「特定秘密の保護に関する法律」いわゆる秘密保護法とは、漏えいすると国の安全保障に著しい支障を与えるとされる情報を「特定秘密」に指定し、それを取り扱う人を調査・管理してそれを外部に知らせたり外部から知ろうとしたりする人などを処罰することによって、「特定秘密」を守ろうとするものなのだ。「特定秘密」の対象になる情報は政府が言うには「防衛」・「外交」・「特定有害活動の防止」・「テロリズムの防止」に関する情報だというのだが、これはとても範囲が広くて曖昧で、どんな情報でもどれかに該当してしまうおそれがありそうなのだ。「特定秘密」を指定するのはその情報を管理している行政機関ですから、その気になれば何でも「特定秘密」になってしまうということは決して大袈裟ではないのだ。
行政機関が国民に知られたくない情報を「特定秘密」に指定して、国民の目から隠してしまえるということも可能なのだが、秘密保護法には「特定秘密」を取り扱う人を調査し、管理する「適性評価制度」というものが規定されていることも問題なのだ。調査項目はローンなどの返済状況だけでなく精神疾患などでの通院歴等、プライバシーに関する事項を含め多岐にわたっており、対象も秘密を取り扱う人というのは国家公務員だけではなく、一部の地方公務員や政府と契約関係にある民間事業者で働く人も含まれているというのだ。その上これらの本人だけではなくて家族や同居人にも調査が及ぶこととなり、広い範囲の人の個人情報が収集・管理されることになるというのだ。
しかもこの批判の多い特定秘密保護法は、初めて作られた原案に関する政府内の協議で、情報漏えい事件が少ないことなどが理由で、「法の必要性である立法事実が弱い」と内閣法制局に指摘されていたことが分かったというのだ。成立当時から特定秘密保護法には「立法事実がない」と法律家から批判されているのだが、政府内にも同様の異論があったことになるというのだ。この立法事実とは法律を作ったり改正したりする際にその必要性を根拠づける事実のことで、法律が憲法に違反していないかどうかを裁判所が審査する際、その有無が判断基準の一つになるというのだ。これは大手新聞社が特定秘密保護法案の作成過程を探ろうと情報公開請求した文章で分かったというのだ。
特定秘密保護法は民主党政権下で実質的な法案作りが始まったのだが、きっかけは尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船が中国漁船に衝突された事件の録画映像が、自衛官からネットに流出したことからなのだ。素案を作って防衛・外務・警察庁など関係省庁に提示して意見を求め、各省庁からの要求を取り入れたり断ったりしながら条文を調整する一方、月に1~3回程度のペースで内閣法制局に素案や資料を持ち込み、憲法や既存の法律との整合などについて指導や助言を受けて修正したというのだ。政府から開示された文書で確認できるだけでも法制局との協議は40回以上行われており、その協議は課長級の中堅官僚である参事官が主に担ったそうなのだ。
情報公開請求し開示された約4万枚の公文書では、法案の内容について政府内部でも議論があったことが記録され官僚たちの「ホンネ」も透けて見えるというのだが、国民の基本的人権を侵害しないよう戒める規定のことである「訓示的規定」について、法の危うさを政府自身が認識し批判をかわすために、「訓示的規定」を法案の素案に入れていたというのだ。「いずれ特定秘密だらけになり、国民の知らない間にあらゆる物事が決まる社会になってしまう」と主張に対して、「知る権利や報道の自由への配慮」や「第三者機関の設置を検討」という文言うぃ述べてはいるが、有識者は「典型的霞ヶ関用語。本気でやるなら『義務』と書く。官僚たちは始めからそんな気はない」と批判している。
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