年始にビール大手が開く経営方針説明会があるそうなのだが、1年間でどのジャンルのどのブランドをどう伸ばすのかという販売戦略を発表するそうなのだ。20年前からビールの需要は右肩下がりとなっており、そんな中で唯一好調を維持しているのが「プレミアムビール」ということのようなのだ。ビール系飲料市場はビール・発泡酒・第3のビールの構造変化があるようで、少子高齢化や若者のビール離れを背景に市場全体は縮小傾向となっているそうなのだ。その中で清涼飲料並みの低価格を実現した第3のビールが急成長してきたわけなのだが、サッポロの「ドラフトワン」が全国発売された10年前から、ビール製造各社とも開発・販売に力を注いだ結果増産が続いていたそうなのだ。
第3のビールの味はビールに近づき家庭での晩酌は第3のビールに置き換わったとされていたのだが、ここへきて第3のビールの伸びは失速気味となっているそうなのだ。一昨年の第3のビールの課税出荷量は前年比1.1%増の1億5501万ケースにとどまったそうで、現在では唯一高成長が見込めるのは高級ビール市場で、こちらは前年比5%以上の成長が続くとみられているのだ。サントリー酒類の「ザ・プレミアム・モルツ」は昨年度まで10年連続で過去最高の販売数量を更新し、サッポロビールの「エビス」も好調を維持しているそうなのだ。プレミアムビールが健闘している一方で第3のビールや低アルコール飲料などの低価格品も現状維持で推移してはいるというのだ。
「基本的に節約はしたいけれど、たまには贅沢していいものを飲みたい」と、アルコール市場でも消費の2極化が進んでいるということのようだが、ビール事業で唯一の成長分野に参入せずに指をくわえて見ている手はないということで、最大手のアサヒビールは昨年のギフトで販売して手応えを得た「スーパードライ ドライプレミアム」を今年の2月から通年で販売することを決めたというのだ。ほかの大手3社が次々とプレミアム強化を打ち出す中で、最後発となったのがキリンビールということなのだ。それでもセブン&アイ・ホールディングスと共同開発した「グランドキリン」をコンビニのみで販売してきたが、ボリュームが小さく他社と比べると見劣りしていたというのだ。
そこで今年は満を持して「一番搾り プレミアム」を発売し、プレミアムビールのギフト市場に本格参入を果たすというのだ。1月上旬に開かれたキリンビールの説明会会場では今年のギフト商戦に投入するプレミアムビール「一番搾り プレミアム」が並べられたというのだが、持ち上げると中身は空だったそうでパッケージは仮のモノだというのだ。完成品ではない「一番搾り プレミアム」という商品を敢えて並べたところから、何としても年始に大々的にお披露目したいという意気込みが伝わってくるというのだ。実はキリンはギフト市場で苦戦し事業を縮小した過去を持っているそうなのだ。会見でそのことについて問われた磯崎功典社長は「不退転の覚悟だ」と意気込みを見せたそうなのだ。
そもそも「プレミアムビール」とは何を指すのかを考える必要があるのだが、ホップや麦芽などのこだわりの原料や手間がかかる製法など、各社はプレミアムビールの売りをアピールしているが実はプレミアムビールの定義はないそうなのだ。唯一明確に違うのは価格で通常のビールを大体1割強上回っているというのだ。ビールでは麦芽から抽出する麦汁を原料として使用するわけなのだが、キリンビールの「一番搾り」はその名の通り麦芽を1度しか使っていないが、ほかのビールは1度麦汁を取り出した麦芽にさらにお湯を足して抽出する「2番搾り」も使用しているというのだ。コストがかかる製法を採用したことから「一番搾り」発売当初は、プレミアムビールとして高い価格で売るべきだという意見も出されたというのだ。
結局はブランドを浸透させことを優先して通常の価格で発売した「一番搾り」を、今さら値上げすることはできない一方で、下手にプレミアムビールを出せばせっかくこだわってきた「一番搾り」の売りがかすんでしまうというのだ。キリンビールは前年の2倍の広告宣伝費を「一番搾り」に振り向けるというのだ。年明けから放映が始まったテレビコマーシャルはさながらプレミアムビールのようで、「麦をぜいたくに使うから、コストがかかる」と「一番搾り」の魅力をアピールしているそうなのだ。消費者にプレミアムビールとはあまり認識されていない「一番搾り」のイメージを変えてプレミアムに流れている消費者を引き寄せられなければ、プレミアム市場でのキリンビールの苦戦は長引きそうなのだ。
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