放送法の規定が「契約の自由」などを保障する憲法に反するかが争われた裁判で、最高裁大法廷が放送法 64 条を合憲とする判決を言い渡したという。放送法 64 条ではテレビを設置した人に「家にテレビがある者は受信契約を結ばなければならない」と NHK との契約を義務付けているわけだが、マイカーに搭載したワンセグ機能のあるカーナビに対し栃木県に住む女性が「受信料契約を結ぶ義務がない」と NHK に求めた訴訟では、東京地裁が今月にこの女性の訴えを退けたというのだ。「ワンセグカーナビ」への初めての司法判断だが、カーナビにまで受信料が課されることに反発するドライバーもいるだろうが、同様の判決はすでに今年の 3 月に最高裁が下されているのだ。
最高裁第三小法廷はワンセグ機能付きの携帯電話に対し NHK との間に契約義務が発生すると判断したわけなのだ。「ワンセグ携帯」に対する最高裁の初判断だったのだが、東京地裁のカーナビ初判断は携帯電話がカーナビに代わっただけでそう驚くものではないという。 NHK によると自宅でテレビの受信料契約を結んでいれば、ワンセグ機能のあるカーナビや携帯電話を持っていたとして、新たに契約を結ぶ必要はないというのだ。つまり携帯電話もパソコンもテレビと同じ受信設備だという考え方なのだが、ただし携帯電話やパソコンの台数で受信料を取ろうとはしていないという。あくまで世帯単位での受信契約を前提としているだが、今回の栃木県の女性はカーナビ以外に受信できる設備がなかったという。
NHK のテレビの視聴が可能なパソコンあるいはテレビ付携帯電話についても、放送法第 64 条によって規定されている「協会の放送を受信することのできる受信設備」であり、受信契約の対象となるという。その他の NHK のワンセグ放送が受信できる機器についても同様だが、ただし受信契約は世帯単位となるので一般の家庭の場合ではテレビの視聴が可能なパソコンあるいはテレビ付き携帯電話を含めて複数台のテレビを所有している場合であっても、必要な受信契約は 1 件となるという。一方で事業所の場合は設置場所ごとの受信契約が必要となるそうなのだが、ひとつの部屋にテレビやテレビ視聴可能なパソコンなどが複数あってもその部屋で必要な受信契約は 1 件だというのだ。
1 年半前の最高裁判断が受信料支払いの義務を原則的に認めたことで、 NHK は受信料の徴収を強化しているそうで、その証拠に徴収業務の裏側では NHK から業務委託を受けた業者が「受信料の支払いは国民の義務で、支払わないと法律違反になる」と脅すように受信料契約を結ばせるケースがあって、トラブルも報じられているそうなのだ。 NHK は昨年度の受信料の推計世帯支払率が全国値で 81.2 %となったと発表ししているが、 80 %を超えたのは初めてで前年度比で 1.8 ポイントほど増加しているという。全都道府県で前年度を上回ったそうで、 NHK は「受信料制度を合憲と判断した最高裁判決や、法人委託による契約・収納業務を進めたことなどが、支払率の向上につながった」としているという。
NHK は昨年度の受信料の推計世帯支払率が最も高かったのは秋田県で 98.3 %だったが、沖縄県は最も低く 51.0 %だったが初めて 50 %を超えたという。大阪府が次いで低く 67.5 %で東京都は 69.7 %だったというが大切なのは視聴者が進んで支払うようになることだという。最高裁の合憲判決が出た時点で受信料未契約の世帯は約 900 万もあったそうだが、受信料を支払っている視聴者からすれば「ずるい人」たちなのだ。そうなるためには NHK が受信料の必要性について丁寧に説明し公共放送として国民に信頼されることに尽きるという。事業拡大に突き進むだけでは理解は得られないだろうといわれているが、やはり視聴者への丁寧な説明とその結果生まれる視聴者からの信頼が大切だというのだ。
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