仁志・多喜馬の戯言日記&戯言通信

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2014年08月04日
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TVでの特番だったのだが、宮城県内のある専門工事会社に電話がかかってきたのは、建築現場での生コン打設予定日の約1週間前だった。「大工が足りないので何とか工面してくれないか」との打診だった。その専門工事会社はちょうど1つの山を越えたばかりだったので、型枠大工を5人ほど送り出したのだ。そこは公共建築物の躯体工事で複数の専門工事会社から集められた型枠大工が急ピッチで型枠を組んでいた。生コン車を予約した日はもう目前でそんな状況では誰もが「もう間に合わない」思っていた。ある程度は予想できた事態で材料の加工段階から型枠大工が足りなかったのだ。15人いれば足りる現場だったが型枠材の加工に手いっぱいで必要な人数を集められなかったというのだ。

業者の担当者が同業他社に電話をしても「うちも余裕がない」と断られており、型枠大工を5人ほど送り出した専門工事会社の社長も「うちの大工が出向いた時点で既に手遅れだった」と振り返っていた。本当なら打設の1週間前なら6割の型枠が組み上がっていなければならない現場なのに、応援に入った時にはまだ4割しかできていなかったからだ。現場は型枠を支えるパイプやコンクリートの中に入れ込む鉄筋などが複雑に入り組んでおり、人数を増やせば増やすほど作業効率は落ちることもあって、結局は打設予定日までに型枠を組み終えることはできなかったのだ。追い打ちをかけたのは生コン車の不足で、型枠が組み終えられなくても2~3日後に再予約できれば工程の遅れはわずかで済んでいたのだ。

  しかし台数が減って需要過多になっていた生コン車を予約できたのは約10日後で、先の社長は「恐らく工期には間に合わないだろう」とため息をついていた。この現場は特殊な例ではなく、城県全体で型枠大工が不足していたのだ。同じように打設予定日に間に合わなかったり帳尻合わせに追われたりした現場は多かったのだが、それが大震災前の2月時点で表面化していなかったのは、工程の遅れを何とか取り戻したからだったのだ。型枠大工の業界団体である日本建設大工工事業協会の宮城支部が大震災前に会員企業向けに実施したアンケート調査は不足感を定量的に表している。平成21年に仙台市内で1568人いた型枠大工は平成22年には1202人に減少しており、1年で366人減っていたのだ。

  日本建設大工工事業協会宮城支部の支部長は取材に対して「不足感が表れたのは10年8月ごろからで、公共工事・民間工事ともに少しずつ仕事が出始めたら、職人が集められない現象が起こった。ほかの会社に電話してもどこも同じ状況だった。急激に仕事が増えたわけではない」と話ししていた。なぜ型枠大工が足りなくなったのかというとそのメカニズムは、リーマンショック以前は建設需要と必要な職人数がほぼ一致していた。発注に波があるので時期によっては職人数が過剰だったが、単価が比較的高く専門工事会社は職人の雇用を維持できていたのだ。それがリーマンショックによって建設需要が一気に冷え込み、国土交通省によれば約48兆円あった建設投資は3年間で5兆円以上減少したのだ。

  建設投資の急激な減少に伴って民間工事を中心に建設会社の価格競争が激化し、安値受注のしわ寄せが専門工事会社に及んだというのだ。収入が下がったことで多くの型枠大工が転職したり引退したりしてしまったのだ。職人が減った段階で建設需要が徐々に戻り始め、少し仕事が出たとたんに職人不足が露呈したというのだ。TVで取材していた仙台市の躯体工事はちょうどこのころ行われていたというのだ。職人を取り巻く環境はリーマンショック前に比べてかなり悪化しており、専門工事会社の経営者や業界団体の役員が指摘していたのは賃金の大きな低下だったのだ。「元請け会社の安値受注が影響していた」と複数の経営者が過去の実態を口をそろえて語っていたのだ。

  単価の一つの基準である公共工事設計労務単価は1990年代後半から下がり続け、2011年2月時点では1996年比で71%まで下落していたのだ。しかもリーマンショックで職人の単価は暴落し日本建設大工工事業協会の会長は取材時に「一時は50%近く単価が低下した」と話していたのだ。今でこそ職人不足の深刻化によって公共工事設計労務単価は年々上昇しているが当時はそうではなく、型枠大工のなかでは「ワンコイン大工」という自虐的な言葉も飛び交っていたというのだ。これは1m2の型枠を組む職人の労務単価が500円だったことから付けられたのだが、「1m2当たり500円だったら日給1万円未満。これでは食えない」と嘆き、もう「未来がない」と思って多くの職人が転業してしまったのだ。






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最終更新日  2014年08月04日 12時47分17秒
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