日米安保に反対する人には朗報だが、米ブルームバーグ通信はトランプ大統領が日米安全保障条約を破棄することに言及したと報じたという。側近との私的な会話の中で触れたものだそうだが政権内で正式に検討されているわけではないという。トランプ大統領は大阪市で開かれる20カ国・地域首脳会議に出席する予定で、安倍晋三首相との会談で日米安保条約について言及するかは不明だが、米政府がこれまでアジア安定の「要石」と重視してきた日米同盟を事実上破棄する可能性を示せば、他の同盟関係や地域安全保障を揺るがすことになるという。事情を知る関係者3人によるとトランプ大統領は側近との会話の中で米国だけが日本の防衛義務を負っていることに対し一方的だと不満を漏らしたという。
また沖縄県の基地移転に関しても「土地の収奪のようなもの」と見なし米軍移転の財政補償を求める考えも示したという。トランプ大統領は2016年の大統領選中に「日米安保条約は不公平」と発言しており、在日米軍の駐留経費の全額負担を要求し米軍撤退もあり得るとの考えを示していた。今回の報道は同盟国への防衛費負担に不満を募らせてきたトランプ氏の過去の主張の延長線上にあるとも言えるが、日本政府はトランプ大統領が日米安全保障条約の破棄に言及したとの米通信社報道を打ち消し日米同盟は健在であると強調している。報道を放置すれば同盟の信頼性に疑義が生じて日本の安全保障環境に響くだけでなく、日米関係を外交の基軸に据える安倍政権にとって打撃になりかねないとの懸念があるからだという。
菅官房長官は記者会見でトランプ大統領が日米安全保障条約の破棄に言及したとの米通信社報道を否定し、「報道にあるような話は全くない。米大統領からも米政府の立場と相いれないものであるという確認を受けている」と強調したという。これまでトランプ大統領の奔放な言動が報じられても直接論評しないのが日本政府の対応だったが、今回は米側の「説明」を基に明確に否定したわけで、これは日米安保が日米同盟の根幹だけに報道内容が独り歩きすることへの危機感の大きさがうかがえるという。この件で韓国メディアはトランプ大統領が日米安全保障条約破棄の可能性に言及したとのブルームバーグ通信の報道を一斉に伝え高い関心を示し、「トランプ氏は条約が米国にとって不公平だとして、破棄に触れた」と報道している。
朝鮮日報も「韓米相互防衛条約にも影響を及ぼしかねないことから、成り行きが注目される」と伝えているが、中曽根平和研究所で理事長を務める藤崎一郎氏は、米国が覇権をめぐって中国と争っている今地理的に中国の隣に位置する同盟国である日本との関係を棄損しても米国にメリットはないという。日本はステルス性に優れる米ロッキード・マーチン製の第 5 世代戦闘機「 F-35 」を 100 機超購入する方針を固めており、防衛装備品の販売でも顧客を失うことになることから日米安保破棄はないという。藤崎氏はトランプ政権が日米貿易協議を有利に進めるために日米同盟をカードに使った可能性にも否定的で「もし、そのような意図があるのなら、話が表に出ないように進めるだろう。表に出れば、日本が反発する可能性がある」という。
日米同盟は日本が基地を提供するのに対して米国が核の傘とシーレーン防衛を提供するというのが大きな構図だが、「非対称」ではあるが「平等」とされてきた。しかしトランプ大統領はこの非対称部分を不平等と認識していることになるとの指摘もあるそうなのだ。在日米軍基地が持つ価値を理解していないというわけだがこれには傍証があるという。トランプ大統領は「中国が輸入する石油の 91 %はホルムズ海峡を通過する。日本の石油の 62 %も同様だ。なぜ米国がこうした国々のために無償でシーレーンを守る必要があるのか」とツイートしている。トランプ大統領が日米同盟の破棄を進める場合には、すでに海賊対処では協力していることから東アジアから中東に続くシーレーンを日中が共同で守る防衛協力が進むこともあるという。
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