安倍首相と連合の神津里季生会長は首相官邸で会談し働いた時間ではなく成果で賃金を決める 「 脱時間給」(高度プロフェッショナル)制度 を創設 することで事実上合意したという。「脱時間給制度」を盛り込んだ労働基準法改正案を政府は国会で成立させる予定だったが、野党の反発などにより見送りとなっている。政府と連合が「脱時間給」(高度プロフェッショナル)制度の導入に向けて歩み寄ったのは「働き方改革」の具体化で政権の再浮揚を目指す安倍晋三首相と労働政策で存在感を示したい連合の思惑が一致したためで、神津里季生連合会長は制度容認を「方針転換ではない」と繰り返したが、安倍政権の助け舟になったのは間違いなく「蚊帳の外」に置かれた民進党には戸惑いが広がっているという。
「脱時間給」(高度プロフェッショナル)制度では金融ディーラーなど年収1075万円以上の労働者の賃金は、働いた時間に関係なく成果で決まるわけなのだが、労基法改正案として2年前に閣議決定されたが、民進党や共産党と連合などは「残業代ゼロ法案」だとか「過労死を増やす」と廃案を強く主張し継続審議になっていたのだ。会談で連合の要望を受け取った安倍首相は「しっかり受け止めて検討する」と述べ、政府は休日の確保など健康対策の強化を求める連合の主張を踏まえて制度創設を柱とする労働基準法改正案を修正し、秋の臨時国会に提出して成立を図る予定だというのだ。労働者の代表である連合が制度創設を受け入れたことで法案審議の見通しが立ち改正案は成立の公算が大きくなってきた。
第2次安倍内閣発足後には政府が経済界に直接賃上げを要請する「官製春闘」が定着してしまい、連合は安倍政権に接近し長時間労働是正などについて会談した際には、神津連合会長は「事実上の定期的な政労会見だ」と歓迎していたそうなのだ。今回の「脱時間給」(高度プロフェッショナル)制度の創設を巡る合意はこうした経緯の延長線上にあるわけなのだが、政府が経団連の要望を受けて秋の臨時国会で残業時間の上限規制などを含めた労基法改正を実現するには、「脱時間給」(高度プロフェッショナル)制度の成立にどうしても連合の協力を得る必要があったというのだ。そうして今回の同意で首相官邸幹部は「民進党は連合の意向を無視できない」と述べているそうなのだ。
改正案の修正に応じる考えを示した神津連合会長は記者団に対し、「脱時間給」(高度プロフェッショナル)制度について「今の政府案の内容に比べれば大幅に改善される」と語ったが、、連合が容認に転じれば民進党も政府案に乗らざるを得ないとの見方を示している。他に退勤から出社までに一定の休息を設ける「勤務間インターバル」の創設や、2週間連続の休暇に臨時の健康診断など複数の選択肢から各社の労使が健康を確保する措置を選べるよう修正するという。改正案には実労働ではなく「みなし労働時間」に基づいて賃金を支払う裁量労働制の対象拡大も盛り込まれており、そのうえ連合の要請を踏まえ商品販売など一般の営業職は「対象外」と明確にするということのようなのだ。
それでも連合内には「まずは職場全体の労働時間を徹底的に見直し、1日8時間で成果を出せる環境を生み出すことが重要だ。その後に導入すれば真の課題解決になるが、順番を間違えれば逆に長時間労働を促し、社員の体調悪化を招く結果となりかねない」といった意見もあるというのだ。民進党にとっては寝耳に水となった連合の「脱時間給」(高度プロフェッショナル)制度容認が事前に報じられると、大串博志政調会長は「民進党は即座に賛成とはならないのではないか」と困惑したという。神津連合会長は安倍首相との会談を前に民主党の蓮舫代表に電話し「コミュニケーション不足だった」と陳謝したが、経団連関係者によると来週にも経団連会長を交えた3者で会談するというのだ。
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