世界最大規模の総合印刷会社である印刷業界大手の「凸版印刷」が、 東京都労働委員会から組合の求める団体交渉に応じろと命じられたという。「凸版印刷」といえば印刷業界 2 大トップの一角とされグループ連結で売上高が 1 兆 4 千億円で、従業員 5 万人を擁する大企業だというのに執行部は労働法規さえ知らないということのようなのだ。もっとも自社の組合が御用組合なのか頼りないから外部の労評に駆け込むのが得策になると組合の在り方も問われてくると思ってそまうのだ。東京都労働委員会の命令書によると「凸版印刷」は新聞紙 2 ページの大きさの白紙に楷書で「今後、このような行為を繰り返さないように留意します」と墨書して社内に張り出すことも命じられたという。
今回の事件は「凸版印刷」の男性社員が上司からのパワハラと、不当な配置転換命令を受けたと訴え企業別労組である凸版印刷労組に相談したが「取り合ってもらえなかった」ということが始まりだというのだ。そのためこの男性社員は個人で加盟できる労働組合の 「日本労働評議会」に加入し、団体交渉を求めたが「凸版印刷」は応じなかったというのだ。「凸版印刷」側は文書で「日本労働評議会」について、 「貴殿らがいかなる団体であるか知りません」 と主張したそうなのだ。そのため「日本労働評議会」は労働組合法上の労働組合が団体交渉を求めた場合会社は応じる義務があるとして、団体交渉に応じないのは不当労働行為だとして東京都労働委員会に救済を申し立てたというのだ。
凸版印刷側は 「日本労働評議会」を 「組合とは認めない」 ので、男性社員と日本労働評議会側の主張についてまとはずれだなどと主張したというのだ。個人で加盟できる労働組合の「日本労働評議会」は約35年前に設立された労働組合で法人登記もあり、労働委員会の資格審査も通っていることを知りながら、凸版印刷側は労働組合法上の単組というためにはその会社と使用従属関係にある労働者が主体でなければならないと主張したというのだ。ところが東京都労働委員会は会社側の主張を 「独自の見解」 で 「採用できない」 とバッサリ切り捨て、「会社は組合に対して 形式的な質問を繰り返すことにより 回答を 理由なく先延ばしにし 、団体交渉応諾についての回答を避け続けているとしたのだ。
東京都労働委員会は 凸版印刷側の行為は「正当な理由のない団体交渉拒否に当たる」と結論付けて、「今後、このような行為を繰り返さないように留意します」などとする文書を、「会社内の従業員の見やすい場所に、 10 日間提示しなければならない」と命じたという。この東京都労働委員会の命令書は 「新聞紙 2 ページの大きさの白紙 に 楷書で明瞭に墨書」 と、細かくフォーマットまで指定されているが、このような文書の掲示を組合側は求めていなかったのに東京都労働委員会が独自の判断で命じたというのだ。東京都労働委員会は「団体交渉申し入れから約 1 年が経過しているにもかかわらず、会社はおよそ 労働組合法の趣旨にもとる独自の見解に固執した対応に終始 している」と強い言葉で会社側を非難している。
労働組合法では「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」を不当労働行為として禁止しているのだが、使用者には誠実に団体交渉に応じることも求められており、使用者は単に組合の主張や要求を聴くだけではなく、組合の要求に対して回答したり資料を示したりして誠実に対応し、合意達成の可能性を模索しなければならないというのだ。そうして団体交渉を申し入れた労働組合の組合員の労働条件や、その他の待遇または労働組合と使用者との団体的労使関係の運営に関する事項は義務的団交事項であり、これらの事項についての労働組合の団交要求を使用者が正当な理由なく拒否した場合には不当労働行為が成立するとされているのだ。
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