仁志・多喜馬の戯言日記&戯言通信

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2012年08月17日
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 今日からTVで黒澤明監督の作品が放送されるのだが、「七人の侍」が完成したとき黒澤監督曰く「日本の時代劇はみんな淡白。僕は、観客に、鰻丼の上にカツレツを乗せて、そのまた上にハンバーグを乗せて、その上からカレーをぶっかけたようなご馳走を食べさせたかった。」 とのことらしいのだ。本当に誰を見てもどこを見渡してもおなかいっぱいになる作品で、黒澤監督は「俳優さんにはまた会えるけど、勘兵衛なら勘兵衛という人には、もう二度と会えないわけでしょう。その人物のことを一所懸命に書いて来て、撮影中、毎日毎日、一緒に暮らしてきたわけでしょう。その人と別れちゃうという思いですよ。それがすごく悲しい淋しい気がするんです」と語っていたそうなのだ。

 この「七人の侍」という七人の集団は考えられる限り最小の数で構成された「高機能集団」で、何といっても7人の侍たちのキャラクターがすばらしいのだ。農民たちの侍探しのなかで一人ずつそれぞれの特徴を端的に示す絶妙なエピソードで、仲間を増やしてパーティーを形成していくのはまるでロールプレイングゲームのようなのだ。何度見てもまたワクワクするような気持ちで観入ってしまうのだが、思慮深い僧侶姿の勘兵衛や純粋にすごいものに惹かれ弟子にしてくれと頼む一途な勝四郎、己を高めることだけに執念を燃やす一番人気の高い久蔵、勘兵衛の仕掛けに引っ掛かったりするし、すぐにバレる嘘で本気でごまかそうとする愛らしさのある菊千代あたりは特に印象的なのだ。

 もっとも耐性の強い共同体とは「成員中のもっとも弱いもの」を育て、癒し支援することを目的とする共同体であるそうなのだが、そういう共同体がいちばんタフでいちばんパフォーマンスが高いそうなのだ。それゆえ組織はそのパフォーマンスを上げようと思ったら、成員中に「非力なもの」を意図的に組み込んで全員が育て、支援するという力動的なかたちで編成されるべきなのであるという組織論があって、その好個の事例が『七人の侍』における勝四郎の果たした役割となるそうなのだ。考えてみればこの「七人の侍」において、勝四郎の無垢な眼差しが基点となって随所にそそがれ、物語の進行するうえで重要な役割を演じて、黒澤明監督はまさに「語り部」の役割を演じさせていることを意図している
そうなのだ。

 この映画の語り始めの部分では勘兵衛にそそがれる勝四郎の畏敬の眼差しによって、まずはこの物語の地平が大きく展望され、まるで必然のような波乱の展開に導かれていくのだが、言い換えれば我々観客はつねに勝四郎の「憧憬や驚異の眼差し」を借りて、この物語の怒涛の展開を憧憬と驚異の眼差しで見つめ、この映画が描くあらゆる場面の炸裂するような輝きを無垢な感性で見ることができたる仕掛けになっているそうなのだ。しかもどんなことがあっても勝四郎を死なせてはならない。これがこの集団が「農民を野伏せりから救う」というミッション以上に重きを置いている「隠されたミッション」となっているそうで、なぜなら勝四郎にはこの「七人の侍」という集団の未来が託されているからだそうな
のだ。

 彼を一人前の侍に成長させることの重要性については、残りの六人が他の点ではいろいろ意見が食い違うにもかかわらず唯一合意しているというのだ。もちろん「農民を野伏せりから救う」というミッション以外に、自分のスキルや知識を彼のうちに「遺贈」することによって、おのれのエクスペンダブルな人生の意味が語り継がれることを彼らが夢見ているからだそうなのだ。しかも七人の侍の中の一人が若輩者の勝四郎でもオッケーだったのは、ほかの6人のバランスがすばらしいからだとも言えるのだ。実際には勝四郎みたいなのが7人中6人もいて、「どんな人事だ。バカ野郎」と心の中で人事担当者をののしりながら、リーダーとなって共同体をまとめていることも珍しくないのだろう。

 いわゆる「使えない」メンバーがいる方が組織は活性化するということはあるものだそうで、こういうことは私も実感として理解できているはずなのだが、蟻や蜂の社会でも「2・6・2の法則」というのがあるそうで、どんなに優秀な人材だけを集めてもこうなるそうなのだ。「フリーライダーめ」と目くじら立てるより登場人物の平八や五郎兵衛ではないが、「人間はおもしろいのかもしれないなあ」と笑っているほうがお互い気持ちよく働けていいのだろう。もっとも組織論の中では若輩者の勝四郎やトリック・スターの菊千代が、組織にとって必要な人材であるということを知らないのではなく、忘れているという現実が社会を取り巻いていることに注意を呼びかける内容になっているのだ。



--- On Fri, 2012/8/17, > wrote:















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最終更新日  2012年08月17日 12時31分04秒
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