各府省にはもともとポストから外れた課長補佐や室長・課長級を処遇する年収が650万~1100万円の専門スタッフ職があり、「専門スタッフ職」制度創設時は審議官級も専門スタッフ職への移行が想定されたが、審議官級の年収は1350万円程度~1600万円程度であるのに、局長級が1750万円となっており年収差が大きすぎるとの指摘があったそうなのだ。このため高位の専門スタッフ職を新設し、給与水準を職能に応じて専門スタッフ職より高めることにより、出世競争に敗れた幹部官僚の給与減を最小限に抑え、天下り防止の実効性を高めることになったそうなのだ。このことについては今年8月の人事院勧告での給与勧告を求めたときにも話題になったそうなのだが、人事院は「具体的な職務と責任のあり方を踏まえて検討し、成案が得られれば速やかに勧告したい」と先送りしていたのだ。
民主党の案では来年の通常国会に、公務員の労働基本権を付与するための法案を提出しようというのだが、それを「2割削減」の実現に向けた一歩ととらえているのだ。 「思い切った人件費削減ができないのは、人事院勧告という制度があるからだ。ならば、公務員に労働基本権を与えて労使の直接交渉で給与を改定する仕組みに制度のほうを改めればよい」という論法なのだろう。だが、労使交渉が実現したとしても、給与を大幅カットすることは難しいと言われているのだ。労組が簡単に賃下げに応じるとは思えず、給与水準を下げられる保証はどこにもない。それどころか、交渉の結果で「かえって給与水準は高くなる可能性だってある」という政府関係者との見方まで出ているそうなのだ。それによく言われるのだが「労組を支持団体とする民主党政権が、労使交渉の場でどこまで人件費削減に踏み込めるのか疑問だ」ということも言われているのだ。
まさか、人事院勧告以上の削減という公約を破ったことへの批判をかわすための方便ではないだろうが、少なくとも公務員の労働基本権付与がただちに人件費の大幅カットにつながるといった幻想をふりまくべきではないだろう。ただ、政府の閣議決定で同職の整備が盛り込まれていることもあり、人事院は任用乱発による公務員総人件費の増加を抑制することを条件に年明け以降に追加勧告を行う方針を固めたようなのだ。取りまとめを行う内閣官房には「特別な調査・研究能力を有する」など基準の厳格化を要請しているわけなのだが、公務員への労働基本権付与は、人件費削減問題とは切り離して考えるべきテーマであって、それこそ、「専門スタッフ職」制度創設とは全く関係がないのだ。何のために公務員の労働基本権を付与するのか、いま一度整理してその目的と効果を我々国民に明確に説明する必要があるのだろう。
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