ルーズベルト大統領とチャーチル首相の時代から、米英両国の絆は「特別な関係」と表現されてきたそうなのだが、そうした中でもかつてないほど親密な関係を築いたサッチャー首相とレーガン大統領をトランプ氏は引き合いに出したくらい、テリーザ・メイ英首相にとっては限りなく満点に近い会談だったとされている。メイ首相はホワイトハウスでドナルド・トランプ大統領との会談に臨んだのだが、トランプ大統領にとってはメイ首相が就任後初めて会談する外国首脳だということもあって、彼女の外交手腕に世界が注目していたというのだ。メイ首相にとっても今回の英米会談は重要な意味を持っており、欧州連合との離脱交渉を控える英国にとっては米国との関係をできるだけ深めることが大切になっているというのだ。
訪米前からメイ首相は米国との「ユニークで特別な関係」を繰り返し強調しており、英米首脳会談はメイ首相にとっては今回の会談で望んでいた 2 つの約束を、トランプ大統領から取り付けることができたとされている。トランプ大統領は英国のエリザベス女王からの招待を受け、今年後半にも訪英することを約束したそうなのだ。今回の会談でトランプ大統領から取り付けた 2 つの約束は、メイ首相が今後欧州連合との離脱交渉を有利に進めるカードとなる可能性が高いといわれており、一つは米国との 2 国間貿易協定の協議だという。メイ首相は欧州連合離脱後には欧州連合の単一市場からの完全離脱を表明しているが、これを受けて英国に拠点を置くグローバル企業の脱英国の動きが広がっているというのだ。
英国経済の先行きに不透明感が漂っている中で米国との貿易協定は、離脱後の英国経済の「成長ストーリー」を見せる格好の材料となるというのだ。トランプ大統領もメイ首相の呼びかけに応じ 2 国間の貿易協定に向け協議することを約束したというのだ。欧州連合側は「英国が他国との貿易協定を交渉できるのは、離脱が完了してから」と繰り返し警告してきたが、メイ首相はそうした指摘を無視して米国と協議入りしかねない姿勢を見せたのだ。「サッチャーとレーガン時代の復活」と英国ではメイ首相とトランプ大統領を、かつて強固な英米関係を築いた 2 人のリーダーになぞらえる人も少なくない。少なくとも今回の会談で英米はその「特別な関係」を世界に示すことに成功したというのだ。
欧州連合単一市場の離脱を表明したメイ首相にとって背に腹は変えられず、英国の生き残りのためにやれることは何でもやるだろうから、その意味では英国は米国を今後ますます頼りにしなければならないという。もう一つの狙いは米欧の安保協力の枠組みである北大西洋条約機構へのコミットを継続させることで、トランプ大統領は米国が北大西洋条約機構の予算の 7 割を負担している実情に不満を持っており、同盟国が負担金を増やさなければ駐留米軍撤退も辞さないと繰り返してきた。しかし英国を始めとして欧州各国にとって北大西洋条約機構の存続には米国の関わりが不可欠で、メイ首相は「より公平な負担に向けて欧州各国に働きかける」と約束し米国に引き続き北大西洋条約機構にコミットすることを要請したのだ。
メイ首相は「 外国への軍事介入の時代は終わった」 として、過去の失敗は繰り返さず「 新しい特別な関係 」を築く事を強調していたが、これについてもトランプ大統領はメイ首相に応じ「 100 % NATO 側につく」と約束したと言う。トランプ大統領がメイ首相を最初の会談相手に決めたのは両首脳の考えが一致するからなのだが、「強い英国」を叫んで欧州連合の単一市場と関税同盟の離脱を宣言したメイ首相と、多者間の経済ブロックを解体して各国と1対1で相手にするというトランプ大統領の構想は一致するというのだ。「偉大な米国」を掲げたストロングマンのトランプ大統領も、「強い英国」を宣言して「第2のマーガレット・サッチャー」と見られるメイ首相もスタイルは似ているということなのだろう。
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