東京電力のHPでは三陸沖の海底を震源とするマグニチュード 9.0 の地震が発生し、福島第一原子力発電所も大きな揺れに襲われたが、運転中だった 1 ~ 3 号機は全て緊急停止するとともに非常用ディーゼル発電機が起動し炉心の冷却が行われたとしている。東京電力の説明では地震により送受電設備等一部の常用設備への被害は生じたが、非常用ディーゼル発電機や注水・除熱のための設備といった安全上重要な設備への損傷は確認されていなかったという。地震発生時に 1 号機は直ちに制御棒が挿入され設計通り自動で原子炉が停止したというのだ。 1 号機は地震により外部電源を全て失い復水器などは使用できない状況だったが、非常用ディーゼル発電機が自動起動し非常用復水器による炉心の冷却が始まったとしている。
その後に福島第一原子力発電所は地震発生から約 50 分後に大きな津波の直撃を受け、海側に設置された原子炉の熱を海に逃がすためのポンプなどの屋外設備が破損するとともに、原子炉が設置されている敷地のほぼ全域が津波によって水浸しになったというのだ。タービン建屋などの内部に浸水し電源設備が使えなくなったため原子炉への注水や状態監視などの安全上重要な機能を失い、また地震による津波によって押し流された瓦礫が散乱し通行の妨げとなるなど様々な被害を受けたという。これによって全ての電源を失ったことにより非常用復水器が機能を喪失し高圧注水系も起動できなくなり、加えて監視・計測機能も失ったため原子炉や機器の状態を確認することができなくなってというのだ。
この後圧力容器内の水は蒸発し続け約 4 時間後に燃料が水面から露出して炉心損傷が始まり、露出した燃料棒の表面温度が崩壊熱により上昇したため燃料棒の表面が圧力容器内の水蒸気と反応して大量の水素が発生した。格納容器の損傷部から漏れ出た水素は原子炉建屋上部に溜まり何らかの原因により引火して、津波襲来から約 24 時間後の 3 月 12 日午後 3 時 36 分に爆発したというのだ。要するに「津波で電源を喪失し、冷却機能を失ってメルトダウンが起こり、重大事故が発生した」ということなのだが、この点に関して津波の規模が「予見可能だったか、想定外だったか」という議論がなされてきたが、事故調査委員会も「津波が事故原因」という点では一致し、多くの国民もそう理解していることになっている。
その福島第一原発は津波の襲来前に地震動で壊れたのであって、事故原因は「津波」ではなく「地震」だったとして執念とも言える莫大な労力を費やしそのことを明らかにしたのは、元東電「炉心専門家」で「プロメテウスの罠」にも登場して注目を集めている木村俊雄氏なのだ。東電社内でも数少ない炉心のエキスパートだった木村氏は、東電に未公開だった「炉心流量」に関するデータの開示を求め、膨大な関連データや資料を読み込み事故原因は「津波」ではなく「地震」だったことを突き止めたというのだ。原発事故を受けて「国会事故調」だけでなく「政府事故調」や「民間事故調」に「東電事故調」と 4 つもの事故調査委員会が設置され、それぞれ報告書を出したが、いずれも原発事故原因の究明として不十分なものだったのだ。
メルトダウンのような事故を検証するには炉心の状態を示すデータが不可欠となるのに、既設の 4 つの事故調はいずれもこうしたデータにもとづいた検証を行っておらず、そもそも東京電力は調査委員会にそうしたデータを開示していなかったからです。そこで木村氏は東京電力側にデータの開示を求めそれを分析して驚いたというのだ。実は津波が来る前からすでに地震動により福島第一原発の原子炉は危機的状況に陥っていたことが分かったというのだ。 7 基もの原発が稼働中の現在ではこのことは重大な意味をもつのだが、津波が原発事故の原因なら津波対策を施せば安全に再稼働できることになるが、そうではないであれば現在稼働中の原発がある以上国も改めてその辺早急に確認すべは当然のことなのだ。
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