであろう。想像に難くない。ただ、いわゆる「肩ができる」までに40~50球の準備をしないとならない状況という。そんな状態で仮に1軍に行っても、中継ぎとして毎日スタンバイすることはできない。「肩の痛みはないようだが、準備に時間がかかるようでは…」と南谷チーフコンディショニングコーチは言った。泉で、高村投手コーチは「今日は投げることが1番の目標。結果は関係ない」と、初登板に送り出した心境を話した。 Kスタ宮城でのオリックス戦前の練習が始まるころ、午後2時半くらい。紀藤コーチにも山村の登板について聞いた。「今ごろ、投げているかな」と紀藤さんは言った。さらに「(中日監督の)落合さんとか『ある戦力で戦います』とか言うけど、もともとある戦力が、いいもんな。その点、うちはレギュラーの投手の中で山村と渡辺(ツネ)がいないんだもん。一場もそうだし。痛いよな。それでも、チーム防御率も頑張ってきたけどな」と続けた。 高村コーチの話では、今日の内容と、明日の回復具合次第では、残りのファームの試合にも登板することになるという。【金子航】
2008年09月02日
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2人のスピードが、苦しむ楽天にひと筋の光を差している。聖沢と内村。ともに新人の俊足コンビが26日、初めて同時にスタメンで名を連ねた。即戦力ルーキーと育成出身。入団の経緯も、当初の期待もまったく違う2人が、同じ舞台で走りまくった。 先に晴れ舞台を踏んだのは聖沢だった。久米島キャンプから1軍に帯同し、開幕1軍入り。守備固めや代走で起用され続けた。だが、大学時代4番を打った打撃では運にも見放され、プロ初安打は生まれなかった。5月26日にプロ2度目の2軍落ちをしてからは「今年はもう(1軍の)チャンスはないかもしれません」と弱気な言葉も出た。 対照的に3けたの背番号でスタートした内村は順調に階段を上り続けた。キャンプでは全日程を2軍で過ごしたが、堅実な守備と俊足に加え、打撃も成長。7月23日には支配下入りした。1軍初出場となった3日に、プロ初安打を放つなど1安打2得点。11日にはスタメンの座までつかんだ。「いつ落ちるか分からない。今のうちですから」。失敗を恐れない積極性が、次々と好結果を生んだ。 2人がスタメン出場を果たした試合前の練習で、聖沢が内村に「おれスタメン? スタメンっていつ分かるの? 」と訪ねた。答えは「よく分かんない。でも、いつもスタメンで出るつもりで練習してるからね」。半年の間に、ルーキーの立場は逆転していた。その試合で、聖沢はプロ初安打を含む2安打を放ち、ようやくプロ選手の仲間入りを果たした。「ラストチャンスでしたからね。もうファームに行ってもいいですよ」と、冗談も交えながらホッとした笑顔を見せた。1軍の舞台で肩を並べた2人が競い合い、高め合えば、それだけチームの力も確実に上がっていく。【小松正明】
2008年08月29日
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片山が帰ってきた。5日に発熱のため予告先発を回避。登録抹消となっていたが、先発ローテーションに復帰した。18日のロッテ戦で、3敗目を喫したものの、7回途中まで4失点。4点といっても守備のミスによる失点もあり、自責点は2点。「紀藤コーチに『粘った』と言ってもらえた」と試合後の片山は話した。敗戦は悔しいけれど、内容的にはまずまずといったところか。 千葉マリンのネット裏では、各球団の編成担当が鋭い視線を向けている。トレードの際のデータを集めるために日々、他球団の選手をチェックしているのだ。ロッテの佐藤幸さんが、片山の投球を評価していた。 佐藤氏は「まずは背が高い。しかも左。それだけでも、他の選手とはボールの軌道が違う。あんまり見たことのない軌道。練習もできないしね。打席では、ここ(ネット裏)で見ている以上に差し込まれる感覚だと思う」と、片山の長所を話した。 さらに「あの子は走るのが好きなんだってね。いくらでも走る、走るのは苦にならないって聞いたよ。そういうのがいいんだろうね」と、3年目での開花には理由があると言う。日ごろの練習態度まで、他球団の編成の耳には入るのだなと感心して、僕は佐藤さんの話しを聞いていた。 発熱で登板回避した際には、「先発失格」と書いた。首脳陣も「許されない」と怒っていた。それでも、昨日の試合後、杉山投手コーチは「まあ、次頑張ってもらおう」と及第点を与えていた。チームに迷惑をかけたことが、片山を一回り大きくしたと、好意的にとらえてもいいのかもしれない、とも思う。野村語録にもある。「失敗と書いて成長と読む」と。【金子航】
