生活習慣病の多くは肥満と関係しているといわれているが、肥満は皮下脂肪と考えると皮下脂肪を悪玉と考えがちだというのだ。実は生活習慣病と関係しているのは消化管の間の脂肪組織である内臓脂肪で、お腹の皮膚の下にあってつまむことができるのが皮下脂肪で、腹部の内臓の周りにあるのが内臓脂肪だというのだ。皮下脂肪と内臓脂肪は別ものでなのだが構造的な差はないそうなのだ。代謝を見ると内臓脂肪は皮下脂肪と比べてより機能的で活発な細胞だといわれており、活発というのは脂肪を溜めやすく出しやすいという意味と、生理的活性物質を多く作るという両方の意味で、内臓脂肪の増加は「糖尿病」・「血栓症」・「動脈硬化」・「高血圧症」の促進につながっていくというのだ。
内臓脂肪の増加は CT スキャンを用いて腹部の適当な場所の断面像を撮影しないと医学的には判断できないとされているが、 CT スキャンは浴びる放射線の量が大量なので内臓脂肪の確認のためだけに CT スキャンで検査するのは考えものだという。そこで 1 つの目安になるのがお腹まわりのサイズで、日本人男性ではお腹まわりが 85cm 以上あると BMI の数値を問わず内臓脂肪が増加している可能性があるとされている。特にお腹まわりがあるのに腹部の皮下脂肪を手でつまめないようだと内臓脂肪が増加している可能性が高くなっているという。内臓脂肪は預金にたとえると普通預金だとされ、定期預金にたとえられる皮下脂肪より引き出しやすく、つまり減らすことはそれほど困難ではないとされている。
内臓脂肪は脂肪酸の出し入れが容易だといわれているが、筋肉が体重に対して女性より 10 %増しの男性は筋肉を動かすための熱源となる内臓脂肪を女性よりも多く持ちやすい傾向にあるという。男性ホルモンは筋肉を増加させるとともにその熱源の内臓脂肪を増加させる作用があって、男性は内臓脂肪がつきやすく「太っ腹」になりやすいというのだ。一方で女性ホルモンは内臓脂肪よりも皮下脂肪を蓄える傾向があるそうで、男性のお腹まわりは内臓脂肪が多いためと腹筋が多いために女性より太くなるというのだ。同じ体脂肪率の男性と女性ならば男性のほうが内臓脂肪は多いことになるのだが、その内臓脂肪が多く作る悪玉物質の一つは腫瘍壊死因子という物質だとされている。
腫瘍壊死因子は名前の通りに悪性細胞を攻撃するのだが、攻撃の中に兵糧攻め的な作用があって細胞が血糖を取り込むために必要なインスリンの効果を低下させるというのだ。このために体全体のインスリンの効果が悪くなり糖尿病の原因となるという。腫瘍壊死因子とは別のインスリンの作用を低下させる物質の産生も確認できており、血栓を作りやすくする因子の産生も活発で全身に作用すれば脳梗塞などの血栓症を起こしやすくする原因となるそうなのだ。その他に血管の平滑筋の増殖を引き起こす物質も産生しており、動脈硬化を促進することや血圧の上昇をきたす物質も産生していて高血圧症の原因となるというのだ。これらの物質は皮下脂肪もある程度産生しているが代謝の活発な内臓脂肪の方が産生は多いというのだ。
脂肪を燃焼させる有酸素運動が内臓脂肪を減らすのだが、有酸素運動を行なった場合に筋肉は蓄えたグリコーゲンを使い、次に血中の脂質や肝臓や脂肪細胞が放出する遊離脂肪酸を使うとされている。この時に皮下脂肪よりも代謝が盛んな内臓脂肪の方が多くの遊離脂肪酸を放出し、内臓脂肪は代謝が活発ということは溜まりやすく減りやすい性質を持っているということなのだ。よく有酸素運動は運動の持続時間が 20 ~ 30 分以上ないと脂肪の燃焼が起きないとされているが、この解釈は 20 ~ 30 分以上の持続時間があれば確実という意味で、これより短い持続時間では脂肪燃焼が起きないというわけではないというのだ。一番大切なのは内臓脂肪を減らすために誰でもできる有酸素運動「歩くこと」がおすすめだというのだ。
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