60 歳で定年退職してからどこの組織にも属さずに過ごしてきた「毎日が日曜日」状態である定年退職者は、普段はどのように活動しているのだろうかということなのだが、まず考えられる図書館だということなのだが、朝 10 時の開館前に行くとすでに 7 ~ 8 人の男性が玄関前にある椅子に座って待っており、 60 代や 70 代とおぼしき男性ばかりでもちろん定年退職者ばかりとは言えないがその男性たちは元会社員である可能性が高いという。開館時間になって扉が開くと多くが新聞コーナーに行って、全国紙とスポーツ新聞を合わせると人数分はあるので各自一紙ずつ手に持って読み始め、一人の男性が経済新聞の株価のページを長く読んでいたので待っていた人が「もう少し早く読んでくれないか」と話しかけていたという。
ハローワークの利用者は高齢者が多いわけではないそうで、定年退職者と思しき人はパソコン画面を少し見てすぐに帰る人が目に付き、失業保険の受給要件を満たすために来ている人が多いそうだ。大型ショッピングセンターでは高齢の男性の姿が目立つが、休日とは違って広々としたスペースは閑散としており、午前中にゆったりとしたソファーに座っているのはほとんどが高齢の男性だという。喫茶店にも定年退職したと思われる人は少なくないそうで、一人で新聞や週刊誌を読んでいる人が多いという。スポーツクラブは開館の 9 時には長い行列ができるが男女の高齢者が並ぶ姿は壮観で、昼間であれば何回使っても定額のコースがあり、朝から夕刻近くまでクラブで過ごしている男性定年退職者も多いという。
喫茶店はモーニングをやっているので退職者と思しき人を見かけることが多いそうで、コーヒーのおかわりができる店もあってゆっくり過ごせるからだろう。ノートに何かをせっせ書きこんでいる 60 代半ばくらいの男性は経済新聞の株価や為替の数値を調べていたが、持っていたスマホも利用して新聞とノートで自分用の情報を作成していたという。ゆっくりできるせいか囲碁の手が書かれた用紙を見ながらパソコンと格闘している人や、カラオケ店にあるような分厚い歌の冊子を一ページずつめくりながらノートにメモを取っている年配の男性もいるという。男性定年退職者の特徴を一言で言うと一人ぼっちだということのようで、午後になれば高齢者のグループがカフェなどで話している姿を見ることがあるがそれは稀なケースだという。
流行りのカルチャースクールの講座では女性ならグループでワイワイ楽しそうにおしゃべりをしているが、男性はやはり一人でいる人が多いという。もちろん一人ぼっちであることに問題があるというわけではなく、一人でゆったりと時間を過ごすことが心地よい人もいるであるが、人と群れることを好まない人もいるに違いないのだろうが、どちらかと言えば私も一人が好きなので図書館で読書をするのも悪くないかと思っている。「毎日やることがなくて困っている」とか「一番自由な今が一番しんどい」や、「家で居場所がない」に「暇になったのに焦る」・「嫌な上司もいないよりはマシ」などと語られることがあるが、なかには「このままの毎日が続くと思うと、自分の人生は何だったのかと思うときがある」とまで発言した人もいるという。
在職中は組織内での上司や同僚に部下との濃密な人間関係を築いているにもかかわらず、退職後はその関係が切れてしまい自分の居場所が見つからなくなっているという。今まで長い間企業社会のなかで朝から晩まで共同作業をやってきた人たちが、いきなり一人ぼっちになっては力も意欲も湧かないのは当然だというのだが、定年退職者にはまず何よりも他のメンバーのために何かをやらなければならない義務や役割という、人との関係をつくる作業が求められるのではないかというのだ。中高年の男性に「定年後を見据えてどう対応すればよいと思われますか」と聞くと、「仕事だけでなく地域の人ともつながりを持ち最低限の家事ができること、普段から家族とのコミュニケーションをきちんと取っておくこと」という回答が返ってきくという。
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