2008年08月19日
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始まりました北京五輪!スタートは柔道、サッカーが大苦戦しました。楽天担当記者の間では、早くも「今回は金メダル、1個も取れないんじゃない?」なんて心配する声も聞かれました。そんな沈滞ムードを吹き飛ばしたのは水泳の北島康介選手。世界新の金メダル、素晴らしいです!野村監督も「野球は毎日試合だけど(五輪は)4年に1度だからなあ。すごいプレッシャーだろうな」と感心されてました。またちょっと違う意味で感心していた選手の一人が鉄平。「泳げる人はすごいですよね」とボソリ。よくよく聞いてみれば「僕、泳ぐの苦手なんですよ。息継ぎができなくて。水の中で息?ちゃんと吐いてますよ。ただ、顔を上げた時に息がうまく吸えなくて…」。意外な事実です(笑い)では、なぜ泳ぎが苦手なのか。運動にはオープンスキルとクローズドスキルというのがあります。オープンスキルというのは野球、サッカー、バスケットボールなど球技に多いもので、くるくる変わる目の前の状況を判断して、対応しながらプレーするもの。クローズドスキルというのは体操、水泳、陸上などで、決まった条件の中でいかに高いパフォーマンスを出すかというものです。例を出すとゴルフは球技ではありますが、芝目や傾斜はあるものの、練習してきたスイングを、いかに再現できるかというものなので、クローズド寄りの競技ということになります。ちなみにオープンが得意ならクローズドは苦手、クローズドが得意ならオープンは苦手、という傾向があるそうです。巧みなバットコントロールで、相手投手の球を打ち返す技は、まさにオープンスキル。鉄平が泳ぎが苦手なのも納得です(笑い)
2008年08月12日
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昨夜、もう日付が変わってから永井はクラブハウスから出てきた。帰りの車に向かうまで、降り始めた雨に濡れながら話しを聞いた。雨も降っているし、歩きながら話しを聞こうと思ったのだが、永井は足を止めた。 「なんか、吹っ切れました。ここんとこ、1か月くらい、悩んでいたんですけど、吹っ切れて、投げられた感じです。久しぶりに4回投げたし。これからですね」。 一昨日は「厄年なんです。それですかね」と、どんよりしていたが、この日は別人のように晴れやかな顔だった。【金子航】
2008年08月06日
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永井が、生き返るきっかけをつかんだかもしれない。5日の日本ハム戦に、2番手で登板。先発ドミンゴが3回持たずにKOされ、早々と出番が来た。6回の投球は圧巻だった。金子を遊ゴロ、森本を見逃し三振、工藤を見逃し三振と3者凡退に仕留めた。工藤の三振など、カウント2―2から、内角低め直球で見逃し三振。まったくバットを出させない、キレのあるボールだった。 前日の9回裏を思い出す。2―5と3点を追う9回に登板し、1失点。9回裏の攻撃の間、ずっと山崎武の言葉に耳を傾けていた。テレビでも攻撃そっちのけでその模様をオンエアしていたので、記憶のあるファンもいるだろう。テレビでは説教を受けている感じだった。前夜の試合後、山崎武に聞いた。 タケシさん 何を悩んでいるのか聞きたかったんだ。最近、悩んでいる様子だったから。あいつは、いいストレート、落差のあるドロップカーブ、それにフォーク。打者が嫌がる3つのボールを持っている。そう簡単に打たれるはずはないんだ。何を考えて、投げているのか聞きたかった。打者心理をちょっと考えれば、もっといい結果になるはずなんだ。金子誠が何を考えて三振したのか、考えろと言った。ちょっと視野が広がれば、違うんだ。オレは去年、野村監督から教わって、視野が広がったことで、打つことができた。投手もそう。今の視野をちょっと広げれば違うんだ。まあ、そんなこと言う前に、オレが打てよな。ははは。 