2 人に 1 人がアレルギーを持っている言われる現代日本で私も春になると花粉症でなやまされるのだが、命に関わるケースも珍しくないというのだ。ある女性は「友達との温泉旅行で、夕食にかにやえびを食べたあと、 2 時間ほど休憩してから温泉に入ったら、急に呼吸困難になってしまって」と明かしている。これは 「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」といわれる症状の一例だというが、アレルゲンとなる食べ物を食べたあと 2 ~ 3 時間以内に運動をするとアレルギーを引き起こすという。国立病院機構相模原病院副臨床研究センター長でアレルギー性疾患研究部長の海老澤元宏医師は「普通の食物アレルギーと違うのは、ただ食べただけでは起こらない。検査をしても原因となる物質の特定が難しいことも特徴です」と話している。
この「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」は 甲殻類や小麦が原因になることが多く、食後の激しい運動だけでなく散歩や入浴でも起こることがあって、アレルゲンの疑いのあるものを食べた場合 4 時間は運動を避けた方がいいという。アレルギー反応が出るかどうかはその日の体調によるところがあり、体調がすぐれない時の方が出やすいという傾向もあるという。食物依存性運動誘発アナフィラキシーが心配される人には、原因物質の摂取から可能なら 4 時間は運動を控えるようにするべきだという。ただ必ずしも全面的に運動を禁止する必要はなく、原因食物を摂らなければ運動は可能だという。特に小麦の入った石鹸で特に成人で発症する小麦アレルギーはこの食物依存性運動誘発アナフィラキシー例が多いという。
怖いのは「アナフィラキシーショック」につながるリスクがあることで、このアナフィラキシーとは食物や薬物・ハチ毒などが原因で皮膚や呼吸器・消化器など多臓器にわたって全身性に症状が現れる即時型アレルギー反応の総称で、時には血圧低下や意識喪失などを引き起こしこのように生命にかかわる危険な状態を「アナフィラキシーショック」と呼ぶという。ショックは急激な血圧の低下による症状を意味しており、脳に充分な血液が供給できなくなって運動能力や判断力の低下だけでなく意識消失といった危険な状態になってしまおうという。皮膚症状に加えて呼吸器系に症状が出た場合はアナフィラキシーと判断され治療が必要となり、専門の医療機関を受診のため必要なら救急車を使用しなくてはならないという。
アレルギーは原因となる物質である「アレルゲン」が体内に侵入したことを「 IgE 抗体」が感知することで症状が出るとされるが、異なる物質であってもたんぱく質構造が似ていれば「 IgE 抗体」は「アレルゲン」として判別し、その結果アレルギー反応が起きてしまうこともあるという。このように、異なる物質で反応が出てしまうことを「交差反応」と呼んでいる。予想外の交差反応から生じたアレルギーが話題になったこともあって、横浜市立大学附属病院の研究によると納豆アレルギーを引き起こす「 PGA 」という物質はクラゲにも共通するため、クラゲに頻繁に刺されているサーファーは納豆アレルギーを発症しやすくなるという。なかには朝食で食べた納豆でアナフィラキシーショックを起こし意識を失ったサーファーもいるという。
この「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」は学童に該当者が多いのだが、牛乳が原因食物の食物アレルギーだというある児童の保護者から提出を受けた学校生活管理指導表を基に、学校はその児童に対して給食の牛乳を除去する対応をとっていたところ、ある日その児童が誤って牛乳を飲んでしまい教育委員会を巻き込んでの大騒ぎになった事例もあるという。よく調べてみるとその生徒は普段から乳製品の入っている給食は食べ牛乳だけを除去していたというのだ。そこに牛乳を飲んだという事実だけで騒ぎに発展したということのようだった。このように食物アレルギーに対する正しい知識や、アナフィラキシーの際の緊急性の意味を理解されていない教育委員会や学校の方が多いといわれているのだ。
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