仁志・多喜馬の戯言日記&戯言通信

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2017年01月30日
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東京電力福島第一原子力発電所の事故からもうすぐ丸 6 年なのだが、あの大規模な原発事故の直後から、東京電力の依頼を受けた大手ゼネコン数社が事故の収束に向けて対策を練り始めていたというのだ。廃炉に向けて毎日 6000 人が働く現場では様々な工事や作業が同時並行で進んでおり、「燃料取り出し用カバー」・「凍土遮水壁」・「多核種除去設備」・「フェーシング」等耳慣れぬ用語の氾濫が、さらに理解を難しくしていすし、その目的や内容を正確に理解しようとするだけで大変な労力が伴っているそうなのだ。他に類を見ない工事に挑んでいるのは我々と何の変わらない建設技術者なのだが、廃炉費用の増大が課題となるなか国のエネルギー政策や東京電力の振る舞いに関心を持ち続けることが、我々と同じ建設技術者の苦境を打開するためのヒントがぎっしりと詰まっているというのだ。

私の愛読している業界紙では廃炉に向けて毎日 6000 人が働く現場での苦労等を特集しているのだが、スーパーゼネコンの一角を占める清水建設では水素爆発を起こした 1 号機原子炉建屋を、テントのような仮設のカバーですっぽりと覆って放射性物質の飛散を抑制する緊急プロジェクトの東京電力へ提案した内容についての記事が載せられていたのだ。事故が起こって現場の状況把握すらままならないなか、東京電力は清水建設にカバーの建設計画の提案を依頼していたそうなのだが、なにしろ原子炉を収める建屋は地上 5 階の地下 1 階建てで構造は主に鉄筋コンクリート造なのだが、その「建屋カバー」は南北に 46.9m で東西に 42.3m の平面を有し、地上からの高さは 54.4m に達する鉄骨造の巨大な構造物だったという。

この「建屋カバー」は四隅の柱とそれらをつなぐ 3 4 段の合計 13 本からなる梁や、クリーム色の膜材を張り付けた壁・屋根パネルなどから成り、建設後 5 年間にわたって原子炉建屋を覆うことにする計画だったそうなのだ。計画当時には 1 号機原子炉建屋の周辺には津波と水素爆発の影響で車や建物の残骸があふれかえっており、さらには毎時数十ミリシーベルトという極めて高い放射線量が計測されていた。人が容易に近づけない現場でどのようにして巨大な構造物を建設するのかということを、会議の席上で建設計画の立案を任されていた生産技術本部が披露し出席者を驚かせたのは、溶接やボルト締めを一切用いず離れた位置からクレーンで吊り込んだ柱と梁をかみ合わせるだけで接合するという「常識破り」のプランだったという。

 検討を始めたばかりのころに清水建設が試算してみると、 1 号機原子炉建屋を一般的な鉄骨造のカバーで覆うには、外周の柱が 22 本に梁が 71 本と屋根トラスなどを合わせると 214 ものパーツが必要になると分かったという。これらのパーツを通常の方法で接合するには 2 万本ものボルトを締めなければならないのだが、放射線量が高い 1 号機の周辺では 1 人当たりの作業時間が限られるので 5000 6000 人ほどの職人を全国からかき集め、交代を繰り返しながら作業に当たらなければならないという結論に達したというのだ。そんな事はまず不可能だということで生産技術本部が提案したのは、溶接やボルト締めを一切使わずかみ合わせるだけで柱や梁を接合する奇策だったというわけなのだ。

「かみ合わせるだけで柱と梁を接合する方法」とは、柱側に突起を設け梁の端部に空けた穴とかみ合わせて接合する方法で、突起の上に角すい状のガイドを取り付け梁の位置が多少ずれていても自動的に正しい位置に導かれるようにし、突起と穴をがっちりとかみ合わせることで柱と梁を接続してしまおうというのだ。突起と穴のすき間はわずか数ミリメートルでいったんかみ合わせてしまうと容易には抜けないようにし、地震などで部分的に大きな力が掛かって鉄骨が座屈したり降伏したりすることがないように解析を重ねたという。このように凹凸をかみ合わせて部材を接合してしまう方法は「嵌合接合」と呼ばれる工法なのだ。

嵌合接合を利用した身近な例には、レゴに代表されるブロック玩具があるのだが、古い寺院や神社のような伝統的木造建築物の「仕口・継ぎ手」のように二つ以上の部材を継いだ接合部も嵌合接合の代表例だといわれている。鉄骨造の建物についても近年は建設資材の再利用による環境負荷の低減や急速施工などに着目した研究や事例が見られるそうだが、建屋カバーのように巨大な構造物に適用した事例はなくそう考えると確かに「常識破り」の工法だといえるのだ。ところがメルトダウンを起こしている建屋周辺では、極めて高い放射線量が計測されており、とても長時間の作業が可能な環境ではなかったことから、現場の制約条件と建造するカバーの規模を考えれば「嵌合接合」に行き着いたのは必然だったともいえるというのだ。






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最終更新日  2017年01月30日 12時09分36秒コメント(0) | コメントを書く


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