最後は、自分のふがいなさを笑い飛ばしたが「永井が頑張らないとダメなんだ」と、期待を込めてのアドバイスだった。永井は夕べ「タケシさんの言うことは正論なんです。最近、悩んでいて…」と、言葉を詰まらせて寮に帰った。その時は、出口は完全には見えていない様子だった。 この日のマウンドは、そんな悩みとは無縁の投球だった。山崎武は投手が逃げることを嫌う。「またかよ~って思っちゃうんだ。その点、(田中)将大は打たれても向かっていくだろ。だから、打線も『打ってやろう』ってなるんだ」と話す。 この日の永井には、マー君と同じ表情があったように感じた。これを書いている今、6回裏、2死満塁とチャンスを作っている。タケシさんの話しが現実になろうとしている。試合後に、永井の気持ちの変化を聞いてみようと思う。【金子航】
2008年08月05日
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「雨天中止が増えるといいな。密かに願っているんだ」。2軍のデンコードースタジアムで、山村はつぶやいた。「1軍の日程表、見せて」と言われ、渡した日程を見て「まだ50試合ある…」と言った。 「できれば、この辺で…なあ」と、8月中旬を指さす。右肩痛から復帰を目指し、2軍で調整中だ。一時はシーズン中の手術も視野に入れていたが、メスは入れずにリハビリする道を選んだ。曇りの続く26日、山村は打撃投手のマウンドに立った。平石を相手に77球。内角やや高めを狙い、丁寧に投げ込んだ。1軍のマウンドで見せるスピードはまだない。あくまで、打者への感覚を確かめる意味で、1球1球を大事に投げていた。 「マウンドで打者に向かうのは2月以来かな。平石に打たれるようじゃ、ダメだけどな。まあ、ストライクは投げられるね。十分、投げられる」。ちょっぴり笑顔を交え、うなずき、言った。 リタイアしたのは3月初旬。長崎でキャンプ1軍合流した移動日練習だった。投内連携で痛みが出た。あれから5カ月。ようやく、打撃投手を務めるまで回復した。明日27日以降の肩の状態を見て、今後は復帰への道が再び始まる。 「なんでオレ、肩、痛めたのかな? 5カ月、気持ちは重いですよ。痩せたし。投げないと筋肉が落ちて、あっという間に4キロ落ちました」と、うらめしそうに、肩と腹をさすった。 1軍は、あっという間に最下位に転落した。マー君も離脱。投手陣は岩隈を除き、疲弊している感がある。最近に限ったことではないが、投手が終盤に打ち込まれると「去年は山村が、あそこで投げていた」「山村がいれば」という声を聞いたのは一度や二度ではない。中継ぎ、先発とフル回転した昨年の山村を、紀藤投手コーチは「投手陣のMVP」と評価していた。 その山村が、2軍で復帰の時を待っている。同じ肩痛の「マー君より早いかな」と冗談っぽく笑いながらも8月の復帰を見据えている。ただ、初めての肩の故障。明日の状態も分からない、恐怖もつきまとうという。雨が降れば、9月に試合は持ち越される。山村のいる投手陣で戦える試合が、1試合でも増えるといい。【金子航】
2008年07月26日
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苦戦続きで最下位転落し、「マーくん」田中も右肩痛で離脱。主力選手もケガを抱えながらと、満身創痍で戦う最近のイーグルスです。野村監督が言う「苦戦の7月」が、その通りになってしまいました。猛暑のせいもあってか、選手の疲労もピークに近づいています。今日からの5連戦でオールスター休みに入ることですし、ここはなんとかひと踏ん張りしてほしいものです!不振が続くと不協和音もチラホラ出そうなもの。ですが、どうやらこのチームには関係ないようです☆18日に広島への移籍が発表された牧野さん。ご本人は「(移籍は)3度目だからね。頑張ってきますよ!」と明るく話していました。そんなベテランを元気に送り出そうと、19日の夜に送迎会が開かれました。参加した有志の投手、野手約30人が、思い出話を大いに語らったそうです。参加者の1人だった片山は「こういうところが、このチームはいいんですよ」とニッコリ。野村監督73歳の誕生日には、異例のベンチ裏での誕生パーティをした楽天ナイン。移籍する選手の送別会にこれだけ集まるというのも珍しい話だとか。「和」を重んじる野村監督の意志は、確実に伝えられています。チームワークは苦しい時こそ重要になってくるもの。今こそ「野村チルドレン」の結束力で、現状を打破してくれることを願います。【小松正明】
