日本経済の未来を考えるうえで今後の労働生産性の水準は最も重要な指標の 1 つだといわれているが、現状はどうなのかというと日本の 1 時間当たりの労働生産性は 47.5 ドルで、経済協力開発機構加盟 35 カ国の中では 20 位と下位に甘んじているという。おまけにこの労働生産性の水準はアメリカの 72.0 ドルの 3 分の 2 程度にすぎず、データが取得可能な 1970 年以降では先進 7 カ国の中で最下位の状況が続いているという。将来にわたって労働力の減少傾向が避けられない日本において今の経済規模を維持していくためには、労働生産性の向上が不可欠であることは間違いなく、人工知能やロボットによる業務自動化を活用しながらオートメーション化を進めていく方向性には異論がないとされている。
日本企業の稼ぎ方が大きく変わってきているとされているが、かつての日本の製造業では国内で自動車や家電を造りそれを海外に輸出するのがお決まりのパターンとなっていた。ところが今や現地のニーズに合わせるためだけではなく生産効率をいっそう高めるために、現地での生産を大幅に増やし続けており、大企業・中小企業にかかわらず生産性が高い企業ほどアメリカや中国・東南アジアなどに拠点や工場を持つようになっているという。とりわけグローバルに活動する企業は収益性をできるかぎり高めるために、最適かつ効率的な投資をつねに心がけているそうで、日本企業の海外への直接投資の残高は昨年 9 月末時点で 185 兆円にまで拡大し、過去 10 年間ではアメリカやアジアを中心に 3 倍近くに増えているそうあのだ。
その結果として日本企業の海外での稼ぎを示す直接投資収益は昨年度初めて 10 兆円の大台を突破しているそうで、日本企業はかつてのように輸出で稼ぐのではなく海外展開を進めることによって現地で稼ぎ、その収益を日本国内に戻す流れが強まっているというわけなのだ。しかしながらグローバルに事業を展開する企業が海外で賃金の安い従業員を雇い、高い付加価値を生み出していたとしてもそれは国内の付加価値額には加算されない仕組みになっているというのだ。つまり日本企業の生産性が海外で飛躍的に上がっても国内の生産性の上昇には一切つながらないという算出方法のため、日本のように海外で稼いでいる企業が多いほど労働生産性は低下していく関係にあるというわけなのだ。
それと日本の生産性が高くない理由が中小企業または小規模企業が多いことで、これらは平均的に生産性が低く日本全体の労働生産性の水準を大幅に引き下げているという。しかも人的資本の蓄積によって製品や商品の価格やサービス単価を引き上げていこうという意識が弱いからではないかと言われており、このことは高付加価値化の追求が必ずしも徹底されていないともいわれている。日本では中小企業が支える雇用の比率が一貫して 70 %前後で推移しているのに対してアメリカでは 50 %前後だし、ドイツやイギリスでは 60 %前後と日本より低い状況にあるというのだ。そのために日本の中小企業はアメリカの中小企業と同じ付加価値を生み出すために 2 倍以上の従業員を雇っている計算になっているという。
日本は短時間労働者の割合が高くしかも低賃金であるとされているが、これはサービス化と高齢化に伴う変化ともいえるというのだ。就業者を職業別に分類してみても専門職・技師の割合が少なく、代わりに事務補助員や単純作業の従業者は多目である。これだけで確定的なことは言えないとしてもスキルが求められる職業の割合が低く、サービス業従業者などの汎用性のある職業の割合が高いことは、日本でスキルを重視した職業が少ないことをうかがわせるという。就業者の労働形態では日本は短時間労働者の割合が高くかつ短時間労働者はフルタイム労働者の賃金の 56.6 %の水準しか受け取っておらず、このフルタイムとパートタイムとの賃金格差は欧州諸国と比べても大きいのが労働生産性の低い原因となっている。
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