記録的な大雨を伴った台風19号では21都県で5万棟以上の浸水被害が出たそうだが、被災者は住宅の損壊や自家用車の流失などで多額の出費を余儀なくされ途方に暮れることもあるといわれている。台風の大きな被害は今回だけとは限らないが、家屋が被災した場合に真っ先に確認したいのが加入している火災保険で、水害に対応する「水災補償」が補償内容に含まれていれば保険金を受け取ることができるという。その際には片付けの前にスマートフォンなどで屋内外の写真を撮影しておくと手続きを円滑に行えるそうなのだ。一方で流失家屋などのローンは生活再建に重くのしかかるわけだが、被害の頻度が多いと保険自体が今の保険料ではなりたたなくなってしまうから厳しい時代になったなという。
被災写真は損害保険ジャパン日本興亜の担当者による、表札を含む家屋の全景だけでなく、メジャーなどを活用し水がどこまで来たかを明示や、屋内の家財の状況-などが一般的な撮影のポイントだ。何より安全確保が最優先で可能な範囲で撮影すればよいのは当然だが、被災状況の撮影は損壊家屋の被災の程度を示す「罹災証明書」の取得にも必要となるため、詳細に撮影しておいて困ることはないという。証明書は市町村が調査して発行するが被災者の自主的な申請が必要で、これがなければ受けられない公的支援も多いためしっかりと手続きをするべきだという。なお「罹災証明書」を使った公的支援の1つに、家屋に深刻な被害が出た場合に国などから資金援助を受けられる「被災者生活再建支援制度」があるという。
この「被災者生活再建支援制度」は全壊で最大300万円だが、「罹災証明書」による損害割合が40%以上50%未満の大規模半壊では250万円まで給付され、過去の災害では申告漏れも目立つため注意しておきたいという。屋根や壁・柱など「生活に欠かせない部分」の損壊に役立つ公的支援は「応急修理制度」で、年収などの制限があるが大規模半壊と半壊の場合最大59万5千円が支給され、台風15号の被害を機に一部損壊でも30万円を上限に対象となったという。全国銀行協会がガイドラインをまとめた「被災ローン減免制度」では借り入れ先の金融機関から同意を得られれば、被災者が弁護士に手続きを依頼して債務の減免を受けられるそうで、手続きに費用はかからず制度を利用したために信用情報に登録されることはない。
今年の台風や大雨の被害では、佐賀県内を襲った記録的大雨で広範囲が浸水し、「佐賀鉄工所」からの油流出被害にも見舞われ被災して 2 カ月を迎えた。この「佐賀鉄工所」からの油流出の被害住宅は 207 軒で、特に油被害を受けた住民の生活再建の足取りは重いという。鉄工所からは被害住宅への補償内容が提示されたものの復旧資金や大工のあてがなく、先行きが見通せない住民は少なくないそうなのだ。「床を拭いても油がしみ出る。大工も忙しそうだし、正月までに元通りの生活を送るのは厳しかね」と下潟地区に住む老人は、畳をはがして床材がむき出しのままになった室内を見つめ淡々と話したという。再建の見積もりを取った段階だが 2 カ月が経過した現在でも住宅改修はできていないそうなのだ。
商工業や畜産業でも影響が出ているそうで、養鶏業を営む人では「再建にかかる費用を考えると、ここで再開することは厳しい」と話している。35年前から養鶏業を手がけてきたが今回の豪雨被害で約 2 千羽の鶏は処分せざるを得なかったという。農家や商工業向けの補償について「これから検討していく」としているが「長引きそうだから」と施設の解体を決めたという。順天堂病院の近くに住む板金業を営む高齢者も事業を再開できずにいるが、鉄板を加工する機械があった作業場が浸水し機械やモーターにも油が染み込み、作業場と隣接する自宅は「全壊」の判定で補償は受けられる見込みだが作業場については見通せないという。収入はなくなったままで「来年の春頃までに再開できれば」と語っている。
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