2008年07月25日
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北京五輪代表が決定した。楽天からは岩隈と田中が最終候補に残っていたが、田中1人が代表に選ばれた。 昨日の会見。会見の田中は堂々としていた。談話などは、今日の新聞にも書いたが、これから待ち受ける大舞台に、身を引き締めている様子が見て取れた。 本決まりとなるこの日まで、田中はどこか、五輪と自身を関連付けられないようでいた。交流戦の広島だった。「マー君、五輪、選ばれそうだね」と話しかけると「ない、ない。ないっすよ。僕には関係ないですよ」と、出場など想定外と言っていた。客寄せパンダ的に最終候補に残されている、そんな風に受け止めているのかな、と個人的には感じていたし、そう感じるのも無理はないとも、僕は思っていた。 何しろ、昨年の台湾での予選も、長谷部が参加していた福岡での合宿も参加していない。並み居る猛者たちが、必死に戦って勝ち取った五輪切符。その空気を知らない田中は、果たして本番でチームと一体になれるのか? そんな疑問、というか心配が浮かぶ。当事者である田中はなおさらそうじゃないのか。 ただ、大会も間近になったこの段階で、24人に選ばれた。最終決定に田中の腹も据わった様子。その覚悟が、昨日の会見の堂々とした姿につながっている。 しかし、岩隈にとっては悔しい結果となった。昨年の契約更改の時だった。「五輪にも選ばれたい」と真剣に話していた。その時は、手術を受け、復活を期していた。08年シーズンこそ、五輪に選ばれるほど完全復活している自身の姿を、イメージしていたはずだ。 岩隈落選が決まった東京ドームでの試合前。南谷チーフコンディショニングコーチは言った。「ダメだったか。選考だから、怒ることもできないし、嘆いていてもしかたがないよ。でも、クマのモチベーションが心配だな」。 ここまで12球団単独トップの12勝。五輪へ出るには十分の成績を残している。本人も今年の1つの目標として、五輪出場をモチベーションにしてきた。今後、世間でも五輪の熱が高まるはず。その中での疎外感が、落選によってもたらされる心配がある。今後のシーズンに悪い影響がなければいいが。岩隈は、「ガックリどころじゃないですよ~」と悔しさを胸にしまい込み、苦笑いを浮かべていた。ただ「2人が北京に行ったら、チームはやばいですよね」と話していたのも岩隈だった。エースとして、気持ちはシーズンに切り替えるはずだ。いずれにせよ、2人の8月が、より、楽しみになってきたのは間違いない。【金子航】
2008年07月18日
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ここのところ、新星が続々と現れるイーグルス。初勝利を初完封で飾った片山。支配下登録になったと思ったら、5日の西武戦では4安打した中村。これからも、まだまだ新星が誕生しそうな勢いです。そんな中、12球団で1番小さい新星も頑張ってます。育成選手の内村です。公称163センチ。ビッグマン片山とは実に28センチ差!それでもキラリと光るものがあれば活躍できるのが野球というもの。6日に行われた日本ハムとの2軍戦でも光ってました。日本ハム八木から両翼100メートル、中堅122メートルの広い鎌ヶ谷球場で、堂々と左越えにプロ2号アーチ!初めて見た頃はパワー不足を感じましたが、プロ入り半年でしっかり力をつけてました。もともと守備と足には定評がある選手。課題の打撃で結果が出てきたことで評価もグングン上昇中です。実力は松井2軍監督も認めるところ。「守備はチームでも1番と言っていいくらい。打撃も最初の頃はあんなに飛ばせるようになるとは思わなかった。プロの野球に慣れてきたんじゃないかな」とお墨付きでした。当の本人はというと「最近、調子がいいんですよ。本塁打はたまたまです」と照れ笑い。ひと足先に支配下登録された中村には「もともと打ってた人だから、いつ上がってもおかしくなかったんじゃないですか。自分はまだまだ」と謙虚でした。小さな新星が1軍の晴れ舞台をつかみ取り、大きな仕事をすることを期待します!
2008年07月07日
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