建設業に従事していると運送業との付き合いも長くなってくるし、「一般的で社会的にも容認されている」とはどういうわけなのか、「本当に年収の 3 割減額が社会的に容認されているのか」ということなのだが、今の運送業特に私のような建設業に入ってくるトラックの等の運転手は、なんせ 50 代前半でも「若い」と言われている。荷物を依頼する側が圧倒的に強い運送業の従事者は、賃金も年々下がり「キツイ、稼げない、危険」の究極の「 3K 職場」になっているという。そこで定年退職後に再雇用され同じ内容の仕事を続けた場合に、賃金を引き下げることの是非が争われた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は昨年の 11 月に引き下げを容認する判断を示したというのだ。
訴えていたのは運送会社に再雇用された嘱託社員のトラック運転手3人なのだが、彼らは 60 歳の定年を迎えた後、1年契約の嘱託社員として再雇用されたという。仕事内容も責任も定年前と変わらず、セメントを運ぶ仕事だった。 にもかかわらず、年収は3割ほど下げられてしまったのだ。5月に行われた東京地裁の一審判決では「仕事や責任が同じなのに、会社がコスト圧縮のために定年後の賃金を下げるのは不当」と判断し、この会社について「再雇用時の賃下げで賃金コスト圧縮を必要とするような財務・経営状況ではなかった」として、正社員と非正社員の不合理な待遇の違いを禁じた労働契約法に違反しているとし、正社員との賃金の差額計約 400 万円を支払うよう会社に命じたというのだ。
ところが東京高裁では「企業は賃金コストが無制限に増大することを避け、若年層を含めた安定的な雇用を実現する必要がある」と指摘し、定年前と同じ仕事内容で賃金が一定程度減額されることについても「一般的で、社会的にも容認されている」との判断を示して、一審判決を取り消し原告の請求を棄却したというのだ。原告側代理人によると運送業などでは定年退職者を再雇用した場合に同じ仕事のまま賃金を下げる例が多く、判決後に記者会見した原告男性は「納得できない。最高裁で闘う」としているそうなのだ。国土交通省は来年にはトラック運転手が 14 万人も不足すると予測しているし、宅配の個数が激増する一方でそれを運ぶ能力は落ちる一方なのだ。
原告の運転手によると、「昔は普通免許で乗れたトラックは車両重量8トン未満で最大積載量5トン未満」だったのだが、10年前に道路交通法が改正され中型免許がないと乗れなくなった。中型免許は 20 歳にならないと取得できないので高卒で入ってきても、2年間は事務仕事をやらされるんです。だから半年もたつと飽きてやめちゃう。運転したくてウズウズしてるようなヤツが、事務仕事に耐えられるわけがないですよ」と業界の若手運転者不足をこう解説していたという。さらに大型免許の試験も難しくなったことで、若年層の合格者が減っているとされ、 近年の長距離バス・トラックの重大事故を受けて「 1 日の休息期間は継続 8 時間以上」などの労働環境に対するルール強化も輸送力低下につながっているという。
国土交通省もこの実態には苦慮しているようで、「過去にもトラックドライバーの確保・育成について調査検討が行われたものの、必ずしも具体的な 取組につながらなかったことを踏まえ、トラックドライバーの人材確保・育成を行う方針を定め、トラック産業の活性化に向けた取組を着実に実行することとする」としているという。具体的には「業界イメージの改善」・「キャリアアッププランの提示」・「若年層へのアピールの強化」・「女性の活用促進」の4本柱に沿って、それぞれ取組を具体化することとしているというが、お役所仕事の典型のような「 ⼥ 性トラックドライバーの愛称 」を公募するといった方策等しか考えられておらず、運転手の賃金アップや労働条件の改善といったことにはあまりにもお粗末だというのだ。
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