広島市の土砂災害で被災地の中でも流出した土砂によって特に被害が大きかった広島市安佐南区の八木地区では、付近の4地区だけで計約50万立方メートルと推定されることが広島市への取材で分かったそうなのだ。被災地全域が山肌を切り開いた斜面の造成地だということもあって、流出土砂量がさらに増加するというのだ。あたり一帯は泥で茶色く染まり岩や流木がごろごろと転がっており、無数の木々が泥の上に折り重なっているため、消防隊員がチェーンソーを使って細かく寸断し、それをバケツリレーの形式で道の脇によけてから、ようやく重機の移動ルートを確保するという手順を強いられ、現地で捜索にあたる自衛隊員等は作業がはかどらず大きくため息をついているというのだ。
もともと「日本一地滑りが起きやすいエリア」と言われていた地区なのだが、安佐南区や安佐北区の計50カ所で土石流が発生していたことも広島県への取材で新たに判明したそうで、広島県はこれまで航空写真の分析で土石流箇所を28カ所としてきたが、職員らが現場で詳細に調査した結果さらに増えたというのだ。流出土砂については過去の大規模土石流災害でも数万立方メートル程度とされるが、36人が死亡した昨年10月の伊豆大島土石流災害でも17万5千立方メートルで、今回の広島市の土砂災害で被災地の中でも流出した土砂量は過去最大規模となる。広島市が航空写真をもとに分析した結果50万立方メートルと算出され、この土砂量を大型トラックで搬送すると8万台以上が必要になるとおいのだ。
大型ダンプは積載量が 10 トンとなっていることから我々が工事の積算等で考える場合は、ダンプトラックに6立方メートル積めるとして計算するのだが、それにしても多量の土砂が流れ出てことになるのだ。今回のような現場で発生した土砂に木の根が混じっている状態では簡単に処理できず、分別し個々の処分を行っている処理場へ搬出しなければならないのだ。東北や巨大な岩石を取り除いて、はじめて残土処理場へ搬出できるようになるため、撤去には約100億円がかかる見通しというのだ。しかも花崗岩が風化してできた「マサ土」は粒の直径が1ミリにもならないほどきめ細かく、多量の水を含んで積込や運搬も容易でないため、土砂の撤去にも時間がかかっているそうなのだ。
広島県の山地には広島型花崗岩が風化してできた「マサ土」と呼ばれる軟弱な地質が広がっており、今回の災害では「マサ土」に雨水が浸透して表土層が崩落する「表層崩壊」が発生、大規模な土石流につながったとする見方が有力だった。しかも団粒構造にあった各粒子同士の位置に乱れが生じて、各粒子の隙間には空気が混じると、この時地上に運び出された土や泥の体積は地中或いは水中にあった状態に比較する約 3 倍程度に増加するというのだ。広島市の土砂災害で現場特有の軟らかい地盤のほかに、比較的硬い堆積岩の地質でも土石流が起きていたことが現地調査で分かったそうで、堆積岩は水に流されにくいとされるが現地を襲った未曾有の豪雨が地質の強度を上回った形だというのだ。
土石流の被害が甚大だった安佐南区八木で調査を行ったところ、花崗岩地質の特徴とされる丸形の岩がほとんど発見できなかったそうで、むしろ目立ったのは一辺数十センチの角張った岩意思で、砂や粘土などが長い年月をかけて押し固められた堆積岩だったというのだ。同様に比較的硬い「流紋岩」も一部に確認されたというのだ。水分を多く含むと強度が一気に落ちる「マサ土」と違い堆積岩は水に流れにくい特徴があって、角張った形状のため岩同士がぶつかり合い簡単には崩れないし、岩と岩の隙間を水が通過するため一般的に土砂崩れは起きにくいというのだが、ただ隙間を通過する水量が限界を超えれば「周辺の堆積岩が一気に流れ出る可能性がある」と専門家は指摘しているのだ。
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