内閣府は今年度の第 2 四半期の国内総生産を公表したのだが、実質成長率は年率換算で 1.4 %のプラスとなり、プラス成長は 7 四半期連続で 16 年ぶりの記録となったという。意外と景気は悪くないということなのだが国内総生産の中身はお世辞にも「 16 年振りの記録」といえるほど良いものではないというのだ。国内総生産の 6 割弱を占める個人消費は前期を 0.5 %下回ったということなのだが、これは台風や長雨の影響で外食や宿泊サービスなどが伸び悩んだことがその背景にあるという。それでも天候不順だけで片付けられないそうで、賃金が増えないことが大きな原因と考えられるのだが、その賃金は政府が検討している「働き方改革」次第ではかなり減少する兆しがあるのを見逃すことはできないというのだ。
働き方改革の目玉の一つは「残業時間の規制」で、健康を害するような長時間労働に規制をかけるものだという。ワークライフバランスが唱えられていることから長時間労働の是正は歓迎されるべきことなのだが、それは賃金が減少しないという前提に立たなければいけないのだ。経営者も率先して長時間労働の是正に取り組まざるを得ない状況になっている。経営者が「長時間残業の禁止」を叫び人事部に「早く退社するような施策をやれ」と指示するだけで解決できるほど単純な問題ではないのはもちろんなのだが、なぜなら経営者が残業を極力しないように呼びかけてもその命を受けた人事部は「ノー残業デイ」や照明・空調を止めて会社から社員を一律に閉め出そうとするからだというのだ。
管理職たちは「社長はああ言っているが、ホンネはどこにあるのか」を考え、「生産性を落とすことなく、コストとなる残業時間を減らすことだな」と勝手に解釈し、部下が申告する残業時間を制限してサービス残業や持ち帰り残業を強要するというのだ。結果としていわゆる「ヤミ残業」が横行することになるが管理職がそう考えるのも無理もないところもあって、それは経営的観点から部門別のコスト削減が常に求められているからなのだ。大手サービス業の人事担当者は「社会保険料負担の増大など人件費コストは年々上昇している。経営側としては給料を減らすわけにはいかないので残業代に手をつけるしかない。各部門の残業実績を経営会議で共有し、残業が多い部署は部門長を中心に残業を減らすように指導している」と語っているのだ。
業界を問わず一定以上の残業は付けないように指導するか、または自ら残業を付けないケースは多いとされ、つまり残業の実態と申告された残業時間のギャップが大きい企業はまだまだ多く存在しているという。表面的な残業規制をしてもヤミ残業はなくならないというわけで、もし経営者が本気で長時間労働の是正する気があるならヤミ残業を撲滅するべきだという。「サービス残業は絶対に許さない」と宣言し部署ごとのサービス残業を徹底的に洗い出すことで、場合によっては社長や役員自ら残業している各部署を夜回りするぐらいの覚悟も必要で、ほとんどの人事部が「わが社はコンプライアンスに則った適正な労働をしています」という見せる化運動を一生懸命に取り繕っている状態にすぎないのが実情のようなのだ。
つまり残業代はある意味低い給与の補填という側面があることから、その補填がなくなれば勤労者は大打撃となりただでさえ財布の紐が緩まないことから、収入が減れば当然支出を抑えることになってしまうというのだ。支出を抑えれば消費は落ち込みひいては国民総生産の成長率も落ち込むはずで、国は長時間労働を助長する残業は問題として杓子定規に残業規制を行うと、勤労者の収入をどうやってカバーするのかが問題だという。春闘では 3 %のベアを安倍首相は要求したようだが、残業時間の上限規制が導入されればたった 3 %のベアでは焼け石に水だというのだ。労働組合側も雇用を守ることを旗印にするのではなく、抜本的に賃金改革を行いきちっとした労働の対価をもらえるように交渉すべき時期に来ているというのだ。
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